ロケットスレッドとは、地上最速の鉄道である。
概要
レールの上を走る台車をロケットエンジンで加速し、超音速で走行する。
風洞実験ではむずかしいミサイルや戦闘機の射出座席の試験などで使用されている。だがコイツの実力はそんなモノではない。コイツの最高速度は時速10330km(マッハ9.74)。東京〜大阪間を3分12秒で駆け抜ける計算だ。この記録は米国ニューメキシコ州ホロマン(ハラマンとも。Holloman)空軍基地にある全長16kmのレールの上で出された。レールの上を走るのだから“鉄道”に分類できなくもないと強弁できなくもないが、ギネス・ワールド・レコーズなどでは鉄道の記録としては扱われていない。まぁ当然だ。余談だが営業線「リニモ」でおなじみのHSSTも、短い試験軌道で速度試験を行うために日産製のロケットで加速をしたことがある。
ところが実はクレイジーなことに、生身の人間を乗せて走ったことがある。前述のように射出座席の試験などを行う設備&機材であるわけだが、仮に射出がうまく成功したとしても、その結果急減速に晒される人間が無事でなければ意味がない、てなわけで、米空軍の「MX-981」というプロジェクトで「人体は何Gの減速に耐えられるのか」という調査が行われたのだ。
同プロジェクトでは、総責任者のジョン・スタップ大佐が自ら人体実験の被験者となり、数々の貴重なデータが採集された。最終的な実験として、1954年、大佐はホロマン空軍基地でスレッドに付けられたむき出しの座席に座りたった5秒で時速1017kmまで加速した後急減速。その時彼の体には瞬間50G(普通、人間は7Gで気絶する)の衝撃がかかり、目の周りが内出血を起こして一時的に失明するなどの危険な状態であったが、無事「そのような大減速からも、人間は生還可能である」ことが確認され、また大佐は「地表最速の男」として(「空の最速の男」チャック・イェーガーを意識している)話題となった(実際、ブルーフレームによる自動車の速度記録以前には、地表における最速の有人ヴィークルの記録だった)。
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関連項目
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