ドラグノフとは、
- ロシア、ウクライナなどで使用される苗字。キリル文字表記ではДрагунов、ラテンアルファベット表記ではDragunov。ロシア語では「ドラグーノフ」とやや伸ばして発音されるようだ。男性の場合の苗字であり、女性の場合はДрагунова(ドラグーノワ)となる。
- 旧ソ連で開発されたセミオート狙撃銃の通称。開発者の苗字に由来する。
- ゲーム「鉄拳」シリーズに登場するキャラクター。 → セルゲイ・ドラグノフ
ここでは2.について記載する。
ドラグノフ狙撃銃
性能諸元 | |
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全長 | 1220mm |
銃身長 | 687mm |
重量 | 4300g |
装弾数 | 10+1発 |
使用弾薬 | 7.62mm×54R |
ライフリング | 4条右回り |
エフゲニー・F・ドラグノフ氏が設計し1963年に旧ソビエト軍に制式採用された。
制式名(英表記)SVD(Snayperskaya Vintovka Dragunova)は「ドラグノフ式セミオートマチックスナイパーライフル」を意味する。
作動方式は発射ガスの一部を作動に利用するガスオペレーションで、閉鎖方式はオーソドックスなロータリーボルトロッキングシステムを使用している。使用弾薬は東側としては一般的な7.62mm×54Rを使用する。付属のPSO-1スコープは固定倍率4倍で、ターゲットの身長から大まかな距離を測定する簡単なレンジファインダーと赤外線発光点を検出する機能が装備されている。
重量は前線で歩兵が運用することを前提としており、他の軍用狙撃銃と比べ非常に軽く、持ち運びに便利な設計となっている。ただしこれは欠点でもあり、軽いため射撃時の反動を吸収できず制御が難しいとされる。
余談ではあるが、外見が非常に似ているが内部構造が異なるもの(似て非なるもの)に「ルーマニア製ロムテクニカFPKスナイパーライフル」というものがある。
開発・運用
アメリカをはじめとした西側諸国が308弾を正式採用したことを受けて、「分隊に一丁の割合で配備し、他の軽機関銃、アサルトライフルの命中精度と交戦距離を補う」という思想のもと設計された。少なくとも、最初のうちは。
やがて、308弾は反動がキツくアサルトライフルには向かない弾であることが判明。さらに、ドラグノフがなくても、AK47と重火器を組み合わせることで十分対応可能であると分かる。開発計画の意義は失われ、ソ連軍のドラグノフへの関心は完全に消え去り、計画は中止される……はずだった。
しかし、開発計画は、コンセプト不在のまま、現場の執念と官僚主義の惰性により続行される。後付けでひねり出した開発目標は「老朽化したモシン・ナガン1891/30を退役させるから、代替品」という実に官僚的なもので、具体的な運用法なぞ考慮の外。そんなお役所的動機から出てきた要求仕様は、とにかく「モシン・ナガンを上回ること」。モシン・ナガンがボルトアクションだからセミオートで、モシン・ナガンが固定式5発弾倉だから着脱式10発弾倉で、モシン・ナガンより精度が良く、射程が長く、軽く、そして既存の7.62mm×54R弾を使う、というものであった。
無茶で適当極まりない要求仕様のもと、射程距離を稼ぐため銃身を長くせざるをえず、軽量化のために銃身を薄くせざるをえず、リム付き弾薬に苦しめられた挙句、出来上がったのは長くて取り回しの悪い、長距離精密射撃にも連射にも向かない銃であった。ただ、前述のスコープのレンジファインダーだけが、要求仕様どおり1,000m以上まで対応している。
採用しておきながら当局も扱いに困ったらしく、当初はごく一部の独立狙撃班や山岳部隊のみの配備とみられ、60年代70年代を通してソ連恒例「赤の広場の軍事パレード」に登場することも希であった。そもそも、ソ連の戦闘教義では戦車が主力で、歩兵は戦車の露払いでしかない。まず戦車についていくために、狭い兵員輸送車に載せることが優先される。さらに火砲も充実していて、AK47の射程外は重火器で埋めるのがソ連流である。兵員輸送車に載せにくく、AK47の弾が使えない狙撃銃なぞ、邪魔でしかなかったのだ。
そんなイマイチ影の薄い武器だったが、アフガニスタン侵攻で脚光を浴びることとなる。アフガンは、戦車や重火器が運用しにくい山岳地帯が国土の大半を占める。そんな地理的制限の中で、長距離精密射撃を主として独立運用される狙撃班ではなく、通常の歩兵部隊の中で選抜された射手に持たせる簡易的な狙撃銃、「マークスマン・ライフル」として運用され活躍した。 [1]ただし、肉の薄い銃身は熱容量が少なく、容易にエロージョン(熱ダレ、焼き鈍し)を起こすため、そういった運用法でも注意が必要である。
ちなみに、長距離精密射撃用としては、ボルトアクション式のSV-98が採用されている。ドラグノフとはまったく異なる、新設計の銃である。
関連動画
MMDモデル
関連静画
関連立体
関連項目
脚注
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