モビルスーツ(MS:Mobile Suit)とは、アニメ「機動戦士ガンダム」シリーズに登場する、人型機動兵器(ロボット兵器)の分類の一つである。
概要
殆どの場合、手足のついた人間とほぼ同じ姿形をしている事が多い。
中には足が飾りであったりキャタピラ(履帯/クローラー)であったり、ウェーブライダー等に変形したりと一部異なるものも存在するが、これら多少の差異であれば「モビルスーツ」の定義として包含される。ただし、あきらかに人の形とはかけ離れているような、後述するモビルスーツの概念から外れているものについては「モビルアーマー」等に分類される(なお、小型の作業用のものはプチモビと呼称されている)。
モビルスーツは、「スーツ」という名の通り、人間がパイロットとして搭乗する有人兵器である。遠隔操作またはAI動作による無人兵器は、(例え機体が従来の有人タイプと全く同じものであっても)モビルスーツとは呼ばず、モビルドール等と別の名前で呼ばれている。
モビルスーツの大きさは、人間の身長の10倍程度を目安に頭頂高にして16m~20m程度のものが比較的多いが、中には30m以上の大きさになるものもある。また、バックパックやその他装備を背中に装備する事が多く、それらを含めると非常に巨大となることもある。動力については設定により様々だが、出力は概ね数千キロワット台と意外と少なめに設定されることが多く、その他の性能値に関しては劇中演出に影響しない部分も多いためか不統一で、時代が古いのにやたら高性能になったりするねじれ現象が発生したりすることもある。
何故人型なのか
現実の歴史を見ても分かるように、戦争において人型兵器およびそれに類する兵器が用いられた事は一度も無い。
完全な人型兵器は、二足歩行をロボットに行わせる事の難しさ、人間の手のような複雑な動きをするマニュピレーターの開発の難しさなど技術的な面もあるが、それでも二足歩行が戦闘において有効であるならば研究が続けられているはずである。
にも関わらず、現在の所二足歩行の人型兵器と言えば先行者とお台場ガンダムとASIMOくらいしか無いのは、開発する必要が無い=戦術的に有効でないと考えられているからに他ならない。
ではガンダムの世界における人型兵器は何故作られたのだろうか?
遊べるオモチャを発売しないといけないという大人の事情は置いておいて、以下に人型の兵器が必要とされた背景を記述する。
- ミノフスキー粒子の存在
- 宇宙世紀のガンダムの世界では、ミノフスキー粒子と言う重金属粒子が存在していた。これは、一定以上の濃度になると電波の通過を阻害してしまうため、レーダー等の索敵装置や、電波によって制御される長距離ミサイルなどの兵器が使用不可能になる。
戦闘空域が非常に限定された範囲になる事が多く、特化した用途の兵器による外部支援がまるで期待できないため、戦闘空域に赴く兵器には通常以上の汎用性・万能性が求められた。そこで、人間と同等の「手」を持ち、武器を持ち替えることで様々に運用が可能な人型兵器の開発が決定された。手足がある事は、装備面での汎用性だけでなく、戦闘空域が限定されると必然的に発生しやすくなる白兵戦にも対応しやすくなるという利点もある。
(なお、ミノフスキー粒子は様々な場所に存在し得る粒子だが、人為的に散布しない限りはレーダーが使用不能になる程の濃度になる事は希である。実際、モビルスーツが開発されるまでの地球連邦軍は従来どおりの電波に頼った兵器を使用しており、そのためにミノフスキー粒子を散布して戦闘空域を限定して戦うといったジオン軍のモビルスーツ部隊に一度大敗を喫した。また、ミノフスキー粒子散布下での戦闘を想定している兵器も、レーダーを搭載していない事は殆ど無い) - ジオン軍の国力
- 国力で圧倒的に地球連邦に劣るジオン軍(ジオン公国)は、宇宙空間・コロニー内・宇宙要塞内・地球上など、様々に想定される状況それぞれに特化した兵器を作るだけの余裕が無かった。そのため、パーツの換装程度の手間であらゆる局面に対応出来る兵器の開発が求められた。
人型で足がある事によって凹凸の激しい地面でも車輪によって移動するものに比べて比較的容易に進行出来る他、武器の換装にも手間がかからない。(例:水中ではビーム兵器がほぼ使用不可能になるので実弾兵器を搭載せざるを得ないが、ビーム兵器と実弾兵器は構造が根本的に別物なので、機体そのものに組み込まれている兵器ではパーツの換装程度では対応が不可能。モビルスーツならば手に持つ武器を別の物に替えるだけで済む) - AMBAC(Active Mass Balance Auto Control、アンバック)システムの採用
- 兵器を開発するに当たって、まず突き当たるのが動力(推進力)の問題である。巨大であればあるほど、姿勢制御のためのバーニア等の推進装置が多く必要になり、またそれらの推進装置の出力も高いものが求められる。出力の高い推進装置を搭載するとそのために兵器自体が大型化し、さらに出力の高い推進装置が必要になる・・・と言った悪循環を生んでしまう。
これを解決するために採用されたのがAMBACである。AMBACとは簡単に言えば手足などの外側の稼動部を多く用意することにより、それらを動かす反動を姿勢制御に利用するというもの。この概念を採用する事で、想定された規模よりも兵器をコンパクトに纏める事が可能になる。[1]
なお、手足を動かして姿勢制御を行うという手法は、現実の宇宙飛行士が無重力下で実際に行っている手法である。(もちろん、AMBACと言う名前ではない)ちなみに、映像ではあまり再現されていないというのは気にしてはいけない。
これらの事情から、宇宙世紀では人型の兵器が十分有効であると判断され、開発されたという設定である。
後に、モビルスーツでの戦闘が標準になってくると、逆に「推進装置との兼ね合いを考えたサイズ・手足」「パーツ換装程度で様々な局面に対応出来る汎用性」「白兵戦に対応できる能力」と言ったモビルスーツの概念に捕らわれず、大型で巨大な推進力を持つバーニア等に動力を依存し、限定された用途の高性能兵器を搭載し、しかし白兵戦には弱い・・・と言った特徴を持つモビルアーマーも開発される。
宇宙世紀以外の作品での背景
宇宙世紀以外の作品においてもそれぞれ人型兵器であるモビルスーツの存在理由としての設定がされているが、「ガンダムシリーズ」という枠内としてのお約束が機能することもあり、劇中で明確に説明されないことも多い。
- 未来世紀(機動武闘伝Gガンダム)
- 元々作業用の機械として存在していたロボットが、戦乱に兵器として転用されたという経緯。
- なお、本作のモビルファイターは操作するにあたってガンダムファイターの超人的能力をそのままトレースする必要があるため、人型であるという事に高い説得力が自然ともたらされている上に、ファイトスタイルによっては人型ではない機体も多く存在している。
- アフターコロニー(新機動戦記ガンダムW)
- 戦争の拡大に深く関わっていた「ロームフェラ財団」が欧州の貴族等の特権階級が中心となっていた組織であったため、その「戦争哲学」が色濃く反映された結果、人型兵器が多く開発される事となった。
- アフターウォー(機動新世紀ガンダムX)
- 特に明確な説明はないが、地球vsコロニー国家と言う構図から、宇宙世紀と同じような背景だと推察されるが、宇宙革命軍と地球連邦軍で、「性能と量産性を両立出来る機体1機種に絞って集中的に開発を行う」か「多種の試作機を実戦投入する」かの開発コンセプトが異なっているのが特徴。
- 正暦(∀ガンダム)
- 「黒歴史」として過去の作品の背景を引き継いでおり、モビルスーツは発掘される過去の遺物であるという設定。
- コズミック・イラ(機動戦士ガンダムSEED、SEED DESTINY)
- ニュートロンジャマーによって電波が妨害され、有視界内での戦闘を余儀なくされるため・・・と言った、宇宙世紀と似たような背景が存在される。
ただし、モビルスーツの開発時期などの設定が資料によって異なる部分があるため、はっきりした所は不明である。 - 西暦(ガンダム00)
- 国家勢力毎に設計背景は異なり、現用の戦闘機や戦車(MBT)の思想を拡大・発展させた結果、「汎用性に富む人型兵器」として帰着している。なお同世界に登場するガンダムは太陽光発電設備開発のための宇宙用ワークスーツから発展したとされている。
- アドバンスド・ジェネレーション(ガンダムAGE)
- 旧世紀(本編開始前)のコロニー国家間戦争にて既に使用されていたが、「銀の杯条約」なる兵器技術の破棄を盛り込んだ条約により、表面上はMSの製造技術が途絶えていた。ただし、MSの技術継承そのものは行われており、「MS鍛冶」と呼ばれる非合法な技術者や、作業用の「モビル・スタンダード」、あるいはモビルスーツレース等の競技用MSといった非戦闘用途がその手段であった。表立ったMS開発の再開はA.G101年の「天使の落日」といわれるUE(アンノウン・エネミー)の襲来による。この事実はシリーズ作品にとり、「∀ガンダム」の時代を除いて主人公達の視点で実に100年以上前からMSは存在していた例となっている。
- リギルド・センチュリー(ガンダム Gのレコンギスタ)
- 作品の時代設定が「宇宙世紀の次の時代」とされているため、MSという兵器もそのまま継承されているが、動力源は「フォトン・バッテリー」と呼ばれる特殊な電池に変わっている。このバッテリーは「ヘルメス財団」のみが生産権利と技術を独占しており、宇宙から軌道エレベーターを通じて地球に運ばれてくる。
- また、宇宙世紀の時代に大規模な戦争が繰り返された反省から、行き過ぎた技術の進歩は自分たちの身を滅ぼすという戒めを込めた掟「アグテックのタブー」が定められており、テクノロジーの進歩は意図的に止められている。ただし、地球への帰還を果たそうとする宇宙移民たちはこの掟を破り、「ヘルメスの薔薇の設計図」から得た強力なMS群「G系統」を開発している。
- Post Disaster(機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ)
- 作品開始から約300年前に、自律機動兵器・モビルアーマーによって人類が絶滅しかけるほどの「厄祭戦」と呼ばれる大戦争があり、このモビルアーマーを破壊するためにMSが開発された。すべての機体に「エイハブ・リアクター」という相転移炉が搭載され、これによって大出力・高機動性と、リアクターが発生する「エイハブ粒子」を活用した慣性制御によって、パイロットにかかるG負荷の軽減を両立しており、厄祭戦から300年後の現在でもテクノロジーは継承されている。
- ただし、機体とリアクターを新造できるのは作中最大の軍事組織「ギャラルホルン」のみで、他の組織は「機体は新造できるがリアクターは300年前のもの」「機体もリアクターも作れないので、拾った機体をレストア」という状況になっている。
- この世界のガンダムは、リアクターを2基搭載して並列稼働させる「ガンダム・フレーム」という骨格を使用した機体を指す。発電所代わりに使用できるほど莫大な出力を誇り、建造から300年の時を経て経年劣化した状態でも、現代に新造されたMS「グレイズ」を圧倒できるだけの強さを保持していた。それだけに技術とコストの両面で問題があり、総生産数はわずか72機、現存しているのは26機と、非常に貴重な存在とされている。
宇宙世紀におけるモビルスーツの進化
宇宙世紀世界においては複数の作品において非常に多くの種類のモビルスーツが設定されており、それらは時代や特徴によって世代分けがされるようになっている。
※なお宇宙世紀0030年頃、初期のコロニー建設用にキャトル(キャスク)と呼ばれる工作作業用ロボットが運用されていた。この機体はモビルスーツには分類されていないが、マニュピレーターやモノアイを有し、モビルスーツの始祖ともいえる機体である。
第1世代MS
最も初期に開発された、宇宙世紀黎明期のモビルスーツがこれにあたる。
ジオン公国軍が数で勝る地球連邦軍に対して、ミノフスキー粒子散布下における戦略的優位性を確立する為の新兵器として投入された事に端を発する。
RX-78ガンダムや、ザクI・ザクII等がこれにあたる。
最も初期に開発されたモビルスーツはジオニック社製の次期主力コンペティション用試作機、MS-01「ZI-XA3(クラブマン)」であると言われている。(またこの際クラブマンとのコンペティションに競合し敗れたMIP社の「MIP-X1」は、後のモビルアーマー・ビグロの原型になったとされている。)クラブマンは改良を重ね、MS-04「プロトタイプザク」にて核融合エンジンの搭載を可能とし重装甲に似合わぬ機動性を確保。同機体を正式採用した史上初の量産型モビルスーツMS-05「ザクI」や、その後継機MS-06「ザクII」に発展することとなり、結果として一年戦争初期における「ブリティッシュ作戦」「ルウム戦役」等の戦いにおけるジオン公国軍勝利の原動力となった。
モビルスーツの戦場における圧倒的な優位性はたちまち地球連邦軍も無視できないものとなり、捕虜になりながらもルウム戦役を生き延びたレビル将軍の積極的な進言により、連邦軍も鹵獲したザクを基にモビルスーツを開発。連邦・ジオン双方で激しいモビルスーツの開発競争が繰り広げられ、一年戦争終結後も宇宙世紀を代表する主力兵器として定着することとなる。
この世代のモビルスーツは、ほぼ全てがモノコック構造を採用しているのが特徴。(機体表面にある装甲が外骨格としての役目も持ち、装甲の強度によって機体を支える構造)
モノコック構造は生産コストは比較的安価であるものの、関節構造に対応させる事が難しく、関節部分が巨大化しがちであるという欠点もあった。モビルスーツの開発が盛んに行われた事もあり、アッガイ等の局地戦用の水陸両用モビルスーツ等が多数存在するのも特徴。
なおハイザックは量産型MSとしては初めて後述の全天周囲モニターを採用した機体であるが、モノコック構造であり、末期に開発された第1世代MSに分類される。
動力源はIフィールド(ミノフスキー粒子による力場)の特性を利用し、重水素とヘリウム3を衝突させ(D-3He反応)、その膨大なエネルギーを電気として取り出すミノフスキー・イヨネスコ型核融合炉で、これをジェネレーター・バッテリーとして使用する。現代機械の稼働方法と異なり、冷却機能さえ維持できれば半永久的に稼働させることが可能である。しかし発電の許容量が無尽蔵という訳ではない為、オーバーヒートを起こしパワーダウンを起こすこともある。
またスラスターなどの推進剤や武装の電力はモビルスーツの動力源とは異なりこの限りではなく、エネルギーの供給に限界があり、出撃毎に補給を行う必要がある。
第2世代MS
「ムーバブルフレームを採用している」「材質にガンダリウムγを使用している」「全天周囲モニター・リニアシートを採用している」「イジェクションポッドを採用している」
以上の条件を満たすモビルスーツ。リック・ディアスが史上初の第2世代MSとなった。ガンダムMK-2は性能的には第2世代と同等の能力があるものの、装甲材にチタン・セラミック複合材を使用しているため、1.5世代MSといわれる。
また定義には含まれないが、第1世代では一部の高性能機のみの装備であったビーム兵器を量産機も装備しているのが特徴。またビーム兵装用のカートリッジ式エネルギーパックが登場したのもこの頃である。
この世代のMSの稼働期間は長く、リック・ディアスのロールアウトから実に30年ほど経過した宇宙世紀0123年においても、地球連邦軍がジェガンを運用している。
- ムーバブルフレーム
- 外骨格生物のような構造であるモノコック構造に対し、内骨格を持つ構造のこと。装甲とは別に機体を支えるフレームを組み込むことで関節部分の大幅な小型化が可能。
引き換えに総重量の増加と言うデメリットを抱えるが、第2世代への進化と前後してより強度が高く軽量な材質への切り替えが行われているため、実質的にはこのデメリットは無視できている。 - ガンダリウムγ
- 一年戦争時代にRX-78ガンダムがジオン軍相手に圧倒的優位に戦えた理由の一つにルナチタニウム合金製の装甲があげられる。ザクマシンガン程度の攻撃ではびくともしないこの装甲は、生残性の向上に大きく寄与した半面、加工が極めて難しく、そのことからコスト増を招き量産機での採用は見送られたという経緯がある。この欠点について材質に柔軟性を与え、加工をしやすくしたことによって生産性の改善を図り、対弾性と軽量化の両立を狙いながらもコスト削減を図った新技術である。
- 全天周囲モニター
- 従来はコクピットの前面にあるモニターにのみ、外部カメラの映像を映し出していたが、コクピット内を球状にすると共に360度にモニターを設置し、前後左右上下全ての映像を映し出すシステム。
- リニアシート
- パイロットの足元にも映像を映し出す関係上、従来のような床に据え付けられた座席に代わって導入されたシステム。
コクピット内後部からアームを伸ばして座席を支えることで、座席を宙に浮かせるというもの。下部のモニターを見やすくするだけでなく、パイロットへの衝撃を緩和するという効果もある。 - イジェクションポッド
- 要するに緊急脱出ポッドのこと。全天周囲モニターによってコクピットそのものが球状になった事を利用して、機体が撃破された時にコクピットだけを切り離して射出出来るようにしたシステム。コアブロックシステム採用MSや、サイコガンダムMk-IIの頭など、代替になる機構がある機体には採用されていない。また、変形機構によってコクピットが狭くなり、これが省略されている機体もある。
第3世代MS
第2世代のモビルスーツのうち、さらに変形機構を組み込んだ、所謂可変モビルスーツが該当する。
主な機体はZガンダム、ZZガンダム、ガブスレイ、メタスなど。通称「TMS(Transformable Mobile Suit)」。
何れも変形機構のために複雑化し高コスト化する傾向が強く、グリプス戦役前後(宇宙世紀0087年頃)に多数のTMSが生産され『Zガンダム』の劇中では複数登場する機体が存在するが、厳密には局地的な少数の量産であったり、予備パーツだった物を組んだり一部のオーダーメイド機、テスト用として用意されたぐらいで、開発が最も主流となっていた当時は厳密な量産化には至らなかった(よく誤解されるがアッシマーやバウンド・ドック等はTMA(可変モビルアーマー)に属する)。
上記のようにガンダムタイプの試作機も幾つか製作され、中には1機体としては劇的な戦果をあげたものもあったが、グリプス戦役当時の戦局的には主力機足り得る兵器になることはなかった。
ただし後年、RGZ-95リゼル(上記のメタスの変形を元に低コスト化)がロンドベル隊に配備され、史上初の本格的量産型可変MSとして一定の戦果を挙げている。
第4世代MS
いわゆる「ニュータイプ用モビルスーツ」のこと。
第2世代MSの条件を満たしている事に加えて、高いニュータイプ能力を有するパイロットが搭乗する事を前提としたサイコミュ・システムによるオールレンジ兵装や、バイオセンサー或いはサイコフレームを搭載している機体をいう。またインコムなどの簡易的な準サイコミュ兵器を搭載する機体も含まれる。
該当する主な機体としてはキュベレイ、νガンダム、サザビー等の他、準サイコミュ搭載機ではスペリオールガンダム(Sガンダム)、ドーベンウルフなど。ZZガンダムはニュータイプ対応でありながら変形機構も有しているため、条件が重複し第3世代と第4世代の両方に属する。ユニコーンガンダムはデストロイモードへの変形機構を有しているが、機体の特性が変化する(人型⇔非人型)変形ではないため第4世代機のみに属する。
この世代の機体は総じてモビルスーツでありながらモビルアーマー並みの高出力ジェネレータを装備しているため、ジェネレータ直結式のメガ粒子砲やファンネルを固定装備として持つ機体が多く、20mを超える大型のものが殆どになる。
大型の割に機動力が高いものが多いが、これは上記の高出力ジェネレータによるものであり、推進剤(バーニア等)の性能それ自体はあまり変わっていない。
大型・複雑・高出力化と言う道を辿った結果高コスト化に拍車をかけ、ここに至りモビルスーツは恐竜的進化を遂げたとも比喩された。そして第3世代MSと同様、一部のエースパイロットや精鋭部隊用の機体が生産されるに留まった。
第5世代MS
宇宙世紀105年に登場した、ミノフスキー・クラフトを搭載し単独での飛行能力を備えたMS。
この世代に該当する機体は極めて少なく、確認されている機体はΞガンダム、オデュッセウスガンダム(ペーネロペー)の2機のみである。両者共に機体サイズは20mを優に超えており、特にペーネロペーは32.5mと極めて巨大である。
ホビージャパン91年4月号の解説限定での話だが、アナハイム社の主導で開発されたゾーリン・ソールは第5世代MSの発展型とされている。
近年「機動戦士ガンダムF90 ファストテストフォーミュラ」(F90FF)にて宇宙世紀110年代の設定が整理された事に伴い、アナハイム製のMSA-120やハーディガン・ナイトレイド、サナリィ製のF89もこの世代の範疇に含まれる記述が設定面でのサポート連載「月刊モビルマシーン」で見られるようになった。ガンダムエース2024年3月号の同コーナーによれば110年代はモビルスーツサイズでのミノフスキー・クラフトの使い方が模索されていた時代とされ、F90Aタイプのミノフスキー・クラフトユニットもこの一環であると解説している。
また公式の枠組みではないものの、同じく月刊モビルマシーンにて後述する宇宙世紀110年代の第2期小型機の技術で旧世代の機体を改修した18m級機体群を第1.5期モビルスーツと称しており、RFシリーズとジムIIIエウリュアレがこれに該当するという。特に前者のオールズモビル製の技術が宇宙世紀140年代にはオープンソース化して広く拡散しているとされ、さらに後の世代を描いている「機動戦士クロスボーン・ガンダムDUST」にて台頭しているミキシングビルドモビルスーツにも反映されている可能性も出てきている。
また、あまり知られていないがこの第5世代MSと後述の第2期MSの動力源は、前述の動力源とは同名ながら改良が施されているとされる。それが、出力レベルの可変化とサイズの小型化を実現した新世代のミノフスキー・イヨネスコ型核融合炉である。
擬似原子状態の重水素と負のミノフスキー粒子、ヘリウム3と負のミノフスキー粒子が独立したIフィールド・シリンダーで保持されており、これらを炉心で直接反応させる構造となっている。要は「軽量化した上従来の2倍の核融合炉が積まれている」とも言うべきで、このような革新的な技術が実用化された結果、後の量産MSの大気圏内での単独飛行の一般化に繋がった。
だがこの動力源は全てが完全ではなく、過去の核融合炉にはなかった欠点も存在しており、核爆発の危険性が増したとされている(ガンダムファクトファイルより抜粋、詳しくは後述)。
第2期(小型MS)
宇宙世紀120年代前後から登場し、大型・高コスト化の一途を辿るMSの風潮を見直すべく新たに開発された小型モビルスーツ。大型化を辿る一方で30m級にすら迫ろうとしていたモビルスーツの現状が見直され、より省スペース・省コストを意識されている。
以降のほとんどのMSに該当しておりサナリィが宇宙世紀0102年頃に提唱し、ブッホ・エアロダイナミックス社のデッサタイプ、デナンタイプがその先駆けとなった。主役機では主にガンダムF91、クロスボーンガンダム、ヴィクトリーガンダム、V2ガンダムなどが該当する。
機体が機体をシンプル・小型化する事をコンセプトにしているため、15~16mの機体が殆どである。
この小型化は戦闘能力の向上や機体の被弾率低下という側面もあるが、前述の通りジオンと連邦による地球圏での戦争が幕を閉じたやや穏やかな時代背景の裏で、連邦軍や各自治体の軍備縮小が推し進められたために、メンテナンス性や各基地の規模縮小に伴うMSの省スペース・省コスト化の一環、という側面も持っている。
小型でありながら動力源には第5世代型同様の最新式核融合炉を搭載しており、この動力源と直結することによって従来のモビルスーツでは実現が不可能だった数々の技術を持ち、過去の機体とは一線を凌駕する運動性とパワーを発揮する。
ビームシールドの装備、単独での飛行能力をはじめ、ビームの発射スピード及び収束率を無段階調節でき、戦艦の主砲を凌駕しビームシールドをもつき破るヴェスバー(Variable Speed Beam Rifle/可変速ビームライフル)の実用化にもこぎ着け、果てはIフィールドやミノフスキードライブ(光の翼)などを搭載している機体も存在する。
基本的な動力源の強化以外にも、長年蓄積されたサイコミュ・システムの発展により、サナリィが開発したバイオセンサーの発展形"バイオ・コンピュータ"を搭載することによる画期的な機体制御方法を確立した機体や、ザンネックのようにサイコ・ウェーブ発信機能を有する機体さえも登場している。
パイロットの脳内へAI技術を用いたイメージ伝達を機械的に行う事が可能になった。パイロットが思案するだけで最適な使用火器のイメージが頭に浮かんだり、或いは外部に放射したサイコ・ウェーブによって得られた、レーダー外の超長距離に存在する敵を脳内で認識し、精密射撃を行う事も可能になったのである。
これはかつてのサイコガンダムに搭載された遠隔機体制御用サイコミュや、バイオセンサー或いはサイコフレームといったニュータイプ専用機の管制システムで培ったノウハウに、生体工学を加えることで完成したが、それを基本的な運用の補助として組み込んでいるために、高度なニュータイプパイロットによる応用は勿論、非ニュータイプにおいても運用が可能であった。
またこれらの高度な制御技術がオールレンジ攻撃に対抗できる抑止力としても機能したために、この時代の地球連邦軍の軍縮も相まって、ファンネル搭載型MSの減少に拍車をかけたとする説もある。
以上のように小型化と言いながらも高性能化にはより拍車をかけたが、一方でその代償として破壊された際に核爆発が発生する確率も高まっており、特にビーム粒子が動力源と接触した場合、激しい大爆発を起こすことが多かった(核爆発の為、当然地球上で起これば環境上多大な悪影響を及ぼすとされる)。同時代の戦艦も同様の動力源を採用している模様で、リーンホースJr.がアドラステアにビームラムで特攻を仕掛けた際は両戦艦のエンジンが大爆発を起こし、アドラステア旗下の全艦隊が巻き込まれ消滅するほどだった。
またこれを利用し、『ガンダムF91』『Vガンダム』劇中のGキャノン・ビギナ・ギナ・ジャベリンのように、無人のモビルスーツをあえて爆発させることで相手側に損害を与えるという、新たな戦法も確立した。
MS(Gセイバー)
宇宙世紀0223年の『G-SAVIOUR』では、16~18m級のサイズが主流になっている。この時代では量産型MSであってもスラスター出力が従来のMSに比べて10倍以上になっている為ミノフスキー物理学に頼らずに単独で飛行が可能となっている。
マン・マシーン(MM)
宇宙世紀200年台を描いた作品『ガイア・ギア』では、モビルスーツはマン・マシーンという新しい機動兵器に置き換えられている。ただしゾーリン・ソールはニュータイプ87年11月号やホビージャパン91年4月号の解説ではこの時代でもなお現役で稼働しているMSとなっている。また小説『ガイア・ギア』の挿絵と本文では残骸と化したギャプランのようなMSが海岸に打ち上げられていた。
MS(R.C.期)
宇宙世紀が終焉を迎えリギルド・センチュリー(R.C.)と改暦されてからさらに1000年以上経過した世界『ガンダム Gのレコンギスタ』では、再びモビルスーツという呼称の機動兵器が登場し、使用され続けている(原案である『はじめたいキャピタルGの物語』の段階ではマン・マシーンという呼称だったが、見直されている)。
操縦方法
ほぼ全てのモビルスーツに共通して、両手の操縦桿と両足のペダルの4箇所で主な操作を行う。
操縦桿についてはスロットルタイプと言って差し支えない形だが、縦向きなのか横向きなのかは機体により様々。例えば機動新世紀ガンダムXに登場するモビルスーツでは、ガンダムを含めた地球連邦軍のモビルスーツは下から上に向けて生えている形の縦向きの操縦桿であるが、宇宙連邦軍開発のモビルスーツは手を横向きにして握る形のスロットルである。またごく一部の時代では「アームレイカー」と呼ばれる球状の操縦桿に指を乗せて動かす方式も存在する。
またこれらとは別に補助入力装置としていくつかのボタンが纏められたキーボードが備え付けられている場合がある。
これも機体によって様々であるが、3~6個程度のボタンがあるだけのものもあれば、パソコンのキーボードとほぼ同じものがついている機体もある。
以下に、一般的なモビルスーツとは大きく異なる操縦システムを持つものを記述する。
- サイコミュシステム
- 宇宙世紀のNT(ニュータイプ)専用の補助操縦システム。NTは空間認識や敵意等の感覚探知が際立って高く、操縦桿などを用いた通常のコントロールでは対応できないほどの反応速度がある。またサイコウェーブという特殊な脳波を発する事象が確認されており、NTの脳波を操縦に用いる事で必要とする反応速度を達成するのが初期のサイコミュシステムの主眼である。後に攻撃に応用した誘導武装(ビット・ファンネル等)やミノフスキー粒子散布下でも遠隔操作が可能(劇中ではサイコガンダムやキュベレイで確認)、操縦機構を介さずに思考のみで機体をコントロールする(ネオサイコミュ・NT-D)などといった副次的な要素も含めてサイコミュシステムと総称される。
NT専用機体は総じて他のMSを圧倒する戦力を保持しているが、「NT(強化人間)でなければ運用できない」「システムが大型・複雑になりがちであらゆるコストが高騰する」「NTの絶対数が極端に少ない」という兵器としてのウィークポイントがあり一部の試作・特務仕様・スペシャル機としてのみ存在している。 - モビルトレースシステム
- 「機動武闘伝Gガンダム」に登場するモビルファイター全てに搭載されている。コクピットが完全な空洞になっており、座席やペダル・操縦桿の類は一切ない。パイロットの肩や膝などの要所にアンテナのようなものを取り付けることにより、パイロットがコクピット内で取った動作をそっくりそのままトレースするというもの。モビルファイターに乗って「格闘」を行うため、パイロットも優れた武術の使い手である必要があり、その技術を最大限に活かす為である。
- ゼロシステム
- 「新機動戦記ガンダムW」の、ウイングガンダムゼロとガンダムエピオンにのみ搭載されている。基本は一般的なモビルスーツと同様であり、一般的なモビルスーツが操縦できればこの機体も操縦出来るため、あくまで補助的なシステムである。
このシステムは高度な戦局判断機能以外にもパイロットの神経伝達物質の分泌量制御やパイロットの脳組織への情報直接伝達など、補助システムの領域を遥かに超越した機能を備えている。 - フラッシュシステム
- 「機動新世紀ガンダムX」のガンダムタイプMSに搭載されるNT(ニュータイプ)専用の補助操縦・運用システム。AW(アフターウォー)以前存在したNTパイロットが発する特殊な脳波を使い、無人MS(ビットモビルスーツ)を自身の動きに同一(もしくは牽制などに用いる)にする事で、パイロットは単独でありながら部隊単位でのMS運用を可能にしたシステム。ガンダム以外のMSではビット兵器としての運用で宇宙革命軍のベルティゴやフェブラル等がある。基本的に上記のサイコミュシステムと酷似しているが、機体の基本的操縦や戦闘は通常のMSと変わらないので、非NTでも機体のみの運用は可能。一人のニュータイプで12機のビットMSを統率することが可能であるこのフラッシュシステムとコロニーレーザーに匹敵するサテライトキャノンを統合したガンダムXは正に戦略級MSといえる。
- 名称不明(脳量子波によるコントロール)
- 「機動戦士ガンダム00」のセラヴィーガンダム、セラヴィーガンダムⅡに搭載されているイノベイド(ティエリア)専用の操縦システム。この2機は、通常は1つずつのMS(セラヴィーⅡは通常はラファエルガンダム)だが、分離して2機のMSとなることがある(セラヴィー&セラフィム、ラファエル&セラヴィーⅡ)。しかしパイロットが1人なので、セラヴィー、セラヴィーⅡはティエリアの脳量子波によって操縦される。002期の最終回1話前では、セラフィムも遠隔コントロールされたが、ヴェーダを使ったものの可能性があるため搭載されているかは不明。また、操縦とは少し違うが、ガンダムナドレ、セラフィムにはトライアルシステムが搭載されている。これは発動させると(ヴェーダの補助を受けている)ガンダムを制御下におけるシステムで、2度発動され、どちらも相手の動きを止めている。自由に動かせるかは不明。
- サイコ・フォローシステム
- 「機動戦士ガンダムAGE」のガンダムAGE-FXに搭載されているXラウンダー用の補助システム。Xラウンダー能力の上昇によってキオ・アスノの反応に機体が付いていけなくなったため、ガンダムAGE-3の修復と前後して搭載された。最大の特徴はXラウンダー脳内のX領域の反応をダイレクトに端末に投影して攻撃する「Cファンネル」とパイロットの感情の高まりに反応して発動する最大出力形態といえる「FXバーストモード」がある。前者は上記の脳量子波によるソードビット・ファングの運用に酷似し(もっと遡ればその名の通りファンネルの運用)後者は機動性の向上・ビームの刃・防御機能を兼ねるミノフスキードライブユニットと同等の能力を持つ。ちなみに同作には、Xラウンダーの補助システムとして攻撃端末「ビット」や脳波コントロール「Xトランスミッター」を使用した胞子型ビットもある。
- 阿頼耶識(アラヤシキ)システム
- 「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」の諸兵器に搭載されている、300年前の厄祭戦時代に作られたマンマシンインターフェース。パイロットに外科手術を施してナノマシンを定着させ、脊椎に機体とパイロットを接続する端子を移植することで、脳内に空間認識を司る領域を擬似的に作り出す。これによって、プログラムに頼らない直感的な「生きた」動作が可能になる。兵器としては有用なシステムである為、反乱を恐れたギャラルホルンは使用を禁止した。
- しかし、技術は流出しており、圏外圏の民間軍事会社や宇宙海賊、テロリストは未だにこれを少年兵やヒューマンデブリに施術し戦争の道具にしている。だがこの流出した技術は不完全な為厄祭戦に使われていたオリジナルの物に比べれば性能が低下しており、三日月・オーガスのように奇跡的に連続で三回も手術を成功させなければオリジナルの性能には到達しない。また練度の低いナノマシンな為成長期の子供(17歳未満)にしか定着せず、手術の失敗率も高い。MSや戦艦を扱うとなれば脳にかかる負担が非常に大きく気を失ったり鼻血が出る。ガンダム・フレームともなればリミッターが付いているが、それを解除して運用した場合は過負荷で脳にダメージが行き、三日月は二度行ったことで最終的に半身不随の状態に陥っている。
様々な機能やシステム
作品ごとに多種多様なMSが存在し、それに伴って様々な機能や構造を持つMSが存在する。それらは作業用から戦闘用まで幅広く、作中「ガンダム」と呼ばれる(区別される)MSだけに留まらず、時にはガンダムと呼ばれるMSから得られた技術を用いた量産機や、その逆に量産機を使用した試験型のMSなど、多岐にわたる。
宇宙世紀ではニュータイプに反応して起動するEXAMシステム、サイコミュシステムの簡易版とも言えるバイオセンサー、MSに専用の増加装甲を伴う装備を施すフルアーマーシステムなど。
宇宙世紀以外では戦闘時に装甲を相転移させて防御力を上昇させるフェイズシフト装甲や、バックパックを換装させることで汎用性を向上させるストライカーパックシステム(ガンダムSEED)、あらゆるものを分解するナノマシンを散布する月光蝶システム(∀ガンダム)、搭乗者の感情に応じて形態を変化させるスーパーモード(Gガンダム)、圧縮したGN粒子を解放することで一時的に機体の性能を向上させるトランザムシステム(ガンダムOO)など枚挙にキリがない。
中には単機で戦局を覆すほどの物もあれば、装備をマウントするための隠し腕やサブアームといった簡単なものまで様々。ここでは記述しきれないのでガンダムシリーズ一覧から見てみるといい。
関連動画
関連項目
脚注
- 12
- 0pt