阪急2000系とは、かつて阪急電鉄が所有していた鉄道車両である。
なお、複電圧車の2021系、宝塚線仕様の2100系、これらを改造した能勢電鉄1500系・1700系、二代目2000系についても記述する。
概要
先代1000系列(初代)は車体の構造が複雑で製造、保守が難しいという欠点があったため、2000系からは製造工程を簡略化し、製造コスト削減・保守の簡易化を実現した。この車体構造は現代の阪急電車の基礎となっており、前面のデザイン(貫通扉あり3枚窓、窓上部に前照灯/尾灯)は5100系・5300系まで、側面のデザイン(両開きドア、戸袋窓無し、扉間3枚窓、車端部2枚窓)は8000系・8300系まで受け継がれることとなる。
阪急としては初めて回生ブレーキ・定速運転制御を導入し、「人工頭脳電車」と呼ばれた(ただし後述の昇圧時、電装解除時に撤去されている)。
神戸線向けの高速走行が可能な2000系が1960年~1962年にかけて42両、低速だった当時の宝塚線向けの低出力車2100系が1962年に30両製造された。
1963年には神戸・宝塚線の架線電圧の昇圧(600V→1500V)が決まり、600Vにも1500Vにも対応した複電圧車2021系が1963年から1964年初頭までに42両製造された。
頭文字Dパロディの同人ゲーム「電車でD」で主人公藤原拓海が操る車輌がこの形式であり、ニコニコ動画ではドリフトする電車として阪急8200系と共に人気を博している。
製造された形式
2000系・2021系・2100系は運転台の有無で形式を分けていないため、変則的な付番となっている。太字は後に改番することになる車両を示す。なお後述するが、2000系・2021系は晩年に一部の編成が5000系・5200系・3000系・3100系に組み込まれた。その組込車の編成表は阪急5000系・阪急3000系の記事を参照。
2000系(42両) | |
2000形(Mc) | 2001,2003,2005,2007,2009,2011,2013,2014,2016,2017,2019,2020 |
2000形(M) | 2000,2002,2004,2006,2008,2010,2012,2015,2018 |
2050形(Tc) | 2050,2052,2054,2056,2058,2060,2062,2064,2065,2067,2068,2070 |
2050形(T) | 2051,2053,2055,2057,2059,2061,2063,2066,2069 |
2021系(42両) | |
2021形(Mc) | 2023,2026,2028,2030,2032,2033,2035,2036,2038,2039,2040,2041 |
2021形(M) | 2021,2022,2024,2025,2027,2029,2031,2034,2037 |
2071形(Tc) | 2071,2074,2077,2079,2081,2083,2084,2086,2087,2089,2090,2091 |
2071形(T) | 2072,2073,2075,2076,2078,2080,2082,2085,2088 |
2100系(30両) | |
2100形(Mc) | 2100,2101,2103,2105,2107,2108,2110,2111,2113,2114 |
2100形(M) | 2102,2104,2106,2109,2112 |
2150形(Tc) | 2150,2151,2152,2154,2156,2158,2159,2161,2162,2164 |
2150形(T) | 2153,2155,2157,2160,2163 |
昇圧に伴う改造
神戸線は1967年、宝塚線は1969年に架線電圧が昇圧されるが、2000系・2100系は600V専用車だったため、昇圧のための改造が必要となった。この際、回生ブレーキ・定速運転制御を昇圧後も引き継ぐのは困難と判断され、制御装置の交換、主電動機の改造が行われ、両機能は撤去された。
2021系は1500Vに対応しているはずだったが、昇圧前の事前調査で1500V走行時に問題があることが判明し、1500V専用車としての改造を受けることになった(このとき回生ブレーキ・定速運転制御は撤去されていない)。しかし、実際に運用に入れてみると制御機器の故障が頻発し、モーターのフラッシュオーバーなどの重大な故障も発生した。高速運転を行わない宝塚線に転属したことでこの問題はひとまず止んだが、複雑な制御機器の2021系は保守点検が容易ではなく、現場は苦労させられていた。そこで、当時行われていた輸送力増強のための増車に2021系を中間付随車として使用することになり、1970年から1979年にかけて電装解除が行われ、2000系や3000系、5000系の中間車として組み込まれた。2021系は登場からわずか16年で単独編成が消滅したこととなる(3000系編成への組み込み車としては2014年まで生き残ることになるが…)。
冷房化改造・編入
1970年代後半から1980年代前半にかけて、2000系・2021系に車両の冷房化が実施された。2021系は2030以外の全車が冷房化改造・先頭車の中間車化改造が行われ、同時に2021形(2021~2029,2031~2041)の改番が行われ、2171形(2171~2179,2180~2191)となった(2071形の改番は行われず)。以後、改番後の車両型式を2071系と表記する。
2100系は主電動機が2000系のものに交換されていた6両(2162,2112,2163,2113,2164,2114)が冷房化改造・改番(2092,2042,2093,2043,2094,2044)され、2000系へ編入された。一方で、残りの24両は一部を除いて冷房化されず、非冷房車は早期に廃車されることとなる。
廃車・譲渡
1984年に六甲駅列車衝突事故により、2000系2050が事故廃車となる。これに伴い、2100系2154を改造して2000系に編入し、2代目2050として改番した。
宝塚線の高速化に伴い、1983年~1985年にかけて2100系21両と、2000系2両・2021系1両の合計24両が廃車され、能勢電鉄に譲渡された。能勢電鉄譲渡後は1500系を名乗っていた。残った2100系2両も冷房化改造の上2000系に編入され、2100系は1985年に形式消滅した。
1989年からは、8000系の投入に伴い、2000系・2071系の廃車が本格的に始まる。1993年までに2000系は38両、2071系は8両が廃車となった。廃車された車両のうち、2000系32両、2071系4両は能勢電鉄へ譲渡され、現在は能勢電鉄1700系を名乗っている。
この時点で2000系の単独編成は消滅し、3000系や5000系の中間車に組み込まれた中間付随車・中間車化改造付随車のみ残存した(2000系が6両、2071系が29両)。
1995年には阪神・淡路大震災により、2071系2087が廃車となる。また、3000系の車両不足を補うため、2071系2171が3000系へ編入される。
1999年には5200系の廃車により、2000系2052、2071系2091が廃車となる。2000年には長年休車となっていた2071系2088も廃車となる。
2000年~2007年には、5000系のリニューアル改造により中間に組み込まれていた17両の2000系列のうち、2000系2両(2066,2069)、2021系12両(2081~2084,2086,2172,2174,2181~2183,2185,2186)が廃車となる。これにより編入車を除く2000系は消滅した(2100系編入車の2000系は残存)。ちなみに、廃車にならなかった2021系3両(2090,2085,2184)は3000系に組み込まれた。同時に3000系に組み込まれていた2000系2059が廃車となっている。
2008年~2014年には、3000系の中間に残された2000系2両、2071系13両も3000系の廃車により全車廃車された。2000系は2013年4月に廃車された2093をもって形式消滅した。2071系も2014年6月に廃車された2090,2190をもって形式消滅した(ちなみに3000系に編入された2171も2008年に廃車)。これによって、阪急電鉄から2000系系列が全て消滅した。
能勢電鉄への譲渡後
- 600Vへの降圧(1995年に能勢電鉄線の昇圧が行われ再び1500V化)
- 1500系のみ冷房化(1700系は譲渡前から冷房化改造済み)
- 2030(現:1585)の中間車化改造
- 補助電源装置のSIV化(一部MGが残存)
- 前面・側面への行き先方向幕の設置
- 能勢電鉄線内の急カーブに対応するため、連結器を改造(連結面の間隔の拡大など)
- 台車の履き替え(エコノミカル台車は1010系の台車に、ミンデン台車は2000系の台車に履き替え)
1500系が4両編成6本、1700系が4両編成9本改造されたが、1997年には1550F(1550-1530-1580-1500)の中間車を抜き取り2両化し、抜き取った2両を先頭車化改造して1560Fを作った。
2014~2016年度にかけて、1700系全編成の前照灯LED化改造が実施された。なお、阪急電鉄のものとは異なる製品を使用している。
2017年1月に、1754Fの先頭車にスカート(排障器)が装着され、その後他編成にも普及した。なお、形状は能勢電鉄5100系のものとは微妙に異なる。
能勢電鉄での廃車
2004年には前年の日生エクスプレスの運行開始に伴い、余剰となった1700系1750Fが廃車となった。2015年4月には5100系5136F・5138Fの投入により、1554F・1555Fが廃車となった。また、2016年2月には同じく5100系の5146F・5148Fの投入に伴い、1552F・1553Fも廃車になっている。
残る1500系は1551Fと、2両編成の1550F・1560Fのみとなっていたが、5100系の5108F・5124F・5142Fの投入に伴い全ての1500系が置き換えられる事になった。1500系最後の4両編成の1551Fは5月29日にさよなら運転を実施し引退。残った2両編成2本も1550Fが6月15日に、1560Fが6月22日に営業運転を終了し、これにて全ての1500系が廃車された。
2017年3月にはダイヤ改正の影響で余剰となった1700系1751F・1758Fが廃車された。1751Fは3月5日の車両故障以来休車となっていた。また、1758Fは2014年4月13日より能勢の里山をイメージした「里山便」ラッピングを施されていたが、ラッピングは剥がされる事なく最期を迎えた。
その後、2018年5月には7200系の導入に伴い、最後のスカート未装着車の1752Fが廃車された。さらに2019年5月には7201Fの導入に伴い、1753Fがスカート装着車では初の廃車となった。
保存・再譲渡車両
- 2086,2186 - 晩年は共に5006Fに組み込まれていた2021系(2171系)。2003年に、事故訓練用教材として兵庫県広域防災センターに譲渡された。その際に元先頭車であることを活かして前面の復元改造(原型時代)が実施されたが、運転室のドアは埋め込まれたままである。あくまで教材のため2両とも一般の見学は不可能。
- 1554,1504 - 能勢電鉄1554Fの先頭車。廃車後に2両編成に再組成された上で、広島県三原市にある三菱重工業三原製作所和田沖工場にあるMIHARA試験センターで元JR東日本のサハ204-105と共に試験車両として使用されていた。現在は試験を終了しているため、今後の処遇は不明。
- 1552 - 能勢電鉄1552Fの妙見口側先頭車。先頭部のカットモデルが、大阪府豊能郡豊能町にある吉川八幡神社で保存・展示されている。なお、保存の際に外版がFRP製に交換されている。
1500系・1700系編成表
左は能勢電鉄の現在の車番、右は阪急時代の車番を示す。能勢電鉄車は、1500番台車が1500系、1700番台車が1700系。阪急時代の車番は、2000番台の細文字が2000系、2100番台の細文字が2100系、太文字が2021系あるいは2071系、下線は元2100系の2000系である。
2019年5月現在は1700系4両編成4本、合計16両が在籍する。
←妙見口・日生中央 | ||||||||||||
Tc | M | T | Mc | 廃車年 | 備考 | 阪急時代 | ||||||
1551 | 1531 | 1581 | 1501 | 2016年 | 2152 | 2102 | 2055 | 2103 | ||||
1552 | 1532 | 1582 | 1502 | 2016年 | 2158 | 2109 | 2160 | 2108 | ||||
1553 | 1533 | 1583 | 1503 | 2016年 | 2156 | 2106 | 2157 | 2107 | ||||
1554 | 1534 | 1584 | 1504 | 2015年 | 2159 | 2111 | 2059 | 2110 | ||||
1555 | 1535 | 1585 | 1505 | 2015年 | 2161 | 2104 | 2030 | 2105 | ||||
Tc | Mc | 廃車年 | 備考 | 阪急時代 | ||||||||
1550 | 1500 | 2016年 | 能勢電1形塗装(廃車時点) | 2150 | 2101 | |||||||
1560 | 1510 | 2016年 | 能勢電50形塗装(廃車時点) この編成をもって営業運転を終了 (1500系) |
2100 | 2151 | |||||||
Tc | M | T | Mc | 廃車年 | 備考 | 阪急時代 | ||||||
1750 | 1730 | 1780 | 1700 | 2004年 | 2092 | 2004 | 2061 | 2003 | ||||
1751 | 1731 | 1781 | 1701 | 2017年 | 2058 | 2008 | 2063 | 2044 | ||||
1752 | 1732 | 1782 | 1702 | 2018年 | 2067 | 2006 | 2057 | 2017 | ||||
1753 | 1733 | 1783 | 1703 | 2019年 | スカート装着 | 2054 | 2042 | 2053 | 2005 | |||
1754 | 1734 | 1784 | 1704 | スカート装着 1754のみ前照灯ユニット部が黒色 |
2050 | 2000 | 2051 | 2014 | ||||
1755 | 1735 | 1785 | 1705 | スカート装着 | 2062 | 2012 | 2177 | 2013 | ||||
1756 | 1736 | 1786 | 1706 | スカート装着 | 2068 | 2018 | 2187 | 2019 | ||||
1757 | 1737 | 1787 | 1707 | スカート装着 | 2070 | 2002 | 2078 | 2020 | ||||
1758 | 1738 | 1788 | 1708 | 2017年 | 2064 | 2010 | 2072 | 2011 |
二代目2000系
2023年10月に2013年以来11年ぶりのモデルチェンジを行い神戸・宝塚線の新型通勤車両として「2000系」を、京都線の新型特急車両として「2300系」をそれぞれ新造し、2024年夏から順次運用を開始することが決まった。顔つきはツリ目がちな前面窓になっており、若干無理している感じもあるが、スピード感があって良いかもしれない。なお神宝線向けの2000系には指定席も転換クロスシートも入れない模様。電車でDで実装されるかも不明。ドアが閉まったらボタンを押すだけで発車から到着まで行ってくれる真の「人工頭脳電車」(ATO・TASC)となるかは現状のところ不明だが阪急電鉄は今後ホームドアを全線全駅に設置するので、ブレーキングの「オートカー」は期待できそうだ。
関連動画
関連コミュニティ
阪急2000系に関するニコニコミュニティを紹介してください。
関連項目
阪急電鉄の電車(2000系列以降) | ||
神宝線 | 3000系 - 5000系 - 5100系 - 6000系 - 7000系 - 8000系・8200系 - 9000系 - 1000系 | |
京都線 | 3300系 - 5300系 - 6300系 - 7300系 - 8300系 - 9300系 - 1300系 | |
引退車 | 神宝線 | 2000系・2021系・2100系 - 5200系 - 2200系 - 3100系 |
京都線 | 2800系 - 2300系 |
能勢電鉄の電車 | |
現役車 | 1700系 - 3100系 - 5100系 - 6000系 - 7200系 |
引退車 | 1500系 |
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