人権侵害救済法案とは、現在成立に向けて検討が進められている法案のひとつである。
概要
人権侵害救済法案の名称は、自民党の人権擁護法案に対し、民主党が対案として作成した法案に遡る。
当時は、マスコミの取材への規制などが盛り込まれ、強い強制力を持った人権擁護法案に対し、報道を規制せず、より穏健な内容として検討されたものであったが、人権擁護法案そのものが流れ、日の目を見ずに終わった。
2012年9月には、名称を「人権委員会設置法案」としたうえで、提出に向けて検討を進める閣議決定がなされ、11月9日、法案の国会提出が閣議決定された。それに伴い、法務省のサイトにて法案が公開されている(こちら)
内容を一言で言うと、人権委員会という新しい組織を作り、裁判を使わずに人権侵害の被害者を救済しよう、というもので、これは当初の人権擁護法案と大筋では変わっていない。
というのも、そもそも人権擁護法案が提出されることになった理由が、国連規約人権委員会から、国際人権規約に基づき、日本の人権擁護が不十分であるとして改善勧告(内容はこちら)を受けたからであり、いずれも大枠ではその内容に沿ったものとなっているからである。
何を救済するのか
さて、ではこの法律で「救済」の対象となるのは、「人権侵害」および「差別助長行為」であるが、具体的に何か。
概要にも説明はあるが、法律に興味がある人でなければ、はっきりとはイメージできないかもしれない。
- 人権侵害
1.特定の者に対して、
2.その有する人権を侵害する行為であり
3.司法手続においても違法と評価される行為
・・・いきなりわけのわからない法律表現である。
まず、1の「特定の者」というのは、「不特定多数」ではないということである。これは、現行の日本の法律が、不特定多数の人権を認めていないためで、対象は特定個人である必要がある。
次に2と3であるが、ようは、他の法律で人権侵害とされているもの(刑法犯や民法上の不法行為など)ということである。この法律では人権侵害の新たな定義は設けず、既存の法律の基準をそのまま使うことになる。
ただし、例外として、憲法には公務員の憲法擁護義務が定められているため、公務員の場合は憲法上の基本的人権を侵害した場合、法律の規定がなくとも人権侵害となる。
(勘違いされがちであるが、憲法は国家権力を制限するものなので、国民には擁護義務がない)
- 差別助長行為
1.人種等の共通の属性を有する不特定多数の者に対する不当な差別的取扱いを助長・誘発することを目的として
2.当該不特定多数の者が当該属性を有することを容易に識別することを可能とする情報を
3.文書の頒布・掲示等の方法により公然と摘示すること
わかりにくさここに極まれりである。「どうせ法律家以外読まないだろ?」という意図が透けて見える。
人権擁護法案や人権侵害救済法案の当初案に全く同じ文面があるので、条文をそのまま持ってきているだけということだ。まさにお役所仕事としか言いようがない。
これは何か、というと、ようは「部落地名総鑑(あるいは部落名鑑)」のことである。
大抵は暴力団と繋がりのある興信所等によって作成され、企業に高額で販売されるもので、企業はこれを元に就職希望者の戸籍等を確認し、被差別部落出身者だった場合は入社を拒否する、等の目的に使われる。
名指しを避けた上で、それ以外のものが含まれないように範囲を狭めるため、こんなわかりにくい表現になってしまっているが、ようは部落名鑑やそれに類するものの頒布、公開をしなければ関係ない部分となる。
人権委員会は何ができるのか
人権委員会ができることは以下のとおりである。
- 調査
救済対象の行為について、調査を行う。なお、人権委員会が行えるのは任意の調査だけで、初期の人権侵害救済法案にあった特別調査は盛り込まれないこととなった。そのため、調査に強制力はなく、拒否しても罰則はない。
- 援助
被害者等に対する助言、関係行政機関等への紹介、法律扶助に関するあっせんその他の援助を行う。
これは人権侵害が認定されなくとも、訴え出た時点で受けられる。ようは相談所としての機能。
- 調整
被害者等と加害者等との関係の調整を行う。援助と同様、人権侵害が認定されなくとも行える。
つまり「まあまあもう一度話し合ってみてくださいよ。こちらからも連絡しますから」ということ。
- 説示
加害者等に対する説示。「こういうことはよくないですよ」と説明し、行為をやめるよう求める、だけ。
人権侵害が認定された後に行う。
- 勧告
説示より強く、人権侵害行為をやめるように求める。組織的な行為の場合は個人ではなく団体相手に行うことも。
加害者側が公務員の場合は調整や説示は行われず、いきなり勧告となる。
- 通告・告発
刑法に引っかかるような人権侵害行為(暴行、脅迫等)が認定された場合、加害者側に通告を行い、指示に従わなかった場合は、人権委員会、人権擁護委員から警察への告発を行うことができる。
- 要請
加害者側に、出頭しての説明や、文書による説明などを要請することができる。
- 公表
加害者側の組織名や、所属、氏名を公表する。加害者が公務員で、かつ勧告に従わない場合のみ行われる。
- 資料提供
公務員に対する勧告が行われた際、被害者が行使できる権利についての資料を提供する。
- 調停
被害者側と加害者側の話し合いの機会を与え、調停案を提案する。調停を行うことについて双方の合意が必要。
- 仲裁
人権委員会が仲裁判断を行う。仲裁を行うことについて双方の合意が必要。
その他の変更点
現在、各都道府県に設置されている人権擁護委員(約14,000人)は、人権委員会の下に置かれることとなる。
もともと、人権擁護委員はこの人権委員会の業務と同様のことをしており、国の組織が統括することで、相互の連携を取りやすくする意図があると思われる。
それに伴い、現在の人権擁護委員は公務員として扱われないが、同時に法改正で国家公務員扱いとなる予定である。これにより、人権擁護委員も国家公務員法や人事院規則などの拘束を受けることになる。
人権擁護法案の危険 Q&A
- Q.この法律を利用して政府が自分たちにとって都合の悪い発言を弾圧しようとしたりしないか。
A.上でも述べた通り、この法律で言う人権侵害は法律に違反するような行為のみであり、不可能である。
- Q.人権侵害の基準が曖昧なので、漫画やアニメなどの創作ができなくなってしまうのではないか。
A.特に曖昧なところはない。人権侵害となるのは、「人権を侵害するような法律上の違法行為」「憲法で保証された人権を侵害する公務員の行為」「部落名鑑的なものの公開・頒布」である。
- Q.外国人参政権などに反対、という意志を持った人に対して何度も何度も執拗に勧告を続け、賛成の人しか選挙に行けない、などの内政干渉が行われる危険がある。
A.まず、救済のためには1件ごとに特定の被害者の申し立てが必要である。次に、外国人参政権に反対の意志を持つことと、それが日本の法律に違反することの立証が必要である。また、参政権は憲法で保証された権利であるので、国家公務員である人権委員会、および人権擁護委員がそれを制限する行為は本法律の定める「人権侵害」となり、救済の対象である。
- Q.法案の名前をころころ変更するのは政府もこの法案が後ろめたいものであると自覚している証拠ではないのか。
A.法案の名前が変わったのは、今国会提出を目指して法案の中身を再検討した際の1度だけである。
(自民党の人権擁護法案と民主党の人権侵害救済法案はもともと別の法案であり、変わったわけではない)
関連動画
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法務省 TEL 03-3580-4111
FAX 03-3592-7393
メールhttp://w
なお法案名を一文字でも間違うとまともに取り合ってもらえない模様なので要注意。(ソースは当掲示板の>>54)
法案名は人権委員会設置法案、人権委員会設置法案である。大事なことなので2度(ry
また法案名がちょくちょく変わっているようなので、投書を送る方は注意。
もし変わっているのを目にしたら掲示板にて知らせて頂けると喜びます。
外部リンク
関連項目
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