どんぐり(団栗)とは、ブナ科の植物の果実の総称である。
曖昧さ回避
概要
狭義の「どんぐり」はクヌギのどんぐりを指す。広義では、普通どんぐりと呼ばれないクリやブナ等も含めることがある。日本には約18種類が存在する。
どんぐりの木(カシワ、カシ、ナラ等)は地球上に広く分布しており、したがってどんぐりもヨーロッパ、中近東、アフリカ北部、アジア、北米等の温暖な地方ではよく知られた存在である。
人間とのかかわり
人間はどんぐりを古くから世界中で食用にしてきたが、何しろ殆ど無味なので、調理法が工夫された。また、タンニンやサポニン等の渋みを多く含む為、殆どのドングリは生で食べることが出来ず、適当な渋抜きの過程を経る必要がある。
日本でも縄文時代に食べられていたという話が有名である。小学校で、縄文人の方法を真似てどんぐりクッキー(縄文クッキー)を作った経験のある人も多いのではないだろうか。
韓国ではどんぐりのことをドトリ(トトリ)といい、デンプンを冷やして凝固させ、ムク(ムッ)というゴマ豆腐のような食べ物にする。日本でも多くの韓国料理屋で食べることが出来る。近年健康食品として注目されており、大量生産されている。
スペインではどんぐりが食材として親しまれており(ただ、若者はダサいと言って食べないらしい)、どんぐりを使って育てたイベリコ豚が有名だが、イベリコ豚が全てどんぐりを食べているとは限らない。ハモン・イベリコ・デ・ベジョータと呼ばれるものはどんぐりを主体とした食料で育ったことが保証されており、味・品質ともに最高級である。また、どんぐりを使った甘い香りと甘い味のするリキュール(リコール・デ・ベリョータ)があり、当地ではかなりポピュラーだそうだ。
他の生物との関わり
栄養価の高さから、リス・ネズミ・ムササビ・ウサギ・クマ等様々な生き物が餌にしており、彼らにとって欠かせない重要な食料である。特にリス等は、いったん頬袋に溜めたどんぐりを巣穴に持ち帰って保存食とする。春になっても巣穴にはわずかに食べ残されたドングリが見られるが、これが発芽して新しい木になるので、植物にとっても彼らは重要な存在である。
どんぐりに小さな孔が空いているのがよく見られるが、主にゾウムシの仲間がどんぐりに孔をあけて中に卵を産みつけており、どんぐりを割ると白い幼虫が湧くのを見ることが多い。
ドングリキクイムシもどんぐりにとっては天敵である。どんぐりの中で孵化したドングリキクイムシのオスは、何とその場で姉妹全員と交尾するが、生殖機能以外が退化してしまっているので、どんぐりの外に出られないまま死んでしまうという一生を送ることが知られている。…彼の一生は幸せだったと言えるのだろうか?まあ、自然界のオスは大抵そんなもんである。
どんぐりで遊ぶ
どんぐりの実は丸くて堅く、昔から子供達に玩具として親しまれてきた。どんぐりゴマ(後述)やヤジロベエの材料になる。
どんぐりを土に埋めて発芽させることも出来るが、ドングリは乾燥に弱いので、中身が乾燥してしまっていると、どれだけ待っても生えてこない。発芽能力の有無を見分けるには、水に1-2日間つけておけばよく、底に沈んだものは発芽できる。
実践編
どんぐりを知るにあたってぜひ覚えておきたいいくつかの用語を挙げておく。
- 堅果(けんか)…どんぐりのことを植物学者がムズカしく言うとこうなる。
- 殻斗(かくと)…どんぐりについている、所謂「帽子」。栗のイガと同様のものである。子どもの間でこれが取り合いになったりする。
- カシ/ナラ…厳密な定義は異なり、ウバメガシ等例外もあるが、とりあえず日本では「常緑のものがカシ」で「落葉するものがナラ」だとして差し支えない。カシの仲間は殻斗にしま模様があり、ナラの仲間は殻斗が鱗状またはいがになる。
次に、日本で見られる18種類のどんぐりのうち、身近でよく見られるもの(出現率ベスト6+北海道に多いミズナラ)を紹介する。実際にはどんぐりだけでは見分けがつかない場合も多いので、葉や幹等の特徴も頭に入れておこう。
和名 | 学名 | どんぐり(堅果) | 帽子(殻斗) | 備考 | 類似種 |
コナラ | Quercus serrata | 砲弾型 | 鱗状で浅い | 東北・関東・中部・近畿・中国では最も多く見られる | ミズナラ、ナラガシワ |
クヌギ | Q. acutissima | 丸い | イガイガで、鱗片が全てそりかえる | オカメドングリとも呼ばれる | アベマキ、カシワ |
アラカシ | Q. glauca | 楕円形、シラカシと酷似 | お椀型で縞模様がある | 中国・四国・九州・沖縄では最も多く見られる | シラカシ、ウラジロガシ、アカガシ、ツクバネガシ、イチイガシ、オキナワウラジロガシ |
シラカシ | Q. myrsinaefolia | 楕円形、アラカシと酷似、先端の部分がアラカシより膨らんでいる | お椀型で縞模様がある、アラカシと異なり柄がある | 関東で特に多く見られる | アラカシ、ウラジロガシ、アカガシ、ツクバネガシ、イチイガシ、オキナワウラジロガシ |
スダジイ | Castanopsis sieboldii | 小さくて細長い | どんぐり全体を包む | 生で食べられる | コジイ(ツブラジイ) |
マテバシイ | Lithocarpus edulis | 細長い砲弾型 | お椀型で鱗状、殻斗から離れて地面に落ちていることが多い | 生で食べられる | シリブカガシ |
ミズナラ | Quercus crispula | 砲弾型 | コナラより大きくて深い | 北海道では最も多く見られる | コナラ、ナラガシワ |
日本の文化におけるどんぐり
どんぐりころころ:童謡
作曲・青木存義、作詞・梁田貞。どんぐりの子が池に転げ落ちてしまい、ドジョウが遊んで慰めてくれるが結局山には帰れないので寂しがる、という悲しい詞になっているが、地域によっては救いのある3番や4番が追加されている。
どんぐりゴマ:玩具
どんぐりにつまようじを刺しただけのだけの簡単なおもちゃだが、結構よく回り、今でも幼稚園児等には親しみのある自然派玩具であると思われる。
マテバシイはへその部分が厚く堅いのでどんぐりゴマには不適。
どんぐりの背比べ:諺
どれも似通っていて同じようであること、平凡で優れたもののない様のたとえ。
類語に五十歩百歩、目糞鼻糞を笑う等。
実際にはどんぐりの形態は多様で、同種の木であっても全く違った形のどんぐりをつけることもある。
どんぐりまなこ:慣用句
どんぐりのように丸々くりくりとしていて可愛らしい瞳のこと。
その他・豆知識
- 映画「となりのトトロ」ではトトロを象徴するキーアイテムである。韓国語でどんぐりを指す「トトリ」が「トトロ」の起源(!)だという俗説もあるが、実際にはトトロは「所沢」に由来することが作者の証言で明らかになっているので、自信を持って反駁してください。
- どんぐりに「アコニック酸」という物質が含まれており、体内の重金属を排出する効果(今流行りのデトックス!)があると宣伝文句に使われたりするが、ググっても出てこないので実在するのかどうか怪しい。
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関連項目
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