俺はメタルの現状にうんざりしていたんだ。数年間ツアーをしてきて、ベーシストとしてもソングライターとしても妥協している気がした。ダウン・チューニングとかはもうたくさんだったんで、IRON MAIDEN、RUSH、SCORPIONS、JUDAS PRIEST、UFOといったような俺が子供の頃に好きで聴いていたものに戻りたかった。そこで、自分が入りたいと思うようなバンドを組むことにしたんだ。妥協せずに自分が本当にやりたい曲を作ろうと思った。10人しかライヴに来てくれなくたって構いやしないと思って、部屋にこもって好きなように曲を作り始めた。俺は、旧き良きヘヴィ・メタル/ハード・ロックを取り戻したかったんだ。今時のヘヴィ・メタルの曲はいただけないし、リフにもっと重点を置いて、低音で無闇にヘヴィネスを出すことはすまいと思ったね。俺を含めて、昔のバンドにノスタルジアを感じる人間が多いのは、さっき挙げたバンドが素晴らしいソングライターだったからだ。だから、良い曲をヘヴィ・メタルでやれば、それこそが音楽の頂点になると俺は思っている。俺はそういうバンドを目指したんだ。
New Wave Of Traditional Heavy Metal(NWOTHM)とは、2000年代末頃からヘヴィメタル界で巻き起こったムーブメントである。具体的には、2000年代末頃から相次いでデビュー、あるいは新譜をリリースしたNWOBHMに影響を受けた正統派バンドの一群を指す。
ムーブメントの背景
2000年代、ロックシーンにおいてヘヴィメタルは巨大な存在ではあったが、80年代以前のトラディショナルなサウンドを愛するメタラーにとっては苦しい状況が続いていた。80~90年代のヘヴィメタル最盛期の末期に登場したPanteraの影響からか、90年代以降のメタルシーンではギターのチューニングを下げ、低音重視のミックスを施すバンドが主流となっていった。その傾向は2000年代になってさらに進行してゆき、主に若年層から支持されるデスコアなどのエクストリームメタルではドロップG、ドロップF#など、およそ信じがたいような極端なダウンチューニングを施すバンドも現れるようになった。エクストリームメタルシーンには「下げた者勝ち」という風潮が少なからず存在するのが事実であろう。
そうした状況が続いた2000年代後半、奇しくも60~70年代型のクラシック・ロックに回帰した音楽性を持ったThe Darkness、The Answer、Airbourneなどが海外のロックマガジンで絶賛されるのと時を同じくして、メタルシーンの現状にうんざりしていたであろうミュージシャン達が相次いでNWOBHMのバンドから強い影響をうけた音楽性を持つバンドを結成し始めた。2000年代末期~2010年代初期にかけてリリースされたこれらのバンドのアルバムはどれもヘヴィメタルとしての普遍的な魅力に満ち溢れたものであり、同じくメタルシーンの現状に不満を持っていたメタラーたちを熱狂させた。これら一群のバンドが一斉に出現したムーブメントは彼らの音楽性がNWOBHMから影響を受けたものであったため、New Wave Of British Heavy MetalをもじってNew Wave Of Traditional Heavy Metal(NWOTHM)と呼ばれた。こうしたバンドが今後さらなる注目を集め、ヘヴィメタルシーンを塗り替えていくことを期待しよう。
また、これらのバンドはNWOBHMから影響を受けた音楽性を持っているにもかかわらず、意外にもイギリスよりもアメリカやスウェーデンなどの国から現れることが多いようである。
NWOTHMのバンドたち
NWOTHM以前から活動していたが、NWOTHM勃発前後にアルバムをリリースしたバンドも記載する。
- White Wizzard(アメリカ)
- Megatron(アメリカ)
- Steelwing(スウェーデン)
- Mean Streak(スウェーデン)
- Enforcer(スウェーデン)
- In Solitude(スウェーデン)
- Wolf(スウェーデン)
- Portrait(スウェーデン)
- Crystal Viper(ポーランド)
- Armour(フィンランド)
- Cauldron(カナダ)
- Steel Horse(スペイン)
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