オデッサ作戦とは、「機動戦士ガンダム」シリーズで行われた戦いおよび作戦。
概要
一年戦争中の宇宙世紀0079年11月7日から9日にかけて、オデッサ(現ウクライナ南部、現在の公式呼称はオデーサ)で行われた。交戦勢力は連邦とジオン公国。宇宙世紀での地上戦では最大規模であり、一年戦争の転換期となる戦いの一つとされる。
作戦までの経緯
一年戦争序盤でのブリティッシュ作戦(一週間戦争)で人類の30パーセントを死滅させ、それに続いたルウム戦役において連邦宇宙軍を壊滅させたジオン軍であったが、捕虜となったのちに帰還した連邦軍中将であるレビルによる「ジオンに兵なし」演説により連邦は継戦を選択し、早期講和の芽は潰されてしまう。
連邦の継戦意思を削ぐには宇宙での勝利を重ねても無意味、と判断したギレン・ザビはここに至って地球侵攻を決断。キシリア・ザビに命じて3月にオデッサ・バイコヌールに地上軍を降下させ、戦場は宇宙から地上に移ることになる(ジオンは地球戦線を重力戦線と呼称)。
ブリティッシュ作戦によるコロニー落としの被害により連邦海軍はすでに壊滅しており、地上軍も汎用性が高く機動性に優れたモビルスーツ(MS)に対抗出来ずジオン軍は当初こそ破竹の勢いで勢力を拡大。北米と東欧から西アジアにかけた地域に確固たる足場を築く。ジオン軍も半年ほどで地球を制圧できると言う楽観的な見通しを立てていた。
しかし、地の利や現地住民の支持(一部、ジオンについた既存の反連邦勢力はあったが)は概ね連邦にあり、巧みな後退戦術とゲリラに苦しめられ9月になりようやく西欧方面において大西洋岸に達したにすぎなかった。連邦軍本拠地である南米ジャブローには本格的な攻略の足場さえ作れず、戦線はしだいに膠着。
9月の時点で極東、東南アジア、アフリカ、ベルファストを中心とした旧イギリス地域で散発的な戦闘に終始する形となる。
一方の連邦軍も事態はさほど芳しくはなく、MSへの対抗手段は自殺同然の61式戦車による攻撃かMS特技兵による待ち伏せしかない状態が数か月ほど続く。9月、ルウム戦役の影響を受けて4月に開始された連邦軍によるMS(RXシリーズ)開発およびテスト計画であるV作戦がようやく始動。これはジオン軍少佐であったシャア・アズナブルの攻撃により一時頓挫しかけるも、サイド7の難民たち(のちのホワイトベースクルー)、特にMS開発を主導していたテム・レイの息子であったアムロ・レイの活躍により曲がりなりにもMSの有用性を改めて証明することに成功した。
同時期に開発が進められていた連邦軍の量産型MSであるジム(陸戦型ジム)とこれを支援する陸戦強襲型ガンタンクも非常に限定的ながら実戦配備が始まり、反攻作戦を実施する機運が高まった。目標もジオン軍の地球上の橋頭保となっており、資源基地があったオデッサに定まった。オデッサは資源に乏しいジオン軍にとって生命線とも言える拠点だった。地球降下作戦で、ジオンが真っ先に占領した所を見てもその重要性が窺える。
10月11日、レビル将軍は欧州での一大反攻作戦を開始。イギリスからドーバー海峡を渡ってフランスに上陸した。同時に陽動としてノルウェーのオスロから2個部隊を南下させている。
10月20日、オデッサ作戦参加部隊の集結地となっているワルシャワに野戦本部が設置される。
10月25日にはオデッサ作戦の陽動が世界各地で行われ、カナダでは連邦軍の陽動部隊とケン・ビーダーシュタット少尉率いるジオン外人部隊が戦闘。ジムが投入されていた事から、ジオン軍は連邦軍のMS出現を知った。
10月28日、ジオン軍はスパイを通じてオデッサ作戦の開始日時を察知するが、連邦軍の進撃によりジオン軍は全方位から囲まれる形となり、これに対処することができず後退。オデッサ方面に向けて撤退していったが、逃げ遅れたジオン軍はイタリア半島に取り残された。11月までにオデッサ近辺を除く欧州のほとんどが連邦に奪還されるという結果となった。
ジオン軍側は連邦軍の行動から、近々大規模作戦が実施される事を察知していた。オデッサのマ・クベ司令は北米方面軍に増援を求め、闇夜のフェンリル隊を派遣してもらっている。また、犯罪者部隊のウルフ・ガー隊が襲撃した連邦軍補給基地にはオデッサ向けの物資が山積されていた。
ジオン軍の戦力
中心はもちろんMSであり、主力はMS-06ザクⅡF型または地上であることを考えるとJ型であった可能性が高い。これらに付随する形でマゼラアタックなどの支援戦車が配備されていたと思われる。ドム、グフとその派生機グフカスタムといった機体の投入も確認されているが、それぞれザク程の数は投入されていない。大型陸戦艇であるダブデも数艘配備されており、いくつかの艇には水爆ミサイルが装備されていた。
これ以外にもオデッサの各地には多数の小規模な基地のほか、トーチカによる強固な防衛ラインが敷設されていた。また、一部では敵の侵入を防ぐための巨大な空堀までもが掘られており、中に落ちた連邦軍MSを撃破できるよう爆弾が仕掛けられていた。ただし、連邦軍はあらかじめジオン側にスパイを忍び込ませており、トーチカの配置についてはかなり詳細な情報が漏洩していた。対するジオン軍側も謀略を練っていて、連邦軍のエルラン中将に寝返りを促している。
連邦軍の戦力
中心はまだ61式戦車や航空機などの各種通常兵器であった。量産が始まったばかりのジム陸戦型は虎の子であり、作戦開始時点では独立混成第44旅団などの一部部隊にのみ配備され決定的な局面で投入される予定であった。
他に懲罰部隊に3機が配備された陸戦強襲型ガンタンクや補給隊の護衛に付いていたMS特殊部隊第3小隊の陸戦型ガンダム等、少数ながら各種MSが戦闘に参加。その他、大型陸戦艇または陸上戦艦と呼ばれるビッグトレーやヘビィ・フォークも導入。ビッグトレーは一艘がレビル将軍の座乗艦となり旗艦として機能したほか、ビッグトレーとへヴィ・フォークを集中運用した陸上戦艦第4打撃部隊が前線への支援砲撃のために活動した。また、正規戦力とは言い難いが小アジア方面からホワイトベースが西進しており、両軍の作戦を少なからず拘束していた。
参加部隊は第3軍団と第4軍団。総数は不明だが、一説によると戦闘部隊370万、後方支援部隊400万と言われている。これは連邦軍の地上戦力の3割に相当した。何にせよ概ねジオン軍の数倍の戦力を有していたとされることが多い。
作戦推移
0079年11月6日または7日未明、ホワイトベース隊が黒い三連星のマッシュを撃破。これを好機と捉えたレビル将軍はオデッサ作戦開始を下令。主力は第3軍団であり、牽制のために北方にいた第4軍団と共に侵攻を開始した。当初は内通していたエルランのサボタージュもあり戦闘は不活発であったが、ホワイトベース隊の活躍によりエルランが逮捕され、逆に彼の担当地域から集中攻撃を受けることになる。油断していたジオン軍は後退を重ね戦局は一気に不利となった。
11月8日、連邦軍は陸戦型ジムを投入。数の暴力でジオン軍を圧倒していたが、ダブデ級陸戦艇の長距離砲撃を受けて被害が続出。多くの陸戦型ジムと61式戦車を鉄屑に変えられて戦線は一時的に停滞する。同日夕刻に陸戦強襲型ガンタンク3機が到着し、翌9日に総攻撃を開始。144高地攻略のため陸上戦艦第4打撃部隊による熾烈な準備砲撃を行ったのち、大量の陸戦型ジムと強襲陸戦型ガンタンクを投入。ジオン軍の反撃により少なくない数の陸戦型ジムと61式戦車が撃破されたが、強襲陸戦型ガンタンクが突出する形で強引に防衛線を突破し、トーチカ群の破壊に成功。連邦軍を悩ませていたダブデ級2艘を護衛ごと粉砕したが、その代償にガンタンクも全機喪失。ガンタンク全滅後は連邦軍有利となり、オデッサ基地から退却するジオン兵を乗せたHLVが続々と打ち上げられている。
また、ガンダムとの戦闘により黒い三連星も全滅。ジオン軍の特殊部隊「闇夜のフェンリル隊」によりビッグトレー1隻が撃破され、指揮系統が混乱する一幕もあったが、戦局に寄与する事は無かった。
追い詰められたジオン軍司令官マ・クベ大佐は水爆ミサイルで連邦軍を恫喝。しかし、レビルはこれを無視して進撃を続行。激昂したマ・クベは宣言通りミサイルを発射するが、ガンダムの活躍により阻止されてしまう。ここに至り勝敗は決しジオン軍は宇宙や地上の友軍拠点への退却を開始した。
その後
ジオン軍は地上での橋頭保と資源の採掘・運搬基地を喪い、これ以降は地球での優勢は連邦軍に移ることになる。地上の一大拠点を喪ったジオン軍は宇宙へ逃げるか、各地の友軍拠点に撤退する事を強いられ、連邦軍の追撃もあってその逃避行は過酷なものになった。宇宙へ逃げ延びたジオン軍部隊は連邦軍の落ち武者狩りに遭い、少なくない犠牲を出しているが第603技術試験隊の活躍により大多数が救出された。一方、地上のジオン軍はアジア方面やアフリカ方面に脱出したが、こちらも連邦軍の追撃で犠牲が出ている。
オデッサの戦いに勝利した連邦軍は、この事実をプロパガンダ放送によって全世界に放映。11月10日には観艦式を挙行して、祝勝。一方、ジオン公国の総帥府はオデッサ鉱山基地の放棄を正式に発表。以降、補給は宇宙艦隊を優先するとし、地上軍は実質見捨てられる形となる。
ジオン軍の地球方面軍はその後もベルファストやジャブローへの攻撃を続けるが、これらは水陸両用MSによる破壊工作に近く恒久的な占領を図ったものではない。ただし、資源についてはジオン軍のマ・クベ司令の「あと10年は戦える」発言を見ても分かる様に、すでに宇宙に十分な量を輸送しており効果は限定的だったようだ。
もっとも、人的資源については占領政策のために多数を地球に降下させており、この作戦以降は撤退もままならなくなったため枯渇状態となり敗因の一つとなった。ジオン軍敗残兵の末路は悲惨であり、ゲリラの襲撃や補給の途絶により戦争終結までの2か月(場合によってはそれ以降も)不慣れな地球での厳しい戦闘を余儀なくされた。
一方で連邦軍の損害も甚大であり、基幹戦力であった61式戦車に至っては作戦に参加した内8割を喪失したとも言われるが、こちらは想定内であり、むしろMSに装備を更新したいレビルにとっては体のよい厄介払いだったともされる。事実、以降の連邦軍は宇宙のみならず地上もMSを主力とするようになった。
著名な戦闘参加者
ジオン軍
- マ・クベ
- 大佐。オデッサ基地司令でこの方面のジオン軍では最高指揮官だったようだ。もっとも、後述のユーリ・ケラーネは少将であり師団長としてこの戦闘に参加しているため、指揮系統はかなりバラバラだった可能性もある。
- 作戦前のランバ・ラル隊への嫌がらせや黒い三連星との確執、水爆ミサイルでの恫喝などテレビ版では相当な悪役であるが、映画版ではややマイルド。オリジン版では人格も180度違った人間として描かれている。
- ユーリ・ケラーネ
- 少将。師団長として戦闘に参加。撤退時、核兵器を気化爆弾と偽って使用し味方を逃した。オデッサ以降の敗残兵の活動は第08MS小隊に詳しい。
- 黒い三連星
- 戦前より独自行動が許されたジオン軍の精鋭部隊。使用MSはMS-09ドム。
- マッシュの戦死がオデッサ作戦開始の端緒となっていることからも、かつて彼らにより捕虜となったレビルは高く評価していたことがうかがえる。
- 闇夜のフェンリル隊
- 上記の黒い三連星が、後方地域で荒らしまわる木馬を仕留めて戻ってくるまでの間戦線の維持を任された特殊部隊。
- 敵の指揮系統を混乱させるためビッグトレーに肉薄し、破壊に成功。しかしマ・クベの水爆使用に伴って撤退した。
- 外人部隊
- ケン・ビーダーシュタット少尉率いる、サイド3以外のコロニー出身者で編成された部隊。オデッサの敗北が決定的になったことで、外人部隊の上司ダグラス大佐が手配したガウに乗って逃走を図る。
- マルコシアス隊
- 年少兵たちが出世をするためスコアを稼ぎあう特別競合部隊。オデッサ地区の防衛を担当していたが敗色が濃くなり、ザンジバルで宇宙へ撤退するはずだった。しかしそのザンジバルに見捨てられたため、ユーコンで海上に脱出する。
- ニムバス・シュターゼン
- サイドストーリーズ限定。
- オデッサ郊外でEXAMの試験をしていたところに連邦軍の敗残兵狩りが出現。イフリート改の力を持って全滅させた。
連邦軍
- レビル
- 大将。捕虜となって帰還したのちは連邦軍にとって事実上の最高指揮官となっていたようだ。
- ホワイトベース隊の力を過不足なく評価する反面、この戦闘後もジオン軍の戦力を分散させる囮として利用し続けた。また、水爆ミサイル発射の警告を無視して前線部隊を前進させるなど、有能であるが冷酷な側面ものぞかせている。
- エルラン
- 中将。ジオン軍に買収されており、オデッサ作戦ではサボタージュを行った。しかし、ホワイトベース隊に見破られたのちに逮捕。逆にジオン軍戦線を崩壊させる結果を招く。
- ミケーレ・コレマッタ
- 少佐。開戦以降、対MS特技兵や61式戦車による厳しい撤退戦を続けていた第44機械化混成大隊の指揮官。
- オデッサ作戦において第44機械化混成大隊は新型の陸戦型ジムを配備、それに伴い部隊を独立混成第44旅団へと改編。144高地にてダブデ級含むジオン軍に阻まれ戦線が膠着したが、翌日には陸戦艇と強襲陸戦型ガンタンクなどの投入により防衛網を突破した。
- 第三機械化独立混成部隊デルタチーム
- マット・ヒーリィ中尉率いる実験部隊。オデッサにてジオン敗残部隊の掃討を行う。そこで投降をしようとした味方を撃ち殺したグール隊と遭遇する事になる。
その他
- テレビ版、劇場版、オリジン版で全く作戦内容も経緯も異なっている。劇場版ではマ・クベの水爆ミサイル恫喝はなく、オリジン版では逆にギレンの命令を無視して阻止している。また、エルランの裏切りも劇場版にはない。
- さらにオリジン版ではジャブロー戦が先行しており、オデッサ作戦が地上での最終決戦である。
- 連邦軍のMS導入については長い間議論となっていたが、MSイグルー2において陸戦型ジムの導入が認められ公式となった。
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関連項目
- 機動戦士ガンダム
- 機動戦士ガンダム 第08MS小隊
- 機動戦士ガンダム MSイグルー2 重力戦線
- 一年戦争
- ブリティッシュ作戦
- ルウム戦役
- V作戦
- ソロモン攻防戦
- ア・バオア・クー攻防戦
- オデッサ(オデーサ)
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