コバルト文庫とは、集英社が発行していたライトノベル(少女小説)のレーベル。
2018年限りで書籍での刊行を終了し、2019年から電子書籍専門レーベルに移行した。実質的にはライト文芸レーベルの集英社オレンジ文庫(2015年創刊)が後継レーベルとなっている。
1965年から1971年にかけて刊行された「集英社コバルト・ブックス」が前身であり、1966年創刊の少女小説誌「小説ジュニア」が母体。1976年に「集英社文庫コバルトシリーズ」として創刊された。集英社文庫の内部レーベルみたいな表記だが、実際は集英社文庫の創刊はその1年後の1977年であり、こっちが集英社文庫の前身である。1982年に「小説ジュニア」が「Cobalt」に誌名を変更してリニューアルし、1990年に「コバルト文庫」として正式に集英社文庫から独立した。
1991年に非少女小説レーベルとしてコバルト文庫から分離独立したスーパーファンタジー文庫は、その後スーパーダッシュ文庫→ダッシュエックス文庫に引き継がれて少年向けライトノベルレーベルとして継続中であり、そちらの事実上の前身にもあたる(正確にはスーパーダッシュ文庫はスーパーファンタジー文庫の兄弟レーベルとして誕生し同時に刊行されていた時期があるので、現在のダッシュエックス文庫がコバルト文庫から直接繋がっているわけではない)。
自前の新人賞(短編賞)であるノベル大賞(1983年開始、現在も集英社オレンジ文庫の新人賞として継続中)は長い歴史の中で多数の作家を輩出しており、倉本由布、藤本ひとみ、前田珠子、若木未生、桑原水菜、榎木洋子、響野夏菜、高遠砂夜、今野緒雪、金蓮花、須賀しのぶ、竹岡葉月、青木祐子など錚々たる名前が並ぶ。直木賞作家の唯川恵、山本文緒、角田光代(彩河杏名義)などもここからデビューしている。変わったところでは涼元悠一もここの出身。長編賞としてロマン大賞(1992年-2014年)もあり、毛利志生子や谷瑞恵がこちらの出身。
少女向けレーベル全般に言えることだが、人気作品の巻数がどんどん多くなっていく特徴が顕著であった。90年代~00年代頃には中堅どころのタイトルでも平気で10巻を超える作品が多く、看板シリーズともなれば30巻、40巻を超える場合もあった。また基本的に1話完結で巻数表記が無いため、シリーズを揃える際に順番が解らなかったり抜けに気付かなかったりという事態が非常に起こりやすい。最も冊数が出たシリーズは、おそらく全部合わせて75冊ある『炎の蜃気楼』シリーズだろう。
80年代から90年代には氷室冴子、久美沙織、新井素子など、90年代から00年代にかけては前述のノベル大賞出身作家らを擁し、少女小説レーベルの女王、他を寄せ付けない最大手レーベルとして長らく君臨していた。00年代には『マリア様がみてる』の大ヒットで多数の男性読者も獲得している。少女小説の歴史とは、まず絶対的女王たるコバルト文庫が中核として存在し、他社のレーベルがそこからいかに独自色を打ち出して生き残りを図っていくかという形での生存競争の歴史と言ってもいいぐらいである。
しかし00年代後半あたりから、読者層の高齢化とともに従来の少女小説市場自体がジリ貧となっていき、新たな人気シリーズをなかなか生み出せなくなっていく。さらに2010年代に入ると、『マリア様がみてる』『伯爵と妖精』『風の王国』『ヴィクトリアン・ローズ・テーラー』などの人気シリーズが続々と完結していってしまう。結果、2014年あたりから刊行点数が減り始め、2015年の集英社オレンジ文庫の創刊を機に、人気作家も続々とそちらへ移行して一気にレーベルとしての規模が縮小してしまう。2016年には母体であった「Cobalt」も部数低迷で休刊となってしまった。
2017年には『コバルト文庫40年カタログ』が刊行され話題となったものの、縮小の流れは止まることはなく、2018年12月末に出た2冊を最後に、40年以上に渡った文庫レーベルとしての刊行に幕を下ろし、2019年から電子書籍専門レーベルへと移行した。電子書籍のみとはいえ現在も新作が出続けているためレーベルとしては存在しているが、前述の通りノベル大賞も集英社オレンジ文庫の新人賞となっており、実質的には集英社は中高生をターゲットにした「少女小説」からは手を引き、より上の世代を明確にターゲットにした集英社オレンジ文庫に移行としたと見るべきだろう。
長い歴史の中で数多くのヒット作を生んだが、レーベル作品のアニメ化にはあまり積極的ではなく、アニメ化された作品は『炎の蜃気楼』『マリア様がみてる』『伯爵と妖精』の3作品しか存在していない。
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最終更新:2024/04/20(土) 05:00
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