羽田空港アクセス線とは、東京都心と羽田空港を結ぶJR東日本の路線である。
概要
JR東日本は2002年より東京モノレールを子会社化させ、京急と対抗して羽田空港へのアクセスを担っている。しかし、モノレールは輸送力が低い上に、東京駅・上野駅方面、渋谷駅・新宿駅方面へは浜松町駅で、千葉県方面へは天王洲アイル駅で乗り換えなければならないと言う欠点があった(ただし、モノレールの東京駅への延伸構想は存在している)。
そこで、2013年より、東海道貨物線を活用した新線構想が検討されるようになり、2014年8月に一気に具体化した。新宿駅方面からの西山手ルート、東京駅方面からの東山手ルート、新木場駅方面からの臨海部ルートを整備するとされた後、東山手ルートが先行整備されることになった。開業予定は東山手ルートが2029年度。
ルート
東山手ルート
東京駅 - (東海道線) - (田町駅付近) - (東海道貨物線) - 東京貨物ターミナル駅
東海道貨物線自体は既設であるが、東海道貨物線と東海道線の間には東海道新幹線があるため、田町駅付近に新たに接続するための単線のトンネルを建設する。また、東海道貨物線には踏切があるため高架化を行う。東京駅までは28~33分かかるところ、約18分に短縮される見通し。
東海道線の分岐点の用地は京浜東北線、山手線、東海道線の上り線を移動して確保するとしている。
このルートは東京駅から上野東京ラインに乗り入れることができ、宇都宮線、高崎線、常磐線方面から羽田空港まで直結させることも可能である。
計画では1時間に4往復、1日72往復が運行される予定。
東京貨物ターミナル駅~羽田空港間
この区間は全区間が新線となる。羽田空港新駅は京急の羽田空港第1・第2ターミナル駅ホーム直下に設置され、15両対応の1面2線ホームとし、中距離列車が乗り入れられる構造となる。なお、第3ターミナルまでの延伸は先送りされている。
東京貨物ターミナル駅は現時点では旅客駅化は予定されておらず、留置線や待避線の設置に留まる。
2013年の検討時は東海道貨物線の天空橋駅付近からトンネルを新設するものと見られていたが、東京貨物ターミナル駅~天空橋駅付近は貨物列車と線路を共用することになり、ダイヤ乱れ時に貨物列車の運行に支障が出るおそれがあるため、東京貨物ターミナル駅からトンネルを建設することになった。
他の構想ルート
西山手ルート
新宿駅 - (埼京線・湘南新宿ライン) - 大崎駅 - (りんかい線) - 大井町駅 - (新線) - 東京貨物ターミナル駅
大井町駅~東京貨物ターミナル駅間に新たにトンネルを建設し、新宿駅方面から羽田空港へ直結させる。現在は新宿駅まで41~46分かかるところ、約23分に短縮される見通し。
臨海部ルート
新木場駅 - (りんかい線) - 東京テレポート駅 - (品川埠頭分岐部信号場) - 東京貨物ターミナル駅
新木場駅~品川埠頭分岐部信号場間はりんかい線として、品川埠頭分岐部信号場~東京貨物ターミナル駅(八潮車両基地)間はりんかい線の引き込み線として既設である。このため、引き込み線の複線化と東京貨物ターミナル駅の配線改良を行うだけで済み、唯一早期開業が可能となっており、暫定駅を設置することで、東京オリンピック開催前に開業させることも一時期検討されていた。新木場駅までは41分かかるところ、約20分に短縮される見通し。
なお、りんかい線の新木場駅は京葉線と線路が繋がっていることから、舞浜駅・海浜幕張駅方面に直通運転することが可能である。
その他、総武線津田沼駅と京葉線新浦安駅の間に短絡線を設け、後述の臨海部ルートと接続することにより羽田空港と成田空港の間を1時間以内で結ぶ路線とする構想もある。
問題点
運賃問題
西山手ルートおよび臨海部ルートはりんかい線を経由するルートとなっているが、りんかい線は東京臨海高速鉄道と言う別会社が運営する路線である。このためりんかい線の運賃を収受しなければならないが、西山手ルートについては車内改札でもしない限り、りんかい線を通ったか証明することができない。これは東山手ルートを経由すればJRだけの運賃で乗車できてしまうためである。
しかも、車内改札をしたとしても、切符なら経由が特定できるので問題ないが、SuicaなどのICカードは経由が特定できないため、最安の運賃(=JRのみ)が精算されることになる。これでは、りんかい線の運賃をまともに収受することができない。
解決策としては
1は京成の空港第2ビル駅、成田空港駅で行われているものである。ただし、東京貨物ターミナル駅に旅客駅を設置することができなくなる。
2は最も簡単に済む方法であるが、運賃は2重取りになるため割高になる。特に東山手ルートは本来JRだけで済むはずなのに2重取りが発生することになる。
3は別会社を設立させる必要がなく、運賃はJRだけで済む。しかし、東京臨海高速鉄道の筆頭株主は東京都であるため、JR化させる場合は東京都の株を全てJR東日本が買収する必要がある。東京都は前向きに検討しているようだが実現するかは不透明である。
こう言った問題があるためか、現時点では東山手ルートのみが事業化されている。
関連動画
関連項目
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