ぎょえーーっっ!!
とは、ドラゴンクエストシリーズにおける断末魔の叫びの一つである。
ぎょえーーっっ!!
この言葉が最初に出てきたのはスーパーファミコン版の「ドラゴンクエストⅡ」である。
FC版「ドラクエⅡ」の北米仕様である「Dragon warrior2」には、日本仕様では描かれていなかったムーンブルク城崩壊の下りが追加された。このストーリーが日本においてSFCでリメイクされる際に追加となり、また一部演出が変更となった。魔法を得意とするムーンブルク王女の特徴を意識してか王は呪文で応戦し、モンスターを倒すも牢屋に捕らえられていた悪魔神官と思しき邪神官がテレポーテーションし、王の背後からベギラマと思われる魔法を放つ。
ぎょえーーっっ!!by ムーンブルク王
という断末魔の叫びを残し、ムーンブルク王は娘の目の前で燃えていくのだった――。
ここまでを見ていくと程度の差はあれど、その演出はパパスの最期と被るものがある。何より父と子の死別という極めて重いテーマは一致している。
口にしてみるとお分かりになると思われるが、あまりに間抜けすぎる……というより、一国の王ともあろう者の生涯最後の言葉がこれというのは情けないと言うしかない。あたかもドリフの侍コントで斬られる志村けん、もしくは加藤茶が言うような断末魔の叫びである。
SFC版とGBC版に限り、このシーンには「パストラール~カタストロフ」というSFC版になって追加になった楽曲(NES版では「戦い」)が使われ、さらにメッセージが自動で送られるためイベントと曲が同期する。平和から一転して迫りくる危機、徐々に破滅に向かう様を見事に演出している。そして王の断末魔の叫びの直後には「レクイエム」が流れ、城を包む業火と絶望感が襲う中でのこの台詞なのでネタ的にも余計に際立つと思われていたが、パパスのように主人公の父親という物語の軸として強い存在感を持っておらず、言ってしまえば一介のモブキャラに過ぎないムーンブルク王の断末魔の叫びは「ぬわーーっっ!!」ほど有名にはならなかった。
しかし、それなりにインパクトのある断末魔なので、息子に50ゴールドと銅の剣しか与えないケチなローレシア王、地味なサマルトリア王、ぎょえーのムーンブルク王といった具合にそれなりに確固たるアイデンティティ確立には成功しており、この後に説明するキャラクターが同様の言葉を使いながらも、ファンにとっては「ぎょえーーっっ!!=ムーンブルク王」と言うイメージが強い。なお、北米仕様におけるSNES版での断末魔の叫びは「aarrgghh!(アッー!)」と常識的なものとなっている。
ぎょえー以前におけるムーンブルク王のイメージと言えば火の玉であり、「誰かいるのか。わしには何も見えぬ、何も聞こえぬ」という台詞が印象にあったであろう。
「ぎょえーー!!」「ぎょえーっ!」など表記ゆれが見られるが、この作中においては「ー」「っ」「!」が各2文字づつである。これはパパスの「ぬわ」の後と共通である。
またぎょえーーっっ!!
次に登場したのは「ドラクエ6」である。場所はグレイス城と言われる場所であり、ここの王は魔王を滅ぼそうとして、伝説の悪魔「ダークドレアム」を召喚せんとしていた。人々の心に一抹の不安がよぎる中、召喚の儀式は行われた。が、ヘビのスープにカエルの干物というお供え物でバカにされたと思ったのかダークドレアムは召喚者たるグレイス王に従わず――
ぎょえーっっ!by グレイス王
王は一瞬にして炎に変身させられてしまった。後には断末魔の叫びが残るのみ。
「毒をもって毒を制す」と言う格言があるが、その目論見は見事に失敗し、悪魔の祟りによって全てが灰塵に帰したグレイス城であったが、それだけでは終わらなかった。夢の世界においてはこの最期の瞬間が永遠に繰り返される。ダークドレアムの命名は「Dark dream」であるといわれ、意訳すると「悪夢」そのものである。
なお、グレイス王の断末魔の叫びは「ドラクエ2」と比べると「ー」と「!」が一本づつ抜けているのが特徴である。
魔物もぎょえーーっっ!!
そしてPS2版「ドラクエ5」においてその言葉を三度聞く事になった。SFC版に比べ、いくつか変更になった場面があるが、その中でももっとも注目すべき点はイブールの今わの際の言葉が変更されている事である。そう……ではなかった光の教団の教祖として君臨したイブールは主人公らに敗れ、死なば諸共とばかりに彼らを魔界へと誘わんとしたが、ミルドラースに見放され「ぐふっ」と息絶えた……というのがSFC版であったが、PS2版では直後にゲマが登場しイブールに止めを刺した。
ぎょえーーっ!!by イブール
PS2版はSFC時代には父の仇という因縁の相手でありながら割合にあっさりと倒されてしまったゲマのキャラクターを強化させ、主人公のドラマをより深く掘り下げたという点で非常に特筆されるべき点ではあるが、その一方で元々印象の弱いイメージのミルドラースのキャラクターがいっそう薄くなったきらいもある。何より、雇われのようなものとはいえ、光の教団の教祖であるイブールをその手にかけるという一種の大どんでん返しに旧来のファンは驚きを隠せなかったであろう。ゲマの存在感の前に徒花と散ったイブールの断末魔の叫び、我々プレイヤーに対してせめて一太刀の印象付けに、と思うのは考えすぎであろうか。
イブールの場合、「ドラクエ2」と比べ「っ」が一つ足りないところに違いがある。
お偉いさんじゃなくてもぎょえーーっっ!!
「ドラゴンクエスト3」がスーパーファミコンに移植された際に性格診断の機能が追加された。これはゲーム開始前にちょっとしたミニゲームをする事でむっつりスケベだったりロマンチストだったり、セクシーギャルだったりと性格が与えられ、パラメータの配分などにも違いが出る。とあるミニゲームの場合、村人が魔物(=主人公)によって殺される場面においてこの台詞が登場する。
ぎょえー!by とある村人
この他にもこの台詞を発するキャラもいるわけだが、高貴な位にある人間の専売特許の断末魔である「ぎょえーっっ!!」が庶民に使われた瞬間でもある。それでも、やはり「ぎょえーっっ!!」=ムーンブルク王のような高貴な者の断末魔という地位は揺らぐ事はなかった。さて、あなたはどんな性格になった事でしょう。
生きてるけどぎょえーーっっ!!
そうしてDQの歴史に時々顔を出す迷台詞となったぎょえーだが、近年は殺されていない使用例が目立つようになった。例えばDQ8では、直接聞けるわけではないがリブルアーチを初めて訪れた際に住民の1人から「ぎょえーという男の人の声がした」という証言がある。この時現れた刺客に襲われたと見て間違いないが、ぎょえーと叫びながら逃げ惑う町人を想像するとどこかシュールである。
時は進んでDQ11では、物語序盤で訪れるナプガーナ密林にてこの台詞が登場する。いたずらデビルという魔物が橋を壊し、さらにそれを修理しようとした木こりのマンプクに「いたずら変身ビーム」を放つ。
ぎょえーーっっ!!byマンプク
初出のDQ2と一字一句同じ「ぎょえーーっっ!!」であることから、ついにぎょえーがDQ恒例ネタとして認定された瞬間と言えるだろう。なお機種によって演出が異なり、PS4/Switch版では低速で飛ぶビームに驚いてぎょえー、3DS版では高速で飛ぶビームに当たってぎょえー、である。
さらに、DQ11Sではイベントシーンにボイスがついた。ぎょえーにもボイスが付く時代になったということには、感慨深さすら覚える。
DQ11Sではさらに、メインキャラクターの1人であるロウがぎょえーと言っている(追加ストーリーとボイスドラマで各1回。これも殺されてはいない)。「死んでしまうとはなにごとだ!」と同様、彼もかつては国王だったことに着目したネタと考えていいだろう。
全体の傾向としては、やはり国王など地位の高い者が言う例が多い。威厳も何もあったものではない。また、殺された場合は多くが焼死である。
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関連項目
- ドラゴンクエストII 悪霊の神々
- ドラゴンクエストI・II
- ドラゴンクエストV 天空の花嫁
- ドラゴンクエストVI 幻の大地
- ムーンブルクの王女
- ぬわーーっっ!!
- ぐふっ!
- 断末魔
- 今のはメラゾーマではない…メラだ(余のメラ)
- ドラゴンクエスト関連用語の一覧
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