自由貿易単語

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自由貿易free trade)とは経済学の用であり、保護貿易の反対である。

概要

定義

自由貿易とは、関税などの政府の介入を排除して商行為の自由を容認し自産業や外産業を保護せず貿易を行うことをいう。

長所

自由貿易は様々な長所を持っているので、本記事の『長所』の項解説する。

短所

自由貿易は様々な短所を持っているので、本記事の『短所』の項解説する。

性質

自由貿易はいくつかの性質を持っているので、本記事の『性質』の項解説する。

提唱者

自由貿易はイギリスアダム・スミスデヴィッド・リカードといった古典派経済学の支持者によって唱えられた。

世界中の経済学部で採用されている教科書を執筆したN・グレゴリーマンキューも自由貿易を大いに尊重する立場の経済学者である。

背景となる経済理論

自由貿易を支持する経済理論で最も有名なものは較優位である。

較優位とはイギリス経済学者デヴィッド・リカードが提唱した考え方で、ごく簡単に言うと「国家は、自の得意とする分野の生産に特化すべきであり、自が得意としない分野において自国生産をとりやめて貿易によって賄うべきである。つまり際分業をすべきである。そうすると資の効率的配分が行われ、世界全体の実質GDPが増大する」というものである。

較優位に対しては反論もあり、「較優位に従って自の得意とする分野の生産に特化すると、外の需要に左右される不安定なになる。モノカルチャー経済がそのようになっている」といったものが挙げられる。

自由貿易を推進する人たちが好む言い回し

自由貿易を推進する人たちは様々な言い回しを駆使するので、本記事の『自由貿易を推進する人たちが好む言い回し』の項解説する。

実践された時代

人類が大々的に自由貿易を実践した時代の代表例は、第一次世界大戦の直前までと冷戦が終わったあとの2回である。

第一次世界大戦の直前までは、イギリスが中心となって要各金本位制を採用しつつ自由貿易を拡大し、第一次グローバリゼーションと呼ばれるほどになった。

1991年ソ連が崩壊して冷戦が終結したあと、アメリカ合衆国が中心となって自由貿易を拡大し、第二次グローバリゼーションと呼ばれるほどになった。この時期に自由貿易の拡大に貢献したのが世界貿易機関WTO)である。

アメリカ合衆国において実践された時代

アメリカ合衆国世界最強覇権国家であり、他のへのが大きい。

そのアメリカ合衆国で自由貿易が拡大した時代というと、1994年から2017年までである。1994年1月1日にNAFTAが発効し、この日から米国は自由貿易のになった。バラク・オバマ民主党政権が2017年1月に終わるまで、アメリカ合衆国は総じて自由貿易のであり続けた。バラク・オバマ政権はTPPの加盟に前向きで、NAFTAによってメキシコカナダ経由で外産の物品が安価に流入することを問題視せず、輸出の拡大をしていた。

自由貿易協定

自由貿易を推進するには、複数の国家が同時に関税を引き下げるなどの貿易政策を実行することが有効である。そのため複数の国家が自由貿易協定を結ぶことがある。

もっとも多くの国家が参加する自由貿易協定は、GATTやその後継のWTO導する多間交渉のあとに決まる自由貿易協定である。GATTWTO導する多間交渉のなかで近年のものは、1986年から1994年までかかったウルグアイラウンドと、2001年から2014年までかかったドーハラウンドである。

GATTやその後継のWTO導する多間交渉は非常に時間がかかるので、それを補するように、GATTWTOほどではないが多数の国家が参加する自由貿易協定が結ばれるようになった。欧州のECやその後継のEU、北3のNAFTA、南米メルコスール、大平洋に面する諸TPP東南アジアと北東アジアRCEP東南アジアのAFTA、南アジアSAFTA、アフリカAfCFTA、大西洋に面する諸TTIPなどである。

もっともく交渉が進むものは2間の自由貿易協定である。ただし2間の自由貿易協定の交渉は経済的に実がある国家導してその国家が有利になるように進んでしまい、経済的に実がない国家が泣き寝入りする可性があるという欠点がある。2間の自由貿易協定の代表例はFTAとEPAであり、FTA(自由貿易協定)とEPA(経済連携協定)はだいたい同じようなものだがEPAの方がより包括的で「投資環境の整備」や「ビジネス環境の整備」や「知的財産保護の強化」等を含む協定となっている[1]。FTAは日FTAやFTAなどが有名である。EPAは日EPA(日本メキシコEPA)や日EUEPAなどが有名である。

長所

政府にとって簡単に実行できる

政府にとって自由貿易はごく簡単に実行できる。政府は、輸入関税や輸入割当制度のような人的資ノウハウを必要とする制度を止するだけで自由貿易を実行できる。

また、輸入関税や輸入割当制度で保護すべき産業はどれなのか判別すること自体が難しい作業であり、人的資ノウハウを必要とする。そうした難しい作業を中止するだけで自由貿易を実行できる。

企業の収益が増加しやすくなる

自由貿易をすると企業海外の巨大な市場に商品を売り込めるようになり、企業の収益が増加しやすくなる。

原材料などを安く購入でき、企業の費用が減少しやすくなる

自由貿易になると海外安価な製品を購入できるようになり、原材料費や消耗品費といった企業の費用が減少しやすくなる。

労働運動を弱体化させることができ、企業の費用が減少しやすくなる

自由貿易を促進すると、労働運動弱体化し、労働者賃金が下がり、人件費という企業の費用が減少しやすくなる。

A企業は、Aよりも賃金準の低いBで生産された製品との価格競争にさらされる。そしてA企業の経営者は労働者に向かって「Bで生産された製品と価格競争するには、賃金を削減するしかない。さもないと企業倒産する」と言って不安を煽る。そうした言葉を聞かされるA労働者は「自分たちが賃上げをめる労働運動をすると会社が倒産してしまう」と思い込むようになり、労働運動に対して罪悪感すら感じるようになり、労働運動をする気力を失っていく。

自由貿易が伸展すると極めて高い確率際的資本移動の自由化が進んでいく。際的資本移動の自由化が進むと、A企業は自よりも賃金準の低いBの土地や建物を購入して海外工場を移転させることが可になる。そういう状況においてA企業の経営者は労働者に向かって「々経営者は、君よりも安い賃金で君と同じ働きをする労働者を、Bにおいていくらでも見つけることができる」と言ったり、「B労働者に君たちと同じ賃金を支払うと、君たちよりもずっと活発に働いてくれる」と言ったりすることができる。そうした言葉を頻繁に聞かされるA労働者たちは「自分たちは高い賃金をもらう資格があるのだろうか・・・」と自信を喪失していき、労働運動をする気力を失っていく。

自由貿易を促進すると、労働運動弱体化し、戦闘労働組合御用組合に変化していき、労働者賃金が上昇しにくくなって下落していく。このことは「底辺への競争」と表現される。そうなると企業は、費用の大部分を占める人件費を大いに削減することができる。

人件費の水準が高い国で農林水産業から製造業・サービス業へ労働力が移行し、製造業・サービス業の企業の費用が減りやすくなる

人件費の準が高いにおいて、農産業の分野で自由貿易を実行すると、農産業の業が相次ぐ。

そうなると農産業に従事していた労働者が製造業・サービス業に流入し、製造業・サービス業の企業において労働者の需要が一定であるのに労働者の供給が増え、賃金が低下する。製造業・サービス業の企業は、費用の大部分を占める人件費を大いに削減することができる。

産業は都市化が進んでいない田舎で行われることが多く、製造業・サービス業は都市で行われることが多い。つまり農産業の自由化を進めると都市への人口流入が進む。

食料などを安く購入でき、家計の費用が減少しやすくなる

自由貿易になると海外安価な製品を購入できるようになり、食費などの計の費用が減少する。

19世紀のイギリスにおいて穀物法という関税があり、イギリス内の穀物農家を保護していた。その穀物法を止することを支持した人々は「穀物法を止して関税をなくせば食卓が豊かになる」というを好んだ。

企業の合併が進み、スケールメリットを生かすようになる

自由貿易が促進されると、企業海外安価な製品に対抗することを強制されるので、複数の企業が合併してスケールメリットを生かして低価格の製品を生産することをすことが流行する。

企業の合併が進み、協力企業に支払う費用が減少しやすくなる

自由貿易が促進されると、企業の合併が進んでいく。企業の合併が進んで巨大企業が誕生すると、その巨大企業は協企業(下請企業)に対して価格交渉しやすくなり、外注費のような「協企業に支払う費用」が減少しやすくなる。

大企業Aと大企業Bが分裂していたときは、大企業Aに納入する協企業大企業Aから値下げをめられても「々には大企業Bに納入するという選択肢がある」ということができ、値下げ要に対する対抗を維持することができる。

しかし大企業Aと大企業Bが合併して巨大企業Cが誕生すると、巨大企業Cに納入する協企業は巨大企業Cから値下げをめられたときに「々には巨大企業C以外の大企業に納入するという選択肢がある」と言いにくくなり、値下げ要に対する対抗弱体化していく。

企業がレントシーキングをせずにすみ、企業の費用が減る

自由貿易になると、自分の産業を輸入関税で保護してもらうために政党に献をしたり国会議員に会って話したりして国会議員に意向を伝えようとする企業が減る。つまり、レントシーキングに励む企業が減る。

自由貿易になると、企業政党国会議員レントシーキングを減らすようになり、交際費などの費用を減らすことができる。

「自分は国際的に活躍する人の仲間である」という気分になれる

貿易とはの垣根を越えて外と交渉する行為を積み重ねるものであり、際的に活躍する人が存在することで成り立つものである。そして、自由貿易はそうした貿易の量を拡大する政策である。

このため自由貿易を支持すると、「自分は際的に活躍する人を尊重している」という気分になれるし、「自分は際的に活躍する人の仲間である」という気分になれる。

その気分は「自分は際的に活躍できておらず、際的に活躍する人たちの仲間に入れていない」という劣等感を持つ者にとって癒しの効果がある。自由貿易にはそうした癒やしの効果がある。

日本公用語日本語際的言ではなくローカルである。そのことは日本語話者が日本大学教育を受けると強く実感することができる。日本に住む日本語話者の大学生は、英語で書かれた論文を読むことや英語で論文を書くことをしばしば強制される。

日本に住む日本語話者の知識人は、多かれ少なかれ「自分は日本語という際的言ではないローカルを使っていて、際的に活躍できておらず、際的に活躍する人たちの仲間に入れていない」という劣等感を抱く傾向があるのだが、自由貿易を支持するとそうした劣等感を多少なりとも癒すことができる。

国家の相互依存を生み出し戦争を防止する(反論あり)

「自由貿易で国家間の相互依存が深まれば国家間の戦争が起こらなくなり平和が生まれる」と言われることがある。

たとえば、トーマスフリードマンというジャーナリストは『レクサスとオリーブの木exit』という著書の中で「自由貿易で国家間の相互依存が深まれば国家間の戦争が起こらなくなる。マクドナルドの店舗があるどうしでの戦争は起こらない」という内容の黄金のM型アーチ理論マクドナルド理論)を唱えた。

それに対して「自由貿易の体制になったとしても必ず平和になるわけではない」という反論が寄せられることがある。

第一次世界大戦の直前においてイギリスドイツの間における貿易は非常に規模が大きかった[2]。それ以外の々でも自由貿易が盛んであり、第一次グローバリゼーションと表現されるほどだった。しかし、第一次世界大戦が勃発した。

2022年ウクライナ戦争の直前において第二次グローバリゼーションと呼ばれるような自由貿易の時代であり、ロシアウクライナは自由貿易をしていたが、それでもウクライナ戦争が起こった。

短所

農林水産業の分野で自由貿易をすると人口空白地域が生まれて治安が悪化する

人件費の準が高いにおいて、農産業の分野で自由貿易を実行すると、農産業の業が相次ぐ。農産業を産業にしている地方は製造業やサービス業が発展していないことが多い。このため、農産業を産業にしている地方は農産業が衰退すると人口を減少させて人口空白地帯を発生させることが多い。

人口空白地域はぼうぼうの荒れ地になるので、犯罪者犯罪拠品を隠滅するのに最適の場所である。それが発生すると犯罪者犯罪拠品を隠滅しやすくなり、犯罪者犯罪を犯しやすくなり、治安が悪化する。

A治安が悪化すると、Aカントリーリスクが上昇する。そうなると、すでにA企業に投資している際的投資が「Aにおける投資はもっと高いリスクプレミアムを上乗せした実質利子率に基づいて行われるべきだ」と判断し、A企業株式や社債を売り払ってそのでの投資をとりやめて、資本を海外に流出させ、負の需要ショックを起こす。まだA企業に投資していない際的投資も、Aにおいて株式や社債が大きく値下がりしてリスクプレミアムが大きく上乗せされた状態になるまでA企業への投資を控えるようになる。

治安が悪化したにおいて、企業リスクプレミアムが大きく上乗せされた高い実質利子率で借り入れをするようになり、なかなか設備投資の量を増やせなくなる。企業の設備投資の量が増えなくなると、将来における資本ストックが増えなくなり、将来において国家の供給が増えなくなり、実質GDPの伸びが停滞し、経済が発展しないになる[3]

人件費の準が高いにおいて、農産業の分野で自由貿易を実行すると、農産業の業が相次ぎ、地方で人口空白地域が発生して都市に人口が集中し、「面」を支配する領域国家から「点と線」を支配する都市国家に変貌していく。人類の歴史は、中国でもインドでもメソポタミアでも地中海沿でも、都市国家から領域国家へ発展していった点が共通している。このため、都市国家へ逆戻りすることを推進する自由貿易は人類の歴史に逆行する政策と言える。

製造業やサービス業の分野で自由貿易をすると人口が減少し移民社会になる

人件費の準が高いにおいて、製造業やサービス業の分野で自由貿易を実行すると、製造業・サービス業の企業において労働者賃金が減る。そうなると労働者の可処分所得が減るので労働者が消費を控えるようになる。また、労働者しい消費を伴うことが予想される結婚に対して前向きに考えなくなり、結婚率が低下する。結婚率が低下すると人口が減少する。

人口が減少すると、政府移民の導入を進める。移民の流入によって国家における言文化の統一性が弱まり、民どうしが意思疎通を入念に行うことが難しくなり、国家において情報が十分に流通しなくなり、消費者から生産者へ商品の善し悪しの情報を伝える機が弱まって企業の生産技術が低下し、消費者から生産者へ感謝の気持ちの情報を伝える機が弱まって企業内発的動機付けが掛からなくなり、不利な供給ショックが起こる。

人口が減少して移民の流入が進むと、国家における言文化の統一性が弱まり、ヒステリシス(経済学)が十分に発生しないになり、正の需要ショックを起こしても有利な供給ショックがあまり発生しないになる。

製造業やサービス業の分野で自由貿易をすると人心が荒れて国家が分断される

人件費の準が高いAにおいて、製造業やサービス業の分野で自由貿易を実行すると、自由貿易に伴って際的資本移動の自由化が進む。それによりA企業は自よりも賃金準の低いBの土地や建物を購入して海外工場を移転させることが可になる。

そういう状況においてA企業の経営者は労働者に向かって「々経営者は、君よりも安い賃金で君と同じ働きをする労働者を、Bにおいていくらでも見つけることができる」と言ったり、「B労働者に君たちと同じ賃金を支払うと、君たちよりもずっと活発に働いてくれる」と言ったりすることができる。

こうした言葉を浴びせられた労働者は自信を喪失する。自信を喪失した人は自分以外のかを攻撃することで自信を取り戻そうとする習性があるのだが、自由貿易によって自信を喪失した先進国労働者たちもそういう習性を持っている。ネット上で、あるいは政治活動で、もしくは経済論議で、対立相手を過度に攻撃する行為に傾倒するようになる。その結果として、先進国で憎悪(ヘイト)が広がり、憎悪言動(ヘイトスピーチ)や憎悪犯罪ヘイトクライム)や憎悪義(ヘイト主義)が盛んになり、社会の分断が深まっていく。

製造業やサービス業の分野で自由貿易をすると攻撃的言動をする政治家が登場する

人件費の準が高いにおいて、製造業やサービス業の分野で自由貿易を実行すると、労働者の自信が破壊される。そうした労働者は何かを攻撃して自信を取り戻すことに中になり、攻撃的言動を繰り返す政治家を強く支持するようになる。

アメリカ合衆国におけるドナルド・トランプ日本における小泉純一郎安倍晋三が攻撃的言動を繰り返す政治家の代表例である。いずれも自らに従わない勢に対してレッテル貼りをして攻撃することに余念が政治家であり、ドナルド・トランプなら「彼はfar left(極左)だ」、小泉純一郎なら「彼は抵抗だ」、安倍晋三なら「彼は日本を貶めようとしている」といったレッテル貼りを得意とした。

ドナルド・トランプ2021年1月6日アメリカ合衆国議会議事堂占拠事件を引き起こしたが、これも彼の攻撃的言動が招いたものだった。

自由貿易が進展したでは、名誉毀損罪侮辱罪で訴えるスラップ訴訟をして相手の「表現の自由」を攻撃する政治家が増える。自由貿易による賃下げ圧で自信を破壊されていて何かを攻撃することで自信を取り戻したいと思っている労働者は、そうした政治家を「敵に対して一歩も引かずに攻撃している人」と思い込み、「自分がしたいことを実行している人」と思い込み、強く支持することになる。

また、自由貿易が進展したでは政党間の対立がしくなり、党政治の色が濃くなり、「の合意」とか「党えた交流」というものが失われていく。

製造業やサービス業の分野で自由貿易をすると軽蔑が流行する社会になる

人件費の準が高いにおいて、製造業やサービス業の分野で自由貿易を実行すると、労働者の自信が破壊される。そうした労働者は何かを攻撃して自信を取り戻すことに中になり、さらには自分より劣った者を軽蔑して見下して自信を取り戻すことに中になる。

自由貿易が進展したでは陰謀論する人が現れやすい。「自分を含むごく少数の人が危機感を持っていて、自分以外の大多数の民衆は何も気づいていない」と内設定することで、「危機感を持っていない大多数の民衆」への軽蔑を無限に行って自信を取り戻すことができる。

また、自由貿易が進展したでは「外国語理解できない人に対する軽蔑」が発生しやすい。外国語を理解できるかどうかのはすぐに判明する。意識高い系と呼ばれる人たちのようにビジネス会議外国語を使用してみたり、大きなイベントの標外国語を使用してみたりする[4]。そうした外国語を理解できずにキョトンとした表情をする人を見つけたら、すぐさま「外国語理解できない人に対する軽蔑」をすることができる。

製造業やサービス業の分野で自由貿易をすると人心が荒れて戦争が起こる

人件費の準が高いにおいて、製造業やサービス業の分野で自由貿易を実行すると、労働者の自信が破壊される。そうした労働者は何かを攻撃して自信を取り戻すことに中になり、外を攻撃することを支持するようになり、戦争の原因となる。

イギリスを中心とした第一次グローバリゼーションのあとに第一次世界大戦が発生したし、アメリカ合衆国を中心とした第二次グローバリゼーションの最中に2022年ウクライナ戦争が発生した。

製造業やサービス業の分野で自由貿易をすると投票率が下がる

人件費の準が高いにおいて、製造業やサービス業の分野で自由貿易を実行すると、労働者賃金が減る。そうなると使用者労働者に対して残業依頼しやすくなり、労働者残業を行って生活費の足しにしようと考えるようになり、両者の思惑が一致して残業が増え、長時間労働の多いになる。長時間労働が増えて疲労した労働者は、休みの時間に政治について考えたり活動したりすることを敬遠するようになり、選挙投票を怠るようになる。

また、人件費の準が高いにおいて、製造業やサービス業の分野で自由貿易を実行すると、労働運動が沈静化し、労働組合労働者投票をしつこく呼びかけなくなる。

以上のような要因が重なって、選挙において投票率が落ちていく。

投票率が落ちると、組織票がものを言う選挙になり、大きな組織票を持つ宗教団体が政治の中心になる。日本においては創価学会の組織票が自民党公明党を支えているし、アメリカ合衆国においてキリスト教福音共和党岩盤支持層になっている。

また、投票率が落ちると、無党派層の浮動票のが低下する。そうなると立補者は無党派層の浮動票を狙わなくなり、「無党派層にすら嫌われるような初歩的な悪行をすることをやめよう」と思わなくなり、自浄作用を失っていく。

自浄作用を失った議員は不祥事に手を染めるようになる。たとえば、「閥を結成してその閥が導して政治パーティーを開いて企業パーティー券を買わせ、パーティー券収入を閥の政治収支報告書に記載せず、パーティー券収入を議員に渡す。議員はパーティー券収入を自らの政治団体政治収支報告書に記載せず、選挙運動員を買収する用途にも使える裏にする」といった不祥事である。こうした不祥事清和会志帥会宏池会といった自民党の有閥で行われていたことが2023年11月に発覚した。

企業の合併が進み、大企業の協力企業が価格転嫁しにくくなる

自由貿易が促進されると、企業海外安価な製品に対抗することを強制されるので、複数の企業が合併してスケールメリットを生かして低価格の製品を生産することをすことが流行する。企業の合併が進んで巨大企業が誕生すると、その巨大企業は協企業(下請企業)に対して価格交渉しやすくなり、協企業からの値上げ交渉を断りやすくなる。

大企業Aと大企業Bが分裂していたときは、大企業Aに納入する協企業大企業Aに値上げ交渉をして断られたときに「々には大企業Bに納入するという選択肢がある」ということができ、値上げ交渉の気力を維持できる。

しかし大企業Aと大企業Bが合併して巨大企業Cが誕生すると、巨大企業Cに納入する協企業は巨大企業Cに値上げ交渉をして断られたときに「々には巨大企業C以外の大企業に納入するという選択肢がある」と言いにくくなり、値上げ交渉の気力を維持できなくなる。

自由貿易が促進されると大企業巨大化が進むので、大企業の協企業大企業に対して価格交渉しにくくなり、価格転しにくくなり、収益を上げにくくなり、従業員の賃金を増やしにくくなる。そしてごく一般的にいうと、大企業の協企業中小企業である。ゆえに自由貿易が進展すると、中小企業労働者賃金が増えにくくなり、大企業労働者賃金中小企業労働者賃金の格差が大きくなり、格差社会に近づいていく。

性質

変動相場制を採用して自由貿易を推進すると純輸出と実質GDPが一定を保ちつつ貿易量が拡大する

変動相場制を採用するで輸入関税を低くして輸入を増やして自由貿易を推進すると、それに応じて名目為替レートが上昇して自通貨安になり、短期で物価が硬直的なので実質為替レートも上昇し、輸入が増えた分だけ輸出が増え、純輸出が一定を保ち、実質GDPが一定を保つ。輸出と輸入が増えるので貿易量が拡大する。

タテ軸名目為替レート・ヨコ軸実質GDPマンデル=フレミングモデルでいうと、輸入関税の下落で純輸出需要が減るのでIS*曲線が左に行移動し、均衡点が垂直のLM*曲線に沿って上に移動する。

固定相場制を採用して自由貿易を推進すると純輸出と実質GDPと外貨準備高が減りつつ貿易量が拡大する

固定相場制を採用するで輸入関税を低くして輸入を増やして自由貿易を推進すると、それに応じて名目為替レートが上昇して自通貨安になりそうになる。中央銀行が自通貨買い・外通貨売りをして名目為替レートに下落圧をかけて、名目為替レートを一定に保つので、輸出が一定になる。以上から、純輸出が減り、実質GDPが減り、マネーサプライMが減り、中央銀行の外貨準備高が減る。輸出が一定で輸入が増えるので貿易量が拡大する。

タテ軸名目為替レート・ヨコ軸実質GDPマンデル=フレミングモデルでいうと、輸入関税の下落で純輸出需要が減るのでIS*曲線が左に行移動し、名目為替レートを保つため中央銀行が自通貨買い・外通貨売りを行ってマネーサプライMを減らすのでLM*曲線が左に行移動し、均衡点が左に移動する。

自由貿易を推進する人たちが好む言い回し

「国際的潮流に乗れ」という

自由貿易を推進する人たちが好む言い回しというと「世界に置いていかれる」「世界中のが発展し、日本だけが取り残される」「日本世界孤児になる」「バスに乗り遅れるな」といったものが挙げられる。いずれも際的潮流に乗ることを奨める表現である。

この中でも「バスに乗り遅れるな」は人々の焦りを煽る性質を持つ巧妙な表現である。

1940年首相に就任した近衛文麿ソ連ドイツイタリアといった全体主義の追随をしようとしていた。そうした近衛内閣の姿勢を支持する人たちが「バスに乗り遅れるな」と書き立てた(記事exit)。それ以降の日本において、際的潮流に乗っていくことを支持する人がしばしば新聞などで「バスに乗り遅れるな」と書く傾向がある。2013年2015年日本TPP加盟交渉をしているときに「TPPに参加するのが世界的潮流である。バスに乗り遅れるな」と書く人が多かった。

「冷戦で自由貿易を支持する勢力が勝った」と言う

自由貿易を推進する人たちは「1991年ソ連が崩壊してロシアになり、ロシア自由義経済の一員になった。1940年代から1990年代まで続いた自由義経済と共産主義経済冷戦自由義経済の勝利で終わった」とり、その上で「自由貿易を最大限に尊重すべきだ」とすることがある。

ちなみに1948年から1994年まで続いたGATT関税貿易一般協定)は、1930年代ブロック経済よりも自由義を重んじるものであったが、1995年から続いているWTO世界貿易機関)よりも保護義を認めるものであって、自由義と保護義の中間に位置する協定だった。

GATTの体制では、農業融・電・建設などの分野は貿易自由化の交渉から基本的に外されていた。貿易自由化の対とされたのはもっぱら工業分野だったが、その工業分野においても様々な例外措置や緊急避難的措置(セーフガード)が設けられていた。例を挙げると、1956年から1981年の頃の日両国はどちらもGATTに加入していたが、米国の要により日本が綿製品・鋼・繊維・カラーテレビ自動車といった工業品の対輸出を次々と自主規制することになった。GATTの体制における貿易は「管理された自由貿易」「マイルド保護貿易」と言っていいようなものだった[5]

冷戦勝利した西側諸国のことを「自由義経済の西側諸国」というのは決して正確な表現ではなく、やや理がある表現である。

冷戦勝利した西側諸国のことは「自由義と保護義の中間に位置するGATT体制を維持した西側諸国」と表現するのが正しい。

関連項目

脚注

  1. *日本商工会議所『EPAとは?』exit
  2. *第一次世界大戦の直前、イギリスドイツの間の貿易はとても盛んで、ドイツにとってイギリスが最大の貿易相手であり、イギリスにとってドイツは第二の貿易相手だった。中野剛志が『富と強兵』の342ページでそのことを摘している。ちなみに中野剛志は、ピーター・リバーマンの『Trading with the Enemy: Security and Relative Economic Gainsexit』という論文を引用している。
  3. *マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリーマンキュー』385ページ
  4. *日本国東京で行われた2020年東京オリンピックパラリンピックでは英語の標が掲げられ、その英語の標日本語翻訳しなかった。そのことを決定したのは日置之という人物である(記事exit)。彼の発言からは「外国語理解できない人に対する軽蔑」という心理が見え隠れする。
  5. *『富と強兵』東洋経済新報社 中野剛志 448~449ページ、『奇跡経済教室株式会社ベストセラーズ 中野剛志 308311ページ

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