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私は目を覚ます。目の前にはパソコンの画面が広がっていた。おそらく、椅子に座ったまま寝てしまったのだろう。ついこの間もやってしまったし、いけない癖だとは分かっているのだが。
昨日の記憶がやけにおぼろげだが、とりあえず体にべっとりとくっついた汗を流したい。そう思って席を立とうとした時だった。
「ようやくお目覚めか」
背後から聞こえてくるのは見知らぬ男の声だ。そいつによって硬い何かを背中に押し付けられる。ねっとりとした恐怖が胃の底から湧き上がってきた。
よく見ればパソコンも自宅の機種とは違う。机の上に至っては書類も何もおいていない。ここはどこだ?全く知らない家に連れてこられたようだ。
「お前はニコニコ大百科の編集者だな? 正直に言えばコイツの引き金を引くこともない」
男は何やら手に持った物をガチャリと鳴らした。私はそれが何か見ることはできないがそれが何か悟った。
私は上手く喋ることができず、相手からは後ろ向きの状態のままこくりと頷くのが精一杯だった。
仕事の都合上人と会話する機会は少なくないが、こんなに緊迫した状況での会話というのは初めてのものだった。
「そうか。なら、ニコ百に【小説】の記事を作れ。出来が良ければ無傷で帰してやろう」
小説の記事は確かにまだない。なかなか面白い内容を思いつく人がいないのだろう。私自身も文学には縁がないため、この記事を作ろうと思ったことはなかった。
この男はきっと、私がニコニコ大百科で小説の記事を書かないとその手に持った銃でためらわず私を撃ち殺すだろう。
そういえば最近ニコニコ大百科の編集者が何人も殺されていると噂で聴いた事があった。
きっと私がニコニコ大百科の編集者と知ってて監禁し、無理やり編集させようとしているのだろう。所詮他人事だと思っていたのに、まさか私の身に降りかかろうとは思ってもいなかった・・・
しかし、今は建てなければ私の命が消されてしまう。記事一つで命が助かるのなら安いものだ。さっさと書き上げてしまおう。
私は目の前のパソコンを操作しニコニコ大百科へアクセスする。【小説】と文字を打ち記事作成を始める準備はできた。
未だに恐怖で震える手を落ち着かせながら、私はひとつずつ、ゆっくりとキーボードを叩き始めるのだった――
――小説(しょうせつ)とは、文章を読むことを中心とした娯楽作品の総称である。
一般的な定義は、散文で書かれた事実とは異なる内容と定義付けされている。とはいえ、実話と主張する小説もあったりするので、その定義は曖昧である。小説という単語自体は紀元前から中国で使われていたが、そもそもは「くだらない話」「取るに足らない話」のような意味であった。しかし漢時代の中国では短い文章などにその単語を使ったとされ、現代の意味に近づいていく。
日本で「小説」という言葉を文字を読む娯楽作品の意味で使ったのは明治初期であり、坪内逍遥らによるものとされている。
日本ではそれ以前より古くから文章による娯楽作品は存在していたが、明治時代の印刷技術の発展により小説は爆発的に広まった。
日本の近代小説の先駆けとなった作品は1887年の二葉亭四迷による『浮雲』とされる。明治時代には様々な文豪が誕生した。
日本中の多くの書店では小説コーナーが設けられ手軽な価格で購入できる。
小説は紙に書かれた文章を読む物が基本であるが、現在では紙を使わずにコンピューターで閲覧する電子書籍なども普及が進んでいる。
種類は長編小説から短編小説など長いものも短いものもあり様々である。若者向けの内容が軽い小説はライトノベル(軽小説)と呼ばれる。
▲小説の作法というのはあくまで慣例であり、実際のところは作法のようなものは存在しない。しかし、これらを守った方がより文章として見栄えするというものならいくつかある。
などが有名である。
▲小説は対象とする読者層に応じてある程度の分類、棲み分けが為されている。
一般的な意味で言えば、芸術性に重きを置いている文学。単に「文学」と言った場合、純文学(的な小説)のことを指す。しかし何が芸術かと言われるとそれ自体が定義不能に陥るので、現代では「純文学雑誌に載る小説」または「純文学の賞を取っている作家の小説」程度の意味がおそらく実情に近い。年に2回、芥川賞の発表のときだけ存在が話題になる。なんか偉そうなイメージを抱かれがち。海外では「主流文学」とも言う。
一般向けの娯楽小説全般のこと。現代では「エンターテインメント小説(エンタメ)」「一般文芸」と言った方がたぶん通りがいい。要するに、書店で文芸書や一般文庫の棚を眺めたときに並んでいる本の多くがこれ。この中でミステリーやファンタジー、SFなど特定のジャンルに強く帰属する小説は「ジャンル小説」とも呼ばれる。純文学の一応の対義語ではあるが境界は果てしなく曖昧。かつては純文学と大衆小説の中間の小説を意味する「中間小説」という言葉もあったがほぼ死語である。
主に小中学生を対象にした小説。偕成社、理論社、岩崎書店、福音館書店、ポプラ社などが有名。大手出版社も講談社青い鳥文庫や角川つばさ文庫など児童書レーベルを持っている。一般レーベルで再刊されて大人の読者にヒットすることも多い。
主に中高生およびオタク読者をターゲットにした娯楽小説。文庫書き下ろしや、ネット小説の書籍化が中心で、書店では漫画の棚の近くに置かれる。古くは「ヤングアダルト」や「ジュヴナイル」、少女小説は「ジュニア小説」とか呼ばれていた。
ライトノベルと一般文芸の中間層を狙った小説群を指す新興の分類。「キャラクター文芸」などとも。わりと女性向けが多い。
ポルノ。フランス書院が有名。オタク向けの官能小説は「ジュヴナイルポルノ」とも(美少女文庫、二次元ドリームノベルスなど)。小説には漫画やゲームのような性表現による販売規制はほとんど存在しないので、18歳未満でも購入可能だったりする。
BL。面倒なのでジャンルの詳しい説明は省くが、多数のレーベルがあり大きな市場を形成している。少女小説とは読者層が重なっているので、少女小説レーベルからBLも出る。
海外の小説を日本語に翻訳したもの。古典、主流文学からジャンル小説、児童文学、ロマンス小説、ポルノまでいろいろ。一般の文庫レーベルでも翻訳ものは背表紙のデザインなどで区別されている。
映画、漫画、アニメなど他媒体の既存の作品を小説化したもの。小説版独自のストーリーを展開するスピンオフ作品も含む。いわゆる本好きの間で話題になることは少ないが商業的なシェアは大きい。
主にアマチュアの作者によって書かれ、ネット上で公開され、多くは無料で読める小説。古くは個人サイトで公開されていたが、現在は各種投稿サイトへの投稿が主流。人気が出ると書籍化されることが多い。
既存の作品を元にファンが(勝手に)創作するファンフィクション。ネット上で無料で公開されるものや、同人誌として頒布されるものなどがある。
▲小説には様々なジャンルがある。もちろんジャンルとは本質的に後付けのレッテル・分類であるが、特定のジャンルを専門に読む読者も少なくなく、それぞれ独自のマーケットを形成している。とはいえ、複数のジャンルにまたがる作品も珍しくなく、境界線は曖昧である。下記以外にも様々なジャンルが存在する。
作者自身の実体験や身の回りの出来事を、ほぼ実際にあった通りに書いた小説。明治時代の田山花袋「蒲団」以来、日本の純文学ではなぜかこれが伝統的に中心となっており、純文学=私小説と見なされた時期もある。現代ではさすがに主流ではないが、しぶとく生き残っている。
またの名を推理小説。謎を提示し、その解決を目指すことを物語の中心に置いた娯楽小説全般のことだが、その幅は非常に広く、本格ミステリ、社会派ミステリー、サスペンス、ハードボイルド、冒険小説、トラベルミステリー、ノワール、警察小説、日常の謎、イヤミスなど内部ジャンルが多数ありとてもここには書き切れない。ミステリーの記事を参照。
過去の時代(主に江戸時代)を舞台にした娯楽小説。実際の史実とはあんまり関係なく、過去の時代を舞台に主に架空の人物の活躍を描いたものを指すが、現代では歴史小説もまとめて「時代小説」と大雑把に呼ぶことも多い。現代では文庫書き下ろしのシリーズものが大量に書かれている中高年向けライトノベル。時代小説の記事を参照。
実際の史実を元に、実在の歴史上の人物や出来事を掘り下げることをメインにした小説。とはいうものの上記の通り時代小説との区別は曖昧になっている。歴史上の様々なリーダーや組織運営・改革が題材になることが多いので、サラリーマンにビジネス書として読まれてたりする。
登場人物の恋愛模様や恋愛感情を描くことがメインの小説。女性作家が書いて女性読者が読むことが多いが、男性作家もいるし男性読者もいる。より通俗的なものになると「ロマンス小説」として独自のレーベルと読者層を持つ。
青春時代の恋愛や友情、成長の痛みや通過儀礼を描くことがメインの小説。児童文学からライトノベル、一般文芸、純文学まで特に広く遍在する。
家族の関係や有り様をメインテーマにした小説。一般文芸では非常に多く書かれている。恋愛小説・青春小説も含め、普通の人の日常生活上で起きうることを描いたリアリズム小説は(ミステリー・SF・時代小説などの「ジャンル小説」ではない、ぐらいの意味で)「普通小説」と呼ばれることもある。
サイエンス・フィクション。定義はあまりにも面倒なのでSFの記事を参照。他に比べて専門性の高いジャンルのため、早川書房や東京創元社など特定の出版社が強く、固定読者が多い。
これまた定義はあまりにも面倒なのでファンタジーの記事を参照。完全に地球と異なる異世界を構築したものを「ハイファンタジー」、現実世界に近いものを「ローファンタジー」と呼んで区別したりする。ライトノベルや児童文学が中心だが、一般文芸の分野でも結構書かれている。
ファンタジーと語義的にはほぼ同じだが、「幻想小説」と呼ぶ場合は、剣と魔法とか異世界など一般的に「ファンタジー」という言葉から想像される類いのものではないタイプの、現実にあり得ない幻想的な出来事が起こるような小説のことを指す。SFやホラー、純文学とも近い。「幻想文学」とも。
読者に恐怖感を与えることがメインの小説。怪談もこのジャンルの範疇。幻想小説やSFとも近い。
魔術や妖怪など、オカルト系のネタや伝説・伝承などを扱った娯楽小説。80年代にはいわゆるノベルスで一大ブームを築き、ライトノベルなどにも多大な影響を与えた。
主に第二次世界大戦を舞台に、歴史のIFを空想するミリタリー娯楽小説。90年代に大ブームを巻き起こしたが21世紀になってからは下火。
純文学において、SF、ファタジーなどジャンル小説の題材・手法を導入した作品のこと。つまり「SF・ファンタジーっぽい純文学」か「純文学っぽいSF・ファンタジー」を指す。
▲小説はその長さに応じて「長編」「中編」「短編」などの区別がある。
基本的に「それ一作で一冊以上の本を為す」場合に長編と呼ぶ。
具体的にどのくらいから長編と呼べるかはジャンルにもよるのだが、長編小説を募集する公募新人賞では、原稿用紙換算で200枚から300枚ぐらい(単純計算で8万字~12万字、実際は改行が入るのでもうちょっと少ない)が下限であることが多い。要するに、「単品で1冊の、常識的な厚さの本になる長さ」であれば長編と言える。まあだいたい200ページ以上あって、単品で1冊の本になっていれば長編と言えるだろう。それより短い場合は「中編」か「短めの長編」と言われるが、境界は曖昧。
基本的に分厚い本ばかり書く作家の場合、文庫本換算で200ページ以上あっても、厚い短編集の中の1編として収録され「中編」として扱われることもある。
長編は新聞・雑誌に連載されたり、雑誌に一挙掲載されたりしてから本になる。雑誌などに掲載されることなく書き下ろしとして本になる場合も多い。
何冊にも及ぶような作品になると「大長編」とか「巨編」とか言われることも。
長編と短編の中間の長さの小説。もしくは長めの短編。
明確な定義はないが、基本的に一作では本にならず、短編集の中に収録される長めの作品のことを指す。短編との区別も明確な基準はなく、短い方に基準を合わせれば「原稿用紙換算で100枚を超えれば中編」、長めの方に基準を合わせれば「文庫本換算で100ページを超えたら中編」といったところか。
芥川賞は短編もしくは中編を対象としているが、候補になるのはこの中編サイズ(原稿用紙換算で100枚~300枚未満)の作品が多い。
単体で1冊にはし辛い長さなので、基本的に雑誌に掲載され、本にするときは他の短編・中編とまとめられて短編集として刊行される。
短い小説。新聞に読み切りで掲載されたり、雑誌に掲載される。短編と呼ばれる長さの上限は、上記した中編の長さの下限と考えればいい。
何作か集めて短編集として本にまとめられるのが基本。近年は最初から本にまとめることを前提として、同一のキャラクターが登場する複数の短編を雑誌に連載する「連作短編」が非常に多数書かれている。
短編よりさらに短い小説。上限は諸説あるが、だいたい原稿用紙20枚。短いので、かなりの作品数が溜まらないと本にならない。
掌編とショートショートの区別は曖昧だが、アイデアとオチ重視なのがショートショート、そうでないのが掌編小説、というのがイメージに近いか。
▲小説が出版される際の本の大きさは、だいたい以下のように決まっている。これら以外の判型で出る小説もあるが珍しい。