MIDI音源とは、MIDIと呼ばれる情報に従って演奏をする機器の総称。一般的にはDTM用途の音源モジュールを指すことが多い。
概要
まず「MIDI」とは、電子楽器を相互に接続する統一規格の名前である。詳細は『MIDI』の記事を参照。
そしてこの「MIDI」という取り決めに従った信号(どの音階で、どの長さで、どれぐらいの強さでといった情報)を受信して、実際に発音するのがMIDI音源である。電子楽器から鍵盤を取り除いて残る部分と考えて差し支えないだろう。
当初は専用DSPを用いたハードウェア製品(音源モジュール)であったが、近年は同等のプロセスを汎用CPUで実現する「ソフトウェアシンセサイザー」(ソフトシンセ)が主流となっている。ソフトシンセも広義のMIDI音源とみなせるだろう。
今日までに多くの種類のMIDI音源がリリースされているが、大別すると以下の通りとなる。なお、この分類は便宜的なものであることに注意。
- ウェーブテーブル音源(サンプリング音源、PCM音源)
- 実際の楽器の音を収録した波形(ウェーブフォーム)をメモリーバンク等に格納し、それを元に演奏する音源。波形を選択する、音程を付ける、複数の波形を重ね合わせるといった過程を経て発音する。最も一般的なMIDI音源。この波形を自由に入れ替えられるものを特に「サンプラー」と呼ぶ。VOCALOIDも収録された音素波形を合成し、音程を付けて発音するという原理からすれば、広義のウェーブテーブル音源に含めることができるだろう。
- ハードウェア音源は波形データをROMやSRAM等に格納しているが、ソフトウェア音源の場合はPCのハードディスクを活かしてリッチな波形データを利用できる。一般的なハードウェア音源が数MB~100MB強程度の波形ライブラリしか保持していないのに対し、ソフトウェア音源は数GBの波形ライブラリを持つ製品も珍しくない。ただしソフトシンセは事前にメモリへのロードが必要であったり、CPUのパワーを必要とし、少なからず遅延が発生する点でハード音源に劣る。
- 物理モデル音源
- 発音体の振動や空気の共鳴などを数値計算によって求め、楽器の音を擬似的に再現する音源。以前はDSPの処理能力の問題から、管・弦楽器などは再現性が高いがピアノやドラムなどの音の再現性が低い、などと言われてきた。最近ではソフトウェア音源が主流となり、豊富なCPUパワーを活かして様々な楽器をモデリングできる音源も出てきている。
- また、実在する電子楽器の回路をシミュレートすることも可能。後述のアナログシンセやPSG音源のサウンドも、物理モデリング音源としては比較的簡単に再現でき、これを試みたソフトウェアも多数存在する。「ピコカキコ」もPSGをソフトウェア上で再現したものである。
古い音源
- アナログシンセサイザー
- 厳密にはコンピューターで扱う音源ではなく、当然MIDI音源の範疇には含まれない(そもそもコンピューターの存在しない時代に考案された、電子楽器の始祖)。アナログシンセサイザー自体は、発振器、フィルタ、増幅器を組み合わせ、これを楽器として用いるものである。「テルミン」は最も原始的なアナログシンセと言えるだろう。
- 現在は純粋なアナログシンセサイザーと呼べる製品はほとんど製造されておらず、近年手軽に入手可能なアナログシンセはDSPやソフトウェアによりアナログ回路をシミュレートした物理モデル音源の1ジャンルである。
- PSG音源(Programmable Sound Generator)
- アナログシンセサイザーの発音原理にデジタル制御を取り入れたもの。発振器も単なるアナログ共振回路ではなく、PLLを利用した精度の高いものを使用することがほとんど。単純な波形(正弦波、矩形波、三角波、ノコギリ波など)を生成し、これを重ね合わせ、フィルタを通して音を作り出す。FM音源もこれの範疇である。波形セレクタや混合比、フィルタのパラメータを変更するだけで音色の変更ができ、ウェーブテーブル音源のような大容量の波形メモリは基本的に持たない。
- 回路規模が比較的小さいので、PCM音源が一般化する前は多くのコンピュータやゲーム機(ファミコンやゲームボーイの音源がこれにあたる)などで使用されていた。現在は携帯電話の着メロ用音源(多くはPCM音源とのハイブリッド構成)に使われている。「ピコカキコ」、「Chiptune」も参照のこと。
互換性と歴史
1990年代初頭まで、多くのMIDI対応楽器はあくまで「MIDIデータの送受信が可能」といったレベルであり、送受信したデータが正しく再生されるかどうかは機器次第という状況であった。電子音楽が一部のマニアの趣味であった時代は、いわば「MIDI音源の扱いにくさはユーザーの努力で何とかしてね」というスタンスが当たり前のものとされていた。
Roland社はMIDIデータに再生互換性をもたらす目的でGSフォーマットを独自に作成した。これはPC#(プログラムチェンジナンバー、音色番号)と対応する楽器の種類を定めたり、CC#(コントロールチェンジナンバー)によって制御される要素を決定したり、打楽器パートにおけるノートナンバーと実際に発音される音を定義するというものであった。このフォーマットに対応する音源をGS音源と呼ぶ。
GSフォーマットの範囲内でデータを作成すれば、GS音源では破綻無く再生できるようになるという仕組みは画期的で、これ以前のRolandのシェアの多さも相まって爆発的な人気を博した。このGSフォーマットを抜粋、一部拡張する形で、日本MIDI評議会(現在の音楽電子事業協会)とMIDI Manufacturers Association (MMA) によってGM (General MIDI)フォーマットが制定された。後にリリースされたGS音源も、GS/GM両対応のものが主流である。
一方YAMAHA社はGMフォーマットを独自に拡張したXGフォーマットを策定し、同社製の音源モジュールやデータプレイヤーなどをこれに対応させた。豊富なエフェクトやパラメータの設定方法を定義して表現力の向上を図ったほか、上位機種向けに作られたデータを下位機種で再生しても、その音源の能力内で限定的ながら演奏可能という点が売り文句であった。かつてYAMAHAはMIDIデータの販売、配信サービスを手がけており、都合の良いシステムであった。
1990年代後半はRolandのSCシリーズに代表されるGS音源、YAMAHAのMUシリーズに代表されるXG音源がシェアを二分する形となり、多くのDTM愛好家はGSもしくはXG形式でMIDIデータを作成し、インターネット上で公開していた(多くの場合「MU100以上の音源で聴いてください」などの、特定機種を推奨する注意書きが見られた)。MIDI音源は音楽製作用という枠にとらわれず、リスニング用としての需要があった時代である。
MIDI音源が進歩するにつれ、互換性を重視しすぎたGMフォーマットは表現力に難が生じ、のちにGM2(General MIDI Format Level.2)が策定された。しかしながらGM2もあくまで互換性を重視するもので、GS・XGフォーマットの表現力に追い付くものではなかった。加えて、策定当時は時代の変化(後述)の真っ只中で、GM2フォーマットは本格普及するには至らなかった。
パソコンのCPUパワーが向上し、ソフトウェア音源(Roland VSCシリーズ、YAMAHA S-YXGシリーズなど)が選択肢として挙がるようになると、多くの聴き専ユーザーの需要はそれで満たされるようになった。加えてブロードバンドが普及し、MP3などの「音そのもの」のデータがやり取りされるようになると、MIDIデータの交換は一般的ではなくなった。「自分の意図した通りに伝えたい/歌や生の楽器も取り入れたい」という製作者の思いと、「追加投資なしで手軽に聴きたい」という視聴者の思いを考えれば、自然な流れであるだろう。
DAWがDTMユーザーに浸透し、MIDI音源一台でDTMが完結することが無くなり、またリスニング用としての需要が無くなった現在においては、MIDI音源は表現力の足枷となる互換性をほとんど重視せず、出音のクオリティを極める方向で進化し続けている。
ちなみに近年のOSが標準で備えているソフトウェアMIDI音源(MSGS、QuickTime Musicなど)は非常に限定的な表現力しか有していない。MIDIデータ自体が流通することがほぼ無くなった現在では問題となることは少ないが、この事情に疎いユーザーにしばしば「MIDIは音がしょぼい」という誤解を与える原因となっている。
代表的なMIDI音源のシリーズ
- Roland SCシリーズ(主にGS・GM対応)
- Roland XVシリーズ(主にGM2(GSも密かに)対応)
- EDIROL StudioCanvasシリーズ(GM・GM2・GS・XGlite対応)
- Roland Fantom・X・Gシリーズ(GM2(Xのラック版はGS対応))
- YAMAHA MUシリーズ(主にXG・GM対応)
- YAMAHA MOTIF・ES・XSシリーズ(主にGM対応)(互換性重視じゃないためほぼ規格無視)
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関連項目
http://dic.nicomoba.jp/k/a/midi%E9%9F%B3%E6%BA%90


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読み:ミディオンゲン
初版作成日: 08/11/23 01:16 ◆ 最終更新日: 11/02/20 21:08
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