ロジャー・コーマン(Roger William Corman)とは、アメリカのプロデューサー・映画監督である。
またの名を「B級映画の帝王(King of the Bs)」。
概要
1926年4月5日、アメリカ合衆国ミシガン州デトロイト生まれ。
1954年からハリウッドで仕事を開始し、本格的にプロデューサーに専念するようになったのは1970年からである。
彼の作品の最大の特徴は「安い、早い、うまい」の三拍子と呼ばれる。
とにかく時間と金をかけず、如何に資金を無駄なく回収するかという「プロイテーション(搾取)映画」を数多く世に放った。
予算5万ドル・撮影日数5日間で撮影された「血のバケツ」のセットを解体せずにそのまま利用し、わずか2日間で「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」を撮影したのは、今なお語り継がれる伝説である。
また、彼は「大衆が娯楽に何を求めているのか」をとても熟知していた。
「おっぱいと血みどろを出しておけば喜ぶ」という世の真理に基づき、ふんだんにおっぱいを見せるおいろけシーンとへぼい特撮&ゴアで、鼻の下を伸ばしたおっさんや、映画をダシにいちゃつきたい若者には大ウケした。
ヒットした映画は速攻でパクり、似たような作品を低予算でぱぱっと作って世に放つといったのは日常茶飯事。1990年に発表した自伝「私はいかにハリウッドで100本の映画をつくり、しかも10セントも損をしなかったか」が、タイトルからして全てを物語っている。
そんなロジャー・コーマン最大の功績は、「映画人の発掘」にある。
列挙するだけでも、
- ジェームズ・キャメロン(「ターミネーター」「タイタニック」)
- スティーヴン・スピルバーグ(「ジョーズ」「E.T.」)
- マーティン・スコセッシ(「タクシードライバー」「グッドフェローズ」)
- フランシス・フォード・コッポラ(「ゴッドファーザー」「地獄の黙示録」)
- ロン・ハワード(「ダ・ヴィンチ・コード」「アメリカン・グラフィティ」)
- デニス・ホッパー(「イージー・ライダー」「地獄の黙示録」)
- ジャック・ニコルソン(「カッコーの巣の上で」「シャイニング」)
- ロバート・デ・ニーロ(「ゴッドファーザー」「アンタッチャブル」)
- シルベスター・スタローン(「ロッキー」「ランボー」)
といった、後にアメリカ映画史における名だたる監督・名優を見出し、活躍の機会を与えた。
……と言えば聞こえはいいのだが、要するに低予算映画におけるお賃金の関係で、映画学部を出たばかりの若造や俳優志望のぺーぺーを起用した結果こうなったのである。
実際、「デス・レース2000年」で起用したシルベスター・スタローンが半年後に「ロッキー」でブレイクした後に「あれは安い買い物だった」と発言している。
ぶっちゃけ使い捨てに等しい所業だったが、彼らはこういった場を与えられた事で、キャリアを積み、後に大きく飛翔する為のスタートとなったのである。そういう事にしとこう。
ともあれ、こういった功績を評価され、1996年にロサンゼルス批評家協会賞(生涯功労賞)、2009年にアカデミー名誉賞を受賞している。
国外作品の配給権を獲得してもそのままにせず、「金になる」と感じる内容に改変するという、ぶっ飛んだ事もやっている。
これの際たるものが『風の谷のナウシカ』で、『Warriors of the Wind(風の戦士たち)』と改題、ナウシカは「ザンドラ」と改名され、腐海の設定など重要な場面は「冗長」としてほとんどカットされて配給された。これらの改変は無許可であり、後にこの事を知った宮崎駿は激怒したという。
(ちなみに『ナウシカ』のゲーム化(腐海の蟲を撃ち殺してスコアを稼ぐシューティングゲーム)に対して宮崎が激怒し、以後ジブリ作品のゲーム化がなくなったという説があるが、こうした顛末と混同されている可能性が考えられる)
他にも『日本沈没』は『Tidal Wave(大津波)』と改題した上で1時間近くをカットし、無許可で新しいシーンを撮影して追加。アメリカ人国連大使を主人公にするというとんでもない改変を加えている。一応つけ加えておくと、一切の改変を行っていないバージョンを『Submersion of Japan』と題して別にリリースしている。
一方で自分が良いと判断した作品には手をつけず、『デルス・ウザーラ』はそのまま配給。これが大当たりして収益を上げ、同年のアカデミー賞外国語映画賞を受賞するに至っている。こういう所で当てていく所は流石の嗅覚と呼ぶべきか。
2010年、サメ映画「シャークトパス」を製作。
サメとタコのハイブリッドというぶっ飛んだ発想、21世紀にもなってチープな合成、見るからに低予算ながらB級映画のお約束を網羅し尽くした上で思いも寄らない展開を見せるカルト作品である。
更に続編「シャークトパスvsプテラクーダ」も、妻と共に製作。2016年、第三弾「シャークトパスvs狼鯨」がこれに続いた。
新型コロナウィルスによる隔離が続く2020年4月17日、自身のInstagram上で、初の(そして願わくば最後の)「コーマン隔離映画祭(Corman Quarantine Film Festival)」を開催すると発表。
自宅で安全を保ちつつ、自身または家族・ルームメイトなど「一緒に過ごしている人」の出演による短編映画(2分以内におさめ、携帯電話など手元にある機材での撮影)を募集し、ストーリーはどんなものでもOK。ハッシュタグをつけて投稿した作品を自ら審査し、最優秀作品の受賞者には自らのサイン入り賞状を進呈し、コーマンのチームによる予告編が製作される。
多くの作品が寄せられた結果、最終的に6作品が選ばれた。なお作品はInstagramおよびYoutubeの公式チャンネルで見る事が可能である。
御年90歳を超えて生涯現役、今なお映画の最前線で活躍する偉大なる人物である。
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