動画解説
本動画は法務省、人権擁護局にある「Q&A(新たな人権救済機関の設置について)」というサイトの内容について検証したものです。ここでは、動画と関連情報の解説をします。
Q&Aに仕掛けられたトラップ
このQ&Aは「新たな人権救済機関の設置について(基本方針)」に関する意見や問い合わせに答えるという形式になっていますが、これにはトラップが仕掛けられています。
このサイトは、問い(Q)に対する簡易的な回答(A)そして「もっと知りたい方はこちら」をクリックすると別のページが開くようになっています。これは「もっと知りたい方はこちら」という一手間を掛けることで「情報を知った達成感」を感じるような仕組みです。この「情報を知った達成感」に満足してしまうと、このサイトの術中にはまったことになります。
本当の情報を知るためには「新たな人権救済機関の設置について(基本方針)(PDFファイル)」と回答を読み合わせしなければなりません。
魔法の言葉「直ちに」
「直ちに健康に影響を及ぼすものとは考えられない」枝野幸男元官房長官の会見で有名になった「直ちに」は、このQ&Aでも使われています。
【Q4】
三条委員会では,権限が強すぎるのではありませんか。
【A】
委員会の権限は,法律がその委員会にどのような権限を与えるのかによって決まるものです。三条委員会であることから,直ちにその権限が強すぎるということにはなりません。
【もっと知りたい方はこちら】
三条委員会では権限が強すぎるのではないかというご指摘もありますが,委員会の権限は,制定される法律がその委員会にどのような権限を与えるのかによって決まります。
したがって,三条委員会であることから,直ちにその権限が強すぎるということにはなりません(ちなみに,「基本方針」第7項及び第8項では,設置する委員会には,制裁を伴う調査や,訴訟参加,差止請求訴訟の提起等の権限は与えないものとされました。)。
三条委員会には職権行使の独立性が保障されますが,人権委員会の委員長及び委員は,中立公正で人権問題を扱うにふさわしい人格識見を備えた人が任命されることになりますし,また,「基本方針」第3項に示されているように,その任命には国会の同意が必要とされますので,国民の代表によるコントロールが確保されることになります。
「直ちにその権限が強すぎるということにはなりません。」との回答ですが、裏を返せば「法律を作れば委員会は強い権限を持つことができる」ことを意味します。その法律とは「もっと知りたい方はこちら」の回答で「制裁を伴う調査や,訴訟参加,差止請求訴訟の提起等」と具体的に書かれていますが「基本方針」第7項及び第8項で権限は与えないと回答しています。これについては、Q13とQ14で詳細な回答しています。
回答と「基本方針」の食い違い
【Q13】
新たな人権救済機関は,令状なしに,家宅捜索をしたり,証拠を差し押さえたりするのですか。また,調査の不協力には,罰則があるのですか。
【A】
いずれについても,そのようなことはありません。
【もっと知りたい方はこちら】
新たな人権救済機関が行う調査は相手方の同意を得て行う任意の調査に限られ(「基本方針」第7項),令状なしの家宅捜索や差押えをするということはありません。また,「基本方針」第7項は,調査拒否に対する制裁に関する規定は置かないことを明記しています。
【Q14】
救済措置として,調停・仲裁を広く利用可能なものとするというのは,どういうことなのですか
【A】
平成14年に国会提出された政府の法案では,調停・仲裁は,特定の事案のみで利用できることとされていましたが,「基本方針」では,これをあらゆる人権侵害事案について利用可能なものとする方向性が示されました。
【もっと知りたい方はこちら】
調停・仲裁は,平成14年に国会提出された政府の法案では,特定の事案のみに適用される「特別救済措置」として位置付けられていましたが,「基本方針」第8項では,これをあらゆる人権侵害事案について利用可能なものとする方向性が示されました。調停・仲裁は,当事者間の話合いや双方納得の上で紛争を解決する方法ですので,事案を問わず,広く利用可能とした方が実効的な救済につながるものと考えられるからです。
なお,人権委員会の権限が強くなりすぎるのではないかというご指摘があることを考慮し,「基本方針」第8項は,人権委員会による訴訟参加,差止請求訴訟の提起については導入しないものとする方向性も示しています。
Q4と同じく「基本方針」第7項及び第8項で権限は与えないと回答していますが、実際に「基本方針」を読んでみますと、まったく違う事が書いてあります。
【7 特別調査】
・人権侵害の調査は,任意の調査に一本化し,調査拒否に対する過料等の制裁に関する規定は置かないこととする。調査活動のより一層の実効性確保については,新制度導入後の運用状況を踏まえ,改めて検討するものとする。
【8 救済措置】
・救済措置については,調停・仲裁を広く利用可能なものとして,より実効的な救済の実現を図ることとし,訴訟参加及び差止請求訴訟の提起については,当面,その導入をしないこととする。
・その他の救済措置については,人権擁護推進審議会答申後の法整備の状況等をも踏まえ,更に検討することとする。
Q13回答 → 「基本方針」第7項は,調査拒否に対する制裁に関する規定は置かないことを明記しています。
「基本方針」第7項 → 調査活動のより一層の実効性確保については,新制度導入後の運用状況を踏まえ,改めて検討するものとする。
Q14回答 → 「基本方針」第8項は,人権委員会による訴訟参加,差止請求訴訟の提起については導入しないものとする方向性も示しています。
「基本方針」第8項 → 訴訟参加及び差止請求訴訟の提起については,当面,その導入をしないこととする。
このように「基本方針」では、回答の『権限は与えない』のではなく『権限は与える』法改正を含んだ方針が謳われています。
つまり、このQ&Aは法案を通すために、虚偽の回答をしているのです。
これは、明らかに国民を騙す「詐欺行為」ではないでしょうか?
しかも、この法改正を含んだ方針は、Q18の回答にまったく反しています。
【Q18】
新たな人権救済機関ができると,5年後に,強大な権限を有する組織に変えられてしまうのではありませんか。
【A】
5年後の法改正の要否や内容については何も決まっていません。
【もっと知りたい方はこちら】
「基本方針」第9項は,新たな人権救済機関が発足した後の実績を踏まえ,5年後に,必要に応じて見直しをするとしています。 改正の要否や内容については,5年間の運用の実績に基づいて,その時点において検討され,国会で十分に審議がされるものです。 なお,法律施行後一定期間経過した場合の検討や見直しに関する規定が置かれることは,この法案に限られたものではありません。 検討や見直しに関する規定が置かれている最近の立法例として,消費者庁及び消費者委員会設置法(平成21年法律第48号),運輸安全委員会設置法(平成20年法律第26号による改正)などがあります。
また、動画では解説しませんでしたが、Q14の回答にある「人権委員会の権限が強くなりすぎるのではないかというご指摘があることを考慮し」の文章は「権限が強くなりすぎる」事を認めてしまっています。しかも回答で「導入しないものとする方向性も示しています。」と言いながら、「基本方針」では「当面,その導入をしないこととする。」となっており「考慮」もしない「方向性」も逆といった整合性や論理性のかけらもない文章になっています。
三条委員会である必要性はない
三条委員会は大きな権限を持つ委員会です。ちなみに現在、存在する三条委員会は以下のようになっています。
・国家公安委員会
・公正取引委員会
・中央労働委員会
・公安審査委員会
・公害等調整委員会
・運輸安全委員会
これを踏まえ、Q15を見てみましょう。
【Q15】
新たな人権救済機関は,人権侵害をした人を摘発して処罰するのですか。
【A】
そのようなことはありません。新たな人権救済機関は,人権侵害をした人を摘発したり処罰したりする機関ではなく,広く国民に人権についての理解を深めてもらうための機関です。
【もっと知りたい方はこちら】
新たな人権救済機関は,人権侵害をした人の摘発や処罰を目的とする機関ではなく,人権が尊重される社会を実現するため,広く国民に人権についての理解を深めてもらうための活動を行う機関です。捜査機関でも司法機関でもありません。
新たな人権救済機関は,人権侵害を受けた人の救済活動を行いますが,その活動は,人権が侵害された人を,その状態からよりよい方向に導くことを目指して行われるものです。そのため,新たな人権救済機関は,本人の意向も踏まえ,状況の改善に向けての適切な助言その他の「援助」を行います。相手方が私人である場合には,当事者双方が人権の主体であることから,双方の言い分をよく聞き,事実関係を踏まえて双方の間を「調整」したり,「調停」による解決ができるよう助力することを予定しています(なお,司法的な救済が相当と思われる事案については,法テラスや弁護士会を紹介し,訴訟の提起等について助言することもあります。)。
また,事実関係に争いがある場合には,必要な調査をし,人権侵害の事実があったかどうかを中立公正な立場で判断します。その上で,人権侵害があったと認められる場合には,その人に対して,当該行為が人権侵害に当たることを伝え,反省を促すための「説示」を行い,重大な人権侵害が継続している場合等には,それを改善するように「勧告」をします。これらの措置は,いずれも人権侵害に当たる行為をした人に,人権についての理解を深め,自発的な対応を求めるためのものであり,処罰をするものではありません。
なお,事案によって,所管の行政機関による措置が必要な場合や刑事処分が相当な場合には,「通告」や「告発」により,それぞれの機関の対応を求めることもあります。
この回答では「新たな人権救済機関」は国家公安委員会などの三条委員会である必要性がありません。つまり、将来、捜査権や司法権をも含んだ大きな権限は与えるために三条委員会にしているのです。
外国人参政権との関連を改めて議論する事ができない仕組み
動画では解説しませんでしたが外国人地方参政権付与によって外国人に人権擁護委員を委嘱することができるのではないかとの問題があります。
【もっと知りたい方はこちら】
人権擁護委員については,人権擁護委員法が定めています。人権擁護委員は,法務大臣が委嘱する民間の有識者です。 人権擁護委員法に定められた委嘱の手続は,市町村長が,市町村議会の意見を聴いて候補者を推薦し,弁護士会及び都道府県人権擁護委員連合会の意見を聴いた上で,法務大臣が委嘱するというものです。その市町村長による推薦の要件として,同法は,その候補者がその市町村議会の議員の選挙権を有する住民で,人格識見が高く,広く社会の実情に通じ,人権擁護について理解のある者であることなどを求めています(同法第6条第2項,第3項参照)。したがって,外国人は推薦の対象者にはされていません。
「基本方針」第5項に「人権擁護委員の候補者の資格に関する規定・・・は,現行のまま,新制度に移行する。」とされているとおり,新たな人権救済機関の下においても,外国人に人権擁護委員が委嘱されることはありません。
【Q9】
外国人に地方参政権が付与されることになれば,外国人が人権擁護委員を委嘱されることになるのですか。
【A】
外国人に地方参政権を付与するか否かの検討過程で,改めて議論される問題です。
【もっと知りたい方はこちら】
現行の人権擁護委員法では,Q8の「もっと知りたい方はこちら」欄のとおり,市町村長は,その市町村議会の選挙権(いわゆる地方参政権)を有する住民の中から人権擁護委員を推薦することとされています。しかし,地方参政権の有無と人権擁護委員の委嘱要件(推薦要件)とは当然に一致するものではありませんので,これらは別個の問題として,外国人に対して地方参政権を付与するかどうかの検討過程で改めて論議がされるものです。
「地方参政権の有無と人権擁護委員の委嘱要件(推薦要件)とは当然に一致するものではありませんので」の文章に注目してください。
これは、外国人でも、人権擁護委員の委嘱要件(推薦要件)を満たしている人物がいる前提で書かれています。「改めて議論される問題です。」と回答していますが、地方参政権をもち、かつ推薦要件を満たしているのに、人権擁護委員になれないならば、それこそ人権問題であると言われるでしょう。つまり「改めて議論される問題です。」にはならず、外国人に人権擁護委員を委嘱することができるのです。それを「改めて議論される問題です。」と言うのは、問題を先送りにしても議論されるという誤った情報を与えています。
そもそも 「人権擁護委員の委嘱要件(推薦要件)」とはなんでしょうか?それは「その市町村長による推薦の要件」の事を意味します。市町村長の推薦があるからといって、中立・公平な人が人権擁護委員に選ばれる保障はありません。外国人が日本人の言論の自由を破壊するために人権擁護委員の身分を悪用する可能性を考えれば国籍条項は推薦要件よりも上位にならなければいけませんが、この回答は推薦要件を上位に考えています。
このQ&Aを作成したのは誰か?
法務省のHPに掲載されていますから、法務省の責任ですが、「基本方針」を作ったのは法務省の政務三役の、法務大臣・法務副大臣・法務大臣政務官です。つまり法務省の政務三役の意向がQ&Aに反映されていると考えるべきです。
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