有栖川有栖 単語

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有栖川有栖ありすがわ ありす)とは、

  1. 日本推理小説作家。評論も手がける。デビュー作は『月光ゲーム Yの悲劇'88』。
  2. 1.の作家(と、3.の登場人物)による《学生アリスシリーズ》の登場人物。推理作家志望の大学生
  3. 1.の作家(と、2.の登場人物)による《作家アリスシリーズ》の登場人物。しがない推理作家

のことである。

有栖川有栖(実在する作家)

1959年大阪生まれ。高校生の頃からミステリ作家し、雑誌「幻影城」の新人賞に投稿していた。同志社大学では推理小説研究会に所属、大学時代に書いた短編「やけた線路の上の死体」は1986年鮎川哲也編のアンソロジー踏切』に収録される(現在は『江二郎の洞察』に収録)。

1984年に『月光ゲーム』を江戸川乱歩賞に応募したが一次選考も通らず落選。しかし後日、それが東京創元社戸川安宣のに留まり、稿の上で1989年に『月光ゲーム Yの悲劇'88』でデビュー

いわゆる新本格ミステリ作家の代表格のひとりで、本格ミステリ作家クラブ初代会長新本格においては第一世代にあたる。新本格の立役者綾辻行人とは共通項が多く共同で推理テレビ番組製作したこともあり、現在に至るまで仲が良い。当然だが、有栖川有栖という名前ペンネーム

大学生である有栖川有栖がミス研の先輩・江二郎らと事件に巻き込まれる「学生アリスシリーズ」と、しがないミステリ作家である有栖川有栖が臨床犯罪学者・火英生とともに事件に首を突っ込む「作家アリスシリーズ」が作品の中心(詳しくは後述)。両者の知名度に押されているが「ソラシリーズ」やノンシリーズの著作、エッセイ、評論など作品は多岐に渡る。
作中人物であるふたりの有栖川有栖はそれぞれ別人であり、さらに細かい設定では一方のシリーズはもう一方のシリーズの有栖川有栖が書いた小説、という入れ子構造になっている。

デビュー作は学生アリスシリーズ1作月光ゲーム』だが、学生アリスシリーズ本格ミステリ論理性を追求した長編なのに対し、作家アリスシリーズ一発ネタも含めた短編が多い、という性質上、作家アリスシリーズばかりが刊行されていた。
一方の学生アリスシリーズデビュー作に続く『孤パズル』『双頭の悪魔』で長いこと刊行が止まっていたが、2007年になんと15年ぶりにシリーズ4作となる『女王』を出版、ファンを喜ばせた。なお、そこからまた10年以上新作長編は出ていない(2012年に短編集『江二郎の洞察』が出ている)。
作家アリスの方も、長編は2006年の『乱』から2015年の『の掛かった男』まで9年いてたりするので、どっちにしても長編を書くペースいとは言えない。

どちらの「アリスシリーズ」も探偵ワトソン役が男なため、特に作家アリスシリーズその筋の女性からの人気が非常に高い。ミステリとしては、島田荘司御手洗シリーズ京極夏彦百鬼夜行シリーズと並びたつ小説FC同人の一大ジャンルである(というかこの3シリーズによって同人界でミステリが盛り上がったと言う方が正しい)。
そのため、少女小説レーベル角川ビーンズ文庫からも作家アリスシリーズが刊行されている。

エラリー・クイーンを非常に強く受けており、手なトリックどんでん返しよりも、犯人当てのロジックの精密さと美しさを追及し続ける作家デビュー作『月光ゲーム』はクイーンの代表作から副題に「Yの悲劇'88」を冠し、作家アリスシリーズではクイーンシリーズに倣って名の入るシリーズを刊行している。また、学生アリスの長編では「読者への挑戦状」が作中に挿入される。

また熱心な鉄道ファンであり、大学時代に宮脇俊三の『時刻表2万キロ』を読んで乗り鉄覚めたとか。それもあって大の鉄道ミステリー時刻表トリック好きであり、自身でも時刻表トリック鉄道ミステリー鉄道怪談を書いているほか、鉄道ミステリーアンソロジーを編纂したり、鉄道鉄道ミステリーについてのエッセイ集もある。

代表作は学生アリスでは『パズル』・『双頭の悪魔』、作家アリスでは『マレー鉄道』・『』・『の掛かった男』・「スイス時計」、ノンシリーズでは『マジックミラー』・『幽霊刑事』あたりか。特に『双頭の悪魔』は新本格が生んだロジック本格の最高峰としてオールタイムベスト投票でも上位に入る歴史傑作。基本的に一貫してオールドタイプ本格ミステリを書き続けているが、近年は怪談も書いたりしている。

2003年、『マレー鉄道』で日本推理作家協会賞受賞。2008年、『女王』で本格ミステリ大賞受賞。2018年作家アリスシリーズ吉川英治文庫賞を受賞。2022年には大御所への功労賞である日本ミステリー文学大賞を受賞。新本格系の作家としては北村薫綾辻行人に次いで3人の受賞となった。自身はミステリーの新人賞の選考委員を多数務めている。

2016年には作家アリスシリーズが『臨床犯罪学者・火英生の推理』として連続ドラマ化された。原作の火「この犯罪は美しくない」とか言わないので注意。一応彼に決め台詞いわけではなく、「アブソルートリー」とよく言ってはいるが。

有栖川有栖(《学生アリス》の登場人物)

京都にある私大、英都大学法学部に通う大学一回→三回生。サークルは英都大学推理小説研究会、略称EMCに所属。有栖川有栖という名前は本名で、苗字を短縮して「アリス」と呼ばれている。
将来の推理小説作家で、『双頭の悪魔』で出会ったとある人物をモチーフとして探偵役・火英生を創造。「作家アリスシリーズ」を執筆していくことになる。デビュー作は(たぶん)『46番の密室』。

サークルの合宿などで期せずしてアリスたちがクローズド・サークルの状況に置かれ、その際にEMC部長である二郎が事件を解き明かすというのが学生アリスシリーズの流れである。
大学四回生になってから何度も留年を繰り返す江は初登場時で20代後半、長で物静かだががっしりとした男で「長老」と呼ばれ部員たちから尊敬されている。探偵役として活躍する羽になるが、決して探偵として堂々と活動したいという性分ではない。

本格的な推理小説の形式である学生アリスシリーズだが、EMCのメンバーである先輩望月周平織田次郎アリス漫才のようなやり取りや、紅一点有馬麻里亜とアリスの甘酸っぱい関係など、青春小説としての面も持ち合わせている。

学生アリスはあと長編1作、短編集1冊で完結する予定だそうだが、長編最終作がいつ書かれるのかは誰も知らない

1994年に『双頭の悪魔』がWOWOWドラマ化された際には、アリス志村が演じた(ちなみに江香川照之マリア渡辺満里奈)。また『月光ゲーム Yの悲劇'88』と『孤パズル』は鈴木有布子によりコミカライズされている。

有栖川有栖(《作家アリス》の登場人物)

大阪夕陽丘在住の推理小説作家独身。初登場時は32歳、その後リアルタイムで34歳になったところで加齢はストップし、以降は相方の火ともども永遠の34歳。
本人は売れない作家と言っているが均的サラリーマンと同等の年収はあり、執筆業だけで食べている。こちらも名前は本名で、ペンネームは使わず本名で活動。
学生アリスシリーズ」の作者であり、設定が作者本人(1.の有栖川有栖)と似通った部分もあるがフィクションであり決して私小説ではない。当たり前だ。

彼の友人である英都大学社会学部准教授英生警察から依頼されて捜する際に同行してワトソン役となっている。彼からは苗字を縮めて「アリス」と呼ばれる。
犯罪社会学が専門で、事件現場に赴くことから臨床犯罪学者とアリスが命名。両者とも英都大学卒で、講義中に小説を書いていたアリスの隣に居た火がそれを断で読み、「続きはどうなるんだ?」と尋ねたことから知り合い今に至る。白髪交じりでジャケット姿が特徴的、女子学生からの人気が高いが本人は女性が苦手。京都北白川学生時代からの下宿に住み続けており、関西生活も長いのだろうがアリスとは異なり標準を話す。

アリスが火に同行するのは小説ネタ探しではなく、「過去に人を殺したいと思ったことがある」とく火の危うさを心配しているため。「小説フィクションであるべき」というのがアリスの考えである。
また火も、アリス推理小説作家的な突飛な思考を推理のヒントとしている面もある。時には女性の心の機微など火が不得手とする分野へのデリカシーとしても活躍。

ロシア紅茶』、『ブラジル』、『朱色研究』、『英国庭園』が麻々原絵里依によりコミカライズされている。角川ビーンズ文庫版の表も麻々原が担当。

2016年の連続ドラマ版では窪田正孝が演じ、その筋の女性のみならず男性層からも「かわいい」と好評であった。

(実在の有栖川有栖の)作品リスト

小説

◆は学生アリスシリーズ、◇は作家アリスシリーズ探偵ソラシリーズ

  1. 月光ゲーム Yの悲劇'881989年東京創元社1994年、創元推理文庫) ◆
  2. パズル1989年東京創元社1996年、創元推理文庫) ◆
  3. マジックミラー1990年講談社ノベルス1993年講談社文庫2008年講談社文庫[新装版])
  4. 双頭の悪魔1992年東京創元社1999年、創元推理文庫) ◆
  5. 46番の密室1992年講談社ノベルス1995年講談社文庫2009年講談社文庫[新装版]→2012年角川ビーンズ文庫2019年講談社[限定蔵版]) ◇
  6. ダリの1993年角川文庫1999年角川書店[新版]→2013年角川ビーンズ文庫[上下巻]) ◇
  7. ロシア紅茶1994年講談社ノベルス1997年講談社文庫2012年角川ビーンズ文庫) ◇
  8. のある奈良に死す1995年双葉社1998年角川文庫2000年双葉文庫) ◇
  9. スウェーデン館の1995年講談社ノベルス1998年講談社文庫2014年角川ビーンズ文庫) ◇
  10. 地蔵坊の放浪1996年東京創元社2002年、創元推理文庫
  11. 幻想運河1996年実業之日本社1999年講談社ノベルス2001年講談社文庫2017年実業之日本社文庫
  12. ブラジル1996年講談社ノベルス1999年講談社文庫) ◇
  13. 英国庭園1997年講談社ノベルス2000年講談社文庫) ◇
  14. 朱色研究1997年角川書店2000年角川文庫) ◇
  15. ジュリエットの悲鳴1998年実業之日本社2000年ジョイノベルス2001年角川文庫2017年実業之日本社文庫
  16. ペルシャ1999年講談社ノベルス2002年講談社文庫) ◇
  17. 幽霊刑事2000年講談社2002年講談社ノベルス2003年講談社文庫2018年幻冬舎文庫
  18. 暗い宿2001年角川書店2003年角川文庫) ◇
  19. 作家小説2001年幻冬舎2003年幻冬舎ノベルス2004年幻冬舎文庫
  20. 絶叫殺人事件2001年新潮社2004年新潮文庫) ◇
  21. マレー鉄道2002年講談社ノベルス2005年講談社文庫) ◇
  22. まほろ殺人 ―蜃気楼に手を振る2002年祥伝社文庫
  23. スイス時計2003年講談社ノベルス2006年講談社文庫) ◇
  24. 果て秘密2003年講談社ミステリーランド2012年講談社ノベルス2013年講談社文庫
  25. 逃げ2003年カッパノベルス2007年光文社文庫2023年光文社文庫[新装版]) ◇
  26. モロッコ水晶2005年講談社ノベルス2008年講談社文庫) ◇
  27. 2006年新潮社2008年講談社ノベルス2010年新潮文庫) ◇
  28. 女王2007年東京創元社2011年、創元推理文庫[上下巻]) ◆
  29. 抜け男の2008年角川書店2011年角川文庫
  30. 妃はを沈める2008年光文社2010年カッパノベルス2012年光文社文庫2023年光文社文庫[新装版]) ◇
  31. 英生にげる犯罪2008年文藝春秋2011年、文文庫) ◇
  32. の上に2009年メディアファクトリー2012年角川文庫
  33. 闇の喇叭2010年理論社→2011年講談社2013年講談社ノベルス2014年講談社文庫
  34. 長い廊下がある2010年光文社2012年カッパノベルス2013年光文社文庫2023年光文社文庫[新装版]) ◇
  35. 真夜中の探偵2011年講談社2013年講談社ノベルス2014年講談社文庫
  36. 高原のフーダニット2012年徳間書店2014年、徳間文庫) ◇
  37. 二郎の洞察2012年東京創元社2017年、創元推理文庫) ◆
  38. 論理爆弾2012年講談社2014年講談社ノベルス2015年講談社文庫
  39. 2013年メディアファクトリー2016年角川文庫
  40. 菩提荘の殺人2013年文藝春秋2016年、文文庫) ◇
  41. 怪しい店2014年角川書店2016年角川文庫) ◇
  42. の掛かった男2015年幻冬舎2017年幻冬舎文庫) ◇
  43. 狩人悪夢2017年KADOKAWA2019年角川文庫) ◇
  44. 地健三郎の霊なる事件簿2017年KADOKAWA2020年角川文庫
  45. インド楽部の2018年講談社ノベルス2020年講談社文庫) ◇
  46. こうしてもいなくなった2019年KADOKAWA2021年角川文庫
  47. カナダ貨の2019年講談社ノベルス2021年講談社文庫) ◇
  48. おろしてください2020年岩崎書店) ※絵本
  49. 地健三郎たる事件簿2020年KADOKAWA2022年角川文庫
  50. 線上の夕映え2022年文藝春秋) ◇
  51. 地健三郎の呪える事件簿2022年KADOKAWA

評論・エッセイ(単著)

  1. 有栖の乱読1998年リクルート
  2. 作家の犯行現場2002年メディアファクトリー2005年新潮文庫
  3. 迷宮2002年角川書店2005年角川文庫
  4. は館に帰る 有栖川有栖エッセイ集2003年講談社
  5. は解ける方が魅的 有栖川有栖エッセイ集2006年講談社
  6. 正しく時代に遅れるために 有栖川有栖エッセイ集2006年講談社
  7. の向こうに落ちてみよう 有栖川有栖エッセイ集2008年講談社
  8. 有栖川有栖の鉄道ミステリー2008年、山と渓谷社→2011年光文社文庫
  9. 本格ミステリの王2009年講談社
  10. ミステリの人々2017年日本経済新聞出版社)
  11. 論理仕掛けの奇談 有栖川有栖解説2019年KADOKAWA2022年角川文庫

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