中村正(なかむら ただし)とは、1929年生まれの日本男性声優、ナレーターである。
概要
テレビ草創期(生アテレコ時代)から活躍するベテラン声優。趣味はゴルフ。
東京俳優生活協同組合(俳協)に所属し、それの創立メンバーの一人でもある。CMやテレビ番組のナレーションとしても多く活躍している。
『チャーリーズ・エンジェル』のチャーリー役を務めたジョン・フォーサイス、デヴィット・ニーヴンの吹き替え、また『奥さまは魔女』のナレーションでも知られる。
初アテレコは「地方検事」の生アテレコ。初めは原語と吹き替えの両方だったが、原語が邪魔という声が多くなり日本語だけになったそうだ。当時はセリフと口を合わせようとするだけで精一杯で専属翻訳者が居なかったので、直訳そのままだったという。
声質は暖かみがあるバリトンでアニメというよりも映画の吹き替えを担当する事が多いため、吹き替え映画をよく見る人たちには馴染み深い声優ともいえる。
『アラビアのロレンス』ではホセ・フェラーのアドリブ表現を、池田昌子が面白くて違和感がなかったと評価している。
『奥さまは魔女』では「奥様の名前はサマンサ、旦那様の名前はダーリン...」という役2行程のセリフを完成させるために丸一日、費やしたという。それはディレクター・内野望博が「ナレーションは軽快かつオーバーにやってほしい」と指示したものの、中村本人が照れてなかなかOKテイクが出なかったという。また、その名ナレーションが多くのCMやテレビ番組(ドラマ『ママはアイドル』、ドキュメントバラエティ『奥さまは外国人』、トステムのCM)でパロディとして利用され、それに声を当てているのも中村本人である。
デヴィッド・ニーヴンに関しては、もともと中村自身が軽妙で中年のイヤらしさがちょっと出て、それでれいて洒落ている役柄が好きだったため、アテやすかったという。台本にないセリフもアドリブを入れることが多くニーヴンの表情から動きからアドリブを入れても違和感のない呼吸が分かるそうだ。ニーヴンと自分との呼吸はぴったりだ、と自負している。
しかし自分は泥臭くて英国紳士の洒落っ気がうまく表現できていない、と言うがそういう時はコミカルにしてカバーしているそうだ。ニーヴンの吹き替えを本当に楽しんでやっているらしい。
ただケーリー・グラントはニーヴンと違い二枚目でコミカルさが無く、悪ふざけのし過ぎが出来ないので二枚目を崩さずその中で遊ばなければならない、から難しいという。ただしグラントの恋愛ものには深刻さが無いので中村自身にとっては救いだったそうだ。一番印象に残っている映画は『シャレード』。
自分自身の声を泥臭くて綺麗でなく、声自体は硬いため言い回しによって柔らかくしているそうだ。また、中村のナレーションなどからは想像しがたいが、本人の地声は早口でぶっきらぼうらしい。本人談によれば「普段は口下手でダメだが、原稿をもらってそれを読むことに徹したため、台本を渡されるとうまくやれる。だから今の若いアナウンサーがベラベラ喋っているのを見ると、尊敬する」という。
アテレコの魅力を、アテレコする相手の俳優の演技にのれて演技ができること、だという。名優の呼吸を飲み込んで同時に演技ができるので生きがいだと語り、うまくこなせた時は嬉しくなるという。70年代のインタビューでは、まだ映画館で吹き替え版が公開されていなかったころ、若い人たちはTVの洋画劇場で育ちスターの生声を知らない人が多いから劇場でも吹き替え版をなぜ作らないのか、と疑問を呈していた。アテレコの仕事は生きている限りやり続けたい、という。
2019年11月11日午前、胆のう炎による敗血症のため神奈川県内の病院で死去。享年89歳。
主な出演
アニメ
吹き替え
- デヴィット・ニーヴン(ピンクの豹、八十日間世界一周など)
- レスリー・ニールセン(裸の銃を持つ男シリーズ〝フランク・ドレビン役〟など)
- レックス・ハリスン(マイ・フェア・レディなど)
- エロール・フリン(日はまた昇る、サンアントニオなど)
- ビング・クロスビー(ホワイト・クリスマス、我が道を往く、駅馬車など)
- ケリー・グランド(ミンクの手ざわりなど)
- フレッド・アステア(足ながおじさんなど)
- マイケル・ケイン(奥さまは魔女、サイダーハウス・ルールなど)
- ナイトライダー - デボン・シャイアー(エドワード・マルヘアー)
関連動画
関連項目
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