M113とは、アメリカ合衆国が開発・運用している装甲兵員輸送車(APC)である。
概要
アメリカ陸軍では第2次世界大戦中にAPCとしてM45、大戦後はM59、M75といった車両を開発して配備していた。しかし、
と、アメリカを満足させることはできなかった。M59についてはある程度は満足したらしく6000両以上製造されたが、このM59の後継、そしてアメリカ製APCの集大成として開発されたのがM113である。
1959年に制式化された後、3度の改修を経て2010年代に入っても現役で運用される一方、複数の派生型が西側諸国に輸出+ライセンス生産された他、東側諸国でも鹵獲や冷戦終結後の中古品輸出という形で運用されている。
アメリカ軍はM113の後継として、ブラッドレーと共通のパワートレインを採用したAMPV(Armored Multi-Purpose Vehicle=多用途装甲車両)を採用しており、部隊への配備も始まっている。[1]
構造
外観は前方を傾斜させた以外はほぼ長方形上であり、車内レイアウトはガソリンエンジン→操縦室(操縦士+車長)→兵員室(11人乗り)となり固定武装は車長用キューポラに装着されたM2重機関銃1挺[2]のみと簡素である。
また、車体はアルミ合金が使用され10t台と軽量化に貢献する一方、被弾時の火災に弱いというデメリットもついて回ることになった。
ちなみに正面についている蓋状のものは水上航行時の波切板だが傾けた状態で追加装甲代わりの荷物置き場にされることが多く、後述の増加装甲装備型では水上航行は不可になった。
しかしシンプルな車体構造と兵員室は改良のし易さと試作を含む各種プラットフォームにうってつけというメリットを生み出すことに繋がった。
派生型
装甲兵員輸送車型(歩兵戦闘車型含)
アメリカ
- M113A1、A2、A3
本車の改良は制式採用から間もなく始まった。まず1963年には引火しやすいガソリンエンジンからディーゼルエンジンに換装したA1が制式化され、1979年にエンジンの冷却機構とサスペンション機構を改良したA2、そして1987年には増加装甲(オプション)、エンジンへのターボ追加、装甲を兼務する外部燃料タンクを追加したA3が制式化され、今日に至る。
- AIFV(YPR765)
1960年代に歩兵戦闘車として試作されたが諸事情により米軍には制式採用されず、輸出用として成功を収めた型。
基本としては25㎜機関砲を備えた一人用砲塔を上部に装備し後ろから見る台形状の兵員室の両サイドに2箇所、乗降用ドアの1箇所の銃眼を設置、更に装甲はアルミ合金+ポリウレタンフォームの複合装甲を採用している。
なお、韓国のk200と台湾のCM21は本型をベースに開発された。
諸外国
- TLAV
カナダでの改良型。増加装甲に加え、車体が50㎝延長された。 - M113 Nagman
イスラエル仕様。戦訓を経るたびに増加装甲とラックが増やされている。 - M113A1G
ドイツでのA1改良型。エンジンや履帯がドイツ製に換装されている。 - M113A2 Mk I DK
デンマークが独自に改造・運用した歩兵戦闘車型。AIFVとは別型の25㎜機関砲塔を装備。
自走砲(ミサイル発射機含)
アメリカ
- M125、M106、M1064
自走迫撃砲型。左から81mm、107mm、120mmを搭載。車体からおろしての射撃も可。 - M132
自走式火炎放射器。旋回砲塔に積載しているため360°火炎放射が可能。 - M901
専用のTOW対戦車ミサイル連装発射機を搭載した戦車駆逐車。装甲車といっても打たれ弱い車体を防護するため車体上に装備された発射機は44㎝上昇させることが可能。 - M474、M667
自走式戦術弾道ミサイル発射機。M474がMGM‐31パーシング、M667がMGM‐52ランス用。 - M163
航空自衛隊が採用しているVADS(牽引式バルカン砲)を車載した自走対空砲。イスラエル仕様ではスティンガーミサイルも装備。 - Ⅿ727、M730
M548をベースにした自走対空ミサイル発射機。Ⅿ727が中距離SAM『ホーク』用で3連装、Ⅿ730がサイドワインダーをベースにした近距離SAM『チャパラル』を搭載した4連装。
諸外国
- M113FSV、MRV
オーストラリアで使用されている軽戦車もしくは突撃砲型。共にイギリス製の装甲車から移植した76mm砲塔を装備。 - LLAD
M113 ADATSとも呼ばれる。カナダのみが制式採用した対空+対戦車ミサイル8連装自走発射機。ADATSの個別記事を参照。 - Ⅿ113TUA
カナダ版M901といえる戦車駆逐車。Ⅿ901とは別型のTOW連装発射機を装備。 - M113Tamuz
イスラエル製対戦車ミサイル『スパイク』6連装発射機を装備したNagamの派生型。個別記事も参照。 - SIDAM 25
イタリア軍が採用した4連装式の25mm機関砲を備えた自走対空砲。 - M113A2 Ultra Mechanised Igla
シンガポールで開発された地対空ミサイル自走発射機。搭載しているのは6連装のロシア製近距離対空ミサイル『イグラ』。捜索レーダー搭載型も存在。 - 現地改造型
レバノンとリビアで見られる型。前者はロシア製23mm連装機関砲ないし14.5mm4連装機関銃を防盾付で搭載した簡易自走対空砲、後者はロシア製122mmカノン砲を搭載した簡易自走砲となる。
その他
- M577
兵員室をかさ上げした戦闘指揮車。 - M548
足回りを流用した装軌式輸送トラック。 - M579、M806
装甲回収車仕様。前者はクレーン、後者はウインチを追加装備している。 - Kasman Meshupar、Kasman Maoz
イスラエルで使用されているマグマホンの廉価版というべき自走トーチカ。 - アリゲーター
イタリアで運用されているM113の正面にAAV7風のブロックをつけウォータージェットも装備した型。
関連作品
動画
静画
関連商品
関連コミュニティ
関連項目
脚注
- *傑作装甲車M113の代わりとなるか? 米陸軍「AMPV」新戦闘車両の本格生産を開始へ 2023.9.9
- *時期と国によってはシールドを追加したりRWS化する、40mmグレネードランチャーに換えることもある
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