ランドルフ・カーター(Randolph Carter)とは、H.P.ラヴクラフトの小説、およびクトゥルフ神話に登場する架空の人物である。
概要
初出は1919年発表の短編『ランドルフ・カーターの陳述』。
アメリカ合衆国マサチューセッツ州ボストン在住。神秘学者にして文筆家、数学者。
先祖をたどると十字軍まで辿り着き、彼はサラセン人の捕虜となりながら彼らから妖術の類を学んだという。またヴィクトリア朝には「初代」ランドルフ・カーターの存在が確認されており、「天使の文字」ことエノク語を記した神秘学者、ジョン・ディーに並ぶ魔術師であるとされる。
その後も一族はセイレムにおいて代々魔道の研究を続けていた。しかし1692年のセイレム魔女裁判の煽りを受け、当主のエドマンド・カーターがセイレムからアーカムに移住している。
1874年10月7日、アーカムに生を享けた。物心つく前に両親を亡くし、大伯父のクリストファーに引き取られて育てられる。
10歳の時に屋敷近くの洞窟「蛇の巣」にて奇怪な体験をし、これをきっかけに幻視や予知を行うようになった。以後は様々な神秘体験を重ねる事になる。
また彼は眠りの中で「ドリームランド」と呼ばれる異世界を冒険する「夢見る人」でもあった。その力は地球の神々をも魅了する壮麗な宮殿、イレク=ヴァドを創造するほどだったが、30歳の時に夢見る力を失い、現実との乖離に苦しむ事となった。
第一次世界大戦ではフランス外人部隊に所属したが、1916年に瀕死の重傷を負って除隊。
以後は故郷にて隠遁、遺産による悠々自適の独身生活を送っていた。その後54歳の時、突如として謎の失踪を遂げる。
登場作品
- 『ランドルフ・カーターの陳述』
カーターが友人のハーリー・ウォーランと共に地下墓地に赴いた時の話。
探検と称し、地下の穴倉に潜り込んだウォーランとの無線越しのやり取りは、血も凍るような結末を迎える。最後の一行はとみに有名。 - 『名状しがたきもの』
懲りもせず墓地にやってきたカーターと、友人のジョウエル・マントンの話。
よせばいいのにそんな場所で怪物「名状しがたきもの」について論争をしていた二人は、謎の怪物の襲撃に合い…… - 『銀の鍵』
隠遁生活に入っていたカーターが先祖伝来の『銀の鍵』を見つけ、その後失踪を遂げた顛末。
彼の半生が綴られており、その行方については『銀の鍵の門を越えて』で語られた。 - 『未知なるカダスを夢に求めて』
別名「わくわくドリームランド冒険物語」。
かつてカーターが夢に見た壮麗な神々の居城・カダスへと至る、壮大な冒険譚。
ナシュトとカマン=ター、ウルタールの猫元帥、セレファイス王クラネス、元友人の屍食鬼・ピックマン、ニャルラトホテプなど、様々なキャラクターが登場する。 - 『銀の鍵の門を越えて』(エドガー・ホフマン・プライスの『幻影の王』のリライト)
『銀の鍵』におけるカーター失踪後の話。
カーターは死亡したと主張し、莫大な遺産の処分を求める親戚筋の男、アスピンウォールと、遺産管理を一任されるカーターの親友、ド・マリニーの対立。
そこへ現れたインド人の神秘家、チャンドラプトラ師。無表情で抑揚のない声を持つ彼は、カーターが生きている事、そして今に至るまでの驚くべき話を語って聞かせる。
『銀の鍵』を使い、全ての時空を繋ぐ窮極の門『ウムル・アト・タウィル』へと至ったカーター。彼の魂はヤディス星の魔道士ズカウバの肉体に宿り、元の姿に戻る為に膨大な時間をかけて研究を続け、遂に地球に帰還を果たしたのだ。
その話に激昂したアスピンウォールがチャンドラプトラ師に掴みかかり、その仮面をはいだ時……
余談
- 『銀の鍵の門を越えて』に登場するド・マリニーの孫に、アンリ・ローラン・ド・マリニーがいる。ブライアン・ラムレイの『タイタス・クロウ・サーガ』に登場し、チート主人公ことタイタス・クロウに負けるとも劣らぬ博識を持つ相棒を務めた。彼が大事にする置時計は祖父から受け継いだ大切な遺産であり、異界へ通じる転移装置でもある。
- E・R・バローズのSF小説『火星シリーズ』の主人公、ジョン・カーターは大伯父に当たる......という設定があるが、これは後世の創作である。『リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い』のタイトルで映画化されたアメコミ『リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』で生えた。
- ソーシャルゲーム『Fate/Grand Order』の「禁忌降臨庭園セイレム」に登場。キーパーソンの少女、アビゲイル・ウィリアムズの「伯父」であり、彼女の保護者として主人公らを遇したが、たびたび原作から乖離した不審な行動・言動があった。その後最終盤において、思いがけない形で再登場する。
デザインがラヴクラフト御大と、あと何故か声優の杉田智和に似ていた事からたびたび(本人からも)ネタにされた。
関連動画
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関連項目
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