ビグ・ラング(BIG-RANG)とは、機動戦士ガンダムMS IGLOO第6話「雷鳴に魂は還る」に登場するジオン公国の機動兵器である。形式番号はMA-05Ad。分類はモビルアーマー。
概要
一年戦争末期、ジオン公国軍はモビルスーツの絶対数不足を補うために駆逐ポッド「オッゴ」を多数急造した。このオッゴを後方より支援するべく開発された補助兵器こそがビグ・ラングなのである。ジオン軍の地球撤退と、それを追撃する連邦軍の侵攻を受けて開発計画がスタート。本来は前線に配備して、モビルスーツ隊を支援するコンセプトだったと思われるが、戦況の劇的変化により量産計画は頓挫。結局1機のみの試作で終わり、支援対象もオッゴのみに絞った。全高138メートル、全長203メートル、全幅139.1メートル。機体重量は1万7900トン、推力460万kg、装甲材質は超硬スチール合金。形式番号のAdは「Ammunition Depot」、可搬補給廠を意味している。
最終話に登場し、第603技術試験隊に送られた最後の試作兵器でもある。ある意味、ラスボスと言えよう。
開発を急いでいた超弩級モビルアーマーの機体を流用し、制御ユニットとして上部にビグロを連結させている。このビグロは一年戦争中期に造られた後期生産型の6号機で、従来のビグロの武装に加えて機関砲の増備や、ジェネレーター出力の強化が図られている。ビグロの特徴であるクローは多目的マニピュレーターに換装されており、物を掴めるようになった。Adユニット接続に伴って、コクピットにも改修が加えられており、2本のアームバーが増設されている。
コンテナには大量の武器・弾薬が積載されており、戦闘で消耗したオッゴをコンテナ内部に収納、複数のアームを使って補給・応急修理を行った後で外へと射出、戦線へ復帰させる。オッゴが損傷しコンテナへの進入が困難な場合は駆動アームを使い固定した上で内部へ搬入する。オッゴの補給自体は短時間で終了するものの、1機ずつしか入る事が出来ない。描写こそ無いが、モビルスーツへの補給も可能のようだ。オッゴを長時間戦場に活動させる設計のビグ・ラングを見て、プロホノウ艦長は「年少兵を死ぬまで戦わせる気か!」と憤怒している。
大質量のコンテナを接続したことでビグロ本来の機動力は大きく損なわれてしまったが、代わりに戦艦のメガ粒子砲にも耐えられる対ビーム装甲を持ち、さらにはビーム撹乱膜まで装備しているため防御面では優れている。また、ビーム撹乱膜は散布することで周辺の友軍機もビームから守ることが可能。その機動力の低さゆえ前線で戦うオッゴのやや後方で控え、敵の襲撃に対してはビグロの武装で反撃し自衛するという運用が想定された。
大型コンテナと接続しているためエネルギー供給に余裕があり、メガ粒子砲の威力が通常のビグロとは比べ物にならないほど上昇している他、コンテナにも対艦ミサイル砲2門が備え付けらていて攻撃能力は非常に高い。実際、凄まじい戦果を叩き出している。しかし、モビルアーマーの悲しい性として死角の多さが難点と言える。特に機体底部は武装が無ければ装甲も無いというまさに致命的な弱点であり、さらには被弾すればコンテナ内部の弾薬に引火、大爆発を引き起こす危険性も孕んでいた。これをカバーするべく、底部に巨大な盾を持つ駆動アームを装備……する予定だったのだが、決戦に間に合わず結局装備はされていない。機体のカラーリングは赤を基調としたものになっており、赤い彗星ことシャア・アズナブルの搭乗機と誤認する連邦軍兵士がいた。赤色は暗闇では迷彩効果があるため、運用目的を考えれば適切な色と言えるだろう。
オッゴが周囲に集まっているところを見た連邦軍兵士に「ドラム缶の親玉」と形容されたことも。
劇中では
ジオン年少兵とオッゴを守る母体として配備された機体は、MA-05Adビグ・ラング!
ビグロの高速性を犠牲にした巨大な補給庫は、玉砕覚悟の若人たちに生還の機会を
与えるものだった。敗色漂う戦場の中、ビグ・ラングの操縦席に座して生命の輝きを
見つめる者とは……。
第5話の「光芒の峠を越えろ」にてシャハト少将が「オッゴを支援するための補助兵器も間に合えば送る」と発言しており、存在が示唆されていた。本格的な登場は第6話「雷鳴に魂は還る」からで、かろうじて決戦に間に合った形となる。既にソロモンが落ちていた事もあり、おそらくビグ・ラングはア・バオア・クー工廠で開発されていたものと思われる。
12月31日、パプア級輸送艦からヨーツンヘイムに引き渡された本機は、乗り込んできたオリヴァー・マイ技術中尉によって調整が施された。しかし調整が終わる前にア・バオア・クー攻防戦が始まり、なし崩し的にEフィールド防衛戦へと参加する。Eフィールドは他のフィールドと比べて開戦がやや遅かったが、ボール隊の突撃を受けて戦端が開いた。
パイロットはモニク・キャディラック特務大尉に決まっていたが、彼女は弟のエルヴィン・キャディラック曹長を失ったショックで戦闘神経症に陥っており、着任不能の状態だった。このためプロホノウ艦長は既にビグ・ラングへ搭乗しているオリヴァー・マイ技術中尉にパイロット任務を言い渡した。一介の技術士官に過ぎないマイはこの命令に驚愕し、「僕にパイロットをやれと言うのか!?」と絶叫した。だが、これは若手士官であるマイを調整が終わってないビグ・ラングごと後方へ置き去りにする事で、戦死させないようにするプロホノウ艦長の配慮であった(実際「調整に手間取った時は追ってくるなよ」と発言している)。母艦に置いてかれたマイだったが遂に調整を完了させ、一足先に戦闘宙域に赴いたヨーツンヘイムを追って前進。サラミス級3隻に襲撃されるヨーツンヘイムを助けるべく、メガ粒子砲の砲門を開く。
実戦経験が皆無であるマイ中尉だが、初弾のメガ粒子砲で連邦軍のサラミス級3隻を撃沈するという華々しい戦果を挙げる。ヨーツンヘイムにやってきては散っていったテストパイロット達の生き様を思い出した彼は既に戦う覚悟を決めており、先行したオッゴ部隊を支援すべくヨーツンヘイムと別れて前線へと向かう。
前線では学徒兵が駆るオッゴがジムやボールと交戦しており、学徒兵を守るべくオッゴとともに戦う。本来なら後方に控えているはずのビグ・ラングを見て、学徒兵から「マイ技術中尉ですか!?前に出ないで!」と退避を促されるが、マイが「そうはいかない!僕は君たちを…」と言い返そうとした瞬間、マシンガンにより通信してきた学徒兵のオッゴが撃墜される(小説版によると「守らなければならない」と続くはずだったという)。眼前で守るべき学徒兵をやられたマイは絶叫しながら引き金を引いた。
その巨体に多数の命中弾を受けながらも強大な火力と強固な装甲を駆使して反撃。包み込むように攻撃してくるジムやボールには機関砲で、背後から撃ちかけてくるサラミス級には三連装大型対艦ミサイルを、正面から突撃してきたマゼラン級にはメガ粒子砲で反撃。その悉くを撃墜し、劣勢の中で善戦する。確認できる分だけでサラミス級5隻、マゼラン級1隻、ボール6機、ジム2機を撃破するという、状況が違うとはいえシャアも真っ青な戦果を叩き出す。同時にビーム撹乱幕も有効に使い、ジムのビームから機体やオッゴを守っている。ビグ・ラングの猛攻に驚いた連邦軍は、体勢を立て直すために一時後退。その隙にオッゴ部隊への補給も成功させた。モニターには補給中のオッゴと搭乗者の学徒兵が映し出されており、オッゴとのデータ共有がなされている。この大健闘もあってか、Eフィールド防衛線は連邦軍のチート物量を抑えて持ちこたえていた。マイとビグ・ラングには束の間の休息が与えられる。
だが、司令部ではギレンがキシリアによって殺害され、そのキシリアもまた戦死したことで、「我 既ニ 指揮能力ナシ。 作戦参加ノ全艦艇ハ 戦闘ヲ中止シ 各個ノ 判断ニテ 行動セヨ」という、事実上の停戦命令がジオン全軍に通達される。これを受けてNフィールドの友軍部隊はEフィールドを通って本国サイド3への撤退を開始するが、連邦軍は仲間や親の仇を討ち取るため停戦命令を無視し、ここぞとばかりにジオン軍へと襲いかかる。無抵抗のオッゴを撃墜され、激昂したマイ中尉はビグ・ラングからミサイルを発射。ジムの機体を吹き飛ばすも、連邦軍の勢いは止まらない。友軍の退路を守るためカスペン戦闘大隊は決死の覚悟で連邦軍と交戦。ヘルベルト・フォン・カスペン大佐のゲルググや快復したモニクのヅダも参加し激戦となる。
激しい戦いの中、戦果を重ねるビグ・ラングだったが、死角からボールの砲撃を受け遂に撃墜されてしまう。どうやら弾薬に引火したものと思われ、激しい爆発を起こしている。爆発の光は、遠く離れたヨーツンヘイムからも視認でき、プロホノウ艦長は彼らの最期を悟って慟哭した。さらにカスペンも戦死するが、結果として25分もの時間を稼ぎ、友軍艦隊は脱出に成功。目的は達せられた。しかし戦場からは誰も帰ってこず、脱出路を塞がれる危険性がある事からヨーツンヘイムは出航。彼らが守り通した退路を使ってサイド3へと向かった。
パイロットのマイ中尉は戦死したかと思われたが、爆発の際に衝撃でコクピット部分のビグロが分離したことで間一髪生還している。急造品ゆえの強度不足に助けられるとは。モニクのヅダに救助されたマイは、一足先に退却を始めたヨーツンヘイムの下へと帰還するのだった。
余談
ビグ・ラングは宇宙世紀最大の大きさを誇るモビルアーマーである。その巨体っぷりは大型貨客船ヨーツンヘイムと並んでも見劣りしないほど。というか、ムサイとほぼ変わらないサイズなのである。(全長では30メートルほどムサイの方が大きいが、全幅では36メートルほどビグ・ラングの方が大きい)
そんな巨体を一人で操縦できるようにしたビグ・ラングは、ある意味オーバースペックと言える。物語冒頭で、603はパプア級補給艦から本機を受領しているが、どう見てもパプアに収まり切らない。おそらくア・バオア・クー工廠で開発され、パプアに牽引されてきたものと思われる。
機動戦士ガンダム0083 REBELLION
漫画『機動戦士ガンダム0083 REBELLION』では、下部ユニット部分が巨大モビルアーマー・ラングとして再登場。一年戦争後、アクシズに渡ったオリヴァー・マイがデラーズフリート支援のため持ってきたという設定である。
ありったけの推進器を追加し、装甲表面にビーム撹乱膜を塗りたくったラングは観艦式襲撃を行うサイサリスを内包。大出力を以ってサイサリスをソロモンへ送り込む大任を担った。重装甲は健在で、進路上にあったサラミス級を粉砕している。しかし連邦側はビグ・ザムの残骸を改修して戦力化しており、ラングの迎撃に投入された。二大モビルアーマーの戦闘は凄まじく、余波で戦艦1隻が沈没した。ラングの動きが鈍ったところに集中砲火を受け、撃破されてしまうのだが…。
中身のサイサリスは無事であり、ラングから飛び出してそのまま核弾頭を発射。星の屑は成就し、グリーン・ワイアットに「たった1機に・・・これほどの被害を受けた事など人類戦史にあっただろうか!?」と言わしめた。
ゲーム作品では
そのあまりの大きさからギレンの野望ではモビルアーマーではなく艦船扱いとなっている。開発プランには支援型モビルアーマーの開発と書いてあったのに…。一応補足しておくと、オッゴに限らず味方機への補給・回復が出来るようになっているため、補給艦と見なされたのが原因と思われる。サイコガンダムにも補給が出来るというチートっぷり。にもかかわらず何故か散布と拠点の制圧は出来ない。どういうことなの…。他のガンダムゲームでも回復能力を持っている場合が多く、機動力は低く設定されている。
また、作中ではボールをクローで掴んで投げ飛ばしているし、Gジェネ魂等ではクローで敵機を殴打する攻撃があったりと格闘攻撃も不可能ではないと思われるのだが、ギレンの野望では格闘攻撃が一切出来なくなっている。アームクローはどこぞの脚と同じく飾りですか?偶然わしづかみにされた挙句、味方を道連れにしてしまった哀れなボールの為にも、是非クロー攻撃を採用してもらいたいものである。一方、ビーム撹乱膜は再現されておりGジェネ魂では無類の対ビーム防御を誇る。しかし次回作からはクリティカルで撹乱膜を貫通されるようになったため防御力が低下した。
逆にPSPのアクションゲームのガンダムアサルトサヴァイヴの近接戦においてはクローどころか作中ダントツの巨体そのものを惜しげもなく利用して戦う。下部コンテナをフルスイングして敵に叩き付ける、ダウンした相手をスカート前部の大型スラスターで踏みにじるなどまるで自重しないビグ・ラングの雄姿を堪能することができる
ソーシャルゲーム「スーパーガンダムロワイヤル」では、最高レアの高待遇を受けている。当然他のIGLOO機体よりもレア度が高い。性能も高く、スキル「最終局面での心強い援軍」は全体攻撃+確率でスタン効果という狂性能。本編での無双っぷりを表現した強力な機体に仕上がっている。
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関連項目
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