Sd.Kfz.222とは、第二次世界大戦中にドイツ軍で運用された軽装甲偵察車である。
ドイツ語では「Panzerspähwagen(パンツァーシュピーワーゲン、略記PSW)」と表記される。
当記事では前身となったSd.Kfz.221、派生型のSd.Kfz.223についてもバリエーションの一種として取り扱う。
概要
1932年、ドイツ軍は再軍備の一環として開発していた装輪装甲車Kfz.13を完成させ、順次偵察部隊への配備を行っていた。しかしこの車両は民間乗用車をベースに装甲を施しただけものであり、兵器としての耐久力や不整地における踏破性に難があった。
そこでドイツ陸軍兵器局は、より本格的な装輪装甲車の開発に着手した。開発は1934年よりホルヒ社で行われ、再軍備宣言が行われた翌年の1935年に完成、Sd.Kfz.221の名で制式採用され生産が開始された。この車両の武装強化型がSd.Kfz.222であり、こちらは1936年より生産が開始された。
実戦
本車はSd.Kfz.221やSd.Kfz.223と組み合わされて偵察任務に活躍した。特に本車は先述の2型式にはない強力な火砲を搭載し、ある程度の戦闘もこなせたため威力偵察にも活躍した。
1943年には後継車両のSd.Kfz.250/9も登場したが、生産が終了した後も引き続き前線に身を置いて部隊の目となり耳となって、終戦までの長い間を活躍した。
バリエーション
- Sd.Kfz.221(軽装甲偵察車)
- 最初の生産型。斜面の多い多面体によって構成された車体を持ち、それまで使用されていた自動車改造のKfz.13とは大きく異なる洗練されたものであった。
- 7角形の小さな手動式砲塔を備え、ここに機銃を装備していた。天板は手榴弾避けとして金網式となっており、またここを開くことで対空射撃も可能であった。
- 4輪駆動による高い踏破性を備え、さらに操向も2輪と4輪を切り替えることができた。ただし4輪操向のまま高速走行を行うと、重心の高さも相まって横転しやすいという欠点も生じたため生産後期では廃止されてしまった。
- 武装は7.92mm MG34機銃1挺のみ。
- 1935年初頭から1940年5月までに339両が生産された。
- Sd.Kfz.222(軽装甲偵察車・武装強化型)
- Sd.Kfz.221の武装を強化したタイプ。
- 新たに搭載された砲塔は10角形のより大きなものとなり、機関砲と機銃を同軸装備しII号戦車と同じ火力を持った。天板の金網も平面的なものから立体的な形状となって、前面と側面も持つようになった。これも開くことで対空射撃が可能である。この砲塔はSd.Kfz.250/9にも引き継がれた。
- 車体もやや大型化されており、車体前面の視察口が1つから2つに増えた。
- 1936年初頭から生産が開始された初期型と、1942年5月から生産が開始された後期型で若干仕様が異なる。
- 1936年初頭から1943年6月にかけて双方合わせて989両が生産された。
- Sd.Kfz.223(軽装甲偵察車・無線指揮車型)
- Sd.Kfz.222の武装を減らし、大型の無線機を搭載したタイプ。
- Sd.Kfz.221およびSd.Kfz.222は車体容積の関係で短距離用の無線しか積めなかったため、司令部へ直接連絡を行える長距離用の無線を搭載するために開発された。
- 折り畳み式のフレームアンテナを搭載し、車内にはより強力な無線機を搭載した。しかし折角の折り畳み機構は一刻を争う戦場ではあまり活用されず、かえって強度低下を招くという皮肉な結果となってしまった。
- 大型無線機を搭載した関係で、搭載する砲塔はSd.Kfz.221と同様の小型のものとなっている。
- 外見はSd.Kfz.221にアンテナをつけただけのように見えるが、冒頭で述べた通り使用された車台はSd.Kfz.222のものである。いわばSd.Kfz.221とSd.Kfz.222を掛け合わせたものと言える。
- 武装・装甲・最高速度共にSd.Kfz.221と同じである。
- 1935年から1944年1月にかけて550両が生産された。
スペック一覧
Sd.Kfz.222 系列 |
Sd.Kfz.221 (軽装甲偵察車) |
Sd.Kfz.222 (軽装甲偵察車・ 武装強化型)前期 |
Sd.Kfz.222 (軽装甲偵察車・ 武装強化型)後期 |
Sd.Kfz.223 (軽装甲偵察車・ 無線指揮車型) |
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全長 | 4.80m | |||
全幅 | 1.95m | |||
全高 | 1.70m | 2.00m | 1.75m | |
重量 | 4.0t | 4.8t | 4.4t | |
乗員 | 2名(車長兼機関銃手、操縦手) | 3名(車長兼砲手、操縦手、無線手) | 3名(車長兼機関銃手、操縦手、無線手) | |
最高速度 | 整地:80km/h 不整地:40km/h |
|||
航続距離 | 整地:320km 不整地:200km |
整地:300km 不整地:180km |
整地:320km 不整地:200km |
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武装 | 7.92mm MG34機銃×1 | 2cm KwK30戦車砲×1 7.92mm MG34機銃×1 |
2cm KwK38戦車砲×1 7.92mm MG34機銃×1 (一部はMG42) |
7.92mm MG34機銃×1 |
携行弾数 | 1050発 (75発入り弾倉×14) |
KwK30:180発 (10発入り弾倉×18)MG34:1050発 (75発入り弾倉×14) |
KwK38:180発 (10発入り弾倉×18)MG34:1050発 (75発入り弾倉×14) |
1050発 (75発入り弾倉×14) |
装甲圧 | 5~8mm | 5~14.5(最後期は30)mm | 5~8mm |
派生型
- Sd.Kfz.221 mit 2.8cm sPzB41(軽装甲偵察車・重対戦車銃装備型)
- Sd.Kfz.221の砲塔を改造し重対戦車銃を搭載したタイプ。
- 対戦車能力を持たない本車の火力を上げるために製作された。本銃の搭載にあたって砲塔は前方部が切り欠かれている。構造上旋回が困難であったためか、固定して装備されたものと思われる。
- 武装は2.8cm重対戦車銃41型(2.8cm sPzB41)1挺(携行弾数不明)のみである。
- 生産時期・生産数共に不明であるが、大戦中期から実戦に投入され終戦まで使用され続けた。
- Sd.Kfz.260/Sd.Kfz.261(軽装甲偵察車・無線通信車型)
- Sd.Kfz.221系列の各車台をベースに作られたタイプ。
- Sd.Kfz.260とSd.Kfz261の違いは搭載する無線の種類であり前者が対航空部隊用、後者が対地上部隊用のものをそれぞれ装備していた。
- 砲塔を撤去し車体上部をオープントップとした。本車でも手榴弾避けの金網式天板が採用されたが、従来の観音開き式ではなくガルウィング式となっている。
- 本車の主任務は通信の中継であるため偵察任務を前提としておらず、このため武装は一切搭載されていない。
- 1940年11月から1943年4月にかけて双方合わせて493両が生産された。
- 後継としてはSd.Kfz.250/3が存在したが、本車は生産終了後も終戦まで使用され続けた。
関連動画
ドイツ軍のデンマーク侵攻を描いたデンマークの戦争映画「エイプリル・ソルジャーズ ナチス・北欧大侵略」のワンシーン。Sd.Kfz.222が0:44に、Sd.Kfz221が3:49から登場する。
最前線で戦闘する姿が描写され、II号戦車と共に対戦車装備が十分でないデンマーク軍を圧倒している。
関連静画(MMDモデル)
模型紹介
- タミヤ ドイツ4輪装甲偵察車Sd.Kfz.222(1/35スケール)
- タミヤから発売されているSd.Kfz.222のキットで、シリーズ番号は51(ITEM35051)。初登場は1975年と古いが、2003年にリニューアルされシリーズ番号270(ITEM35270)として再登場した。
- 模型を取り扱う家電量販店でも入手が可能で、定価は2500円である。
- 部品の多くが足回りに集約されているが組立は難しくないため、高い踏破性を生み出したサスペンション機構の再現が気軽に楽しめる。
- リニューアル化に伴い追加されたアルミ製砲身とエッチング製メッシュパーツは高い精度を誇り、これらが取り付けられる砲塔周りの見ごたえは砲塔内部の再現も相まって抜群である。もちろん可動式であり、天板を開いた状態にキットを組めば実車同様に対空射撃形態にすることも可能である。
- 砲塔から身を乗り出している車長のフィギュア1体、ドイツ仕様のジェリカンとドラム缶も付属する。マーキングは欧州戦線初期とアフリカ戦線から選択可能である。
- このキットは塗装と接着次第ではタイヤの転がりが非常に良くなり転動してしまうこともあるので、展示する際はジオラマか平坦な場所を選択することをオススメする。
- なお、旧キットにおけるメッシュパーツは型紙に合わせてハサミで切り出し、プラスチック製の枠に接着するというものであった。現行のキットの未使用パーツに枠のような部品が付属しているのはその名残である。そちらは古い模型を扱う店舗で1500円程度で入手できる。
- タミヤ ドイツ4輪装甲偵察車Sd.Kfz.222「北アフリカ戦線」(1/35スケール)
- 同じくタミヤから発売されているSd.Kfz.222のキットで、シリーズ番号は286(ITEM35286)。
- 模型を取り扱う家電量販店でも入手が可能で、定価は2800円である。
- 読んで字のごとくアフリカ戦線にテーマを絞ったものである。
- 金型が一新されており全体的な精度と組み立てやすさが増し、従来のアルミ製砲身とエッチング製メッシュパーツとあわせてより魅力のあるキットとなった。
- 付属パーツは少ない部品で簡単に組み立てられるDKW NZ350型オートバイ、ドイツ軍仕様のジェリカンとドラム缶、そしてフィギュアが車長・無線手・オートバイ兵の3体という豊富なものとなっている。
- タミヤ ドイツ無線指揮車フンクワーゲン(1/35スケール)
- タミヤから発売されているSd.Kfz.223のキットで、シリーズ番号は62(ITEM35062)。これも初登場が1976年と古いが、同じく2003年にリニューアルされシリーズ番号268(ITEM35268)として再登場した。
- 模型を取り扱う家電量販店でも入手が可能で、定価は1700円である。
- Sd.Kfz.222とほぼ同様の構成だが、砲塔がよりシンプルな構造となっているので組立はさらに楽かもしれない。もちろんフレームアンテナもしっかりと再現されている。マーキングはSd.Kfz.222と同様である。
- フィギュアはアフリカ仕様の制服を着た車長に加えて、通信手の半身も付属する。さらに説明書には軽装甲偵察車で組成された偵察大隊の編成表も載っている。
- ちなみに「Sd.Kfz.222 北アフリカ戦線」以外のキットの説明にはタイヤホイールに三角おにぎり型の装甲板を取り付けるように指示されているが、Sd.Kfz.221以外の軽装甲偵察車には取り付けられなかったとする説もあるため、あえて取り付けないのも手である。
- リニューアル前から同社製Sd.Kfz.222と並ぶ定番キットで、こちらも旧キットが古い模型を扱う店舗で1200円程度で入手できる。
関連コミュニティ
関連項目
ナチス・ドイツ軍の軍用車両 | |
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装甲車 | Sd.Kfz.222 / Sd.Kfz.231 |
軽戦車 | I号戦車 / II号戦車 / 35(t)戦車 / 38(t)戦車 |
中戦車 | III号戦車 / IV号戦車 / パンター |
重戦車 | ティーガー / ポルシェティーガー |
超重戦車 | マウス / ラーテ |
駆逐戦車 | ヘッツアー / IV号駆逐戦車 / フェルディナント / ヤークトティーガー |
突撃砲 | III号突撃砲 / ブルムベア |
自走砲 | カール自走臼砲 |
半装軌車 | ケッテンクラート / Sd.Kfz.251 |
装輪車両 | キューベルワーゲン / シュビムワーゲン |
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- 0pt
- ページ番号: 5264319
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