トミー・ジョン(Thomas Edward John Jr.)とは、米国インディアナ州出身の元プロ野球選手(投手)である。珍しい左投げ右打ち選手の一人。
MLB通算288勝を挙げた名投手。しかしそれ以上に、スポーツ医学の権威フランク・ジョーブ博士が肘の内側側副靭帯再建手術を執刀した最初のプロ野球選手であり、この術式が彼の名をとってトミー・ジョン手術と呼ばれることでよく知られる。
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高校時代はバスケットボール選手としても活躍。しかしプロ選手としては続けられないと考え、クリーブランド・インディアンスへ入団。
1963年、20歳の若さでメジャー昇格するが、この年は0勝(2敗)に終わる。翌年、25試合に登板し初勝利を挙げるも、2勝9敗と大きく負け越す。
ジョンはシンカー使いとしてダブルプレーを取る能力に長けていた。
1965年にシカゴ・ホワイトソックスへ移籍し、ついに才能開花。この年14勝を挙げ、以後4年連続2桁勝利を達成。1969年は1勝届かず9勝に終わったが、翌年から5年連続2桁勝利を遂げることになる。
1972年にロサンゼルス・ドジャースへ移籍。同チームにはチームドクターとしてスポーツ医学の専門家フランク・ジョーブがおり、このことが後の彼の野球人生に大きく影響する。
ドジャース移籍までは通算84勝91敗と負け越していたが、ドジャース移籍後は一転して貯金を稼げる投手となった。転機となる1974年も、故障まで13勝3敗と勝ち越していた。
1974年7月17日、対モントリール・エクスポズ戦で突如ジョンの左腕に異常が起こる。4回無死1,2塁の場面で迎えたハル・ブリーデンからダブルプレーを獲ろうとシンカーを投じた際、痛みはないが、腕がどこかへ行ったような強烈な違和感を感じる。もう1球シンカーを投じようとしたが投げられず降板。
ジョーブからは長年の投手生活で肘にストレスが溜まった"overuse syndrome"であることを指摘される。当初はジョーブがX線撮影をしても異常はわからず、ジョーブに紹介されたセカンドオピニオンからも療養を勧められるのみだった。
8月、ニューヨーク・ヤンキース戦に備えてジョンが打撃投手を務めようとしたところ、投球がキャッチャーまで届かなかった。この時、痛みどころか何も感じない状態となっていた。ジョーブは腱の移植手術を提案。ジョンは手術のリスクを十分理解していたが、ジョーブを信用し再建手術を受けることを決めた。
9月25日、損傷したジョンの左肘靭帯を切除。ジョン自身の右手首の長掌筋から切除した靭帯の一部を左肘へ自家移植する手術を実施。術後、尺骨神経にダメージがあり、指を失ったような感覚があると訴え、12月15日に神経の位置を調整する手術を実施。その後、リハビリに専念する。
1975年、スプリング・トレーニングでドジャースへ復帰。しかし、この時点では感覚がまだ十分でなかった。チームトレーニングの他に地道にリハビリを続け、シーズン後の9月29日にアリゾナ教育リーグで登板。3回39球を投げ4三振を奪い、復活の手ごたえをつかむ。
1976年、MLB選手として前例のない手術から見事復活を果たし、10勝10敗の成績を残す。
翌1977年には自身初の20勝。キャリア通算3回の20勝到達は、いずれも手術後に達成したものである。
その後はチームを移籍しながら、46歳まで現役を続けた。
サイヤング賞投票で2位になったことが2回ある(4位、8位も1回ずつ)が、結局栄誉をつかむことはできなかった。
上述の通り、シンカーでダブルプレーを取ることに長けていたほか、カーブも得意球種であった。
MLB選手として前例のない内側側副靭帯再建手術を受けながらも、26年間という長きにわたり活躍した。
選手生活晩年の44歳のシーズンには13勝、引退前年の45歳シーズンにも9勝(8敗)を挙げている。
ジョンの挙げた通算勝利数288勝は、左腕として歴代7位の記録であり、手術後14年で半数以上の164勝を挙げていることも特筆すべきことである。
また、打撃でも通算5本塁打を放ち、1966年にはシーズン2本塁打を記録する等、意外な一発も見せた。左投げ右打ちという珍しい選手の一人である。
※ 野球では一塁ベースに近い左打ちが有利とされ、左投げであれば左打ちに矯正されることも多い。
左腕を故障した際の対戦相手であるハル・ブリーデンは、後に阪神タイガースへ入団し活躍した。
実働年数26年は、19世紀後半から1912年に掛けてディーコン・マクガイアが記録した実働年数のMLB記録に数十年ぶりに並んだ。その後、ノーラン・ライアンが27年で記録更新。
ジョンに施された内側側副靭帯再建手術(ulnar collateral ligament (UCL) reconstruction)は、後に野球選手にとって一般的な手術となっている。プロ野球選手として最初に肘にメスを入れたジョンの名をとり、現在この術式は「トミー・ジョン手術」と呼ばれている。
通算:26年 | 登板 | 完投 | 完封 | 勝利 | 敗戦 | セーブ | ホールド | 勝率 | 投球回 | 与四球 | 奪三振 | 失点 | 自責点 | 防御率 | WHIP |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
MLB | 760 | 162 | 46 | 288 | 231 | 4 | - | .555 | 4710.1 | 1259 | 2245 | 2017 | 1749 | 3.34 | 1.28 |
※ニコニコ動画上の検索では見つからず。見つけ次第追加をお願いします。
ニコニコ動画外では、ESPNの30 for 30 shortsでジョンやフランク・ジョーブ博士、関係者らにインタビューをしたドキュメント作品が作られている。この中では、若き日のジョンのユニフォーム姿も見ることができる。
→Tommy and Frank(外部リンク)
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最終更新:2024/04/25(木) 02:00
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