モズライト(Mosrite)とは、かつて存在したアメリカの楽器メーカーと、そのメーカーの販売しているギター、ベースの名称である。
概要
リッケンバッカー社で働いていたクラフトマンのセミー・モズレー氏が、リッケンバッカー社在籍時に仕事中に勝手にオリジナルギターを作ってクビになった後、友人と共に1950年初頭に創設。
60年代のエレキブーム期にベンチャーズがモズライトのギターを利用したことで一躍有名になり、日本でも加山雄三や寺内タケシといった大御所ミュージシャンが使用した事で「憧れのギターといえばモズライト」という人も多い。
その後1968年に日本のファーストマン社と正式ライセンス契約を結び、同社もモズライトギターの製作を担当する事になるも、69年にファーストマン社はギター製作から撤退。その後モズライト社自体も何回か倒産したり再建したりを繰り返しながらギター製作に携わる。
高音弦側のホーンが長く設定された形のボディ、ナット付近に打たれたゼロフレット、ローラー式のブリッジ、等特徴的な仕様ではあるが、演奏してみると弦高を下げても弾きやすく、チューニングも狂いにくいため、非常に使い易いギターとなっている。(但し、鋳物のような豪華なアームに関しては酷使し過ぎるとバネが弱くなってチューニングがずっと狂ったままになったり、他のトレモロみたく過剰なアーミングで使用するとバキッ!と壊れる可能性が高いので、無茶はしないように。)
サウンドの特徴としては、高出力のシングルコイルのピックアップを搭載しており、音抜けがいいのに太く甘い音が出せるようになっている。
有名なところで言うとベンチャーズの「テケテケテケテケ・・・」という太いのに抜けが良いクリーンなサウンドにリバーヴをかけた音が「これぞモズライト!」というイメージになっているが、使用しているピックアップがかなり高出力で、歪み系サウンドとの相性も良いためロックにも使える。
ロック系だとラモーンズのギタリストであるジョニー・ラモーンや元SUPERCARのいしわたり淳治、最近ではthe band apartの川崎亘一が使用している事もあり、広い年齢層に使用されている。
(ジョニーのモズライトギターはピックアップやブリッジを交換しているため厳密にはモズライトらしい音とは違うが、ギターソロ無しで高速のリフを只管刻む姿に憧れてモズライトに手を出す人が多かったとか。いしわたりのモズライトもバンド後期からハムバッカー2基搭載のオリジナルモデルに変更してある)
また、フェンダーのジャガーやムスタングでお馴染みのNirvanaのカート・コバーンもモズライトやUnivox製のコピーモデル「ハイフライヤー」を使用していた。(ハイフライヤーはチープなコピーモデルで、驚くことに一部のモデルはボディにベニヤを使用しているらしいが、異様にピックアップのパワーがあり愛好家が多い)
様々な音楽ジャンルで使用され幅広いファンがいるが、やはり楽器屋で試奏する際にどの年代のお客さん、店員さんも共通してベンチャーズの「テケテケテケテケ・・・」をとりあえず弾いてみる人が多いと思われる。
3つのモズライト
創業者のセミー・モズレー氏はその後もモズライトギターを作成し続け、1992年に死去。
その後は4番目の妻ロレッタ氏が経営を引き継ぐも1994年に会社が倒産し、60年代からモズライトの販売代理店を務めていたフィルモア社がモズライトの商標を取得したとして製作を続ける。
が、ここでややこしい事に1968年にモズライトを製作していたファーストマン社の下請け会社の黒雲製作所がファーストマン社撤退後もモズライトの名称を使ったギターを作成し続けており、そのことに業を煮やしたフィルモア社が黒雲に対し「偽物作ってんじゃねーよ!」と訴訟を起こすが、実はフィルモア社もモズライトの正式な商標権を持っていない事が発覚。
更に後に妻のロレッタ・モズレー氏がセミー氏から相続したモズライトの権利を主張して、セミー氏の子供達と揉める事になる。ロレッタ氏は京都のスイングサイエンス社に依頼してモズライトギターを作成する事になるため、現在世に出回っているモズライトは
・フィルモア社製
・黒雲製作所製
・スイングサイエンス社製
以上の3つが存在している。
スイングサイエンス社は「セミー氏の遺言にある通り、モズライトの権利はロレッタさんが持っていて、ウチはロレッタさんに許可をもらって作っている。フィルモア製のギターは偽物だ。」
と主張し、フィルモア社は「ウチはセミー氏から正式に技術を受け継いだ真の後継者である娘のダイナ・モズレーさんから許諾を受けている。そもそも、遺言の信ぴょう性自体怪しい。」
と語っており、双方譲らない状態。
・スイングサイエンス社はアメリカで行われた裁判でロレッタ氏が正式にモズライトギターの名前を使う許諾を獲得し、そのロレッタ氏から委託されて製作している。
・フィルモア社も一部の製品についてはセミー氏存命の時期にモズライトギターの名前を使って製作する許可を受けていた。その後は真の後継者とされるダイナ氏の後押しの元で製作、販売しているが、裁判ではロレッタ氏に軍配があがっている。
・黒雲製作所は1968年に許諾を得て製作していたファーストマン社の下請けをしていた事はあるが、黒雲自体が正式にモズライトの名前を使う許諾を受けた事は無い。(にも関わらず何故か前述する二社の影に隠れがち。)
という状況になっている。
そういった事もありユーザーの間でも、どこのモズライトが正しいか、あの会社のは音がショボい、この会社のは木材の加工が悪い、そもそもセミー氏が作ったものが真のモズライトだしそれ以外はモズライトじゃねーよ、などの論争になりがちですが、まあ実際に弾いてみて「コレ良いな」と思ったヤツを、財布と相談して買って満足できればそれで良いのではないかと思います。
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