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夕闇通り探検隊とは、1999年10月7日にスパイクから発売されたプレイステーション用の都市伝承&心霊体験アドベンチャーゲームである。トワイライトシンドロームの流れを汲む作品であり、オープニングには「Season of Twilight(夕闇の季節)」という副題が表示される。
出荷本数は少なかったが、隠れた名作としてファンも少なからず存在し、その評判から現在の中古市場ではプレミアが付いている。
少し内気なところのある中学2年生の少年ナオ。かねてより思いを寄せていた同級生クルミに勇気を出して話しかけたナオは、一緒に愛犬メロスの散歩をする約束をした。
「ねえ、マユちゃん、あのね、今日、クルミね…」誘われたことの意味を理解することもなくそのことをサンゴに話すクルミ。2人で散歩することが何故か気に掛かるサンゴは、偶然会ったフリをして合流し、3人で散歩をすることになった。
「学校の裏にある烏塚の森にいるという、人の顔をしたカラスを見るとちょうど100日後に死ぬ」
それから1ヶ月後の赤い満月の夜、そんな噂を聞いたナオは、クルミ(と付き添いのサンゴ)を誘って烏塚の森に入った。ただクルミを誘う口実に過ぎなかったはずの探検。しかし烏塚にたどり着いたナオは、噂のカラスに遭遇してしまう。そして人面カラスの言葉を聞いたナオは失神してしまうのだった。
その翌日サンゴは、嫌っている女子グループ、サカイミカたち(通称・おトイレ軍団)の下らない噂話を耳にする。陽見橋のあたりに花子さんのお墓があるというのだ。散歩のついでに噂について調べてみる3人。そして、病院裏の路地裏通りで、クルミは不思議な小さい女の子と出逢う…
▲何より特筆すべき点として、シナリオ、グラフィック、その他の様々な要素により生々しくリアルに中学生視点の世界が作られていることが挙げられる。
陽見市という町、学校という箱庭世界があたかもそこにあるかのように徹底的に作り込まれており、この独特の空気感は、小説や実写ドラマ、またサウンドノベルでは表現することのできないアドベンチャーゲームならではのものといえる。
全44個の噂を解決していくのがゲームの基本概要となっている。
といってもトゥルーENDを見るのに必要な噂は10に満たず、噂の入手、解決はプレイヤー次第になっている。
プレイヤーは、それぞれ心霊に対するスタンスの異なる3人を適宜選択して噂を入手、解決していくことになる。
ホラーゲームとしては、360度を見渡すパノラマビューが特徴となっている。
もしかしたら後ろに何かいるかもしれない。上を見上げると、いるかもしれない。そんな現実にも体験したことのあるような恐怖感。
霊が当たり前のように存在する現実から隔離されたフィクションではなく、ゲームプレイ後の現実の世界に恐怖感を植えつける。そんなゲームコンセプトを最も体現したシステムである。
探検を終え帰宅後、静まり返った深夜に眠りを妨げるように次々と起こる恐怖の出来事。少しずつその危険は増していき、最終的には3人の死につながっていく。
霊障を避けるためには、邪悪な霊のいる場所には近づかないこと、神社に来た時にはお参りすることが肝要である。
全体を通して描かれるシナリオは、クルミを中心としたものになっている。
他人とは違う世界を持ち、違う世界を見てきた少女と、それを理解できない両親を含めた周りの人間の目。クルミ自身はそんなことなど気にもかけないように明るくマイペースであり続けるが、中学2年生となり周囲とのすれ違いが強くなっていく…
このゲームは3つのシーンに分かれ、各シーンを1日1回ずつ繰り返して進行する。
1つ目は「学校シーン」。ナオ・クルミ・サンゴの中から1人を選び、教室や廊下にいる同級生の会話の中から様々な噂を手に入れる。中には日ごろから積極的に話しかけていないと、噂を教えてくれない人物もいる。
2つ目は「探索シーン」。ナオ・クルミ・サンゴの中から1人を先頭に選び、学校で入手した噂をもとに、ナオの愛犬メロスを連れて噂の検証をするメインパートだ。手に入れた噂についての3人の会話をよく聞き、誰で検証するかを見極めることが必要となる。
3つ目は「プライベートシーン」。探索を終えた後の、ナオ・クルミ・サンゴそれぞれの家庭での生活が描かれる。基本的には何気ない日常が淡々と映し出されるが…
この3つのシーンを一巡すると一日が終わる。霊障によって命を失うことなく無事に100日を過ごすことができればエンディングを迎えることができる。
この作品を娯楽作品という観点からみると、かなり人を選ぶ点が多い。リアルな世界観・雰囲気を作り上げるために操作性やテンポなどを犠牲にしている部分がある。例えば、会話をボタンで送ることができない、その場に止まったり後ろに方向転換するときは慣性を再現するために少し前に出てしまうなど。
また、ホラーゲームとしては肩すかしなシナリオが多く存在するが、これも作品の世界を構成する重要な要素であり、賛否が分かれるところである。
各シナリオを発生、クリアするフラグの立て方が分かりにくく、攻略に頼らずに全ての噂を解決するには相当の数のリセットが必要に なる。そしてバグも多く、攻略本通りにしてもシナリオが全く発生しなくなったりする。
また登場人物についても、誰にでも好かれるようなキャラクターとして描かれてはいないため、彼らを魅力的に捉えられるかどうかもこのゲームの評価の分かれ目となるところである。
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