イモガイとは、円錐形の殻が特徴的な巻貝である。
主に暖かい海に棲息する巻貝類。殻の形状が里芋に似ていることから「イモガイ」と呼ばれている。
まだら模様や縞などド派手な模様の貝殻を持つ種類が特徴的であるが、「綺麗なバラにはトゲ、もとい毒がある」とばかりに毒を隠し持っている。それもかなり強力なやつを。
毒を持つ貝と聞くと、『食べると中毒』系のことだと思う人も多いだろうがこのイモガイ類はそうではない。
こいつらは貝のくせに毒針を飛ばすというとんでもない貝なのだ。
巻貝類は口の部分に「歯舌(しぜつ)」という、歯の役割をする石灰質の器官を持っているが、こいつはこの歯舌を内部が中空の毒針に進化させ、これで狩りや自己防衛を行なっている。狩りと聞いて「まさか」と思った人は正解。
イモガイ類は肉食性の貝であり、ゴカイ等の小動物や他の巻貝類、さらに種類によっては魚までをも襲って食べている。
自分たちと比べて動きが圧倒的に素早い魚や小動物を仕留めるため、イモガイ類は「コノトキシン」という強力な神経毒を充填した毒針を相手に打ち込んで相手の動きを止める。このうち魚食性の種は動きの素早い魚を相手にするため、脊椎動物に対する毒性が特に強くなっている。
また毒針には銛のような「かえし」がついており、獲物の魚がもがいても逃げられないような仕組みとなっている。毒針から抜け出せないまま猛毒で動けなくなった獲物をそのまま大きな口で丸呑みにする。
猛毒の対象は人間を含む陸上の動物も例外ではなく、「なんかサンゴ礁に綺麗な貝が居るな」と思ってうっかり手をだそうものなら身の危険を感じた魚食性の強毒イモガイに刺され、そのまま海中から向こうの世界にご招待・・・なんてこともありうる。毒針はゴム長靴やウェットスーツをも貫通するため、絶対に手を出してはいけない。
特にその中でもアンボイナガイは沖縄の人から「ハブガイ(ハブ並の毒を持つ貝)」だの「ハマナカー(刺されると浜の中辺りで力尽きてしまう)」だの言われて恐れられている、ハブクラゲ先生やウミヘビ先生と並ぶ「沖縄の海の死ぬがよい最終兵器」状態である(詳しくは「アンボイナガイ」の記事を参照)。
一方で他の貝類を襲う貝食性のイモガイ類は「同じ貝が相手」であるため(魚食性の種と比べれば)脊椎動物への毒性は強くないが、それでもタガヤサンミナシガイのように刺されたら人間でもアウトな種類は存在する。
また、貝食性の種は動きの鈍い相手を仕留めるため、毒針を高橋名人の如く連射ができる。
ゴカイ類などを食べる虫食性のイモガイは前2種に比べるとさらに毒性は弱めになっているものの、用心をすることに越したことはない。
強毒性イモガイに刺されると、はじめは微かな痛みが刺された部分に走るだけなので気づきにくいが、しばらくして刺された部分に激痛が走り、さらに痺れ・腫れ・吐き気・めまい・発熱などの様々な症状が現れる。重症の場合はさらに血圧低下や視力低下、全身麻痺などの症状が現れ、最終的には呼吸不全により死亡する。
厄介なことに、イモガイ類の毒であるコノトキシンには血清が存在しない。このため、イモガイに刺された場合の対処法としては人工呼吸などで生命維持を行いながら、患者の体内からコノトキシンが排除されるのを待つより他にはない。
南国の海で派手な模様の里芋型の貝殻を持つ巻貝を見つけても、絶対に手で触れないように。
イモガイはこんなにも危険な貝なのだが、全身を頑丈な甲羅で装甲している天敵のカニには毒針も通らず、捕食されてしまうこともあるという。
その恐ろしい毒性が話題に上がる一方で、イモガイ類の貝殻は表面がなめらかで形も整っており、きれいな白の地に橙や褐色、黒などで幾何学的かつきめ細やかな紋様をもつため、収集家も存在する。
現在でこそ大量に発見され価格は下がっているが、かつてウミノサカエイモガイの貝殻は2000ドル(1950年当時約72万円)もの価格がついたこともあったという。
危険性や希少性からやや高価になるが、沖縄の土産屋など、販売しているところもある。見かけたら是非、美しい貝殻を思い出に残していただきたい。
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最終更新:2024/03/29(金) 17:00
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