エクラノプラン単語

17件
エクラノプラン
3.8千文字の記事
  • 3
  • 0pt
掲示板へ

エクラノプラン(ロシア語: Экраноплан)とは、ソ連開発された地面効果機 (WIG) の総称で、ソビエトの誇るロマン兵器シリーズのことである。

夢あふれる概要

ソビエト海軍向けにカスピ海黒海などの内海で運用されることを前提として、高速輸送戦として期待されて開発された。

ものすごく速い飛行機ホバークラフトとでも思っておけばわかるような。説明するより画像や動画を見た方がい。
ちなみに国際法上は船舶扱いであるが、これはまだ位置づけがはっきりしていないからなんとなく高速に適用される法律理矢理運用しているだけのことである。

アメリカ諜報機関がこれの情報を入手した際、あまりのトンデモ兵器ぶりに「カスピ海怪物」と呼んだことはあまりにも有名。まさに社会主義の思想的優位が明され(ry

装甲車を複数積むか、戦闘員を数人乗せた上で高速で水上を駆け、対に強襲揚陸をすることが出来る。旅客機並のスピードで進むことが出来る上に、従来の航空レーダーにも探知されず、そのスピードからの攻撃にもからの攻撃にも容易に対処ができるというロマン溢れる兵器である。

ソ連が関わっていない、エクラノプランには分類されない地面効果機もいくつかあるが、こいつらも『水上で利用される地面効果機』が分類も名称もはっきりしない為、エクラノプランと呼ばれることもある。もちろん正確には違うが。

栄光の歴史

初期の開発1940年代に開始され、1961年世界最初のエクラノプランСМ-1が初飛行(でいいのか…?)を実施し、翌年にはのСМ-2が当時のソ連導者のハゲフルシチョフに開されて成果を認められる。
СМシリーズ開発が続けられたが、1964年事故でСМ-5が墜落し、操縦士が死亡するという大惨事が起こる。

原理のところで詳しく解説するが、上記の事故ももちろん、安全性や原理的理由から1966年にはいきなりのエクラノプランКМが開発されることになる。これま でСМで15m~20m程度しか作らなかったのに、いきなり100m級である(並行してСМシリーズ開発が続けられたがあまり立たない)。

その後、中のСМ-6、そしてそれをベースとしたオルリョーノク開発される。

1987年、最後のエクラノプランであるルン開発される。ルン一の武装エクラノプランであった。大きさはКМにこそ敵わないが70メートルと大なのは間違いない。ルン遭難救援であるスパテルというのも開発着想されたが、完成はしなかった。

エクラノプランはドミトリー・フョードロヴィチ・ウスチノ防相によって支援された。ウスチノフは灰色の枢機卿と呼ばれたミハイルアンドレーエヴィチ・スーロフ死去後のクレムリンの実者であり、その政治的なによってプランは順調に進んだ。
が、1984年にウスチノ防相が死去すると、後任のセルゲイレオニードヴィチ・ソコロ防相は純職業軍人であったためか、食いプランだったロマンあふれるエクラノプランへの予算配分を停止、開発は中止されてしまった。あわれ。
現在なエクラノプランは予備役と、博物館に展示されている分と、軍に所属しない小のものぐらいである。

以上の歴史を経て、本格的な開発は停止しているものの、その栄ソビエト連邦軍事史に然といているのである。

革命的原理

そもそもこのシリーズがどうやって浮かんで――というか飛んで――いるのかについてだが、これらは栄誉あるプロレタリアートたちの気合とによって・・・ではなく、地面効果と呼ばれるものである。それを利用する機体のことを地面効果機 (WIG) と呼ぶ。WIGとはWing In Ground-effect vehicle の略である。
地面効果というのは、を持つものが地面(エクラノプランの場合は面)ギリギリを飛ぼうとすると、と地面の間の空気の動きが変化することである。

どう変化するかというと、上だと周りの空気の端っこでぐるぐると回って吹き下ろすと、それが戻ってきて吹き上がるが上からにぶつかっているような状態なのだが、地面スレスレの場所だと吹き下ろすがぐるぐる回って吹き上がろうとする動きが妨げられる。妨げられたは機体との下に貯まって圧縮され、空気クッションのようなものが出来上がる。

これに乗っかって浮かべてしまおうというのが地面効果機 (WIG) である。

スレスレを飛んでいるトビウオとか、地面ギリギリでふらふらとなかなか降りることが出来ないヘリコプターとか、鳥人間コンテストスレスレになってからの方が航行距離が長いとか、あれが地面効果である。

ところで、なぜいきなり大のКМが作られたかという点だが、地面効果は、高度がの幅の半分程度になると現れ始めるため、機体が小さければ小さいほど地面効果が発生する高度が低くなり、面に近くなってしまうため、波のを受けやすくなる。これらを鑑みて、実用に足る大きさの巨大な地面効果機の方が安定した飛行が可になるというわけで、КМが作られたのである。

かなりざっくり適当に説明した(しかも編集者化学に詳しくない)ので、詳しい原理は自分で調べてみてほしい。

このシリーズの弱点は、離着時の負荷が高い上に地面効果を利用する原理のために波に弱く、2、3mの波で安全性を考えて欠航となったことである。だが、一度離してしまえば10m~20m弱まで上昇することも出来たため、運用の仕方によっては内海ではなく外でも・・・といったところだが、やはり危険なので外での利用は想定されていない。

偉大なるシリーズ

  • СМ
    サマホードナャ・マデーリ。Самоходная-Модель の略。ラテン語表記ではSM
    最初に開発されたエクラノプランのシリーズ
    当時のソ連の体制などもしてあまり資料が残っていない。試行錯誤によって、海洋生物マンタみたいな格好のやつや、ホバークラフトのような形のもの、後のシリーズに使われる飛行機っぽいシルエットのものなどが開発された。
    СМ-1、СМ-2、СМ-3、СМ-4、СМ-5、СМ-8、СМ-6、СМ-2P7などがある。
  • КМ
    カラーブリマキェート。Корабль-Макет の略。ラテン語表記ではKM。
    意味は『見本の艦』とか。デカい、実在したものの中では一番デカい。
    最大積載時重量540tで時速400km/h、全長100m級という割と本気でとんでもないシロモノである。地面効果を発生させ安定させるために機首に8つもエンジンを積んでおり、見たインパクトは抜群。
    大きいだけに安定した性を誇り、14年間の使用に耐えたが残念ながら1980年事故で失われた。
    ロマンいっぱいいっぱい。
  • Орлёнок
    ルリョーノク。20m級。KMにべてかなり小になったが、ある程度の積載量をキープしている。400km/h~500km/hを出すことが出来た。推進にはプロペラを用いている。顔がぶちゃいくあまりかっこよくないのだが、実用に際しては一番難な感じの出来に仕上がっている。 機首がぱかっと開いて装甲車が出てくる。
    カスピ海海軍基地であるカスピースクに保存されていたが、2008年頃にモスクワ博物館に移された。
  • Лунь
    ルン、またはルーニ。70m級。КМを元に作られた大エクラノプラン。NATO側の呼称で【ウトカ】。
    対艦ミサイルモスキート」を6発装備でき、飛行中にぶっぱなすことも出来るうえ、時速500km/hを出すことが出来るという一番危険なエクラノプランである。カスピ海海軍基地であるカスピースクに保存されている。オルリョーノクと違ってモスクワに凱旋(?)することはわず。デカいので仕方ないね
    wikipediaでは途中までルンと書いているのに所属しているのはルーニだけ、と書いているので紛らわしいが、こいつがロシア軍予備役に所属する最後のエクラノプランである。一番危険なのだけを残しておく辺りがロシア流。
  • Спасатель
    スパテル、またはスパサーチェリ。ルンを元に捜索救難機として開発が着想され、途中まで作られたが、予算停止のを受けて開発放棄された。名前の意味は上救助とかそういう意味のようだ。現在は乗所近くで建造途中のまま放置されているとか。ネット上に存在する「放置されているエクラノプランです」というような写真のものは大抵がこのスパテルである。
  • Антонова
    アントーノフ。アンノーフ設計局で開発された複葉軽飛行機An-2シリーズ改造した試験機で、全長12メートルほどの小エクラノプラン。残念ながらエクラノプランでの歴史る上ではほとんど登場しないが、現在も複数機が残っており、物好きがで飛ばしていたりする。
  • Бе-2500 «Нептун»
    ソ連での失敗に懲りることなく、ロシアは地面効果機を作ろうとしている。それがこのБе-2500、トィースャチ・ピチソート 《ネプトゥーン》 である。
    大きさはなんと全長120m、最大積載時重量1500t、最高速800km/hを標としている。
    ・・・一体何を運ぶつもりなんだ。
    開発中とのことだが、どうやらまだ研究者の頭の中でめくるめく妄想を膨らませている段階のようだ。

関連動画

関連項目

【スポンサーリンク】

  • 3
  • 0pt
記事編集 編集履歴を閲覧

ニコニ広告で宣伝された記事

月ノ美兎 (単) 記事と一緒に動画もおすすめ!
提供: saki
もっと見る

この記事の掲示板に最近描かれたお絵カキコ

お絵カキコがありません

この記事の掲示板に最近投稿されたピコカキコ

ピコカキコがありません

エクラノプラン

16 ななしのよっしん
2019/01/03(木) 08:30:39 ID: SkBwE6KBM5
日本の場合は「飛行艇でやれ」ってなっちゃうし
👍
高評価
0
👎
低評価
0
17 ななしのよっしん
2019/05/18(土) 21:33:56 ID: eBGFhJBJTb
それこそ離航空路向けに良いんじゃね?とも考えたことがあるけど、日本だと波が高いからねぇ……。
90年代の近未来SFだと苫小牧大洗航路に就役してたりとか広がりまくりだったけど。
👍
高評価
0
👎
低評価
0
18 ななしのよっしん
2019/11/15(金) 22:50:58 ID: ArlpBvwSsg
より大きなエクラノプランはより安全なんだろうけど、大きなエクラノプランを運用する支援設備をあちこちに用意するのがとても高くつきそうだ
単一航路だけでペイできるほどの十分な需要が見込めないと厳しいんじゃないかな
👍
高評価
0
👎
低評価
0
19 ななしのよっしん
2020/09/27(日) 16:59:55 ID: 8RFw12EGB5
あの悪そうなビジュアルが大好き
👍
高評価
0
👎
低評価
0
20 ななしのよっしん
2020/11/22(日) 19:13:21 ID: UwvuKtuyYv
https://www.cnn.co.jp/travel/35162476.htmlexit
軍事施設で朽ち果てるままになっていたルン級エクラノプランが終のすみかを見つけたようだ。
👍
高評価
0
👎
低評価
0
21 ななしのよっしん
2021/01/11(月) 14:07:32 ID: TDAhgvhTGE
強そうだけどよわそう
👍
高評価
0
👎
低評価
0
22 ななしのよっしん
2021/01/11(月) 14:12:38 ID: KhZEgxT6JY
日本も似たようなのを開発していることはあまり知られていない
エクラノプランと同じ原理でレールを浮上するエアロトレインという
高速鉄道技術
👍
高評価
0
👎
低評価
0
23 ななしのよっしん
2021/01/11(月) 19:43:14 ID: UwvuKtuyYv
>>22
輸送量が新幹線べてもだったり、その割に路線の幅が広すぎて用地取得に難があったり、騒音も大問題となる突っ込みどころ満載の代物だけどなww
👍
高評価
0
👎
低評価
0
24 ななしのよっしん
2021/05/15(土) 21:58:56 ID: 3Usn2h5S1+
軍艦相手からすれば機にもレーダーにも引っかからないミサイル艇より速いナニカがやってきて、視で確認した頃には回避・迎撃不可能対艦ミサイルが大量にばら撒かれてるという恐怖
👍
高評価
0
👎
低評価
0
25 ななしのよっしん
2024/02/01(木) 23:18:57 ID: wXA8ypDLGr
JAL、地面効果旅客機開発するレジェント社に出資、追加;米軍は上陸用大WIG機の開発スタート | TOKYO EXPRESS
http://tokyoexpress.info/2023/03/24/jalexit、地面効果旅客機開発するレジェント社に/
最近WIG盛り上がってるみたいだねえ
👍
高評価
0
👎
低評価
0

スマホで作られた新規記事

こちらの記事に加筆・修正してみませんか?

画面遷移確認のための記事 健康優良児 あらそう