"All your base are belong to us."
とは、海外で最も認知度が高いと思われるEngrishの一つである。略称はAYBABTUもしくはAYB。
概要
これはメガドライブにて発売されたシューティングゲーム『ゼロウイング』がヨーロッパ向けに英語移植された際に発生した誤訳である。この文章は同ゲームの冒頭のデモにて、宇宙連邦軍の全基地を占領した宇宙海賊(CATS)のバストアップと共に表示される。
なお元となった日本版の文章は以下のようなものである。
「連邦政府軍のご協力により、君達の基地は、全てCATSがいただいた。」
ここで少し『ゼロウイング』のストーリーを説明しよう。
西暦2101年、銀河系宇宙連邦政府は外宇宙の脅威に対抗するために8つの防衛基地建設計画を推進する。だが、それは計画の表層に過ぎず、真の目的は防衛基地を足掛かりにアンドロメダ宇宙へと侵攻することにあった。
しかしその2年後、この計画のために連邦政府が密かに手を結んでいた宇宙海賊CATSが突如反旗を翻した。彼らは電撃的に防衛基地とその保有戦力を全て掌握し、軍の残存戦力は破壊工作等を以て封じようとした。
防衛基地へ送られる予定のある新造空母も甚大な爆破テロに遭い宇宙の海へと沈んでいく。その時、ただ1機の超次元戦闘機「ZIG-01」が炎に巻かれながら辛くも脱出する――。
本来ならば単なる無名ゲームとして埋もれる筈だった『ゼロウイング』だが、図らずもノストラダムスによる人類終末の大予言が(一部)巷間を賑わす1999年頃に再発掘されて、多くのネタ画像と共にじわじわと世界中のインターネット文化を侵略することになる。
2000年の末にアメリカ・カンザス州のテクノバンド The Laziest Men on Mars がこのセリフをフィーチャーした『ゼロウイング』BGMリミックス "Invasion of the Gabber Robots" をリリース、そして2001年(奇しくも『ゼロウイング』の物語の中で連邦政府が銀河系防衛基地計画を開始するちょうど100年前である)には Bad_CRC によって "Invasion ~" を使用したネタ画像文化の集大成ともいえる代表的なFlashが製作された。2008年現在に至っても、『RedAlert3』のトレーラー映像にてネタにされている。
解説
AYB(ABTU)がどのように間違っているかはウィキペディア等に詳細な解説があるので(とはいえ日本語版ウィキペディアの解説は穿ち過ぎで迷走気味の感がある)軽く触れるのみにするが、文法的な間違いを解消した例として
" Thanks to the cooperation of Federation Forces,all of your bases now belong to us."
などが考えられ(英語版ウィキペディア参照。もちろん原文の直訳ではなく「君達の基地は全て、今や我々CATSのものに(なるべくして)なった。」くらいの意味)、他にもさまざまな言い回しが各所で検討されている。
この文章がここまで波及したのは、グラフィック上は侵略者のイケメン宇宙人が人類終了のお知らせを告げる非常にシリアスなシーンで、言いたいことはまあ解らなくはない(単純に are を複数の表示と考えて -s に置き換えればいい)ものの、まるで「てにをは」のできない就学前の幼児が喋っているような、何とも評しがたい微妙なセリフが流れてしまったためだと言われている。イケメンなのに。
ニコニコ的に例えるなら、新しい歴史教科書をつくる会へ抗議する隣国国会の某議員が「日本は反省しる」と書いてしまった例や、ブロントさんの例を思い浮かべてもらうと分かりやすいかもしれない。
イケメン無罪海賊なんだから宇宙連邦軍の言語に不慣れなのは仕方ない? まあそれも一理あるにはある。
実はこのデモムービーには爆破された新造空母のクルーたちのセリフもあるのだが、これまたイケメンさんに劣らないカタコトぶりなのだ。銀河系は広大であるから、連邦政府軍所属のクルーの皆さんもさまざまな星系や階層の出身者がいることだろう。となると彼らの共通言語として存在しているであろう銀河連邦語がいささかブロークンになってしまうのは仕方のないことであり、氏素性の知れない海賊ならば一層のことである。あるいは元より軍隊独特の特殊な語法であるとか、もっと大胆に考えて銀河連邦語そのものがピジンやクレオールのようなカタコト文法の言語である可能性も出てくる。
つまり日本語ではなく宇宙連邦語の英訳と視るならば "All your base are belong to us." はSF的にはこの上なく正しい、のかもしれない。
それはそうと、勿怪の幸いだったのは、元の文章の CATS を us にした点である。もしもそのまま CATS にしていたら、今頃我々が大量のぬこ侵略画像やFlashに囲まれていたであろうことは想像に難くない・・・いや、それはそれでなかなか(愉悦)。
余談
AYBABTUはメガドラ版ゼロウィングの英語版で登場した台詞であるが、本作の日本語版デモにおいても1箇所だけ拍子抜け必至の誤記が存在している。
英語版では "What happen ?" と訳された艦長の第一声、それが以下である。
「一体どうしたと言んだ!」
……この調子が全編に渡ったと考えれば、英語版がミーム化したのも頷けるかも知れない。
2022年7月1日より『セガ メガドライブ for Nintendo Switch Online』でゼロウィングが配信開始されたので、追加パック加入済みであれば上記のデモを確認しに行くことができる。
海外のニンテンドーアカウントを用意して『SEGA Genesis - Nintendo Switch Online』をダウンロードしていれば、欧州版ゼロウィングを起動してAYBABTUを直接拝むことも可能だ。
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関連項目
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