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叙述トリック


ヨミ: ジョジュツトリック
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叙述トリック(じょじゅつとりっく)とは、ミステリー小説におけるトリックの一種。漫画映画などでも稀に見られる。


概要


叙述トリックとは、読者の先入観や思い込みを利用し、一部の描写をわざと伏せたり曖昧にぼかしたりすることで、作者読者に対してミスリードを仕掛けるトリックである。「信頼できない語り手」の技法と重なるところが多いが、必ずしも信頼できない語り手」の技法を使った作品が叙述トリックであるとは限らない(芥川龍之介藪の中』とか)。

一般的には作品全体に仕掛けを施した大がかりなものをして叙述トリックと呼ぶが、叙述の仕掛けがメインではない作品においても、他のトリックを隠蔽するための小技として使われていることがある。

文章によって与えられる情報から、読者が思い描いていた物語の様相が、一にしてひっくり返る驚きがその最大の醍醐味。そのルーツを辿れば推理小説明期まで遡ることが可な、古くから定番のトリックである。日本ミステリーで一般的な手法になったのは新本格以降だが、新本格より前の作品にも作例はいくつかある。近年は特にこのトリックの用いられたミステリーベストセラーになることが多い。

そのトリックとしての性質ゆえに、叙述トリックの仕掛けられた作品は、身構えて読めば叙述トリックであることを見抜くことはそれほど難しくないことが多い。そうでなくてもあらかじめ叙述トリックが仕掛けられていることを知って読んでしまうと、醍醐味である驚きが失われてしまうため、叙述トリックの作品は「叙述トリックである」ことが最大のネタバレとなる。そのため、叙述トリックの仕掛けられた作品を紹介することは非常に難しく、叙述トリックであることを明記しなくても、「驚き」とか「衝撃の結末」とか「ある仕掛け」とかぼかした記述をするだけでも叙述トリックであること察されてしまいがちである。本記事もそのため、具体的なタイトルは挙げないことにする。

ミステリーでは読者に対してミスリードを仕掛けるのはよくあることであるが、ミスリードどんでん返しがあるミステリーが全て叙述トリックではない。登場人物にとっては自明事実読者に対して隠蔽するのが叙述トリックである。視点人物自身も騙されていた場合はふつうは叙述トリックにはあたらない(それは普通どんでん返し)が、視点人物AとBがいて、B視点での意図的なり落としによりAと読者だけが騙されている、というような例もある。

またこれは本格ミステリの基本ルールであるが、叙述トリックの場合においても地の文で明確に虚偽の記述をしてはならない。たとえば女性男性に見せかける場合、その人物をして「彼」など性別を限定する表記はしてはならない(ただし、一人称でのモノローグなどにおいては「本人がそう思い込んでいる」という形で事実に反する記述をする場合はある。客観的には美人キャラが「自分の顔はなんて醜いのだろう」と地の文で考えるなど)。相を知ってから読み直したとき、作者をついてないことを確認するのも叙述トリック作品の楽しみ方のひとつ(これに違反する描写があると「アンフェア」と批判されることになる)。

後述のパターン紹介でも述べるが、小説における叙述トリックでは、読者は文章から与えられる情報に基づいて想像するしかないという媒体上の制限を利用し、映像であれば一瞭然の情報を敢えて伏せることで成立させたものが多い(性別の誤認などは典的なそのパターン)。そのため、叙述トリックを漫画映像で成立させるのは非常に難しいが、作例が全くないわけではなく、「この映画にはある秘密があります」という前置きをおいて大ヒットした某有名作などは映像で叙述トリックを成功させた代表的な例である。また、小説の叙述トリック作品を映像化して成功させた作例もいくつかある。

「叙述トリック」という名称の起は定かではない。古めの作品の文庫解説などでは「記述トリック」とか「りのトリック」などと表記されていることもある。また、叙述トリック作品の文庫解説では、引き合いに出す形で他の叙述トリック作品が紹介されてしまっていることがあるので注意が必要。


叙述トリックのおおまかなパターン


以下に較的よく見られる叙述トリックのパターンを挙げるが、必ずしも全てがこれに当てはまるわけではない。

また1作品で使われるパターンもひとつではなく、複数のパターンを組み合わせることでミスリードを誘うのが一般的(人物の誤認と時系列の誤認の合わせ技は特に多い)。

登場人物の誤認

登場人物についての読者の認識をミスリードするパターン。他のミスリードと組み合わせたパターンも含め、おそらく最も作例の多いパターンであり、そのバリエーションも多岐に渡る。

人物そのものを誤認させるパターンでは、ひとりの人物を複数人に見せかけるパターン(状況によって呼び名が変わる、結婚離婚苗字が変わった、苗字なのか名前なのか紛らわしい名前を使う、など)や、逆に複数の人間をひとりの人物に見せかけるパターン(呼び名や苗字が同じ、など)、特定の人物を別人に見せかけるパターンやその逆の別人を特定キャラに見せかけるパターン主人公一人称シリーズで別のキャラ一人称断で紛れ込む、など)といった例があげられる。また、特定の人物の存在そのものを隠匿するパターン三人称だと思わせておいて、実はり手の一人称だったというような例)もある。

人物についての性質を誤認させるパターンでは、性別の誤認が非常に多く、女性男性に見せかけるパターンが大半。ほかに年齢の誤認(登場人物が実は老人だった、など)、身体的特徴の誤認(実は人だった、実は身体障があった、など)等の例がある。極端な例になると、生物としての種の誤認人間だと思っていたり手がなどの動物だった、など)というものもある。

他にも人間関係や社会的立場をミスリードするもの(夫婦に見える男女が実は愛人関係、など)や、変わり種ではその人物の物語における立ち位置や役割の誤認というものもある。メタフィクション的な仕掛けによって犯人探偵と誤認させた某作品や、人物Aが収監されているのを人物Bが収監されているように見せかけた某作品など。このあたりはメタレベルの誤認(後述)というべきかもしれない。

時間の誤認

作中の時系列ミスリードするパターン

分類としては、同時進行の話を別々に見せかけるパターン主人公視点の長編と見せかけて、後半が別視点による前半と同時進行の話だったという某作品など)や、逆に別々の話を同時進行に見せかけるパターン(同じ事件を別視点から描いていると思わせて、同一人物の視点による過去現在の別々の事件だったという某作品など)があげられる。

また、叙述の順序を入れ替えることで、出来事の発生した順序を誤認させるというパターンもある。一章→二章→三章と並んでいるが、実際の時系列は三章→二章→一章だったという作例などがある。

SFショートショートでは、現代の話と見せかけて過去未来の話というパターンもよく見られる。

場所の誤認

物語の進行している場所を誤認させるパターン

犯行現場や器の隠し場所、監禁場所等を曖昧な描写と読者の思い込みを利用して誤認させる場合が多い。たいていは密室トリックアリバイトリックなどを隠蔽するためのミスリードとして用いられる(たとえば、実際は別の場所が犯行現場だが、犯人視点での場所の描写を曖昧にぼかすことで、読者に対して死体発見現場で犯行が行われたように見せかけるようなパターン)。

なかには同じ地名同じ建物が別々の場所にある、といった大掛かりな仕掛けを利用した作例もある。

行為や心理に関する誤認

行為に関する叙述トリックでは、り手の行った行動をわざと描写しないパターンや、描写を曖昧に濁すことで別の行為に見せかけるパターンがあり、「信頼できない語り手」の技法に直接該当する。り手が犯人、というミステリーはだいたいこのパターン

心理に関する叙述トリックでは、り手の独の仕方によってり手自身の認識を読者に対して誤認させるというような例がある(「○○したい」という欲望だとみせかけて、「○○されたい」という欲望だったというようなパターン)。

メタレベルの誤認

作中作などを用いて、作中における虚構と現実読者に誤認させるパターン本文が途中から(あるいは最初から)実は作中作だった、という形が基本。

歴史改変SFなどで見られる、々のいるこの世界の話と思わせて、実は過去のどこかで歴史が分岐した並行世界というようなパターンメタレベルの叙述トリックというべきだろう。

また夢や幻覚、妄想も広い意味でメタと言える。たとえばABCDの4人の登場人物の中でAだけが妄想の中に生きており、BCDはそれに話を合わせているというシチュエーションならば、A視点の描写と他の三人視点の描写との組み合わせで叙述トリックが成立する(もちろん「A視点の描写が妄想である」ことの伏線は必要)。


実例


授業中、はぼんやり外の色を眺めるのが好きだった。
帰ったら何して遊ぼうかとか、どこか遠くに行きたいとか、
いろんなことを思いながら、の外ばかり見てた。

午後の授業なんかだと、ついつい寝ちゃうこともある。
隣の女子校で体育をやってたりすると、それはもう大変
何も考えられずに食い入るように見ちゃう。

ちきれそうな太もも、のびやかな肢体、見てるだけで鼓動が高鳴った。
あのコがいいとかこのコもいいとか、もう授業中だってことなんか
全に忘れてずっと見てた。楽しかった。
でもそんなことしてると、いつも必ず邪魔が入るんだ。

 

先生、授業してください」

2chコピペのひとつ。前述の分類でいえば、これは人物の性質の誤認にあたる(先生を生徒に見せかけている)。


逆叙述トリック


通常の叙述トリックとは逆の形、すなわち読者には自明のことが登場人物に対して隠匿されているトリックのこと。ただしそれだけでは登場人物が驚くだけで読者には驚きが発生しないので、同時に「登場人物がその自明事実を認識できていないこと」を読者に対して隠蔽する叙述トリックが仕掛けられる。

たとえば、AとBが会話している場面において、Aは難聴のため読唇術でBの話を聞き取っているが、BはAが難聴であることを知らずに話しているとする。このとき、「Aは難聴のため読唇術で会話している」ことが地の文に書かれている(読者に明示されている)が、「BはAが難聴であることを知らない」ことが伏せられている(読者にはBがAの難聴を知っているように見える)場合、逆叙述トリックが成立する。

きちんと成立させることが非常に難しいため、作例は極端に少ない。成功させた作例でも、仕掛けの意味を読者理解できないことがしくない。


よくある間違い


たまに叙述トリックをして「倒叙トリック」と間違えて言ったり書いたりする人がいる。

誤解なきよう述べておくが、「倒叙」とは『刑事コロンボ』や『古畑任三郎』のような、まず犯人視点で犯行を描き、その犯罪がどう瓦解するかを眼にしたミステリージャンルのことである。「叙述」と「倒叙」がごっちゃになっているのだろう。

なお「倒叙」ものは単に「倒叙」、あるいは「倒叙形式」「倒叙ミステリ」と呼ぶのが一般的で、一般的な句として「倒叙トリック」という言葉はない。しかし、「倒叙トリック」という誤記を見かけて「倒叙形式」をそう呼ぶのだと誤解して、「倒叙形式」の意味で「倒叙トリック」と言う人までいるので話がややこしい(NHKミステリ読書会番組で「倒叙形式」をして「倒叙トリック」と呼んだこともある)。きちんと区別をつけておきたい。


関連動画


洋楽PVなど典的な映像による叙述トリックの動画もあるが、ネタバレになるので直接は挙げない。

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関連商品


やはりネタバレになるので、ここでは挙げないことにする。


関連項目



最終更新日: 19/02/17 02:43
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