戦闘機単語

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戦闘機とは、広義で言えば武装した軍用飛行機、正確には敵の飛行機を撃墜することを的とした飛行機のことである。

概要

戦う飛行機は全部戦闘機…ではない。敵攻撃機爆撃機の撃墜や、味方の攻撃機爆撃機を護衛しそれらを狙う敵戦闘機を撃墜することを主任務とする武装した飛行機す。

大雑把に言えば、「敵の飛行機を撃墜することが的の飛行機」を戦闘機と呼ぶのである。爆弾ミサイルで地上やを攻撃する飛行機は戦闘機ではなく、爆撃機攻撃機と呼ぶ。当然、輸送機偵察機哨戒機も「戦闘機」ではない。

まあその辺のは近年あやふやになってきているのだが(後述)、ともかく、用途により上記のような使い分けがされている。ネット上でうかつに誤用すると笑われることもあるので注意だ。

少し専門的な言い方をすると「航空優勢」(の上で敵航空機の活動を阻し、味方航空機の安全が確保されている状態。制権とも)を確保するための飛行機が「戦闘機」である。

そのへん、戦闘用の艦が全部「戦艦」と言われたり、戦闘車両が全部「戦車」と呼ばれてしまったりするのと似ている。

飛行機と言うのはとても強兵器であり、敵の飛行機を放っておいたらまともな戦闘にはならない。から爆弾あられと降っていては人間はおろか、陸上では最強の存在である戦車だって容易に破壊されてしまうし、から見ればこっちの地の様子が筒抜けになってしまう。

この為、近現代の戦争では敵の航空機を撃墜してを飛ばせないようにする事が重要視されるようになり、その為の航空機が戦闘機である。つまりな任務としている。

第一次世界大戦から第二次世界大戦まではレシプロエンジンを持つプロペラ機での機関銃を使用しての攻撃が流であった。第二次世界大戦後期にはジェット戦闘機が登場し、1953年音速戦闘機が配備され、1958年にはミサイルによる初撃墜、1978年にはフライ・バイ・ワイヤを搭載した戦闘機が、2005年ステルス戦闘機が登場するなど、大きな発展をとげている。

戦闘機は高速性、上昇性、旋回性を重視される傾向にあり、乗員は1~2名。武装は機関および空対空ミサイル。近年は軍用機のマルチロール化(それまで専用の機体でやっていた任務を一つの機種でこなせるようにする)が進み、戦闘機と攻撃機の性を併せ持った機種が開発されている。また、ステルスも重視され始めている。

世代[1]

近年では戦闘機を第○世代と呼んで区別することがあるが、昔からこのような区分けがあったわけではない。

これはロッキード・マーティンが自社製品であるF-22F-35を「第5世代」と呼び、他社製品を旧世代として「第4世代」とすることで差別化を図ろうとしたのが最初である。当然旧世代扱いされた戦闘機のメーカーは不快感を露わにしたが、戦闘機の特徴を世代で区分けする方法は一般の人間にもわかりやすいと受け入れられ、そのまま定着してしまった。

歴史

第一次世界大戦

20世紀に入ってライト兄弟飛行機を実現してから、戦場に姿を現すまでそう時間は掛からなかった。

第一次世界大戦が勃発した頃にはヨーロッパには数少ない航空機が配備されており、それらの機体は偵察任務に投入された。対峙する両軍が間接撃を誘導するためには敵の塹壕を正確に捉えた偵察写真が必要であり、そして敵が自軍の前線塹壕と防御の体制を撮しようとするのを防ぐことも同様に重要となった。その結果、最初の戦闘航空機、戦闘機が出現し、航空優勢獲得競争が始まった。[2]

最初はレンガハンマー等を、コックピットから直接敵機に向かって投げつけたり(「紅の豚」の物語終盤にあるシーンと大体一緒)、パイロットが直接拳銃等を撃ち合いっていたが、やがて本格的な機関銃搭載機へと繋がっていく(世界で最初に飛行機から投下され敵の命を奪った「爆弾」は「スイカ」であったといわれている)。機首に搭載してプロペラを貫通しないように発射を調節する同調機開発も第一次大戦中である。

第一次世界大戦中に戦闘機とその運用法は格段に洗練されていったが、まだまだ未熟な部分も多く存在した。

戦間期

第一次世界大戦から第二次世界大戦の間、すなわち戦間期において航空機技術の発展に伴い、優速で高を飛ぶ攻撃機があれば、攻撃機を迎撃する戦闘機はともかくとして護衛する戦闘機は不要ではないか、というが列強各の軍関係者から漏れ始めた。とくに海軍は当時空母での運用だけを考えていたので空母に入れる航空機には上限があったのでより深刻だった。すなわち「戦闘機不要論(用論)」の始まりである。
当時の日本もご他聞に漏れずこの意見に乗っていたがその意見はさらに過なもので、当時の戦闘機では爆撃機に追いつけない、大攻撃機の旋回があれば戦闘機など不要だから戦闘機搭乗員を減らして攻撃機搭乗員とすれば良い、という意見だった。

は大攻撃機論といわれ、大西治郎や新田慎一が唱えていたが、これと対立していた戦闘機パイロット田実や岡本も戦闘機論者といわれることになる。なぜなら当時急降下爆撃機がまだ存在せず、これを開発したのが戦闘機パイロットたちだからだ。さらに田は単座急降下爆撃機という現代でいう戦闘爆撃機の着想で表されていた。後に田は制隊を考案して戦闘機の価値を飛躍させもした。しかし第二次上海事変で大攻撃機論者は戦闘機はいらないといって出撃して撃墜されていった。これにて大攻撃機論はおわった。だがアメリカではB-17B-29で大攻撃機論を成功させていると言える。戦闘機用論に基づく搭乗員の縮小は昭和12年から15年の間だったが、さらに太平洋戦争直前に再び勢いを盛り返して戦闘機パイロット攻撃機に移動させるなどしている。

(戦闘機不要論の末をうけて各では双発戦闘機の開発に取り掛かることになる。長距離を飛行できる戦闘機がめられたからである。もっとも、開発された機体の多くは単発戦闘機に対して不利は否めず、とはなり得なかった。ただ、その余のある機体スペースを生かして夜戦に転用されていたりもして名機が生まれてもいる)

第二次世界大戦

そして第二次世界大戦が勃発するころには単葉・引込み脚、密閉式の操縦席というレシプロエンジン(プロペラ機)戦闘機の最終完成形が現れた。第二次世界大戦では各がこうしたレシプロ戦闘機を多数生産し、太平洋からヨーロッパに至る広い戦域でかつてい規模の戦が繰り広げられたが、並行して対・対地ロケット弾や誘導兵器レーダージェットエンジンなどの新基軸も次々実用化されていった。

プロペラ機の欠点として音速突破が困難な点があったが、第二次世界大戦後の戦闘機は大出ジェットエンジンの搭載によって音速突破が可になった。またエンジンに余裕が出たためそれまで搭載されていた機関銃機関(口径20mm以上)、さらにはガトリング砲(アメリカではM61バルカン)へと変わっていくだけでなく大レーダーミサイルを装備するようになっていった。

1960年代[3]

1960年代、米国の軍用航空技術は趨勢を読み、「空対空ミサイルが十分に高性なら、それを搭載する戦闘機は『格闘戦』をする必要はなくなるだろう」という結論に飛びついてしまった。空対空ミサイル飛翔距離が10kmやそれ以上にもなれば発射機のパイロットは敵機を視することができず、「味方撃ち」のリスクが生じるのだが、技術者はこのリスクを甘く見ていたのである。

もしベトナム戦争中に米軍機が味方を空対空ミサイルで撃墜してしまうという事態が頻発すれば、ホワイトハウスがどんな弁明を用意したところで政権の人気が高くなることはまずありえない。まして中立民間機や同盟軍の将官が乗った輸送機を攻撃してしまったりしたら外交上の大ピンチになってしまう。

こうして防総省はインドシナ半島域においては、スパローファルコンといった中射程ミサイルについてはパイロット視で敵機を確認した後でなければ発射してはならないと命した。F-4は本来の長所である視程外からのミサイル攻撃を封じられた。敵のミグに懐に飛び込まれて格闘戦になっても固定武装はく、おまけに搭載しているターボジェットエンジンの出/重量が高くないので敵機に翻弄される結果となった。

このベトナムでの戦を猛省し、米国の軍用機メーカーは電子戦だけでなく距離での格闘戦にも負けることのない新世代の戦闘機を開発し始め、これがF-14/F-15/F-16になった。

現代

現在機関(M61バルカン含む)はあくまで補助的な装備であって、現代の戦は地上の警管制組織やAWACSなどの支援を前提とした視界外射程(BVR)でのミサイル戦が常識となっている。
ただし、ベトナム戦同様複雑な交戦規定が足をひっぱる場合もある。

以前は敵地上に侵入し、敵機を殲滅し航空優勢を確保する制戦闘機、自軍基地に接近した敵機を阻止する迎撃戦闘機、爆撃任務をメインに行う戦闘爆撃機など用途別に分かれていたが、現代では、エンジンや機体制御方法の発達、レーダーなどの進化などによりこれらの区分が曖昧となったマルチロール(多用途)化が進んでいるため単純な用途・運用方法による区別は意味を成していない(Mig-31など一部例外を除く)。

これは皮にも最初の戦闘機不要論に合致しているという意見もある。すなわち、高速かつ高機動である程度迎撃する戦闘機も排除できる航空機が現れたことから、純な戦闘機は不要になってしまったのである。

最近ではレーダーセンサーなどのアビオニクス(Aviation+electronics=航空電子工学)機器の良、搭載兵器の発達により対地・対任務マルチロール化だけでなくステルス性の重視、ネットワーク化が戦闘機開発におけるトレンドとなっている。

ただ無人機(UAV)などが実用化・実戦運用が進んでいる現在ミサイルキャリアーと化している戦闘機にとって三度の戦闘機不要論の時代に突入しているとみる人もいる。

果たして戦闘機が今後も今の姿をとどめていられるのであろうか、それはにもわからないことである。

お絵カキコ

戦闘機

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関連項目

脚注

  1. *人工知能都市伝説」監修:松田卓也 宝島社 2016 pp.17-18
  2. *「21世紀のエアパワー」 石ウィリアムソン・マーレー 書房出版 2006 p.70
  3. *日本兵器世界を救う」兵頭二十八 徳間書店 2017 pp.259-262
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540 ななしのよっしん
2023/07/09(日) 14:59:58 ID: sUVkFqyRbi
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541 ななしのよっしん
2024/02/05(月) 10:38:37 ID: eQ7W9EWYDL
AWACSに誘導された視外の戦闘イメージとか見てるとこんなミサイルをただポイポイしてすぐ帰る仕事人間がやる意味あるんかと思う
AWACSミサイル積んだ無人機か直接ミサイルを誘導すればええやん
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542 ななしのよっしん
2024/02/05(月) 10:45:22 ID: oFBw3BLwwi
時の任務は所属不明機に視で接近するスクランブル発進なので、これを人化すると攻撃可否の判断や万一誤射した場合の責任所在でゴタゴタする。まあリーダー機だけ人を載せて、他はAAMラットフォームの無人機という構想もあるが

というか人化できる防は既に地対空ミサイルに置き換わってる
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543 ななしのよっしん
2024/02/06(火) 10:20:14 ID: n1cVHEib0+
まあ最新鋭の戦闘機であるF-35ですら17年前の機体だからな

中身は日々アップデートしてるとはいえ、戦が出来る無人機は1から設計する必要があるだろうから、無人機じゃないのは単に「そういう無人機い」からだろう
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544 ななしのよっしん
2024/02/06(火) 10:25:18 ID: IdP545a0Rk
どうしても敵味方を識別する必要があるからどれだけ技術が進歩しても飛行編隊の僚機止まりになりそう
シューティングゲームの攻撃オプションみたいなやつ
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545 ななしのよっしん
2024/02/06(火) 11:15:55 ID: cOfXk/6u9R
戦闘機戦闘機戦闘ってのはウクライナ侵攻でもしくなっているみたいだね
地対空ミサイルで迎撃した方が数も用意できるしコストパフォーマンスも良いってとこかね
自衛隊も迎撃はパトリオット短SAMを使うのだろうね
F-35AAMを使う可性というのは、敵に戦闘の備えを強いる意味が強いのかも
そうすると戦闘機要任務は、対艦攻撃や敵基地の爆?電子戦で圧勝できない限り無人機任せは難しいかもな

ウクライナ戦闘機が低ロシアの標的に空対空ミサイルを発射!のレア映像
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/10/post-102919_1.phpexit
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546 ななしのよっしん
2024/02/06(火) 11:26:39 ID: EeIL9GZr+2
>>545
しいというより基本的に戦闘機が前に出るのは陸上が前に出るときだからな
陸が塹壕に籠ってるなら戦闘機もあまり飛ばない
そしてロシアウクライナともにSEAD任務に適した機体がく敵防を開けることも難しい
(余談だがウクライナMiG-29都市部へ飛来するドローンを撃ち落とすため忙しい時期もあったらしい)
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547 ななしのよっしん
2024/02/10(土) 09:58:20 ID: v8rO6oEfwU
>>541
ステルスが重要な視外戦闘で戦術的判断に必要な情報戦闘機側が電波発信するのはキツいのでは?
電波封止下の限られた情報を元に地対兵器や敵戦闘機が見える前からミサイルを撃つか帰るか自的に決定を下し続けられる無人機が出来るにはまだ時間がかかると思う…場合によっては格闘戦可無人機の方が先に出来るかもしれない
無人機の自操縦と低探知性通信が発達すれば現在戦闘機人の僚機を連れてミニAWACS化する可性もあるな
その場合AWACSと違って僚機に着いていく必要から運動性は遜色ないだろうし、僚機をゼロにした最小編成と言う名の有人戦闘機が従来通り飛んでるかもしれない
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548 ななしのよっしん
2024/02/10(土) 10:17:42 ID: v8rO6oEfwU
視外戦闘解説でよく見るレーダー見ながらコンマの判断でミサイル撃つか帰るか決めて安全を確認したらまた反転再突入を繰り返して時々刻々変化し入り乱れる敵機や僚機の位置を全部頭に入れて脱出や侵入のタイミングと方向を考えたり攻撃相手や警する包囲を選択し続けるのは普通に大変だと思う
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549 ななしのよっしん
2024/02/10(土) 11:57:02 ID: v8rO6oEfwU
視外戦闘ではレーダーに映った相手に必中射程内でミサイルを撃てば終わり
→相手のレーダーに映って必中射程内でミサイルを撃たれたら終わりなので、レーダーに映る前・必中射程に入る前からミサイルを撃つ必要がある
レーダーに映る前・必中射程に入る前からミサイルを撃たれるので、事前に予測して回避行動を取らねばならない
事前予測させて回避行動を取らせる事で、相手の行動を牽制できる
→牽制されては戦術的が達成できない
・牽制し合う先を見越して行動し有利を取る必要がある
・相手の予測を外して危険を冒す事で有利を取る必要がある

相手が危険な行動で有利を取って来た場合は
・こちらも危険を取って有利を取り返す
・予測が外れる事を予測して次善の対策を用意しておき速やかに計画を修正する
・危険行動を取る相手を逆に予測して有利を取る
(省略しています。全て読むにはこのリンクをクリック!)
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