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筆算(ひっさん)とは、紙の上で、鉛筆やペンを用いて計算することである。
紙に何かを書いて計算の答えを出すものは、筆算である。
端的には、2+3を計算するのに2個と3個マルを描いて「5」を求めるのも筆算といえるし、「48+28=76」と単に数式を書いて求めても筆算と言える。
これは、「筆算」が「計算機を用いた計算」に対する語だからである。
英語でもcalculate on paperなどそのままの言い方をし、後述の「筆算」という操作に対して特別な単語を用いるわけではない。
しかし、日本で通常「筆算」といった場合、数式とは異なる書式の書き方で、一定のアルゴリズムに沿って答えを求めるものがそう呼ばれることが多い。
▲この項における「筆算」は、「紙で計算すること」すべてを指す。
特別な器具がなくとも、紙とペンがあれば、どこでも計算が可能である。
そのため、わざわざ計算機を探しに行く必要がない。
計算機は、(電子計算機の登場以前は)各演算ごとに異なったものを用意する必要がある。
例えば、そろばんやタイガー計算機は足し算と引き算しか計算できず、これの応用で間接的に掛け算や割り算が計算できるにとどまる。
逆に、計算尺は(一般的なものは)足し算と引き算が計算できない。
一方、筆算は、使う記号さえ工夫すれば同じ道具でどんな計算でも可能なのである。
中近世ヨーロッパにおいては、算盤(アバクス)と比べて遥かに高速に計算できることが利点であった。当時の算盤は、線を引いた板の上に石を置いて求めるものだったり、溝に玉をはめこんだ大掛かりなものであり、操作に時間がかかったためである。
日本では、中国文化との関わりによって江戸時代頃から高速演算に耐えうる「そろばん」が普及していたため、このメリットは薄いかもしれない。江戸と明治の境目になると『洋算用法』『西算速知』といった書籍を皮切りに西洋の筆算法が輸入され、学校教育に採用されたことで広く知られていくこととなった。
計算の過程や結果が紙の上に残ることは、指導者がミスを追跡しやすくするだけでなく、発達障害などで短期記憶の弱い者が、途中の計算をいちいち覚えなくてすむという利点もある。
一方、紙とペンだけは用意しなければならないことが欠点である。
外出先などで計算が必要になった場合、ペンがないなら棒きれで地面を引っ掻いて計算したり、紙がないなら腕にでも書くしかない。汚せるものがなにもない場合、計算できない。
また、暗算は上達すれば筆算よりも遥かに高速に計算できるため、これができる場合、「紙に線を引く」という物理的動作が必要な筆算は逆に手間となる。
▲以下に、筆算の代表的なアルゴリズムを説明する。特記がない限り、日本で一般的な計算方法である。
アルゴリズムを重視しているため、小学校の教科書の書き方とは若干異なる。
計算したい数を位を揃えて縦に並べ、各位ごとに計算する。
計算する順序は、後述の「繰り上がり」を考慮して下位から行うのが普通である。
23+34
2 3 + 3 4 5 7
この際、その位の計算結果が10以上になる場合は、一つ上位にその計算の十の位以上を加える。
この操作を「繰り上がり」と呼ぶ。
1 4 9 + 3 4 8 3 一の位が13となるため、1を十の位に繰り上げる。
減法も、原則として各位ごとに計算する。
引く数のほうが大きい場合、その位の引かれる数に10を加えた数から引き、代わりに上位の引かれる数から1を引く。この操作を「繰り下がり」という。
52-38
54 12 - 3 8 1 4 一の位の「2-8」は「引けない」ため、十の位から1を引いて(小学校では「お隣から1借りて」という)、12-8として計算する。
十の位は、繰り下げているので4-3として計算する。
乗法も加法・減法と同じような書式を用いるが、計算の仕方は異なる。
乗法公式を利用する。
2桁の計算であれば、(10a+b)(10c+d)=100ac+10ad+10bc+bdであることを利用し、かけられる数の各位をかける数の各位にそれぞれ乗じる。
注釈 8 5 × 4 9 4 5 →05×09 7 2 0 →80×09 2 0 0 →05×40 3 2 0 0 →80×40 1 ※繰り上がり分 4 1 6 5 実際の計算では、青字の「0」は省略し、空欄とすることが多い。
上記は、「ネイピアの骨」を用いた計算法と同じアルゴリズムである。
(ネット上では、下記動画のように形を変えたものが「インド式」や「(欧米では)日本式」など計算が得意そうな国の名前で紹介されることがあるが、オリジナルはオランダの数学者ネイピアである)
■sm129170[ニコ動]
繰り上がりを覚えている必要がなく、九九を順番に書いていけばよいが、書くことが多く、3項以上の足し算を何度もする必要があって手間である。小学校の教科書では、複数桁×1桁の計算は1行で済ませ、下記のようにしている場合が多い。
(上付き赤字は繰り上がり)
8 5 × 4 9 7 64 5 3 42 0 41 1 6 5
乗算は位取りに多少の自由が利き、例えば下記のように計算してもよい。
3 6 0 0 0 × 7 8 0 0 0 0 0 0 4 8 2 4 4 2 2 1 2 81 0 8 0 0 0 0 0 0 0 0 0
36000×78000000=36×78×1000×1000000であることを利用している。
ゼロの数は、3つ+6つで9つである。
これを利用すれば、小数の乗算にも応用できる。
2.56×6.5
2● 5 6 × 6● 5 1 2 8 0 1 5 3 6 1 6● 7 4 0
答えの小数点の位置は、かけられる数とかける数の小数点以下の桁数を足したものとなる。
上記の例では、小数点以下2桁×1桁なので、答えは小数点以下3桁となる。
2.56×6.5=256×65×0.01×0.1と分解すれば、答えは16740×0.001となるためである。
割り算の筆算は、上記3つとは形も計算方法も異なる。
そもそも「÷」という記号がどこにもないため、初学者が困惑しがちである。
「割る数×商」を割られる数から引くとあまりが求められることを利用する。
上位のあまりは下位の十の位として利用する。そのため、上記3演算と異なり、筆算は上位から行う。
また、日本式の場合、答え(商)は上に書き、一番下に表されるものはあまりである。
5 7 ) 4 0 3 5 5 九九から、7をかけて40を超えない最大数の見当をつけ、商として5を立てる。
その下に7×5を計算し、40から引くとあまりが求められる。商は5、あまりも5である。
引き算ができなかったり、あまりが割る数よりも大きかった場合は商を増減させる。
商が2桁以上になる場合は、上位1桁目から順に計算する。
9 8 6 ) 5 8 9 5 4 4 9 4 8 1
割る数が2桁以上のときも同様の考え方だが、商を立てるときに2桁の掛け算をする必要があり、難易度が上がる。
2 5 1 8 ) 4 5 6 3 6 9 6 9 0 6
「割る数と割られる数に同じ数をかけても(割っても)商は変わらない」という性質を利用すれば、0の省略や小数の計算ができる。
ただし、あまりの位取りは元の数の割られる数と同じになることに注意。
例えば、70÷30の商は7÷3と同じで2だが、あまりは10である。