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新砲戦車(甲)とは、大日本帝国陸軍が第二次世界大戦中に開発していた砲戦車(火力支援車両)である。
開発時のコードネームは、ホリ(以下、ホリ車)。完成車は無い。
ホリ車は昭和18年6月、これまでに入手した欧州戦線の情報を受け、これまでの兵器研究方針の一部を変更して、新たに考案された砲戦車である。
(砲戦車とは、主力である中戦車と行動を共にし、中戦車の突撃・退却の邪魔となる対戦車砲陣地や撃破困難な敵戦車を排除、もしくは発煙筒による目潰しを行う他、積極的に前に出る事で敵の攻撃の盾となり、味方戦車の進退の時間稼ぎを行い、味方戦車をサポートする車両である。砲戦車はその目的を果たすため主力戦車よりも大口径砲を搭載し、中戦車と同程度以上の装甲を施す事が理想的であった。車体は整備性を考慮し、基本的に中戦車と同じものを用いた。)
それまで計画・開発されていた砲戦車は、試製一式砲戦車ホイと後継車両として計画されていた新砲戦車ホチであったが、これらの砲戦車は対戦車砲陣地の制圧の重点に置かれ、対戦車戦闘は二の次であった。そのため主砲には75mm~105mm榴弾砲を搭載する予定だった。
しかし、新たに計画されたホリ車は対戦車戦闘を重点に置き、これまでの砲戦車と異なり旋回砲搭は持たず、ドイツの駆逐戦車のような固定戦闘室を採用し、主武装として対戦車戦闘に長けた長砲身105mm戦車砲を搭載する予定だった。
主武装 | 十糎戦車砲(長)×1(実際には105㎜砲) |
副武装 | 一式三十七粍戦車砲(機銃双連)×1、 |
装甲 | 約125㎜(正面)/25㎜(側面) |
速度 | 約40km/h(路上) |
エンジン | BMW改造V型12気筒ガソリンエンジン |
出力 | 550馬力 |
全備重量 | 35t(のちに40t) |
乗員 | 6名 |
主砲の十糎戦車砲(長)は、恐竜的進化を遂げたソ連重戦車や試作中の米軍重戦車に対向するために考案された戦車砲である。要求された性能は、1000mの距離で200㎜の垂直装甲板を貫通する事だったが、現時点での技術力では早急にそれを実現は困難であるとされた為、まずは1000mで150㎜を発揮することを目標とし、将来的には200㎜貫通も目指すということにした。
(口径の105㎜の由来は、中戦車に追随出来ることを考慮した場合の限界の口径だったからである)。
搭載方式は従来の旋回砲搭では量産性と重量の関係上、主砲は長砲身の75㎜級、装甲に関しても75㎜が限界とされており、このままではソ連重戦車に対抗するのが困難であった為にやむを得ず固定式を採用している。
また105㎜級の弾薬を戦闘室内で素早く取り回すのは困難であり、装填速度か大幅に低下するであろうと考えられた為、半自動装填装置だけでなく副砲も取り付けることになっていた。
装甲は砲戦車の任務に耐えられるように正面は約125㎜であるとし、この数値はソ連軍が用いる重対戦車砲に対し、1000m付近の距離で耐えられる事を考慮した値であった。一方、側面装甲は25㎜である。
開発当時、主力戦車とされた五式中戦車と一緒に行動可能なように最高時速は40km、重量も五式中戦車と同じ35~40tとした。
車体のベースになったのは五式中戦車であり、その全体形状はフェルディナントのように箱形の固定戦闘室を後部に置いたⅠ型、五式中戦車から砲塔を取り除きそのまま箱形の固定戦闘室を付けたようなヤークトティーガー風のⅡ型が構想されていた。
(Ⅰ型のモックアップの写真が残されているが、ベースの五式中戦車と異なり車体正面に段差はなく、傾斜した一枚装甲となっている。一方、Ⅱ型は図面として残されており、車体形状は五式中戦車と同じである)
半自動装填装置が取り付けられた主砲は車体に対し少々巨大であったため、主砲が充分に俯角を取れるように、主砲の動きに合わせて天板が開くようにする案と、全体の高さが増えることを忍んで戦闘室後部を盛り上げる案があった(図面として残されているⅡ型は後者を採用)。
▲ホリ車は性能的に日本の開発能力に見合わぬものであり、特に主砲の105㎜戦車砲の開発に苦戦することになる。主砲は昭和18年8月から設計が着手、翌年12月に試作品が完成し試験を行った。試験の結果、主砲そのものの機能は良好であったが、問題となったのは主砲に取り付けられた半自動装填装置と砲弾が装填される薬莢排出時の不具合であった。(また、大口径長砲身は製作難易度が高く量産が難しかった。)
最終的には、装填装置の不具合こそなくなったが薬莢排出の機能は不充分であった。それでも一応の完成とみなし試験車両に搭載され、昭和20年5~6月にかけて試験を行い実用段階まで漕ぎ着けたが、敗戦により開発は中止となった。(開発が中止となった段階で5輛の量産か進んでおり、工程状況は約50%だったといわれる。)
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■sm31852635[ニコ動]
■sm20755808[ニコ動]