香車とは、将棋の駒の一つである。
概要
前方にどこまでも進める。ただし駒を飛び越えることはできない。
読み方は「きょうしゃ」である。「きょうす」と呼ぶ人もいる。略称は香(きょう)。その動きから俗称として「槍」とも呼ばれる。英語ではlance(槍の意)。
成ると成香(なりきょう)。金将と同じ動きになる。成香は漢字一字で「杏」「仝」などと代用表記されることもある。
おおきな森のどうぶつしょうぎでは「いのしし」。中将棋では成ると白駒(はっく)。
チェスのルーク、シャンチー(中国将棋)の車・俥と起源を同じくする。
特徴
将棋の駒の中で歩兵に次いで2番目に価値が低い。そのため、香車を犠牲に歩を1枚持駒として入手する攻め筋が実戦でも頻出する。
前に進むほど進めるマスの数が少なくなるので、敵陣に入るとほとんどの場合成ることで成香として使われる。
敵陣二段目の香不成は成香の下位互換であり、打ち歩詰め回避などの特殊な状況以外では用いられない。また、ルール上行き所のない駒を作ってはならないので、敵陣一段目では必ず成らなければならない。
豆知識
対局中に動くことが少ない駒の一つであり、4枚の香車が終局まで動かないこともある。使い込まれた将棋盤には香車の跡が残っていることもある。人間将棋では全ての駒を動かすことが一つの目標だが、動かすタイミングに最も苦労するのがこの香車である。
栃木県の輪王寺にある観音堂には安産祈願として香車の飾り駒が数多く奉納されている。香車のようにまっすぐ生まれてくるようにとの願いを込めたものである。
武田氏に仕えた戦国時代の武将・初鹿野伝右衛門は、表に香車、裏に成金を描いた陣羽織を羽織り、香車伝右衛門と呼ばれた。
香落ち
上手側が左香を落とすもので、日本将棋連盟によると二段級差に相当するハンデである。上手は左香がないので左端が弱く、玉を右側に囲うために振り飛車を選択することが多い。展開によっては左香がないことが上手に有利に働くこともある(下手が香車を取ることができない)。
奨励会では二段級差の対局で香落ちの手合が用いられている。
初期の王将戦の既定では対局者のどちらかが3勝差をつけると次の対局から平手(ハンデ無し)と香落ちを交互に指す「三番手直り」が採用されていた。その結果第1期王将戦で升田幸三が名人木村義雄に対して香車を落とすことになったが、升田が当日になって突如対局を拒否したため対局は行われなかった。この一件は対局場となった旅館の名をとって「陣屋事件」と呼ばれ、昭和将棋界の大事件として語り継がれている。
格言
下段の香に力あり
「香は下段から打て」とも言われる。
香車の利きは前方にどこまでも利くため、なるべく下段から打ったほうが多くの利きを活かすことができる。
手筋
田楽刺し
縦に並んでいる駒を香車で貫く攻め筋。香車を串に見立ててこう呼ばれる。
AA
\ 避けたらマジ殺す!/
 ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
/\ /\ < はぁ!?お前が死ね! ↓香車
/ \/ \ /\
/ / u / / u ', // ',
/ / 飛 / / 角 u ', // ',
/ / \車 / /\. 行 ',\ /./ ',\
/_/__\/_/______', .//_____',
| | | | | |
\ ここは俺が!!/
 ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄
∑ /\ ∑ /\ /\
/ \ / \/ \ /\
/ / u / / u / / ', // ',
/ / 飛 / / 角 / / 歩 ', // ',
/ / \車 / / \行 / /\. 兵 ',\ /./ ',\
/_/__\/_/__\/_/______', .//_____',
| | | | | | |
/\ /\ ↓香車
/ \ / u\ /\
/ / u / / u // ',
/ /u 飛 / / 角 // ',
/ / \車 / / \行 /./ ',\
/_/__\/_/__\ //_____',
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歩の裏の香車
香車は前にしか進めないので、歩を打たれると簡単に利きを遮断されてしまう。しかし、相手の歩の裏に打った香車は歩で遮ることができないので(二歩の反則になる)、利きを防ぐのが難しい。
ロケット
香車を縦に重ねたものをロケットと言う。3枚重ねると3段ロケット、4枚重ねると4段ロケットとなるが、実戦で現れることは稀である。敵陣の端を攻めるのに使われることが多く、ロケットを設置するだけで相手陣へのプレッシャーになる。
関連動画
関連項目
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