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ポロニウム


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ポロニウム (Polonium・Po) とは、原子番号84番の元素である。


概要


ポロニウムは第16族元素 (カルコゲン・酸素元素) に属する元素で、全ての同位体が放射性同位体で構成されている事が確認されている4番に軽い元素であり、最も安定な同位体209Poの半減期125.2年であるが、天然に存在する最も豊富な同位体半減期138.376日の210Poである。これは209Poウラン系列に属し238U ウラン238) の崩壊で生成する核種なのに対し、210Poの親核種に相当する核種はどれも不安定過ぎて天然では生成しないためである。その他、天然には211Po、212Po、214Po、215Po、216Po、218Poが存在するが、最も寿命が長い218Poでも3.1分、その他は1未満の半減期しか存在しないため、実質的に視する事が出来る。

天然での生成はウランからの放射性壊変しかないため、ポロニウムは天然に存在する元素の中でもかなり少ない部類に属する。地殻の均濃度は178ppt (0.0000000178%) 、天然ウラン1トンに対してわずか74μgである。それでも半減期が短い事から、その量での放射能は約120億Bqに達し、これは天然ウランの約254億Bqの半分に相当する。また、大気中には0.2~1.5mBq/m3程度の濃度で210Poが含まれている。微量にしか存在しないため、現在ポロニウムの用途は全て人工的に生成した物に限られる。


性質


以下の性質は、断りのない限り生成が容易で半減期の長い210Poで実験されたものである。

ポロニウムの単体は白色金属ないし半金属であり、その性質は周期表で隣り合うテルルやビスマスに類似する。強α線を放出する為に周囲の空気イオン化して周りは色を放つ。固体には単純立方晶のαと菱面体晶のβの2種類の同素体があり、均密度はそれぞれ9.196g/cm3と9.398g/cm3とわずかに異なる。α一知られている単一の原子で構成された単純立方晶である。約36℃で結晶構造が変化する。

融点および沸点は254℃と962℃であるが、高い揮発性を有しており、ある程度の量のポロニウムは自身の崩壊熱で勝手に昇する程である。実験では55℃に加熱したポロニウムは、45時間で半数がPo2クラスターとして昇している。この昇性を説明するいくつかの仮説が存在するが、最も支持を受けているのはα線によって自身の結合を切断しているという理論である。

には溶けず、にはゆっくり、硫や硝には簡単に溶ける。基にはわずかに溶ける。化数は-2、+2、+4、+6が知られており、+4が最も安定である。ユニークな事に、に溶けたポロニウムは最初Po2+としてピンク色を呈するが、自身が出すα線によりイオン化してPo4+となり黄色となる。更に崩壊熱により溶液は密閉されていない限り数日内に蒸発する。

ポロニウムの化合物50種類程が知られており、これと言って代表的であると言える化合物は存在しない。ほとんどの化合物600℃程度で分解するか、1000℃以上で融解するかのどちらかである。天然ではそのほとんどがポロニウム化 (PbPo) の形で存在するが、これはポロニウムと天然で化合したのではなく、片方のが元ポロニウムであり、放射性壊変によりと化したものである。


歴史


1869年、ドミトリ・メンデレーエフは元素周期表を発表し、未知の元素の存在を予言した。ポロニウムはその内の1つであり、テルルの下に位置する事から「エカテルル (eka-tellurium)」と呼ばれた。

1896年にアンリベクレル放射能及び放射線を発見した事を受けて、ピエール・キュリーとマリー・キュリー夫妻はピエールが開発した圧電気計を良して放射線測定装置を開発し、ウランを中心に研究を行った。その結果、雑多なウラントリウム鉱物で構成されるピッチブレンドから計算値の4倍と言うの放射線放出されるのを発見し、これが未知の元素によるものではないかと言う予測を立てた。しかしながらピッチブレンドは高価であるため、オーストリア政府に頼み込んでヨアヒムスタール鉱山のウランを抽出した残渣数トンを入手する事に成功した。数ヶの抽出・分離を行った結果、1898年に新元素を発見した。1902年には別の人物により放射性テルルが発見され、新元素か否かの論争が一時的にあったが、最終的には両者が同じ物質である事で決着した。マリーは生まれ故郷であるポーランドロシア帝国の占領下から下方される事に強い関心を寄せていたため、新元素にはポーランドラテン語である「ポロニア (Polonia)」に因んで "Polonium" と命名した。

なお、ポロニウムを抽出した残渣は、それでも高い放射能を有している為、更に未知の物質があると考えたキュリー夫妻は更に抽出実験継続し、これがラジウムの発見につながっている。また、ポロニウムはラジウムが発見された後に命名された名前であり、それまでは暫定的に「ラジウムF (Radium-F)」という暫定名で呼ばれていた。マリー・キュリーは後にポロニウムとラジウムの発見で1911年ノーベル化学賞を受賞しており、これは史上初の同一人物による2度の、また異なる分野でのノーベル賞受賞である。


生成・用途


ポロニウムは天然ではごくわずかにしか存在しない。一応地殻濃度的にはオスミウムやレニウムと言った微量元素と同等レベルであり、入手が絶望的とまでは言えないが、効率がいいとは言えない。20世紀前半までに天然のポロニウムを得た最大の試みは、37トンラジウムを生成した残渣から得られたわずか9mgのポロニウムである。この為、今日において研究や実際の用途をめるには人工的にポロニウムを生成するのが最適である。

現在最も広く利用されている合成法は1934年に発見された。209Bi (ビスマス209) に中性子線を照射すると210Biとなり、β崩壊で210Poが生成される。原子炉の高い中性子束はこれに最も適している為、原子炉では210Poを生成する事が一般的に行われている。その収率は1kgのビスマスに対して1ヶ間の照射で約1.7mgである。大量に得る事は技術的に難しく、100g以上のポロニウムは実質的にロシアが毎年生産しているのみである。

ポロニウムが使用された最初の記録は第二次世界大戦中のマンハッタン計画であり、デイトン計画としてポロニウムが生産されていた。その用途はインプロ―ジョン方式の原子爆弾における点火剤である。核燃料の中心部にとポロニウムをメッキしたベリリウムを配置し、爆縮によってポロニウムとベリリウムが混合すると、十分に接近したポロニウムのα線とベリリウム原子核が核融合して炭素原子となり、余分となった中性子を叩き出す。これにより中性子がプルトニウム原子核と衝突して連鎖的な核分裂反応が進行して膨大なエネルギー放出されるのである。爆縮前は間にを挟む事でこの反応を阻している。この用途が最初に日のを見たのは1945年8月9日ファットマン、即ち長崎市に対する原爆投下である。当然ながらこの用途は当時機密事項であり表されず、一般に表されたのは1960年代になってからである。また、この方法により簡単に中性子線が得られるため、携帯の中性子線としての用途が現在でも存在する。

ポロニウムを使用した製品の一部は一般人でも入手可であり、最も一般的なのは静電気除去装置である。メッキした箔や毛ブラシ内部にポロニウムがあり、ポロニウムのα線による強い電離作用を利用して静電気を除去する仕組みである。コロナ放電、X線、外線を利用した同様の装置よりも幾分か優れていると言われている。先述の通りポロニウムは高い昇性を有しており剥き出しだと危険であるが、予めビスマスメッキした後に中性子線を照射すれば先述の反応でメッキの内部にポロニウムが生成するため、安全に生産・使用が可となっている。またわずかな量で事足りるため、仮に飲み込んだりしたとしても有となる事はない。怪しい用途としては、空気イオン化する性質で素い点火を実現したと謳う、ポロニウム使用の自動車点火プラグ1950年代頃までは存在した。実際にポロニウムが使用されていたか否か、使用されていたとして他の製品と差別化されていたかは定かではない。

な崩壊熱は、熱を電気に変換するゼーベック効果を利用したRTG (放射性同位体電気転換器) に利用された事があり、1950年代のアメリカ原子力委員会が設計した初期のRTGに使用が見られる。1g210Poは140Wという出を生み出し、現在流の238Pu (プルトニウム238) の260倍と言う高い出を実現できる。またほとんどα線しか放出せず、遮蔽の困難なγ線がほとんど出ない事も利点である。が、反面として半減期が短い故に短期間しか利用できず、崩壊熱によって500℃以上に加熱して融解・蒸発する事から冷却器がないと使えないという欠点があり、現在では出は劣るがより簡易な装置のみで済み寿命も長い238Pu90Sr (ストロンチウム90) を利用したRTGに置き換わっている。


毒性


ポロニウムの名前は、上述した歴史や性質より、その性で一般的に知られている(マリー・キュリーの死因もポロニウムの被曝による可性が高い)。これはポロニウムの化学的性質による物ではなく、半減期の短さとエネルギーの強いα線を放出する性質によるものである。その性はあらゆる放射性物質の中でも桁違いに強い。また、α線の透過は低いため、その性のほとんどは体内に吸収した際の内部被曝で示され、外部被曝による性は示されていない。

1万Bqの210Poの実効線量は、吸引した場合は22mSv、経口摂取の場合は2.4mSvであり、137Cs (セシウム137) の18倍、131Iの11倍も強い。体重70kgの成人男性では1億1100万Bqの摂取で致命的とされ、重さに換算すれば670ng粒より小さい程度である。これはシアン化カリウム (青酸カリ) の37万倍、VXの240倍、ボツリヌストキシンの0.1倍である。ヒヒによるクエン酸ポロニウムの投与実験では肝臓に29%腎臓に7%、脾臓に0.6%が蓄積される事が分かっており、実際に暗殺された人物も死因内臓である。

ポロニウムの性質は、物による暗殺と言う点では都合の良い性質がいくつかある。210Poはほぼ100%確率α線のみを放出するが、空気中で2cm水中では40μmしか進まず、ごく普通の簡単な容器でも遮蔽可である。逆に透過が難しいγ線は0.00124%とほとんど放出しない。そして先述の通り極微量で殺す事が可である。即ち容器を開け、接するくらいに測定器を置かないと検出できず、運搬中のポロニウムを未然に見つける事はほとんど不可能である。同様に、運搬していても暗殺者は被曝をしない事を意味し、この点でも都合がいい。ポロニウムによる暗殺で著名なのは2004年死亡したパレスチナ自治政府大統領のヤセル・アラファト、2006年死亡したロシア連邦保安庁職員のアレクサンドル・リトビネンコであろう。

一方で、致死量のポロニウムは一般人が入手可な製品を分解する等の方法で入手する事は不可能であり、原子炉で生成された大量のポロニウムを用いる事が必須である。即ちポロニウムによる中死は、政府機関に関与できるような人物・組織でないと不可能であり、何らかの政治的意図で暗殺された疑いをほぼ確定する事となる。リトビネンコの暗殺事件では、ロシア政府が暗殺を直接揮したと強く疑われているが、その理由の1つがポロニウムを用いた暗殺だった為である。ロシア帝国からの独立を願って名付けられた元素が、その後継によって暗殺に利用されたというのは歴史の皮か。一方で、普通の火に混ぜて爆破すれば、微量でも致命的で昇しやすい性質も相まって、簡単に致死量のポロニウムをばらまく事も可である。原子力施設からポロニウムを盗難された場合、検出も困難な事から、テロリストが汚い爆弾として使用するケースも考えられる為、原子力施設のセキュリティ強化が検討されている。

一般人がポロニウムに最も接する機会はタバコである。肥料の原料となるリン鉱石にはウランが多く含まれており、238Uの崩壊で222Rn (ラドン222) が生成し気体として空気中に浮遊し、崩壊で210Pb (210) としてタバコの葉に付着する。タバコが特に注されるのは、表面に付着した細かい毛が効率的に210Pbを捉えるためである210Pbは崩壊で最終的に210Poとなる為、これによってタバコの煙を吸う事で人体にポロニウムが吸引される。タバコによる210Poの吸引でどの程度の健康上の被害があるのかは、推定値の幅が大きく、タバコの有化合物によるもあるため、今のところがはっきりしない。タバコによる肺がんの2%はポロニウムによる内部被曝の影であるとする推定がある。タバコ以外では魚介類、部位で言えば内臓に多く蓄積しており、魚介類自体や内臓を食する習慣のある日本人世界均と較して多くのポロニウムを摂取している。日本人210Poによる被曝量は40Kの被曝量より多くなっている。


関連項目



最終更新日: 18/04/13 16:56
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