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オープンワールドとは、ビデオゲームのレベルデザインに関する概念、および用語である。
レベルデザインという言葉が指す”レベル”とは、水準という意味合いでのプレイヤーキャラクターの経験値やステータスのことではなく、平面という意味合いでステージやマップなどのゲーム内の空間のことを指す概念である。この記事では便宜上基本的にはステージ・マップの意味合いでレベルという用語を用いる。 |
いわゆるステージ制のような一方通行あるいは限定的な経路や、ゲームプレイが中断されるロード画面を繰り返し挟んだ構成などから成るのではなく、シームレスで自由な移動や行動が可能な単一の広い空間が中心のレベルデザインや、それを採用しているゲームのことをオープンワールドと呼ぶ。有名な例を挙げると、GTAシリーズやTESシリーズなどをイメージすると分かりやすいだろう。
日本国内ではゲーム雑誌が由来とされる「箱庭」という呼び方も用いられているが、これはオープンワールドの概念とは異なる「ミニスケープ」や「サンドボックス」というゲームジャンルを指して使われていることもあり、こちらの呼び方の定義は若干曖昧である。(詳しくはそれぞれの該当記事も参照)
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オープンワールドという呼称が初めて用いられ定着するきっかけになったのは「GTA3(2001)」と言われている。しかしながら、GTA3は3Dのオープンワールドが導入されたゲームの開拓者的タイトルである「シェンムー(1999)」の影響を強く受けて製作されたものであり、GTAシリーズ自身も2Dグラフィックの初代からオープンワールド構成である。
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つまるところ、オープンワールドという概念と呼び方はGTA3以降に定着したもの(先のシェンムーは「FREE」というジャンルを称していた)ではあるが、それと同様のレベルデザインは古くから様々なゲームタイトルで用いられており、概念が定着した現在では過去のゲーム作品のレベルデザインを指して呼ぶことも一般的である。ただし、過去のゲーム作品は当時オープンワールドと名乗っていた(意識して製作された)わけではなく、あくまでプレイヤー側の解釈なので若干曖昧な部分も含まれている。
こうした理由からオープンワールドという概念は厳密には2D/3Dを問わないものであり、3Dで構築されたワールドに限定されているわけではないが、3Dのオープンワールドの普及とともに広まった概念であり、その定義において3Dに限定して考える者も少なからずおり、2Dも含める者との間で解釈に違いが生じていることもある。(後述)
▲一部のコミュニティ間ではやや誤解されがちではあるが、オープンワールドとは厳密にはレベルデザインを指す言葉であり、必ずしもゲームデザインやゲームジャンルを指すものではない。例えば、オープンワールドを導入したゲームに比較的多くみられるゲームプレイやストーリーの進行方法が自由な設計は、後述する「フリーローム」などと呼ばれるもので、これは「メトロイド」や「悪魔城ドラキュラ」などのオープンワールドではないゲームでも導入されている。
また、先に例として挙げたGTAとTESはオープンワールドというレベルデザインでの点は同じでも、ゲームの内容は全く異なっている。オープンワールドといってもRPGもあればレースゲームもFPSもあるし、豊富なストーリー展開もあれば一本道だったり、そもそもストーリーらしいものはほとんど無くて全てプレイヤーに委ねられているというものもある。
この項目ではオープンワールドを導入したゲームに多く見られる、つまりオープンワールドが活かされるゲームデザインの一例を簡潔に解説する。便宜上オープンワールドでの用法を中心に解説するが、先に述べたように他のレベルデザインのゲームでも広く用いられている設計であり、必ずしもオープンワールドのゲーム群を指すものではないということは留意してほしい。
オープンワールドを導入したゲームではプレイヤーが自由に移動できるという作りから、「フリーローム(Free-roam)」「ノンリニア(Nonlinear)」と呼ばれる、ゲームの進行も自由なプレイができるゲームデザインになっているものが比較的多いと言えるだろう。これは俗に言う「一本道」とは対照的なゲームデザインであり、コミュニティ間では"自由度"として解釈、評価されていることもある。
自由に行動できるといっても、ゲームスタート直後からオープンワールドのレベル全体にアクセスできる(最初から世界の果てまで行ける…)ということではなく、ゲームやストーリーの進行に応じて変化する構成であることが一般的である。例えば、「GTA3」ではレベル全体が3つのエリアに別れていてストーリーの進行に応じて先のエリアに進めるという構成であったり、「FF6」ではストーリー上のある通過点までの進行ルートは決まっているが、以降はラスボスに挑むか仲間を集めるかプレイヤーが自由に選択(ゲーム内の世界を探索)できるという構成になっている。他にもRPGタイトルでは特定のエリアはプレイヤーの初期のステータスでは進行が非常に難しい構成になっていることも多い。
このような構成はゲームの進行上致し方ないので…ストーリーの進行やゲームプレイでプレイヤーが迷ってしまわないための誘導処置でもある。一方で、チュートリアルなどのゲームの導入部分を除いて、ほぼ完全なフリーローム構成のゲームもあり、例えば「ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド」は初期装備の状態でラスボスに向かうことが出来る設計で近年話題になった。
ストーリーやゲームプレイへの誘導を行わずプレイヤーに委ねる構成設計や解釈は「ナラティブ」や「エマージェント・ゲームプレイ」と呼ばれるものである。また、ゲームのクリア目標というものもなく、何もかもプレイヤーが自由に決めて遊ぶものは「サンドボックス」と呼ばれる設計である。
ビデオゲームにおける「ナラティブ(Narrative)」とはプレイヤー自身の体験から構成される物語、「エマージェント・ゲームプレイ(Emergent gameplay)」は創発や偶然から生まれるゲームプレイを指す概念である。両者とも詳しく解説するとめっちゃ長くなりそうなのでここでは割愛します。
このようなプレイヤーに委ねられた設計やプレイヤー側で生まれるゲームプレイは、オープンワールドという自由に移動できる構成や、先述したフリーロームにおけるゲームの進行も自由な構成から導入されていたり解釈されていることが多いと言えるだろう。
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※Emergent gameplayは2017年現在日本語での呼称が定着していないようなので、とりあえずカタカナ表記にしました。
「サンドボックス」とは文字通り砂場遊びであり、ゲームの目標もプレイヤーが自由に創造するゲームである。有名な例では「Minecraft」が該当する。(詳しくは該当記事参照)
自由に遊ぶという設計からサンドボックスのゲームもまた基本的にオープンワールド的レベルデザインであることが多い。ただし、例に挙げたMinecraftはレベルが自動生成されるゲームであり、レベルデザイナー(つまりは人の手)によって設計された従来のオープンワールドのレベルデザインとは大きく異なるものでもある。
▲オープンワールドとそれ以外のゲームではどんな違いがあるか。具体例として、ニューヨークのマンハッタンを舞台にした二つのゲームを比較する [表1]。オープンワールドのTrue Crime:New York Cityと、非オープンワールドのランナバウト3である。いずれも3Dグラフィックで街やオブジェクトを構築した、車を運転できるアクションゲームという点は共通。
True Crime:New York City | 比較タイトル | ランナバウト3 |
ワールド内で完結 | ゲームの工程 | メニュー画面とワールドで成立 |
ミッション中以外でも自由に行動できる | ワールドでの行動 | メニューで選んだミッション中のみ |
自由に移動できる | 移動経路 | ミッションで設定された経路のみ |
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上記のように、オープンワールドはその中を自由に移動できることを前提にゲームがデザインされているが、非オープンワールドにおいてはミッションの中に行動する場としてワールドが設定されていて、またワールドでの移動に制限が掛かっている。これは優劣の問題ではなく、ゲームの設計の違いである。
表ではゲームの工程をあのように記したが、他のオープンワールドではメニュー画面とワールドの往復で成り立っているものもあり(MAFIAシリーズ、L.A.Noireなど)、デザインにはある程度の幅がある。
もう一つ比較を示す [表2]。18 Wheels of Steel(18WoS)シリーズと、爆走デコトラ伝説シリーズ(含むアートカミオン芸術伝)の比較である。いずれも3Dグラフィックでワールドやオブジェクトが構築され、トラックで荷物を運ぶドライブゲームという点で共通している。
18 Wheels of Steel | 比較タイトル | 爆走デコトラ伝説 |
プレイヤーの自由判断 | 経路 | ミッション毎に設定された道路のみ |
ワールド内にある流通拠点で選ぶ | 荷物 | ミッション毎にあらかじめ設定されている |
ワールド内にあるトラックディーラー または端末から |
トラックの売買 | メニュー画面から |
カントリーとバーボン | 備考 | 演歌と焼酎 |
こちらも18WoSが「自由に移動できるワールド」を機軸にゲームシステムが構築されているのに対し、デコトラは移動経路が限定されていて、また「ワールドとはあくまでもミッションの為のもの」として存在しているのが分かる。
▲比較の項目では3Dのゲームばかりを対象としたが、本来はオープンワールドという概念に3Dに限定されるものではない。しかし概要で述べたとおり、日本では3Dのオープンワールドが普及する過程で知られるようになったこともあって、定義が論じられる場合において3Dに限定される傾向がある。
ここで、日本の事情を考察するに当たり、wikipediaの日本語版[外部]と英語版[外部]に書かれたオープンワールドの記事を比較してみる。最初に日本語版の記事から。
オープンワールド (open world) とは、英語におけるコンピュータゲーム用語で、舞台となる広大な世界を自由に動き回って探索・攻略できるように設計されたレベルデザインを指す言葉である。
(中略)
初期の3Dゲームでは主に技術的な制約から、プレイヤーキャラクターが行動できる空間は、一見広く見えたとしても障害物もしくは透明な壁で進路を遮ることで、実際には通路状の小規模な範囲に限定されており、個々のマップ上の通路の端に到達したら別のマップに切り替えるなど、擬似的に広い空間があるように見せる手法が主流だった。この仕組みでは、辺り一帯の風景を眺めるなどスケールの大きな映像表現が困難なうえ、遠くの風景は書き割りで表現され実際には到達することができず、ゲーム体験上も閉塞感を抱かせる欠点があった。
「オープンワールドとは~」は冒頭の説明部分、「初期の3Dゲームでは~」の件は概要の最初の部分である。概要にあるとおり、そもそもが3Dゲームを念頭に置いた記事になっている。リンク先にある代表的な作品を見ても3Dゲームばかりで、2Dゲームは考慮されていない。
次に英語版の記事である。尚、括弧内に記した訳はすべて「訳:記事主」である。