ヴとは、ウの濁音である。
概要
英語での「V」の発音を表現する為に使用されることが多い。
「福沢諭吉が、中国語-英語の単語帳「華英通語」を和訳した「増訂華英通語」という本を出版する際に、英語での「V」の発音を表現する為にヴの文字を作り出した」という話が有名。
ただし、この「増訂華英通語」以前にも「ヴ」という表記が掲載されている資料があるとも言われており、福沢諭吉以前にも先駆者は居たようだ。
中二病と「ヴ」とV
世界中で厨房が増殖流行したヴァイナルヴァンタジーセヴンの登場人物「ヴィンセント」や
世界中で厨房が増殖流行した新世紀エヴァンゲリヴォンなどのヒットにより、
特にネーミングにおいて「ヴ」は中二病患者御用達の文字にもなっている。
が、ヴ表記を見ただけでキーボードをモニターに突き刺したくなるようなら中二病ならぬ高二病である。
中二病によらずヴを使う利点としては以下の要素がある。
- 主にヨーロッパ言語におけるV音をB音と区別して表せる。
- 「バイオリン」→「ヴァイオリン」など。ただしVならば全てヴで表わしていいかというと異同がある。例えば英語のVは上記の有声唇歯摩擦音というものだか、ドイツ語でなら無声唇歯摩擦音になる。つまり全然違う(後者は「ファ」行に近い)。ではドイツ語「ヴ」は何なのかと言えば、Wである。Ludwig van Beethovenなどややこしいが、厳密にはルートヴィッヒ・フォン・ベートーフェンとなり、ルートウィッヒやベートーヴェンとするのは英語発音に近い。
- 発音の冗長化を避ける。
- 「ヘビーメタル」→「ヘヴィメタル」など。
現代では外来語の発音をネタ元に忠実に表そうとする原音主義が台頭しているため、中二病とは関係なしに「ヴ」の需要が高く、WikipediaならばVをバ行にして記事を立てれば即座にタイトル変更させられることは間違いない。
よって、サブカルチャーにおける「ヴ」キャラの増加も、必ずしも中二病的センスの賜物とは言えないであろう。
ちなみに表記上「ヴ」が浸透してるからと言って、日本人がちゃんと有声唇歯摩擦音を発音できているのかと言うと全然そんなことはない。大抵「ブ」か、さもなければ「ウ」になってるのが現状である。まあ、何だかんだでそんな発音などめんどくさいだけなので勘弁してくれ。
v音の発音方法
bはpと同じ両唇破裂音である。それに対し、vはfと同じ唇歯摩擦音である。
つまり、「フ」を言う口の形で、声を濁らせれば「ヴ」になる。
また、bとvの違いを確認する方法もある。
bは発音するたびに破裂しないといけない為、音を伸ばす、つまりb〜と発音できないのに対し、
vは摩擦音なのでずっと発音してられるので、v〜と発音できる。
今すぐ貴方もやってみよう。
もしもb〜も発音できるじゃん!と反論してくるやつに言っておこう。
貴方の発音はb〜ではなくてbu〜である。uを入れたら発音できるのは当たり前。
ヴのひらがな表記
主に外来語で使用する為に存在している文字であって古くからの伝統的な日本語のみの表現においては必要とされていなかった。そのため元々はひらがなは存在せず、カタカナのみ存在していた。
しかし外来語に影響を受けた表現やコミカルな表現(うめき声の表現など)で使用されるようにもなり、またコンピューター上でのひらがなとカタカナの相互変換の場などで支障を生じることもあったため、「う」に濁点を付ける形でのひらがな表記も自然と必要とされるようになった。
コンピューター上で「う」に濁点が付いたひらがな1文字を標準規格として定義したのは2000年に制定された「JISX2013 7ビット及び8ビットの2バイト情報交換用符号化拡張漢字集合」である。
これは制定後に様々な環境で実装されていったが、環境によってその時期に差があった。つまり、ひらがな版の「ヴ」を1文字であらわした文字、すなわち「ゔ」は環境によっては表示できない文字となったのである。2008年9月17日にニコニコ大百科の読み仮名が、ひらがなからカタカナに変更されたのは、このことが元凶である。
2015年現在では大多数の人の閲覧環境においてヴのひらがな表記「ゔ」は表示可能になっていると思われる。しかし、「ゔ」←この鉤括弧内の文字が表示されていない場合、あなたの環境ではひらがな版の「ヴ」は表示できていないということになる。
1文字の「ゔ」が入力・表示できない場合に、うの後に半角濁点をつけた「ゔ」として無理矢理入力・表示が試みられることもある。
五十音順での位置
「ヴ」や「ゔ」で始まる単語は、五十音順で並べるときにどの文字の場所に入れればいいのか?
何かを五十音順に並べた一覧を作るとき、誰もが一度は頭を悩ませる問題である。
考えられる対処法としては
- 「ウ」に濁音が付いたものと解釈し、「ウ」に入れる(JIS規格「JISX4061 日本語文字列照合順番」ではこの方法をとっている)。
- 「ヴァ」「ヴィ」「ヴ」「ヴェ」「ヴォ」を発音が近い「バ」「ビ」「ブ」「ベ」「ボ」の別表記と解釈し、「ハ行」に入れる。
- 「ヴァ」「ヴィ」「ヴェ」「ヴォ」を「ワ」「ヰ」「ヱ」「ヲ」に濁点が付いたものと解釈し、「ワ行」に入れる。「ァィェォ」の入らない「ヴ」一文字は「ウ」に入れる。
- 以上のような「ウ」「ハ行」「ワ行」のどれにも解釈せず、特殊な文字として、
などがある。
注目すべきは上記の1.と4.-Ⅰ.のどちらにもJIS(日本工業規格)という言葉が出てくるところか。同じJISの中ですら、その順序付けが一貫していない。誰もが納得する正解はないと言ってもいいだろう。
伝統を重んじるあなたには
辞書などでは、JISX4061に従って1.の並べ方が採用されていることが大半である。
コンピューターを駆使する君には
コンピュータープログラムでの自動ソートでは、文字コードに基づいた4.-Ⅰ.の結果となることも多いようだ。
めんどくさがりのお前には
上記1.の並べ方を採用した時には、例えば
「英語表記はVA○○○○らしいが、公式の表記はカタカナ。しかし公式表記もヴァ○○○○と書いたりバ○○○○と書いたりで一貫していない」
というような言葉を並べるとき、「ウ」に入れるか「ハ」に入れるかについての検討の手間が必要になってしまう。同じ問題は3.や4.でも生じる。
2.の並べ方ならば「ヴァ○○○○」でも「バ○○○○」でも入れるところは「ハ」で変わらず、検討せず機械的に分類できる。
使用例
関連項目
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