α(アルファ)とは、ミノルタおよびコニカミノルタ、ソニーの一眼レフカメラあるいはレンズ交換式カメラのブランド名である。
概要
αはレンズマウント(レンズを取り付ける穴の規格)によってAマウントとEマウントの2種類のラインが展開されている。AとEでそれぞれに取り付けられるレンズは基本的には別であるが、Eマウントではマウントアダプタを介してAマウントレンズを装着し(制限付きではあるが)利用可能である。
αAマウント
コニカミノルタからソニーが引き継いだαの本流。レンズの取付部分の規格はAマウント(αマウントと呼ばれることも)。一眼レフカメラや一眼レフっぽい形をしたカメラのブランド。後述のミラーレス機のEマウント機に比べると、ある程度大きさがありしっかり握れて、オートフォーカスも速く、特に動く物へのオートフォーカスの追随が優れているのが特色。レンズは現行のカメラでもミノルタ時代からのほとんどすべてのα用レンズが、オートフォーカスも手ぶれ補正機能も含めて利用可能な後方互換性を保っている。
ラインナップはエントリー向け小型機のα3シリーズ、エントリー向け普通サイズのα5シリーズ、α7シリーズのダウングレード版でちょっと豪華なエントリー機のα6シリーズ、αのAPS-Cセンサモデルでは最上位の中級機のα7シリーズ、35mm判センサを積んだフラッグシップのα9シリーズを展開。
2024年現在は後述のEマウントに統合する形で本体・レンズともに販売を終了している。
αAマウント用レンズ
Aマウント用レンズはフルサイズ対応レンズと、DTレンズ(Digital Technologyの略)の大きく2種類に分けられる。DTレンズはいわゆるデジタル専用レンズと呼ばれるもので、該当製品の型番にDTの文字が入っているため、それが入ってない物はフルサイズ対応レンズということになる。2種類のレンズを各種カメラに装着した場合以下のようになる。DTレンズには制限が多いと思われるかもしれないが、その分コンパクトで軽く安価なわりに写りの良いレンズができる。
- フルサイズ対応レンズを
フィルムカメラに装着・・・・・・・問題なく利用可能
35mm判デジタルカメラに装着・・・問題なく利用可能
APS-C判デジタルカメラに装着・・・レンズの中心部だけを使う形になるが利用可能 - DTレンズを
フィルムカメラに装着・・・・・・・ケラレてしまう(四隅が黒くなる)ので利用不可
35mm判デジタルカメラに装着・・・センサの中心部だけを使う形になるが問題なく利用可能
APS-C判デジタルカメラに装着・・・問題なく利用可能
- ZA
カール・ツァイス社とソニーとの共同設計のレンズ。カール・ツァイスの設けた設計基準や品質検査基準をクリアしていないと販売できない。そのため写りには定評があり、品質のバラツキも少ない。反面、光学性能を最重視してるがために大きく、重く、高価。SonnarやDistagonといったレンズ構成の名前、T*というカール・ツァイス独自のコーティングの名前も商品名に入れられる。 - G
ミノルタ時代から続く高性能レンズブランドのGレンズ。Grace、Gather、GratifyのGだとされる。カール・ツァイスレンズとバッティングするようなラインナップに関しては、美しいボケ味を重視するなどといった性格の違いがある。また、光学性能と同じくらい大きさや重さも大事な超望遠レンズなどはGレンズとしてラインナップされている。 - SSM (Super Sonic Motor)
オートフォーカス用に超音波モーターを内蔵するレンズ。オートフォーカスが速くて静かになる。 - SAM (Smooth Auto-focus Motor)
レンズ内に超音波モーターではないモーターを内蔵するレンズ。近年SSMでない新製品のレンズはSAMを入れられていることが多い。現状、αAマウント機は全ての機種がカメラ本体にオートフォーカス用のモーターを持っているため、コレがないとオートフォーカスができないなどということはない。カメラボディ内でモーターがギュンギュン動くよりは、発熱も分散できて、静かになるので動画などには効果が大きいかもしれない。
αEマウント
ソニーのαになってから出来た、いわゆるミラーレス一眼に分類されるもの。センサーはマイクロフォーサーズ陣営からの誘いを断りAPS-Cを採用した。レンズの取付部分の規格はEマウント(フランジバック長18mmのEighteenから)。フランジバックの短い新規格によりコンパクトさを追求したボディが特徴。その製品名称からNEXシリーズなどとも呼ばれるが、同じEマウントのレンズを利用できるハンディカムや業務用ビデオカメラにもNEXの名前が付けられているので、スチルカメラだけを指す言葉でないこともある。
ラインナップは、ボタンやダイヤルが少なくコンデジからの移行で戸惑わないNEX-3シリーズ、Eマウント機の基本シリーズで小型化を追求したNEX-5シリーズ、カメラらしいインターフェースのNEX-6シリーズ、独自のトライダイヤルナビなどを搭載したフラッグシップのNEX-7シリーズを展開。
その後、APS-Cに加え35mmフルサイズを展開するにあたりAマウントシリーズに合わせる形で命名規則を整理。フルサイズはα7と上位機種のα9、フラッグシップのα1を展開。α7はベースモデルに加えコンパクト、高精細モデルなどに細分化されている。APS-CはNEX-6の規則を踏襲した6000シリーズを展開している。いずれもα1を除き数字が大きいほど高性能モデルとなる。
また、Vlog向けとしてZV-Eシリーズも展開している(APS-Cが10、フルサイズが1)。
センサー | シリーズ | 概要 |
35mm フルサイズ |
α1 | フラッグシップモデル |
α9 | 高速性能モデル | |
α7 | ベーシックモデル | |
α7S | 高感度モデル | |
α7R | 高解像度モデル | |
α7C | コンパクトモデル | |
ZV-E1 | Vlog向けモデル | |
APS-C |
α6700 | プレミアムAPS-Cモデル |
α6400 | エントリーモデル | |
ZV-E10 | Vlog向けモデル |
αEマウント用レンズ
現在世に出ているαEマウント用のレンズは、すべてのNEXシリーズ・αシリーズ機で利用可能。以下にはレンズ固有の機能を解説する。
- OSS (Optical Steady Shot)
光学手ぶれ補正機構内蔵レンズ。Eマウントでは基本的に光学手ぶれ補正はレンズ側に搭載され、ボディには搭載されないため、これを搭載していないレンズは光学手ぶれ補正が効かない。 - PZ (Power Zoom)
電動ズームレンズ。 - LE (Light Edition?)
軽量モデルという意味だと思われる。
アクセサリー機器
Xperia PRO
2020年2月に開発が発表され、翌2021年に発売された5Gスマートフォン。5Gミリ波に対応し、スマートフォンとしては初めてMicroHDMI端子を搭載。αの外部モニタとしての使用や、αで撮影した映像を5G回線を通じて送信できる端末としてメディア関係やYouTuberなどに向けて提供。通信環境を確認できる「Network Visualizer」を搭載している。
ベースモデルはXperia 1ⅡでSnapdragon865、メモリ12GB、ストレージ512GB、4K対応21:9シネマワイドディスプレイ。カメラ機能もXperia 1Ⅱと同一としているため、ZEISSレンズによるサブカメラとしても利用可能。Androidのバージョンアップは12まで。発売時の価格は25万円ほどであったが、後に23万へ値下げされた。
ベースモデルの1Ⅱは発売を終了しているが、本端末は2024年3月現在も発売中。
PDT-FP1
Xperia PRO同様にミリ波に対応したポータブルデータトランスミッター。2024年3月22日発売。
「映像をいかにしてスムーズに、安定してネットワークで転送するか」を解決するために映像関係の部隊が主導して開発したためXperiaではなくαのアクセサリー扱いとなったが、Xperia PROのノウハウが活かされ、アンテナは改良・強化された。
5Gはミリ波だけでなく、5GSAにも対応。国内外の幅広いバンドに対応している他、通信環境を確認できる「Network Visualizer」を引き続き搭載。また、40℃の環境下でも動作するよう冷却ファンを搭載した他、端子類もHDMI Type A、LANケーブル、USB-C(充電用・データ用)の4つが搭載された。このため、下記スペックと相まってゲーム用途の利用でも注目されている。
Xperia 5V同様の6.1インチ、Snapdragon8Gen2、メモリ8GB、ストレージ256GB。Androidのバージョンは13でnanoSIM・eSIMのデュアルSIM対応。αのアクセサリーで単体利用を想定していない関係から背面カメラはQRコード用だがゴニョれば通常のカメラとしても利用可能。通常の090番号による通話機能はオミットされているが、通話アプリの利用は可能である。
歴史
αショック
一眼レフカメラにおいてイマイチ流行らなかった自動ピント合わせ装置『オートフォーカス』を、ミノルタ(現・コニカミノルタ)はカメラ本体やレンズといったカメラシステム全体で実現する新シリーズのカメラを発売し、広く一般にも受け入れられ記録的な大ヒットを飛ばした。それがαである(ヨーロッパではDynax、北米ではMaxxumブランドを使用)。従来ミノルタが発売してきたSRマウントのレンズとの互換性をなげうってまで行ったシステムの刷新と、マニュアルフォーカスのカメラは以後さっぱり売れなくなるというその成果により、他のメーカーも次々とレンズマウントなどのシステム刷新を行って追随するという、カメラ業界への大激震を引き起こし「αショック」などと言われた。
自動化と先進性
その後もミノルタは自動化・ハイテク路線を邁進し、ICカードで撮影設定や新機能を追加するインテリジェントカードシステムやら、ファインダーを覗くと自動でズームしてカメラが構図を決めるオートスタンバイズームなど、先進的なんだかよく分からないシステムなども実装したり、保守的な路線に立ち返ってみたりと紆余曲折を経つつ、キヤノンのEOS Kissに対抗してα-Sweetを初心者向けに出すなどで、業界の二番手か三番手あたりのシェアに落ち着く。さらにプロ用にRD-175という三板式で巨大ではあるが、当時としては比較的安価(68万円)なデジタルカメラも発売する。
ミノルタはAPSにも本気、ところでαは?
αにとって不幸だったのは、ミノルタが35mmフィルムの次の規格としてAPSフィルムカメラに本気で取り組んだことである。35mmフィルム用のシステムであるαではAPSの利点である小型化が活かせない、そのためミノルタは、従来のαマウント(Aマウント)に代えてVマウントを採用した、新シリーズの一眼レフカメラVECTISと多数の専用レンズなどを取りそろえ、αを立ち上げたときのように新しいシステムを構築しにかかったのだが、結果はAPSごと忘れ去られることになった。その後Vマウントで二板式のデジタル一眼レフカメラRD3000などを出してる間に、αシステムのデジタル化は立ち後れることになる。
待望のαのデジタルカメラ
時は流れデジタル一眼レフの多くは35mmフィルム時代のマウントやレンズを引き継いだシステムになるという趨勢が決し、ミノルタがコニカと合併してコニカミノルタというカメラへの収まりの悪い長い名前になったのち、やっとのことでα初のデジタル一眼レフカメラα-7 DIGITALが発売され、さらにエントリー向けのα-Sweet DIGITALなどの発売にこぎつける。まだαのレンズを売り飛ばして他のメーカーに移っていなかったユーザーの需要などでそれなりに売れて利益は出していたものの、コニカミノルタはコンパクトデジタルカメラが不調でカメラ部門は赤字だった。そもそもミノルタとコニカの合併は、イメージされやすい「カメラ屋とフィルム屋の合併」ではなく「コピー機などを売る事務機屋同士の合併」だったらしく、カメラ事業の縮小や撤退が噂されるようになり、α用のレンズも次々とディスコンされ、発売されるレンズはタムロンのOEM品ばかりということが続いた。
デジカメ長者ソニー
コニカミノルタのようにデジタル化で泣くメーカーもあれば笑うメーカーもあり、その典型がデジタルカメラから参入して、キヤノンに続く世界第2位のカメラメーカーに上り詰めていたソニーである。キヤノンなどのように高価なレンズ交換式カメラをラインナップに持っていないにも関わらず、コンパクトデジタルカメラによって地位を確立したソニーであったが、コンパクトデジタルカメラの低価格化とデジタル一眼レフの低価格化が押し寄せ、高性能化で価格を維持しようにも安くなった一眼レフカメラに客は移ってしまうわけで、ビデオカメラでも民生から業務用まで大きなシェアを持つソニーである、一眼レフカメラ(あるいはレンズ交換式カメラ)への参入はもはや秒読み段階と言われていた。
コニカミノルタ・ソニーの提携、そしてコニカミノルタの電撃撤退
レンズなどのシステムの構築や、一眼レフ特有のメカトロニクスや光学設計はソニーが参入に二の足を踏ませるのに十分大きな障壁であったが、カメラ部門へテコ入れしたいコニカミノルタと思惑が一致、両社はαシステムのデジタル一眼レフカメラの共同開発を始めることとなった。ソニーがイメージセンサ、コニカミノルタが一眼レフのノウハウなどを持ち寄り、完成したならば両社で別々のパッケージで売るという流れだったのだが、コニカミノルタはカメラ自体やめたいという話になり、それならばということでソニーがブランドや人員などの資産を引き取ったとのこと。
ソニーα
ソニーとコニカミノルタが共同開発していたカメラは、順当にα-Sweet DIGITALの改良版といった形ののカメラα100で結実し、ソニーのαの第一号機となった。ソニーはαを自社ブランドにするにあたり、海外でDynax(ダイナックス)やMaxxum(マクサム)というブランドで販売が行われていた地域も含め、αを世界統一ブランドに据えることとなった。
2019年以降はカメラ部門出身者がモバイル事業を牽引している関係でXperia1/5シリーズにαのノウハウを注入している。
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関連項目
外部リンク
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