ゲジとは、ムカデに近い多足類の動物である。通称ゲジゲジ。
漢字では「蚰蜒」、英語では「house centipede」「long legged centipede」など。
概要
多足類きっての長足の持ち主。
節足動物門多足亜門ムカデ綱(唇脚綱)ゲジ亜綱ゲジ目に属している。
背面に呼吸用の大きな気門を持つ。このことからゲジ亜綱は背気門類とも呼ばれる。
ムカデと同じく夜行性で、乾燥に弱く、1つの節に1対の足がある。顎肢(大顎)に毒腺を持つが毒は微弱で、噛まれても人体に影響はなく、そもそも噛まれること自体が滅多にない。
徘徊し、小さな虫を食べる肉食性。
5～9月頃に交接(交尾)をし、その後メスは130～300個の卵を1つずつ土の中に産み落とす。
目立つ歩脚は15対の30本で、先端は鞭状になっている。イシムカデと並びムカデ綱の仲間では脚の数が最も少ない。孵化したての幼虫は脚が8本で、脱皮するごとに増えていく。脚は非常に取れやすく、外敵に襲われたときによく自切し、トカゲの尻尾と同じようにしばらくの間動き、敵の注意を引く。壁や木の枝などにしがみついて脱皮を行い、その際に失った脚は再生する。
脚同様に長い触角を持つほか、それに対応するように長い尻尾(曳航肢)も持ち、外敵による頭部の判別を困難にしている。
主な種類
約130種が確認されており、日本には2種が分布する。
ゲジ目は3つの科(Pselliodidae,Scutigeridae,Scutigerinidae)で構成されている。
その中のゲジ科(Scutigeridae)は20～28の属で構成されており、大部分の種を含む。
ここでは日本産の2種と海外産の2種を紹介する。
ゲジ(Thereuonema tuberculata)
最も身近な、日本全土に分布する種。北海道ではあまり見かけない。
人家の近くに生息していることが多いので、屋内で見つかるゲジは大抵この種である。
体長は20～30㎜ほど。背中には縦に三本筋、脚には横縞模様が見られる。
約2年で成熟し、5～6年生きる。
オオゲジ(Thereuopoda clunifera)
主に関東以南に分布する大型の種。洞窟の天井や、森林の物陰などで見られる。
45～65㎜の体長とゲジより更に長い脚が相まって迫力がある。背は暗褐色で、一列の点線模様がある。
稀にペットとして日本産のものとタイ産のものが販売されている。タイ産のものが日本のものと同じ種類なのかは不明。
生活史はゲジとほとんど同じである。
ヨーロッパゲジ/スクティゲラ・コレオプトラタ(Scutigera coleoptrata)
海外では有名な種。海外でhouse centipedeといったらこのゲジであることが多い。
地中海地方を起源とし、様々な地方に広く分布している。体長は25～50㎜。外見は日本のゲジに似ている。
約3年で成熟し、3～7年生きる。
オーストラリアゲジ/アルロテレウア・マクラータ(Allothereua maculata)
南オーストラリア州やクイーンズランド州など、オーストラリアの大部分の州に分布する種。
体長は20～25㎜と小さめで、全体的に暗い色をしている。模様は日本のゲジに似るが、オオゲジのような点線模様も見られる。
害虫ハンターとして
益虫･害虫で区別すると、ゴキブリをはじめとする害虫を捕食する益虫である。
軍曹と敬されるアシダカグモの陰に隠れがちだが、それに匹敵する程のかなりの駆除能力を持つ。
以下に、その特徴を記す。
素早い
細長い脚で俊敏に移動する。
ゴキブリの速さに追いつくことのできる捕食者はアシダカグモとゲジのみ。待ち伏せからの瞬発力で勝負する軍曹に対して、ゲジは真っ向からスピード勝負を仕掛ける。
複眼のような大きい眼や長い触角などの感覚器官も発達している。
助走をつけてジャンプし、蛾や蝿を捕まえることもある。
食欲旺盛
仕留めた個体を食べている最中に他の個体を見つけると、食べかけの個体を抱えたまま他の個体を仕留めに行くことがある。
ヤモリよりも駆除能力があると言える。
紳士
物音に敏感で、自分より大型の動物に気付くととっさに隠れる。
元々人目につく場所には滅多に現れないし、見つかったとしても人に向かってくることはない。
因みに温和な性格で、自然界で共食いをすることは少ない。
清潔
暗く湿った場所を好む反面、体に何かが付着したり汚れたりすることを非常に嫌う。
リラックスしている時や食事の後には、よく触角や脚などを綺麗に掃除する。これを化粧行動という。
ネズミやダニなどのように、病原体を拡散しない。
自身は害虫か否か
上記のように実害は全くなく、人にとって有益なばかりであるが、今や害虫として煙たがられ、駆除されている。
原因は人によって極端に好みが別れるその風貌と習性である。
この容姿が好きな人もいるが、万人受けしないがために不快害虫という非常に理不尽なレッテルを貼られている。
また「ゲジゲジに頭を舐められる(這われる)とハゲる」という俗説があるが、これは根拠も実例もないデタラメである。
要は外見を気にしなければ問題ない。
もし家に入ってきたとしてもそっとしておけば部屋の害虫を捕食し、頃合いを見て去っていく。
早急にご退場願いたい場合はビニール袋に追い込んで逃がすか、箒やハタキで外へ誘導するといい。無暗に手で掴んだり払ったりすると脚を自切するので注意。逃げられたとしてもゲジ1匹のために燻煙剤を使う必要はないだろう。
家に入らせたくない場合は、まず餌となる害虫の対策を万全にとると良い。食べる物が無ければ、入ってくることはない。また、ゲジは乾燥に弱いので、室内の湿気た場所を減らすことも有効である。
家の周辺の落ち葉やガラクタを除去し、周りに住みやすい環境を作らないことも重要。
ゲジゲジと呼ばれるものについて
ゲジの脚のようにびっしり生え揃ったものや、見た目が似ているものなどがそう呼ばれる。
害虫という印象があるためか、あまりいい意味では使われない。
ウミケムシ
側面に体毛を持つ外見から「海のゲジゲジ」と呼ばれることがある。
環形動物門に属しているゴカイの仲間で、ゲジや毛虫との類縁関係はかなり遠い。
海釣りで外道として釣れることがあるほか、海水水槽に大量発生することもある。
体毛が毒針になっていることと外見から、駆除の対象になることがある。
ゲジ姉
ROBOTICS;NOTESに登場するキャラクター。愛理をタップするとゲジ姉に切り替わる。
ロボット型の全自動情報収集エンジン兼、愛理を補完するナビシステム。
CHAOS;HEADでは西條拓巳のネトゲ仲間として登場する。
ゲジ眉
ゲジゲジ眉毛の略で、太くて毛深い眉毛をゲジに見立てた俗語。
悪い印象として使われることが多く、手入れを怠った眉もそう呼ばれる。
滋賀ナンバー
「滋」の字がゲジ見えることから蔑称としてゲジゲジナンバーと呼ばれる。略してゲジナン。
「イナズマナンバー」とも呼ばれるが、こちらは蔑称ではない。
集積回路
端子が沢山付いた集積回路(IC)のうち、特にDIPという名称の両側面にいくつもの端子が付いて下に伸びている形状のものがムカデやゲジゲジと呼ばれている。蔑称というわけではない。
ムカデ･ヤスデ
ゲジと同じ多足類のムカデやヤスデも同様にゲジゲジと呼ばれることがある。
脚の数や長さで容易に判別できる。詳しくは該当記事を参照。
総じて害虫扱いされているが、ヤスデやジムカデなどは直接危害を加えることはない。
つけまつげ
つけまつげが落ちているとまるでゲジのように見えるのでそう呼ばれる。2つくっつけ合わせるとより一層そう見える。
付けている人をからかう為の蔑称としてゲジゲジと呼ぶことが多い。
ミズゲジ
淡水生のワラジムシの仲間。標準和名は「ミズムシ」。
節足動物門甲殻亜門軟甲綱ワラジムシ目(等脚目)ミズムシ科に属しており、ゲジとの類縁関係は遠い。
熱帯魚を飼育しているといつの間にか水槽の中に侵入していることがある。特に害はないが、見た目で嫌がられる。
その他
- 煙突や試験管などの掃除に使うワイヤーブラシ。 【参考】
- 櫛歯状の棘を持つサボテンのその棘。小さな白いゲジが沢山付いているようにも見える。 【参考】
- ゲジゲジシダ(Thelypteris decursive-pinnata)。日本や中国、インドなどに分布するシダ植物。 【参考】
- ゲジゲジ魔。変身忍者 嵐に登場する怪人。 【参考】
- ゲジゲジムカデノリ(Grateloupia incurvata)。カタノリ(Grateloupia divaricata)のシノニム。 【参考】
関連動画
関連商品
関連コミュニティ
外部リンク
- Purple long legged centipede (Scutigera) | Flickr - Photo Sharing!
- The Myriapoda (Millipedes, Centipedes) Featuring the North American Fauna
- むかで下宿 魅惑のオオゲジ
- ゲジの孵化 ｜ 東京ズーネット ｜ TokyoZooNet
関連項目
- 10
- 0pt
