オワンクラゲとは、日本人研究者にノーベル賞をもたらした偉いクラゲである。
【分類】軟(ヤワラ)クラゲ目オワンクラゲ科オワンクラゲ属
【学名】Aequorea victoria (学名の由来)Aequorea→海の/victoria→ビクトリア(本種の発見地・バンクーバー島の中心都市)の
※日本でこれまでオワンクラゲとして知られていたのは、日本沿岸で普通に見られるAequorea coerulescensで、両者には微妙な違いがあるものの、同種なのかどうかははっきりしていない。日本ではA. victoriaもオワンクラゲとよぶ。ちなに"coerulescens"は「青い」という意味。
このクラゲの知名度を一躍高めたのが、2008年に日本の下村脩が本種の研究でノーベル化学賞を受賞した出来事である。オワンクラゲを展示している国内の数少ない水族館の一つ、加茂水族館(山形県鶴岡市)では一躍展示の目玉になり、実物を一目見てみたいという来館者が多数訪れている。その後、日本各地の水族館でもオワンクラゲの展示や発光実験が行われている。
はくはく氏による美麗なお絵カキコがあるので、これを見ながらこのクラゲの特徴を説明していこう。
①まず、お椀を逆さまにしたような扁平な傘は20cmにも達し、比較的小さな種類の多いヒドロクラゲの仲間の中では最大級である。
②傘の裏の中央部には円形の発達した口が描かれており、これを大きく開けてプランクトンを丸呑みにする。また、クラゲの口は肛門の役割もする。
③傘に多数ある放射状の線は水管といい、これが60-110本と非常に多いのも本種の重要な特徴である。水管はクラゲにとって非常に重要な器官であり、これ一つが循環系・消化系・排出系の全てを担っている。
④傘の縁から垂れ下がっているのは触手である。数は150本ほどで、必ず水管の数より多くなっている。本種の触手は普段はごく短いが、クラゲの意志によって長く伸ばすこともできる。触手の根元には粒状の平衡胞があり、この中に入っている石の動きで平衡を認識している。
⑤刺激を受けると、水管に沿って伸びている生殖腺の部分と傘の縁が緑色に光る(全体が発光するわけではない)。また、実際に光っているのを観察するのは非常に難しく、光の色も青白くしか見えないことが多い。
緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein)のこと。オワンクラゲだけでなく、ヤクチクラゲやウミシイタケ(サンゴの仲間)という生物もこれを持っている。
下村脩は生物発光の研究者で、ノーベル化学賞の受賞はこのタンパク質を発見したという特筆すべき業績による。このタンパク質は主に医学・細胞生物学・分子生物学の分野で、タンパク質の細胞内局在の研究になくてはならないツールとして重宝されている。特に、がんの転移や遺伝子治療の効果を視覚的に確認できるのが最大の利点である。
同じくオワンクラゲで発見されたイクオリンは、カルシウムイオンの存在を引き金として青色に発光し、しかもカルシウムイオンの濃度によって蛍光の強さが変わる。GFP発見と同年の1961年に下村らがこれを発見し、以後現在に至るまで、カルシウムイオンの微量定量試薬として重要なツールになっている。このタンパク質は、オワンクラゲの体内ではGFP と結合して存在しており、青色の光のエネルギーはすぐさまGFPにシフト(移動)し、緑色の光に変えられる。そのため、オワンクラゲの発光は緑色に見えるのである。
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最終更新:2024/04/25(木) 23:00
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