京急新1000形とは、京浜急行電鉄(京急)が保有する通勤型電車である。
概要
優等の快特から普通車、そして都営・京成・北総・スカイアクセス各線への乗り入れまで何でもこなす3扉車。最新形式であり、乗り入れ先の各線でもよく見られることから京急の顔とも言える。
老朽化した旧1000形・700形・800形の置き換えとして生まれ、現在も引き続き製造されている。
なお正式な形式名は1000形であるが、かつて1959年登場の1000形が同時に存在したことから便宜上新1000形やN1000形と呼ばれている。
クロスシート車の2100形をベースに、3扉ロングシートや18mちょうどの車両全長など、都営浅草線乗り入れ協定に準拠した汎用車両として誕生した。前面は引き続き600形由来のバルーン顔であるが、ワイパーカバー(ステンレス車では省略されるが当該位置は白く塗られている)には「1000 」の文字を入れ認識性を高めている。
車内には赤・ピンク系の色のモケット・袖仕切りと妻壁を採用し、2100形とは一転して暖かみを感じさせるものとなっている。ロングシートは非常に座り心地の良い(こだわりの物らしい)バケットタイプの片持ち式となった。
バリエーション
特筆事項として新1000形というグループの中に非常に多くの、そして大規模な仕様変更が存在することが挙げられる。以下にそれぞれの特徴を簡単にまとめるが、共通事項に関しては上記の「概要」段落を参照されたし。
アルミ車
最初に登場し2006年までの製造分。8連と4連があり、2100形をベースとした3扉のアルミ製の車体(全身赤で窓周りがクリーム)を持つ。
車端部に2100形と同形状モケット違いのボックスシートと補助席を設置、ドアには化粧板を貼付している。落成時期によって窓ガラスはグリーン着色かスモーク着色、行先表示機は幕かLEDといった小さな違いが存在する。
主制御機のVVVFインバーターは独シーメンス製であるが、増備途中でインバータの素子がGTOからIGBTへと切り替えられた。前者は発車時に音階を奏でる「ドレミファインバーター」で、2100形と共に強い人気を誇っている。
編成は8連と4連が存在するが、組み換えで6連を組成できる構成としたため、MT比はどちらも同じである。初期車は2100形と同じく1:1であるが、雨天時の走行特性に難があったため、インバータの素子がIGBTに変更された後期車では3:1とされた。
遅いペースではあるが車体の更新工事が進んでいる。走行機器(主制御装置・主電動機)の換装も一部の編成で行われ、現状4連は東芝製、8連は三菱製に換わっている。…のだが、三菱製の機器(フルSiCのVVVF装置+外扇式全密閉モーター)に換装された8連は、なぜか都営浅草線に入れなくなってしまった。ちなみに、同じ機器を搭載する1177以降の8連ステンレス車も、同じく線内運用に限定されている。
シーメンス製GTO |
シーメンス製IGBT |
東芝製IGBT |
三菱製MOSFET(フルSiC適用) |
ステンレス車
これまでの製造分とは全く異なる外観で、JR東日本E231系ばりのステンレス車体を持つ。現在製造されているのはこのグループである。新1000形でもステンレス車だけを指し「銀千」「S1000」「銀様」と呼ぶことも。
前面以外は未塗装だが、腰板を覆う赤く1条の白帯入りの広いフィルムが幕帯と共に京急車であることを強く主張している。前面は従来のものを元に、より丸っこくかわいい顔つきとなった。ワイパーカバーが省略された輪郭について、いつもの人曰く「このわずかなふくらみが(ry」
走行機器は1500形のVVVF化改造車と同じ機器を搭載しており、600形以来の国産品の採用となった。
また2010年度増備車からは運転台の配置を見直し、京成線で使用される装置を追加。これらの編成は600形と共に成田スカイアクセスへの乗り入れを開始した。同時にドア鴨居部には車内情報装置(LCD)が取り付けられている。
外観だけでなくドアや窓周りなどもE231系の造りとなったり、車端のボックスシートがロングシートへ切り替わるなど質の低下も取り沙汰されるが、こだわりのふかふかロングシートは存置され引き続き好評を得ている。また鉄道ファンの間では運転室直後の展望席が無くなったと嘆く声も…。こうした声が影響してか、2016年度に登場したマイナーチェンジ車からは内装がアルミ車に近い雰囲気に回帰した上、部分的にボックスシートが復活している。なお、ボックスシートの壁にあるコンセントは乗客が携帯端末の充電などに使用できる。
また、外観への評判についても中の人として思うところがあったらしく、2016年3月に登場した1800番台からは車体側面のカラーフィルムがアルミ車と同じ塗分けに変更され、マイナーチェンジ車でもこの変更が適用されている。さらに2017年度新造車からは「"京急らしさ"を取り戻すため」として、なんとステンレス車体に塗装が施されることとなった。この方針は少々急な決定だったようで、一部編成は塗装作業未完のまま車両工場からの出場を余儀なくされ、白い京急電車が本線を走るという珍事が数回見られることとなった。
8連:1073~1192・1201~1224 18編成
ステンレス車として最初に登場。6M2Tの編成を組み、1500形のVVVF化改造車と同じ三菱製の走行機器を搭載する。マイナーチェンジ車の1177編成からは走行機器が変更され、同じ三菱製ながらMOSFET素子(フルSiC)のVVVF装置と外扇式全密閉モーターが採用されている。
6連:1301~1372・1601~1624 16編成
800形の置き換え用として2011年に登場。ステンレス車の4連と同じ走行機器で4M2Tの編成を組む。マイナーチェンジ車は1600番台を名乗るが、こちらでは走行機器の変更は無い。
2015年12月に運用を開始した1367編成のみ、PMSMをはじめとした東芝製の走行機器を搭載しており、京急唯一のPMSM車となっている。長期試験と思われるが詳細は不明である。基本的な走行性能は既存の銀千と同等のようだ。
4連:1449~1492・1801~1812 14編成
2008年に登場。走行機器は1500形のVVVF化改造車と同じ東洋電機製で、京急線内における制御電動車の規則を遵守しつつ2両1ユニット構成の機器を搭載したため、首都圏では今時珍しい全車電動車構成となった。なお、この走行機器は4M2Tの編成を前提とした設計であり、4連では実効出力を抑えて使用している。
1801~1812の3編成(1800番台)は連結した際に編成間の通り抜けができるよう貫通扉が設置されており、顔つきが他のステンレス車とは大きく異なる。
運用
編成は8連・6連・4連が存在する。8連・4連では新1000形同士のほか、2000形・1500形・600形・2100形とも連結可能(最大12両編成)であるため、様々な組み合わせが見られる。
8連
都営線方面への乗り入れが可能で、京急線内で普通車になることができない。そのため京急線内では都営線方面直通のSH快特(列車番号末尾がSH、快特のほか特急・急行もある)や横浜方面のエアポート急行に使用される。都営・京成・北総・スカイアクセス各線においては列車番号末尾がHの列車の一部に使用される。
なお、アクセス特急運用には基本的に600形と新1000形ステンレス車(2010年度新造車のみ)が入る。
6連※ステンレス車のみ
直通運用には使用されず、京急線内で普通車や横浜方面のエアポート急行に使用される。
4連
直通運用には使用されず、京急線内で普通車と快特・特急への増結車、4+4の8連で京急線内のエアポート急行として使用される。1800番台も通常は4連として運用されるが、車両不足などが生じた場合には1800番台同士を貫通幌で繋いで8連を組成し、SH快特など都営線方面直通の運用に入ることがある。
いずれの編成も他形式と区別無く使用されるため、時刻表や過去の記録・動画だけで新1000形が使用される列車を特定するのは困難である。どうしても特定の車両を狙いたいのならば、当日ひたすら待つしかない。
関連動画
関連商品
関連項目
京急保有の現役車両 |
800形 ─ 1500形 ─ 600形 ─ 2100形 ─ 新1000形 |
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