太平洋フェリーとは、愛知県名古屋市に本社を置く海運会社、及び同社が運航するフェリーの名称である。
概要
1982年4月8日に前身である「太平洋沿海フェリー(1970年創業)」から事業を承継し設立。筆頭株主は名古屋鉄道で、名鉄グループの一員。
名古屋 - 仙台 - 苫小牧の定期航路を持つ、日本を代表するフェリーである。
現在3隻のフェリーを運航しており、リーズナブルながらも日本屈指の豪華な設備で人気を博している。
定期航路
その他の航路
ダイヤ
2015年6月現在。時刻の(N)は、第N日目であることを表す。
名古屋と苫小牧の間を通しで利用する場合、所定の手続きを踏んで仙台で途中下船することができる。
運航船舶と運用
「いしかり」、「きそ」、「きたかみ」の3隻が運航されている。
いずれも大型のフェリーで、特に「いしかり」「きそ」はそれぞれ総トン数約15800トン、全長199.9mの大きさを誇る。その他のスペックについてはWikipediaの該当箇所を参照。
船舶
太平洋フェリーの船舶は評価が高く、海事プレス社発行の船旅雑誌「クルーズ」の「クルーズシップ・オブ・ザ・イヤー」のフェリー部門(フェリー・オブ・ザ・イヤー)を同賞創設の1992年以来23年連続で受賞している。
- いしかり
- 2011年就航の最新鋭フェリー。同じ名前を冠する船としては3代目となる。客室の構成としては「きそ」と同様の構成だが、2等船室の定員が「きそ」よりもさらに減少している。フェリー・オブ・ザ・イヤーにおいて2011年から4年連続で第1位。
ちなみに2011年3月11日に東京に寄港している。 - きそ
- 2005年就航。「きそ」としては2代目。「きたかみ」にあったA寝台がなくなった代わりにS寝台が新たに設定された。また、2等船室の定員が「きたかみ」より大幅に減っている。2005年から2010年までフェリー・オブ・ザ・イヤー6年連続受賞。
- きたかみ
- 2019年就航、それまでの旧「きたかみ」(1989年就航)を置き換えた。「いしかり」「きそ」よりも小さめなのは先代と変わらず、旅客定員も535名と他2つより200名ほど少ない。「エコノミーシングル」という従来のS寝台より広い寝台が新たに備わったのも特徴。仙台-苫小牧間の往復運用が想定されているため、シアターラウンジなどは省略された。
運用
名古屋 - 苫小牧間(仙台経由)の通し運用には通常「いしかり」「きそ」が入り、「きたかみ」は仙台 - 苫小牧間を往復する運用についている。このため、通常「きたかみ」が名古屋に来ることはない。
ただし、1月から2月にかけてがドック入り期間となっており、この期間は変則的な運航になる。
客室
船によって客室設備が異なる。3隻それぞれ●印のついた客室設備を持つ。☆のついた客室(個室)は、窓から外の風景を見ることができる。
また、以下に挙げた以外にもトラックドライバー用のドライバー室がある。
客室等級 | いしかり | きそ | きたかみ |
---|---|---|---|
ロイヤルスイートルーム | ☆ | ☆ | × |
スイートルーム | ☆ | ☆ | × |
セミスイートルーム | ☆ | ☆ | × |
特等客室(和室) | ☆ | ☆ | ☆ |
特等客室(洋室) | ☆ | ☆ | ☆ |
1等客室(和室) | ☆ | ☆ | × |
1等客室(和洋室) | ☆ | ☆ | × |
1等客室(洋室) | ● | ● | ☆ |
エコノミーシングル | × | × | ● |
S寝台 | ● | ● | × |
A寝台 | × | × | ● |
B寝台 | ● | ● | ● |
C寝台 | × | × | ● |
2等(広間) | ● | ● | × |
ロイヤルスイート・スイート・セミスイート
最上級の客室。ツインベッドの洋室で、定員は2~3人。「いしかり」「きそ」のみの設定。
バス(浴室)、シャワートイレ、冷蔵庫、テレビ、インターホン、カードキー、各種アメニティなどが揃う、至れり尽くせりの豪華な客室である。全食事(バイキング)つき。
また、この等級には「早割」が適用されない。
特等客室
洋室、和室の2種類がある。ただし和室は室数が少ないので予約が埋まりやすい。いずれも定員2~3名。
スイートよりは狭いものの、こちらもバスやシャワートイレを備えており、スイートに匹敵する設備を誇る。
1等客室
洋室、和洋室、和室の3種類(「きたかみ」は洋室のみ)。
なお、洋室については客室から外が見えない(「きたかみ」は除く)。
エコノミーシングル
「きたかみ」のみ設定。一応相部屋だが、シングルルーム感覚で使える一人旅に最適な寝台。
S寝台
「いしかり」「きそ」のみの設定。
相部屋ではあるが、カーテンを閉めて内側から簡易的なロックがかけられるためプライバシーは保たれる。1段ベッドであり、房内で立って着替えをすることができるほどの広さがある。BSデジタルテレビ、蛍光灯と常夜灯も備える。
B寝台との価格差も少なく、一人旅におすすめ。
A寝台
旧「きたかみ」に設定されていた、カプセルタイプの2段ベッドである。テレビ、空調、灯具を完備。
B寝台
B寝台は2段ベッドでありながら入り口が互い違いになっており、従来の2段ベッドよりもプライバシー重視のつくりとなっている。こちらはS寝台同様、内側からロールカーテンにロックをかけることができる。
旧「きたかみ」のB寝台は、寝台列車の開放式B寝台と同じようなつくりとなっており、相部屋感が強かった。こちらにもカーテンはあるが、横引きカーテンであった。
C寝台
B寝台と似ているが設備が簡素化され、その分価格を抑えた寝台。「きたかみ」のみの設定。カーテンは横引きカーテン。
2等
大広間に多くの布団が敷かれている、伝統的なスタイル。完全な相部屋であるが、格安で利用することができる。時代の変化に伴い、新しい船舶がデビューするごとに数を減らしており、「きたかみ」ではついに廃止された。
運賃・割引
以下に示すのは「A期間(閑散期)」の片道普通運賃である(税込)。
A期間以外に年末年始、ゴールデンウィーク、夏休み期間、シルバーウィークは運賃がやや高くなる「B期間(繁忙期)」、お盆休み期間は運賃がさらに高くなる「C期間(最繁忙期)」と定められている。B期間及びC期間の運賃は公式サイトを参照されたい。
いしかり・きそ
客室等級 | 名古屋⇔苫小牧 | 名古屋⇔仙台 | 仙台⇔苫小牧 |
---|---|---|---|
ロイヤルスイートルーム | 60900 | 46300 | 51800 |
スイートルーム | 45200 | 31600 | 36900 |
セミスイートルーム | 41400 | 28900 | 33400 |
特等客室(和室) | 28200 | 19000 | 23000 |
特等客室(洋室) | |||
1等客室(和室) | 23000 | 15700 | 17900 |
1等客室(和洋室) | |||
1等客室(洋室) | 19600 | 13500 | 15200 |
S寝台 | 15700 | 10700 | 13000 |
B寝台 | 14000 | 9700 | 11300 |
2等(広間) | 11700 | 7800 | 9000 |
きたかみ
通常「きたかみ」は名古屋には入らない。
客室等級 | 名古屋⇔苫小牧 | 名古屋⇔仙台 | 仙台⇔苫小牧 |
---|---|---|---|
特等客室 | 28200 | 19000 | 23000 |
1等客室(フォース) | 23000 | 15700 | 17900 |
1等客室(クロスツイン) | 20900 | 14000 | 16400 |
エコノミーシングル | 17400 | 11800 | 13600 |
B寝台 | 14000 | 9700 | 11300 |
C寝台 | 11700 | 7800 | 9000 |
車両航送料金
車種 | 名古屋⇔苫小牧 | 名古屋⇔仙台 | 仙台⇔苫小牧 | |
---|---|---|---|---|
乗用車 | 5m未満 | 37000 | 25700 | 28600 |
+1m毎に | 6500 | 4400 | 5500 | |
二輪車 | 自転車 | 5100 | 2800 | 2800 |
50cc以下 | 7800 | 3900 | 4600 | |
400cc以下 | 13400 | 7300 | 7800 | |
400cc超 | 19000 | 10100 | 10700 | |
750cc超 | 21200 | 12700 | 13400 |
割引
多彩な割引が用意されており、普通運賃を払うことはあまりない。なお各種割引を重複適用することはできず、適用できる中で割引率の一番大きい割引を一つだけ適用できる。特記なき場合全期間において適用。
早割
最も割引率の高い割引。乗船日の28日前までに予約することによって、運賃が最大で半額になる。
S寝台以下は半額、特等・一等客室は40%割引。ロイヤルスイート、スイート、セミスイートについては早割の設定はない。車両は30%割引となる。
また、繁忙期(B期間、C期間)は使えない。
インターネット割引
インターネットから予約する場合、運賃がA期間では10%、B期間とC期間では5%割引となる。車両にも適用。
往復割引
往路を普通運賃で乗船した場合、復路(同一経路)の運賃が10%割引となる。ただし、電話予約でないと適用されない。
学生割引
学生なら運賃が10%割引となる。ただしS寝台以下の船室に限る。乗船受付時に学生証の提示を求められる。車両には適用できない。
JAF会員割引
JAF会員なら運賃が10%割引となる。ただしA期間のみの適用でそれ以外の期間では使えない。乗船受付時にJAF会員証の提示を求められる。車両は1台のみについて適用可能。
障害者割引
身体障害者、知的障害者、被救護者は運賃が半額となる。ただしS寝台以下の船室に限り、車両には適用できない。障害者手帳など、障害を持つことを証明するものが必要。
団体割引
15名以上の旅客について運賃が10%割引となる。電話予約でないと適用されず、車両には適用できない。
レストラン
バイキング形式で朝食、昼食、夕食を提供している。価格は夕食が2100円で朝食と昼食が1100円。クレジットカード不可。
ロイヤルスイート・スイート・セミスイートの乗客は乗船時に食事券が配布されるため、料金を払う必要はない。
写真は「いしかり」での夕食の一例。
レストランの名称は、いしかりが「サントリーニ」、きそが「タヒチ」、きたかみが「グリーンプラネット」。
スタンド(喫茶・軽食コーナー)
「いしかり」「きそ」のみ。レストランよりも軽い食事や飲み物を提供している。レストランはバイキング形式なので、たくさん食べたいというのでなければスタンドを利用するのがよい。給茶機、紙おしぼりが無料で利用できる。
写真は「いしかり」での軽食の一例(おにぎり、味噌汁、ゆで卵)。
名称は、いしかりが「ヨットクラブ」、きそが「マーメイドクラブ」。
旧きたかみでは「フェリカクラブ」という名前だった。
以下にメニューの一例を示す(価格は2015年3月現在)。時間帯によっては提供がないものもある。
- モーニングセットA・B - 朝のみの提供。Aにはソフトドリンクにパン、ゆで卵、サラダ、フルーツ、ヨーグルトがつく。Bはパンとゆで卵のみ。価格はAが720円でBが510円。
- ホットケーキ - 310円。ソフトドリンクつきのホットケーキセットは570円。
- おにぎり - 熱々のおにぎり。梅、鮭、たらこの3種類。漬物つき、150円。
- みそ汁・玉子スープ - 150円。
- コーヒー・紅茶 - 350円。
- 各種ソフトドリンク - ウーロン茶、牛乳、コーラ、オレンジジュースなど。300円。
- お酒 - 生ビール中620円、冷酒(300ml)820円、ワイン(ハーブボトル)930円など。
- その他、そば、うどん、カレーライス、スパゲティなどの軽食。
大浴場
「いしかり」「きそ」「きたかみ」共に大浴場を備える。それぞれで趣が異なる。
大窓から海を一望できる「展望大浴場」。
入港30分前まで営業し、利用は無料。ただしタオルは各自で用意する必要がある。
シアターラウンジ
毎日夜には、シアターラウンジにて様々なアーティストによるラウンジショーが開催される。入場無料。
日をまたぐ長旅で、乗客に飽きを感じさせない粋な計らいである。
名称は、いしかりが「ミコノス」、きそが「サザンクロス」。
旧きたかみは「スターダスト」であった。
演目については太平洋フェリー公式サイトのトピックスにて案内されている。2021年9月現在、新型コロナの影響によりラウンジショーは休止されており、映画上映のみになっている。
売店
名古屋、仙台、苫小牧それぞれの土産物や、太平洋フェリーならではの品をはじめ、お菓子や飲み物、コインランドリーで使うための洗剤などが購入できる。
営業時間が短いので注意。また、「いしかり」の売店では酔い止め薬が売られていない点にも注意すべきである。
クレジットカードは利用できない。
その他の設備
上記以外にもさまざまな設備が備えられ、長旅を快適に過ごすことができる。
- インフォメーション - 船内案内、客室変更、貴重品預かりなどのサポートを受けられる。
- コインランドリー - 洗濯200円、乾燥(30分)100円。洗剤は売店で購入できる。
- カラオケルーム
- ゲームコーナー
- 自動販売機
- 喫煙コーナー
- コインロッカー
- 公衆電話 - 航海中は携帯電話の電波状況が非常に悪くなる(ほぼつながらない)ため、外部との連絡は基本的にこの電話を通してとることになる。
- 展望デッキ
- ソファー
乗船にあたって
- 携帯電話について
- 寄港中は問題なく使えるが、港を離れて沖合いへ出ると電波状況は非常に悪くなりほぼつながらなくなるので、基本的に携帯電話は航海中は使えない。
- 電話は備え付けの公衆電話でかけることができる。インターネットは有料のWi-Fiサービスを利用することで利用できるが、「いしかり」「きそ」は客室内ではつながらない。
- タバコについて
- 喫煙コーナーを除き船内全面禁煙である。(屋外の展望デッキ含む)。
- 船酔いについて
- 各船、フィンスタビライザーという揺れを軽減する装置を装備しているため通常の船と比較して揺れは少ないが、それでも船なので揺れることは揺れる。乗り物酔いしやすい人は、乗船時に酔い止めを服用しておくことをおすすめする。特に「いしかり」は船内の売店で酔い止めが手に入らないので注意。
- クレジットカードについて
- 現在船内でクレジットカードは利用できない(港やネット予約では使える)。平成28年3月31日まではVISA、マスターカード、DCカード、ニコスカード、UFJカードの取り扱いがあった。
関連動画
関連項目
外部リンク
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