万歳突撃(英:BANZAI Attack/BANZAI Charge)とは、太平洋戦争時に日本軍が多用した玉砕前提の突撃戦法である。
概要
万歳突撃の起源は日露戦争中の旅順包囲戦とされる。ロシア帝国軍の陣地や大砲に対して人海戦術による突撃を行ったが、死体の山が築き上がるほどの大損害を受けたため、この時は戦術として有用と見なされなかった。後の1930年代に起きた中華民国との戦いで突撃が効果的と判断され、帝國陸軍に取り入れられる。というのも中華民国軍は機関銃を持っておらず、主な武器は装填速度に難があるボルトアクション式の銃だった事も手伝って突撃が大変有効であり、少ない兵力の日本側が突撃で何度も中国軍を打ち破った。
そして太平洋戦争中、太平洋の島嶼に配備された日本軍は補給も増援も望めない状況の中、圧倒的優勢なアメリカ軍と戦った。戦力を払底して万策が尽きた時、あるいは玉砕が免れない戦況になった時、守備隊は最後の手段に出る。「生きて虜囚の辱めを受けず」という戦陣訓に従って投降する選択肢は無い。では何をするか。全滅と引き換えに敵に大損害を与える万歳突撃である。最初に使われたのは1942年のガダルカナル島争奪戦と言われる。
参加する兵士は天皇陛下への忠誠や威勢の良い言葉を絶叫しながら、銃剣を片手にアメリカ軍へ突撃。自ら位置を喧伝しながらの突撃となるためアメリカ軍の迎撃は早く、機関銃に撃たれてバタバタと薙ぎ倒されるが、突撃は全滅するまで続く。銃撃を掻い潜って敵の陣地まで辿り着いた日本兵は白兵戦を仕掛けて米兵を刺し貫く。しかしながら陣地まで到達した例は少なく、猛然と火を噴く機関銃を前に全滅してしまう事が多かったという。この万歳突撃はアッツ島、タラワ、ビアク島、サイパン、沖縄などで使用された。一方でペリリュー島と硫黄島では戦闘初期の万歳突撃を禁止し、持久戦に持ち込んでアメリカ軍に出血を強いた後、万策が尽きた最後に突撃を行って玉砕した。実のところ十分な弾薬と縦深防御を持つアメリカ軍には効果が薄く、むしろ万歳突撃は戦闘が早く終結する事から、指揮官クラスや将校に望まれていた節もある。
ただし突撃の矢面に立たされる最前線の米兵にとっては恐怖そのものだった。昼夜問わず行われる万歳突撃、死をも恐れず突撃してくる日本兵はまさに冥府からの使者であり、戦闘ストレス反応を発症したり発狂する米兵も出たほど。連合軍は「バンザイアタック」「バンザイチャージ」と呼称し、神経を尖らせながら警戒しなければならなかった。
万歳突撃は玉砕前提だが、ごくまれに生き残って捕虜になる者もいる。
万歳突撃の島々
最初に万歳突撃が行われたのは先述の通り1942年のガダルカナルの戦いである。この頃はまだ日米初の激突だっただけに万歳突撃という言葉は無かったが、これを受けたアメリカ兵は一様に驚いたという。
次に万歳突撃が起きたのはアッツ島の戦いだった。1943年5月30日早朝、追い詰められたアッツ島守備隊約1000名が決行、アメリカ軍の前線を突破したものの、すぐさま熾烈な反撃を受けて壊滅してしまい、約30名ほどしか生き残らなかった。同年11月23日夜、損耗したタラワ守備隊約110名が3回に渡って万歳突撃を敢行。しかしいずれも同一地点を攻撃したため軽微な損害しか与えられず守備隊は玉砕した。同日中にマキン守備隊約30名も万歳突撃を敢行したが壊滅している。
1944年2月5日、阿蘇大佐に率いられたクェゼリン守備隊が午前10時より万歳突撃を開始し、午後12時30分頃に壊滅して本格的な戦闘は終結した。エニウェトクを巡る戦闘では2月19日にエンチャビ島守備隊が、2月21日にエニウェトクの守備隊が万歳突撃して玉砕。
万歳突撃が最も戦果を挙げたのは、1944年7月7日にサイパン守備隊が行ったものである。司令官が自決した後、守備隊の残存戦力をかき集めて実施された。この突撃には負傷兵、婦女子、子供まで参加したとされ、中には徒手空拳で参じた住民もいたという。また突撃とは裏腹に守備隊はゆっくりとアメリカ軍の陣地に接近して距離を詰め、米兵に気付かれて機銃を撃ちかけられた所から従来通り突撃を開始した。敵の陣地からは猛烈な銃撃が加えられたが、斃しても斃しても守備隊の突撃は止まらず、ついに恐怖に駆られた一部の米兵が陣地を捨てて逃げ出し始める。混乱した隙を突いて第一陣と第二陣を突破。しかしここで沖合いに展開中のアメリカ艦隊から艦砲射撃を受けて壊滅、翌日4000体以上の日本兵と住民の死体が残されていた。
このように万歳突撃が繰り返されていたが、ペリリュー島守備隊を指揮する中川州男大佐は万歳突撃を禁止。持久戦を行うよう命令した。また硫黄島守備隊の栗林忠道中将も万歳突撃を禁じ、十人の敵を殺すまで死ぬ事は許さない「一人十殺」を標語にした。万歳突撃を禁じた結果、アメリカ軍は大出血を強いられる羽目になったが、万策尽きた後は万歳突撃をして果てた。
ゲームでは
第二次世界大戦を題材としたゲームでは、日本軍の専売特許として万歳突撃が採用される事がある。
Rising stormでは日本兵限定のアクションとして実装されており、発動すると「天皇陛下万歳!」「うおおぉー!」と絶叫しながら突撃する。その間防御力が上がっていて、相手に制圧効果を与える。味方と歩調を合わせて発動すれば戦局すらひっくり返す。ただし火炎放射を受けると即死する。あと絶叫するので敵側に万歳突撃を察知されやすい。ゲームを買ったばかりの新兵はとりあえず万歳突撃をやってみようと薦められる。みんなで突撃して戦局をひっくり返すと爽快感抜群な事から、日本兵側でプレイをしたがる外国人も多いとか…。
関連動画
関連項目
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