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Typoglycemia

今週のおすすめ この記事は第355回のオススメ記事に選ばれしまた!
よりニコニコできるような記事に編集していきましょう。

Typoglycemiaとは、単を構成する文字を並べ替えても、最初と最後の文字が合っていれば読めてしまう現のことである。

概要

まずは以下の文章を読んでいただきたい。

こんちには みさなん おんげき ですか? わしたは げんき です。
この ぶんょしう は いりぎす の ケブンッリジ だがいく の けゅきんう の けっか
にんんげ は もじ を にしんき する とき その さしいょ と さいご の もさじえ あいてっれば
じばんゅん は めくちちゃゃ でも ちんゃと よめる という けゅきんう に もづいとて
わざと もじの じんばゅん を いかれえて あまりす。
どでうす? ちんゃと よゃちめう でしょ?
ちんゃと よためら はのんう よしろく

これは2009年5月8日に、2ちゃんねるに投下されたコピペである。一見するとただのひらがなのみで構成された文章に見える。だが、この文章は「単の頭と末尾をそのままに、内部の文字を入れ替えた」文章なのである。これをきっかけに、投下されたスレ内では様々な意見が飛び交う一時的なブームとなった。

ちなみに、上の文章中の単を正しい表記に直して漢字仮名交じり文に書き下し、単間のスペースを取り除いたものが以下の文章である。

こんにちは皆さんお元気ですか? 私は元気です。
この文章はイギリスケンブリッジ大学の研究の結果
人間は文字を認識する時その最初と最後の文字さえ合っていれば
順番は滅でもちゃんと読めるという研究に基づいて
わざと文字の順番を入れ替えてあります。
どうです?ちゃんと読めちゃうでしょ?
ちゃんと読めたら反応よろしく

このような事Typoglycemia(註:この英単日本語名はついていない)と呼ぶ。
Typoglycemiaは、「Hypoglycemia(低血糖)という単Typoタイプミスのこと)を合成した造である」と言われることがあるが、それについてWikipedia英語版)では

It is an urban legend/Internet meme that appears to have an element of truth to it.

(もっともなように見える都市伝説インターネットミームである。)

と述べられている。

Typoglycemiaとその歴史

では、なぜこのような都市伝説が生まれたのだろうか。
元をたどると、実際にTypoglycemia……というよりはの働きと単順の関係性についてだが、数例の研究がなされている。その歴史は意外にも古く、それつにいて最もく論じられたのはなんと1976年である。

1976年

1976年に、ノッティガム大学で『The significance of letter position in word recognition(単認識における文字の位置の重要性)』という論文がGraham Rawlinsonという者によって提出されいてる。この論文では、

中の文字バラバラにしたものは、文章を理解できる読者の読解にほとんど、あるいは全く影を及ぼさない。実際に速読が可読者は、単中の文字位置をバラバラにした文章をA4サイズ1ページ提示されたとしても、4,5個の間違いにしか気づくことはない

-----G.Rawlinson 1976

と述べられている。

1999年

1999年に、カリフォルニア州大学David R. PerrottKourosh Saberiにより、『逆になった話し言葉の認知の修復』というタイトルの論文が執筆される。この論文はめられた話し言葉のパターンをどうやって処理し解釈するか、また発音を処理するためにが拾い上げる合図とは一体何かにいつて扱ったものであり、Nature誌に掲載された。

Saberiらの論文は「話し言葉」の歪みについて記述したものであったが、これについて、先述のRawlinson氏本人が1976年に執筆した論文に触れつつ反応した投書がNew Scientist誌に掲載される。この中に、

This is easy to denmtrasote. In a puiltacibon of New Scnieitst you could ramdinose all the letetrs, keipeng the first two and last two the same, and reibadailty would hadrly be aftcfeed. My ansaylis did not come to much beucase the thoery at the time was for shape and senqeuce retigcionon. Saberi's work sugsegts we may have some pofrweul palrlael prsooscers at work.

The resaon for this is suerly that idnetiyfing coentnt by paarllel prseocsing speeds up regnicoiton. We only need the first and last two letetrs to spot chganes in meniang.

This was not easy to type!

という一節がある。これ自体も(最後の一文以外は)Typoglycemiaを利用したのもであり、正しい単に直すと

This is easy to demonstrate. In a publication of New Scientist you could randomise all the leters, keeping the first two and last two the same, and readability would hardly be affected. My analysis did not come to much a because the theory at the time was for shape and sequence recognition. Saberi's work suggests we may have some powerful processes at work.

The reason for this is surely that identifying content by parallel processing speeds up recognition. We only need the first and last two leters to spot changes in meaning.

This was not easy to type!

となり、さらにこれを日本語に訳すと

これをデモンストレーションするのは簡単だ。ニューサイエンティストの出版物で、最初の2文字と最後の2文字だけを同じにして、残り全ての文字バラバラにしても、読めるかどうかという点についてはほとんど影がない。そもそも、私の分析は大したもんじゃなかった。当時の理論は文字の形状と連続性についてだけの理論だったからだ。Saberiの論文は、何らかの強な並行処理が働いてることを示唆している。

その理由は、並行処理による内容特定が認識速度を上げるからだ。意味の変化を見抜くために、々は最初と最後の2文字しか必要としない。

というかタイピングするのが大変だったよ!

ということになる。

この時点では、の働きと文字列の置換について述べただけの、至ってな論文群である。それに加えて、最初に書いたコピペの内容も未だに登場しこてない。

2003年

そんなTypoglycemiaであったが、この現が広まることとなった大きな転換点が2003年に訪れる。

2003年9月12日David Harris' Science & Literaruteというサイトで、「Aoccdrnig」で始まる英文が紹介された。その全文が以下の通り。

Aoccdrnig to rsereach at an Elingsh uinervtisy, it deosn't mttaer in waht oredr the ltteers in a wrod are, the olny iprmoetnt tihng is taht frist and lsat ltteres are in the rghit pclae. The rset can be a toatl mses and you can sitll raed it wouthit a porbelm. Tihs is bcuseae we do not raed ervey lteter by istlef, but the wrod as a wlohe.

これを、正しい英単に直しみてる。

According to research at an English university, it doesn't matter in what order the letters in a word are, the only important thing is that first and last letters are in the right place. The rest can be a total mess and you can still read it without a problem. This is because we do not read every letter by itself, but the word as whole.

 日本語に訳すと、

英国大学の研究によれば、ある単の中の文字の順序がどうかは問題ではなく、ただ重要なのは最初と最後の文字が正しい位置にあることだ。残りがバラバラであったとしても問題ない。これは、一文字文字を読んでいるのではなく、単全体として読んでるからだ。

となる。投下されたコピペの元になったのはこの文章である。

ただし、この「Aoccdrnig文」を書いた人物はTypoglycemiaについてもともと研究していた人物ではない。では、どしうて彼はこのような文章を書いたのだろうか。

そのネタばらしは3日後の9月15日になされている。

私のミーム実験

今までに、諸君はおそらく「Aoccdrnig to rsereach..」の文章がネット上に漂っているのを読んだことだろう。私はこの前の金曜日9月12日)にそれについて話した。(中略)

私はこのパラグラフが、どのように異なった版でブロゴスフィアブログ圏:要するにブログとそのつながりを包含する物事の総称)にいて繁殖するかを見たかったのだ。(中略)

これは科学的な実験ではないが、ミームがどのように広まるかを見るのは楽しいことだ。

要するに、あえてスペルエラーを起こした文章で興味を引きつつ、内容でその意味を説明するといった、2ちゃねんるのコピペのと同様の意図をもってネット上に流し、それがどのように広まっていくかを調することが作者意だったのである。よりわりかやすく言うならば、日数経過に伴うTwitterによる拡散具合を調するといったものと等しい。

また、同日に「英国大学において」の部分を「ケンブリッジ大学の研究によると」と置き換えられた物が紹介される。2ちゃんねるで流行したコピペは、この変形された文章が下敷きになっているものである。

日本における広がり

さて、ここからは日本におけるこのコピペの広まりについて述べていく。

2003年版英文を日本で初めて紹介したのは文士・事物起松永英明氏であり、2003年9月20日に「語中がデタラメでも英文は読める(外部サイト)」という記事の中で翻訳などの詳細を開している。

その後、2004年11月24日に、シリコンバレー地方版というサイトでこの話題が取り上げられた。この記事についたコメント欄に、

こちにんは みさなん おんげき ですか?  わしたは げんき です。 この ぶんょしう は いりぎす の ケブンッリジ だがいく の けゅきんう の けっか にんんげは たごんを にしんき する ときに その さしいょ と さいご の もさじえ あいてっれば じばんゅん は めくちちゃゃ でも ちんゃと よめる という けゅきんう に もづいとて わざと もじの じんばゅん を いかれえて あまりす。 どでうす? ちんゃと よゃちめう でしょ?

このようなコメント投稿された。これが、後にコピペの原となったものであろう。

Typoglycemiaは常に正しいのか

Guillaume Fon Sing氏の見解

「単の最初と最後が正しければ中はデタラメでも読める」というTypoglycemiaであるが、必ずしもそれが正しいというわけではない。これに関連したものとして、2003年に掲載された「Aoccdrnig文」に対し、上記のリンク記事において、言語学者であるGuillaume.F.Sing氏が反論的な見解を示している。

彼はこの文章を「msesgae」(messageの並べ替え)と呼び、

この「msesgae」はそのままの形、つまり単純な幻想作品や愉快な文章にとどまるべきであるにも関わらず、厄介な形をとっている。(一部抜

と述べた。

要するに、本来ならばただの創作物であべるきものがひとり歩きし、あたかも言語学的研究に則ったものであるかのように拡散さてれいることに対しての反論である。

Guillaume氏はこの反論の中でこうも述べている。

(前略)多くの言語学者が、言葉の特定メカニズムの発展を説明しようとしてきた。そして現在、読むことについては多くの発展モデルがある。要なモデルは3種類のものから構成されている…(中略)…多かれ少なかれ経験を積んだ読み手による予想並びに自動反射的修正で、多くの視覚的手がかりが与えられているからだ。

ここで彼が述べたのは、この現が発生する際には「読み書きを教わっている読み手が長年にわたって読解を重ねてきた経験のお陰で身についた、自動化した誤字修正を使っている」のだ、ということである。すなわち、英語にあまり慣れ親しんでいない人は、1999年の項で記載したTypoglycemiaを用いた英文を提示されたとしても違和感を覚えるであろう。逆に海外日本語を習いたての人にコピペを見せたとしても正しくスラスラとは読めないはずである。つまり、言習熟度と錯覚率が例するということである。

また、

理論自体が全に間違っているというわけではないが、それは非常に短絡的であり、「単の最初と最後の文字さえ合っていれば十分」と断言するのは誤りだ…(中略)…以下の文章をできるだけく流暢に一見して読むことができるならば、私の解説は間違いだろう。

"Nreuuoms pmeeononnhs peossss uiapocmltecnd etaaoilxnpn; nwttdtsniinoahg, the pdseuo-snfiiiectc spssliiimtm is not snfiiiectc and eieecndvs are oetfn mdanleiisg"

と締めくくっている。

この、最後に出てきたTypoglycemia文章については、次の項で詳しく述べることにする。

どういう時にTypoglycemiaは起こるのか

さて、上の文章であるが、正しい英文は

Numerous phenomenons possess uncomplicated explanation; notwithstanding, the pseudo-scientific simplistism is not scientific and evidences are often misleading"

(おびただしい現が簡単な説明を有している。にもかかわらず、疑似科学的な単純化は科学的ではなく、拠はしばしば人を誤らせるものである。)

である。たしかに、英語に熟達している人であってもこの文章がすぐに出てくる人は少ないだろう。
このように、Typoglycemiaはどんな時でも起こるわけではなく、発生する条件が限られている。

では、一体どういう時にTypoglycemiaは発生しやすいのだろうか。
この項では、これまでに解説してきた事柄を参照しながら、Typoglycemiaが発生する条件を述べていくことにする。

語順が入れ替えられている単語の文字数が少ない

例えば、日本語Typoglycemiaを利用した文章として、以下のようなものがあるとする。

ちうえゅましょじき は けきでんてんはいどつう の えき で ある。

これがスラスラ読めるだろうか。もしこれがスラスラ読めるのならば、「単の最初と最後だけ合っていれば読める」といこうとが言えるのであるが、そうはいかない。ちなみに上の文章は、

中書島駅京阪電気鉄道である。

を並べ替えたものである。ここまで来るともはやアナグラム問題に他ならない。

Guillaume氏の反論にあったように、Typoglycemiaが成り立つには「文章自体が単純で一般的な構文」であり、なおかつ「短くてよく知られた」単で構成された文章であるということが挙げられる。まずコピペ版を例にすると、助詞などの重要なは変更がなく、順変更のある長い単であっても、6文字の単までしか存在しない。英語版の「Aoccdrnig文」でもそれは同様であり、際立って難解な単が使われているわけではない。

短く、入れ替わりのない単語の存在

3文字以下の単は、Typoglycemiaの条件下ではそのままの状態となる。また、英語でも日本語でも3文字以下の単は機が多い。Healy A. F.は1976年に人間の心理として、文章のエラーの中で最も摘されやすいものは機の欠損であると述べている。

つまり、

この ぶんしょう いぎりす ケンブリッジ だいがく けんきゅう けっか

この ぶんょしう は いりぎす の ケブンッリジ だがいく の けゅきんう の けっか

という二つの文章があった場合、前者のほうがおかしいと感じやすいのである。

隣接文字との入れ替え

McCusker L. X.らは1981年に、「文字を入れ替える際には、近くの文字が入れ替わっている方が遠くの文字と入れ替わっている時よりも読みやすい傾向にある」ということを述べた。

ここでは例として「problem」を使うが、同じ単であっても

のふたつでは、前者のほうが「problem」として認識しやすいということである。

これは、視覚における単認識で、単の外側の文字は隣接する文字と混同しやすいということに起因している。詳しくはShillcock, R., Ellisonらが2000年に行った研究を参照してほしい。実際に、G.Rawlinsonの研究の際には、コピペのもととなったAccording文よりも難しい単が使われていたものの、単の前後2文字は変化していなかった。

並べ替えられた文字が別の単語を形成しない

これは英単Typoglycemiaで発生しやすい事由である。

例えばsaltTypoglycemiaに従って入れ替えるとslatになるが、slatには「薄く細長い」という意味がある。入れ替えた後に別単になると、唐突に文章の流れとは関係のない単が文章中に入ってくると読みにくい=エラーを認識しやすいという事態が発生し、(cf. Andrews S. 1996Typoglycemiaは起こりづらくなる。

というよりも、もとより単に複数の補がある場合は読み替えすら出来ないという事態に陥る。

文章が予測しやすい

これはMiller G. A.らが1951年に述べたことであるが、最初の数単だけで次の言葉を予測するということは会話でもよくあることだが、それは文章読解にも適用されている。

すなわち、コピペの出だしを例にするならば

こんにちは みなさん おげんき ですか わたしは げんき です

という一文はいわゆる一繋がりの文章であり、最初の数単(この場合は「こんにちは みなさん おげんき」あたりまで)を見るだけで後半に何を言いたいのかが予測できるのである。

言葉の認知は字面よりも「何を言おうとしているのか」が重視されており、単の各文字を読んでいるわけではない(Wallinton E. K. 1980)という人間心理をうまくついた現であるといえよう。

追記:大文字と小文字

文字の形状もまた、認識に大きく影する。

例えば順が間違っていなくても。

eRAseRmOToRpHAntOM

読みづらいはずである。これはTypoglycemiaとは逆の現である。

日常に潜むTypoglycemia

重要な案件を、メールで送信する前に何度も確認したのにいざ送信した後で「ひらがなの順番が入れ替わっているミス摘される」ということが多いが、それはこのTypoglycemiaが発生しているからである。

ちなみに、この記事中にもひらがなが入れ替わっている部分が12か所存在する。

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