プリンプリン物語とは、NHK総合テレビで放送されていた連続人形劇である。
放送期間は1979年4月2日~1982年3月19日、月~金18:25~40、全656回。
概要
20年以上続いた「NHK連続人形劇」の枠で放送された最後の作品。「ネコジャラ市の11人」以来のオリジナル作品であるが、元ネタは古代インドの叙事詩『ラーマーヤナ』で、貴種流離譚の一種である。
脚本は「新八犬伝」を手掛けた石山透が担当し、ロマンティックな旅物語に時事ネタ・政治風刺を巧みに取り入れ、魅力的なストーリーに仕立てている。音楽は小六禮次郎が担当、作中の挿入歌のほぼすべて作曲した。人形美術は人形作家・友永詔三が担当。人形劇として初めて球体関節が採用された作品である。柔らかく自然な動きが出来る反面、操作が大変難しく、関節が変な方向に曲がらないようにするのに高い技術が求められ、操演者が腱鞘炎になる程だったという。また古代インドを題材にした為に素材にこだわり抜いた結果、一体あたり100万円近くかかったと言われる。
方向性としてはこれまた「新八犬伝」以降封印されていたミュージカル仕立てとなっており、登場人物たちが毎回歌って踊る。主役に演技経験のほとんどなかった歌手の石川ひとみを起用したことからも、これまでと異なる人形劇を作ろうとする気概が現れている。単独では初めての「女の子の主人公」ということもあって、特に小学校の女の子からの支持が非常に高く、当時皇族だった紀宮(現:黒田清子)も、本作品のファンだったと公言している。
子供向けの物語としても上質で、仲間や困っている人を思いやる気持ち、そのために行動する勇気などを描く一方、よくある勧善懲悪とはせず、時事・政治ネタををふんだんに盛り込みながら、根底には戦争への嫌悪・科学技術への懐疑といったテーゼも横たえている。こうした事から連続人形劇の人気を回復するヒットとなったものの、様々な事情により、1956年から続いたシリーズを締めくくる事となった。
あらすじ
生後間もなく箱舟に乗せられ、海に流された赤子がいた。赤子は流れ流れてアル国アルトコ県アルトコ市の漁師に拾われ、プリンプリンと名づけられて育てられる。
プリンプリンが15歳になった時、箱舟に入っていたティアラが手がかりとなり、彼女はどこかの国のプリンセスだという事が解った。まだ見ぬ祖国と本当の親を見つける為、プリンプリンは仲間と一緒に旅に出るのだった。
登場人物
- プリンセス・プリンプリン(声:石川ひとみ)
- 主人公。
心優しい純真な少女で、正義感も強い。歌を愛し、自らの想いや訪れた国々に寄せてよく歌う。勇敢な性格で、危険な旅に自ら挑む積極的な一面もある。
ランカーに気に入られて追い回されているが、本人はランカーが大嫌い。何度となく誘拐されるが、その都度仲間達やゲストキャラクターから助けられる。 - モンキー(声:斎藤隆)
- 幼いプリンプリンと一緒に箱舟で流された猿。何故か超能力を持っており、更にはヘリコプターや潜水艦まで操縦できる、めっちゃ出来るやつ。ランカーが猿が大の苦手なので、事あるごとに彼を追い払う役割も負っている。
『ラーマーヤナ』における白猿神・ハヌマーンがモチーフ。 - ボンボン(声:神谷明)
- ギターが得意な、ちょっぴりナルシストな少年。自称プリンプリンの「ボーイフレンド」。ただしプリンプリンはよく解ってない。
腕っぷしが強く、腕を曲げると力こぶが「ボーンボーンと」できる為にこの名で呼ばれている。その為、実はええとこのボンボンという意味ではない。 - オサゲ(声:はせさん治)
- 名前の通り、赤毛のおさげの少年。チビだが駿足、踊りが大好き。
大食漢で、口癖は「はらへった」。
後ろから見ると女の子に間違われる事が多く、それで助かった事がある。 - カセイジン(声:堀絢子)
- 火星人……ではなく人間の少年。「予感」という予知能力を持ち、ティンと来ると「予感です、予感がします!」と耳をくるくる回しながら興奮する。ただし的中率はそれほどでもない。
頭が非常に良く、力ではなく知恵でプリンプリンと仲間を助ける。頭が良すぎて、たまに第四の壁を突破してくる事も。メメタァ! - シャーレッケ・マイホーム(声:八木光生)
- 世界的名探偵。モデルはもちろんあの人。イギリス人だが関西弁。妻のワット博士よりは知能指数が劣るが、それを補うように博識で、プリンプリン一行の危機を救う事もある。
ランカーとはチェスの世界大会のライバル。 - ワット博士(声:鷲尾真知子)
- 世界的な動物学者。モデルはもちろんあの人の相棒。マイホームの妻。モンキーの素性について鑑定を行った事が、プリンプリン達の祖国探しのきっかけになった。
伝説の「オーゴンバット」の捕獲を夢見ており、いざオーゴンバットと遭遇すると我を忘れて追いかけ回す。 - ランカー(声:滝口順平)
- ありとあらゆる武器を取り扱う「死の商人」。各国首脳からも恐れられる影のフィクサー。
プリンプリンを見初めて一目ぼれして追い回し、彼女の写真を使ったグッズを大量に飾っている。今でいうところのストーカーで、当然プリンプリンからはものすごく嫌われている。
幼い頃のトラウマにより、猿が大の苦手。そのためモンキーに遭遇するとものすごい勢いで逃げるばかりか、「猿」という言葉にもビビるほど。
名前は『ラーマーヤナ』に登場するラークシャサ(羅刹)の島、ランカー(セイロン島)から。 - ヘドロ(声:真理ヨシコ)
- ランカーの秘書。自称美人だが好みの分かれるところであろう。ランカーに想いを寄せているが全く相手にされていない。そのせいでプリンプリンを逆恨みしており、「小便くさいプリンセス」「薄汚い小娘」呼ばわりもしばしば。
持ち歌はフラメンコ風の「ヘドロの歌」。好きな色は赤と黒。 - シドロ&モドロ(声:パンチョ加賀美・猪熊虎五郎)
- ヘドロの手下。小太りのシドロとのっぽのモドロ。ヘドロの指示で命令をこなすが、大体ヘマをする。
アルトコ市でプリンプリンに助けられ、彼女に恩義を感じて尊敬している。普段はプリンプリン一行と行動を共にしており、旅の仲間として認識されている。 - 花のアナウンサー(声:つボイノリオ)
- アルトコ市中央テレビ局、通称「アル中テレビ」のアナウンサー。物語の狂言回しとしてたびたび登場する。自己紹介する時に「花の~アナウンサーぁぁ~!」とコブシをきかせる。
ボサボサ頭にタラコ唇が特徴の異様な風体で、トラウマになった子も少なくない。挙句番組への投書で「キモいから映さないでくれ」とまで言われてしまった。
なお声を担当したつボイノリオ曰く「みんな持ち歌があるのに、花のアナウンサーはないんですよ」。…え? ほんとはチョイ役だったけど人気があって出番が増えたんじゃなかったっけ…持ち歌もあるし…。 - イモのアナウンサー(声:増山江威子)
- 花のアナウンサーの妹、略(?)して「イモのアナウンサー」。当然顔立ちは兄と瓜二つで、髪型は黒柳徹子とお揃い。兄だけでは手が回らない時にヘルプで登場する。
- オーゴンバット
- 某紙芝居の怪人……ではなく、何処からともなく現れては消える「幻の動物」。
研究すればノーベル賞は確実と言われている。また捕まえた場合には金銀財宝のありかが判明するとされ、事実オーゴンバットが現れた国では様々な秘宝が発見された。ワット博士が発狂する原因。 - ルチ将軍(声:神谷明)
- アクタ共和国編のゲストキャラクター。
ランカーの親友。共和国の独裁者で、やたらデカい頭を持つ。めちゃくちゃな選挙法によって権力を維持しており、夢は世界征服。
アクタ共和国のモデルはナチスドイツ。また独裁者・ピノチェト政権下のチリ共和国を風刺しており、国名自体が「塵芥(ちりあくた)」と、ギャグになっている。
視聴者に強烈なインパクトを与え、キメ台詞の「知能指数は1300!」は当時の子供がよく真似していた。 - 軍曹(声:緒方賢一)
- 角つきヘルメットを被った軍人のおっちゃん。旅先で軍関係の仕事につく事が多い。「~でございますですよ!」という語尾をつけるのが特徴。
当初はアクタ共和国編のみのゲストキャラクターだったが、脚本家の孫のお気に入りとなりレギュラー入り。
追記
保存映像
- 作品映像の保存において、1970年代当時はテープが1本100万円という高額なものだった。その為NHKでは放送後のテープに次の番組を上書きして使い回しており、その結果本作は第1回以外の437話分、実に2/3が失われてしまった。
- 2003年のアンコール放送の際には、プリンプリンと花のアナウンサーによるお詫びが入り、当時の視聴者へのインタビューやあらすじをまとめた特別番組が放送されている。
- 2009年、「NHKアーカイブス」において、この失われた437話分の録画ビデオの募集がかけられた。続々と寄贈された映像はNHKアーカイブスの番組公開ライブラリーに保存され、現在ではオンデマンドで視聴できる。2018年現在、未発掘の回は第265回の1回のみとなり、一部欠落回は残り5回分にまでなっている。どうか見つかりますように!
その他
- 1979年5月4日に放送された第25回では、『ひょっこりひょうたん島』のドン・ガバチョが特別出演。夢の競演が実現した。ただしプリンプリンは相手が誰かわからず、ガバチョが「時の流れはおそろしい」とガックリするというもの。切ないね。
関連動画
関連項目
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