「どうも、BEMANI Sound Teamです!」
「俺たち、名前は変わっちゃったけど、心は変わらねえ。
だからこれからも、DDRを、BEMANIを、よろしくな!」
――BEMANI Sound Team "TAG" (JAEPO2018 BEMANI SPECIAL LIVEより)
「今年もあのセリフで締めさせていただきます。
今日はちょっとNEWバージョンで。
……いっけね! 俺もBEMANI Sound Teamだった!」
――BEMANI Sound Team "DJ YOSHITAKA" (JAEPO2018 BEMANI SPECIAL LIVEより)
BEMANI Sound Teamとは、主にBEMANIシリーズの楽曲制作に関わる、KONAMIが誇るサウンドコンポーザー集団である。もしかして:BEMANI芸人
なお、以後この記事においては、特に正式に記述する必要がない限りBSTと省略した上で記述を行う。
BEMANI Sound Teamの定義
BSTは、BEMANI楽曲で表示されるアーティスト名において、そのアーティストがKONAMI専属のスタッフであることを示すための表記である。
ゲーム画面に表示される楽曲のアーティスト名にて使われる他、ゲームのスタッフクレジットやサウンドトラックのブックレットなどにも使用されている。
アーティスト名の中にKONAMIスタッフの名義が含まれていた場合、まずBSTのチーム名を冠した上で、ダブルクオーテーションで本来のアーティスト名を付記するのが現在の表記ルールである。
たとえばBST登場前なら楽曲およびアーティスト名が
と表示されていたものが、BST登場後は
という風に表示される。
アーティスト名の一部または全部にBSTが冠されるかどうかは、主に以下の点を根拠として決定される。
- KONAMI所属のスタッフを示す名義(別名義・正体不明の名義も含む)であること
- BSTはKONAMI所属のスタッフとそれ以外の外部アーティストを区別するためのものである。よって外部アーティストの名義についてはBSTは付かない。ただしKONAMI在籍時に楽曲が作られ、後から外部アーティストになった場合でもBSTが付くケースがある。
- KONAMIスタッフと外注アーティストの名義が一緒に表記してある場合は、KONAMIスタッフの部分にのみBSTが付く。
- 2017年11月以降に追加された楽曲であること
- BSTは2017年11月以降に順次導入されていった名義であり、それ以前から存在していた曲に後からBSTが追加されることは基本的にはない。
- したがって、BST導入前の曲が他機種に移植されたとしても、アーティスト名はそのままである(リミックスは別曲扱いのため、BSTの対象になる)。
- なお、前述したGERBERAは、最初の曲紹介では本来のアーティスト名だったものが後からBSTが追加された、いわば唯一の例外である。
- 個人のアーティストを示す名義であること
- BSTの対象になるのはアーティスト個人の名義に対してであり、複数のメンバーで構成されたユニット名にBSTは付かない。
- たとえば「Trick Trap」「#FFFFFF」「Zutt」といったユニットは、いずれも構成メンバーの一部または全部にKONAMIスタッフが関与している[1]ものの、BSTは付いていない。中には「Wakhmaninov Akhutaninov[2]」みたいな露骨すぎるユニット名もあったりするが、それでもBSTは付いていない。
- ただし、「L.E.D.ALiCE (DJ NAGAI Vs. L.E.D.-G)」「猫叉劇団」といった風に、ユニット名の他に構成メンバーも同時に表記されている場合はBSTの対象となる。
BEMANI Sound Teamの誕生
BST名義が初めて登場したのは2017年10月下旬。各ゲーム会社のAC音ゲーが一堂に会するイベント「第4回天下一音ゲ祭」が開催された時のことである。
KONAMIからはSDVXの新曲として「GERBERA」が発表されたが、当初の楽曲名およびアーティスト名は
と今までと同じように表示されていた。
ところが後にアーティスト名の部分だけがHPから削除され、
と、それまで見たこともないアーティスト名に変わっていたのである。
上記のアーティスト名からわかるように、最初の頃のBSTは本来のアーティスト名が付記されておらず、「BEMANI Sound Team」とだけ表記されていた(天下一音ゲ祭の曲紹介HPに当時の痕跡が残っている)。
つまり、KONAMIスタッフであるという情報以外に、誰が作曲したかをアーティスト名だけで判断することが一切できなくなってしまった。
そして2017年11月2日、そのGERBERAが上記のアーティスト名のままでSDVXに出現。ゲーム内において初めてのBSTデビューを飾る。
さらに日を同じくしてポップンに新曲が追加されたが、新曲のアーティスト名のうちKONAMIスタッフに該当する部分だけが全て「BEMANI Sound Team」表記に統一されていた。
つまり、BSTは決して一時的な名義ではなく、今後あらゆる新曲のアーティスト名において、KONAMIスタッフが関わる部分が全て「BEMANI Sound Team」に統一されることがはっきりと示唆されてしまったのである。
この事実はSNSを中心として多くの音ゲーファンに知れ渡ることとなり、この処遇に不満を爆発させるファンが続出した。
というのもこの時期、BEMANIアーティストに関する不穏な事件がBEMANI界隈において立て続けに起こっていたためである。
- 2017年7月以降、BEMANI Fan SiteからBEMANIアーティストの紹介文がDOLCE氏を除いて全員削除され、当該ページがほとんどガラ空きなページと化す
- 削除されたメンバーはbeatnation records及びbeatnation RHYZEメンバーで、これに伴い実質的にbeatnation recordsは消滅したと言っていい
- BEMANIシリーズの人気楽曲を紹介する「スキ! MONTHLY RANKING」の楽曲ジャケットから、KONAMIスタッフが関わるアーティスト名が不自然に抹消される
- KONAMIの採用情報ページの社員紹介から、BEMANIアーティストであるAkhuta氏のインタビューだけが削除される
- 第3回天下一音ゲ祭で初登場した楽曲「極圏」が、他社機種と交換移植される際の曲紹介コメントにおいて、BEMANIアーティストであるdj TAKA氏のコメントだけが後から削除される
このように、BSTが登場する少し前あたりから、KONAMIの公式HPや公式Twitterなどでは、BEMANIアーティストに関する表示を徹底して避ける方向にシフトしており、以前は頻繁にあったBEMANIアーティストの露出も、2017年6月の「BEMANI生放送(仮)」定期放送終了以後には一切行われなくなっていた。
そんな矢先に起こったBSTによる「作曲者のブラックボックス化」は、これまで長年にわたって培われたBEMANIアーティストの個性を剥奪するに等しい行為であり、ただでさえ不安を募らせていたファンに更なる追い打ちをかける結果となった。
「クリエイター殺しのKONAMI」と激しく非難する者、BEMANIアーティストやシリーズの今後を心配する者、BEMANIシリーズの撤退やBEMANIアーティストの一斉退社を噂しだす者など、様々な形でSNSを中心に書き込みが殺到し、挙句の果てに過去の曲のアーティスト名や歌詞を全てBSTに置き換えた「BST大喜利」まで始まる始末。Wow Wow BEMANI Sound Team 僕たちもっと BEMANI Sound Team
その日のうちに「BEMANI Sound Team」はTwitterのトレンド入りを果たし、音ゲー界全体が大炎上する事態となった。
この事態に対してKONAMI側も状況を重く見たのか、BSTは再び方針転換が行われることになる。その皮切りとなったのがSDVXの新曲「TWO-TORIAL」である。
2017年11月11日に開催されたSDVXのイベント「EDP×SOUND VOLTEX FLOOR ANTHEM 2017 私立ボルテ学園 アルティメットガクエンサイ!」にてエキシビジョンマッチ決勝戦が新曲で行われることになり、その際の新曲の楽曲名およびアーティスト名が
であることが発表された。
「BSTの名義もしっかり残しつつ、本来のアーティスト名も一緒に表示する」というスタイルが、この曲をもって初めて確立されたのである。
「アーティスト名も表示するのならBSTを残す意味があるのか?」と根本的な疑問を呈す者もいたものの、それ以上にアーティスト名が復活したことに喜びと安堵を示すファンが多く、この方針転換は歓迎をもって迎えられている。
その後もしばらくは「BST名義だけのBST新曲」と「本来のアーティスト名も付記されたBST新曲」が混在し、表記の仕方も曲によって若干の揺れがあったものの、2017年末には表記ルールが現在のスタイルに統一。元々BST名義のみだった楽曲にもゲームのアップデートにより本来のアーティスト名が追加され、「アーティスト名がわからない」という問題はようやく終息した。
BEMANI Sound Teamの浸透
BSTの表記方法が統一されてからも新曲は続々登場し、BSTは徐々にBEMANIシリーズの中に浸透していった。
BSTの表記方法がまだ統一しきっていなかった頃、ゲーム内のムービーや楽曲ジャケットにKONAMIスタッフのアーティスト名を表示することが避けられていたが、2018年1月18日に追加されたSDVXの新曲「VOLTEXES IV」で、作曲者であるSota Fujimori氏の名前が初めてBST名義付きで楽曲ジャケットに表示された。
これ以降、KONAMIスタッフが関与する楽曲においても、BSTを表記した上で以前のようにアーティスト名を表示するムービーや楽曲ジャケットが増えてきている。
BSTというチーム名がBSTメンバーの口から直接告げられたのは、2018年2月10日~11日に催された「JAEPO2018」の〆にKONAMIブースで行われた、BEMANIスペシャルライブが最初である。
前述の事情によってライブの開催自体が危ぶまれていたが、その後正式発表があり、この年も「BEMANI Sound Teamによるスペシャルライブ」として無事に開催された。当初の正式発表の開催日がJAEPOから一か月ズレた日付という、安定のコンマイクオリティをやらかしたが
記事冒頭で紹介した台詞の通り、ここで初めてKONAMIスタッフが自らを「BEMANI Sound Team」と名乗るようになり、ライブの最後には「BEMANIアーティスト」を「BEMANI Sound Team」に言い換えた上で、毎年恒例のお決まりネタも披露された[3]。
騒動が発生してからしばらくの間、ファンがBEMANIアーティストを直接見られる機会がなかったため、BEMANIアーティストが元気に活動する姿を改めて見ることができたことに安心したファンも少なくない。
それでも、BEMANIアーティストの活動手段はBST始動前に比べると大きく変化している。
たとえば、前述のスペシャルライブにおいて、紹介文には「BEMANI Sound Teamによるライブ」としか書かれておらず、今までと違いBSTメンバーから誰が登場するかまではわからなくなってしまった。
2018年3月31日に催されたEXIT TUNES主催のライブ「EDP presents ULTRA SUPER Fes'18」においても、BSTメンバーが登場するタイムテーブルには「BEMANI Sound Team」としか書かれておらず、実際に始まるまで誰が出場するかわからない事態が発生した。
どうやらライブ参加はあくまでBSTメンバーの一員としての参加であり、本来のアーティスト名は基本名乗れないというルールがあるようだ。いざライブの出番になるとVENUSとか普通に名乗りまくってたけど
2019年1月26日~27日に催された「JAEPO2019」においてもBEMANIスペシャルライブは開催され、BSTメンバーも前年に引き続きライブに参加した。
しかしYouTube Liveの生配信においては、BSTメンバーが出演する際の映像に、これまでにはなかったぼかし演出が加えられるようになり、演奏中も実機ゲームの譜面動画などを挟んでアーティストをあまり映そうとしない姿勢が、ファンの間でも物議を醸した。とはいえ他のアーティストも集合した際にはぼかしが無くなるため意味が無いようにも見えるが・・・。
ちなみに2日目にTAG氏が出演した際、「BEMANI SOUND TEAM "謎の勢力"」と書かれた謎のTシャツを着用していた。
毎年恒例の「いっけね」のお決まりネタは、1日目には行われなかったものの、2日目に猫叉Master氏が披露している。
BSTが誕生してからしばらくした後で、BSTの派生として「BEMANI Designers」というチーム名も登場している。
こちらは文字通りKONAMI所属のBEMANIデザイナーの総称であり、「beatmaniaIIDX 25 CANNON BALLERS」の公式サイトの曲紹介コーナーで初めて使用された名義である・・・が2015年の連動イベント「BEMANI SUMMER DIARY 2015」の夏色DIARY -Summer Dazzlin' Vacation miX-のジャケット表記から既にこのチーム名が使われていた。
BSTほど大きな問題にならなかったためか、こちらはBSTと違って後から本来のデザイナー名が付記されることはなかったため、「beatmaniaIIDX 25 CANNON BALLERS」においてKONAMIスタッフが制作したムービーやクリップにおいては、その正確な制作者をサウンドトラックのブックレットでしか確認することしかできない。
ライブ時のBSTの扱いもしかり、ゲーム内でBSTの本来のアーティスト名を表示するようになったのは、あくまで特例措置という考えなのだろう。次はエフェクターじゃないだろうな
しかしやはりこちらにもファンからの要望が多く寄せられていたのか、次回作「beatmaniaIIDX 26 Rootage」以降は、アーティスト同様に本来のデザイナー名も再び付記されるよう変更されている。
最後に
BST誕生の経緯でも触れたように、BST導入当初はファンのBSTに対する印象が極めて悪かった。この影響により、今でもBSTに嫌悪感を示すファンは少なくない。
しかし、後に本来のアーティスト名も一緒に表示されるようになったことや、時の経過と共にBSTの定着が進んできたこともあり、BSTに対する批判は以前に比べるとだいぶ落ち着いてきている。
BSTは今でも公式から筋道だった説明がほとんどされておらず、誕生の経緯から今後の展望に至るまで謎に包まれている点が多い。
かつてKONAMIには「コナミ矩形波倶楽部」というサウンドチームがあった。後にBEMANIアーティストとなるサウンドコンポーザーも多く輩出した、今もなお伝説として語られるサウンドチームである。
他にもゲーム会社生まれの名高いサウンドチームは沢山ある。たとえばタイトーには有名なサウンドチーム「ZUNTATA」があり、80~90年代に一世を風靡したセガ出身のゲーム音楽バンド「S.S.T.BAND」に至っては、正式名称が「Sega Sound Team BAND」と、名前もBSTによく似ている。
BSTがこういったサウンドチームと決定的に異なるのは、現状のBSTにはサウンドチームとしてのイメージ以上に、どちらかと言えば事務的・政治的な事情が大きく絡んでいるという点であろう。
これらのサウンドチームと同じようにBSTが迎え入れられる日は、果たして来るだろうか――。
BEMANIが20周年を迎えた2017年――そんな記念すべき年に生まれたBSTは波乱の幕開けによって始まり、BEMANIの歴史の中でも大きな事件の一つとなってしまったことは間違いない。
しかしBST誕生後もBSTメンバーによる新曲は続々と生まれており、BEMANIシリーズ自体も新作や新機種が次々に登場している。
この20年間でBEMANIアーティストやBEMANIシリーズそのものの立ち位置は幾度となく変化していったが、それでもBEMANIシリーズにとってアーティストの存在が音楽と同じくらいに欠かせないものであるという事実は、おそらく今後も変わることはない。
奇しくも20周年という節目の年に幕を開けた新生チーム・BSTによって、今後BEMANIの未来はどう変わっていくだろうか? BEMANIシリーズのファンとしては、これからも続いていくBSTメンバーを応援しつつ、今後BSTがどうあるべきか、どう発展していくべきかについても、動向を見守りつつ考えていきたいものである。
関連動画
これもBST名義だが、隠し要素で正体が……?
いっけね! 俺もBEMANI Sound Teamだった!
関連項目
- KONAMI
- BEMANI
- 音ゲー
- ゲーム音楽
- ゲーム音楽の作曲家一覧
- BEMANIシリーズのコンポーザー一覧
- BEMANIシリーズの用語一覧
- コナミ矩形波倶楽部
- beatnation records
- BATTLE NO.1 - 「TANO*C Sound Team」名義でSOUND VOLTEXの「The 8th KAC楽曲コンテスト」に応募・落選した楽曲。名義がBSTを意識しており、度々ネタにされている。
- Determination(Deemo) - Deemoに収録されている楽曲。名義が「Rayark Sound Team "Ice"」であり、こちらもBSTを意識したものと思われる(なお、作曲者のIce氏は台湾出身のBEMANIプレイヤーでもあり、KAC2012ではアジア代表としての出場経歴がある)。
- BEMANI芸人
脚注
- *構成メンバーはそれぞれ「肥塚良彦×泉陸奥彦」「Ryu☆×DJ YOSHITAKA」「PON×wac」。このうち、Ryu☆氏以外は全員KONAMIスタッフである。
- *おそらく、というかほぼ確実に「wac×Akhuta」のユニットだろう。
- *ライブ1日目にはDJ YOSHITAKA氏、ライブ2日目には猫叉Master氏が、それぞれ同じネタを披露している。
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