いずも型護衛艦とは、日本国海上自衛隊所属のヘリコプター搭載護衛艦(DDH)である。
しらね型護衛艦の代艦として計画、建造された。
概要
ひゅうが型護衛艦に続く次世代のDDHとして建造され、1番艦「いずも」(DDH-183)が2015年3月、2番艦「かが」(DDH-184)が2017年3月に就役している。
飛行甲板は「ひゅうが」型と同じく全通甲板で、甲板の全長は「ひゅうが」型より50m長い245m。ヘリスポットは5つで、5機のヘリコプターが同時に発着艦を行える。
他にサイドエレベーターやサイドランプを装備、ヘリのみならず多数の車輛・人員の運搬も可能。汎用護衛艦3隻相当に洋上給油可能な補給機能、充実した医療設備や、災害時の被災者受け入れ機能も有するなど、高い汎用性を誇る。
イメージとしては現在、スペインの強襲揚陸艦「フアン・カルロス1世」やデンマークの多目的支援艦「アブサロン」のように、昨今のトレンドとなっている多目的使用を可能とした、海上プラットフォームとしての位置づけであると思われる。
いずも型の建造は、両艦共にひゅうが型護衛艦と同じIHIマリンユナイテッド(現社名はジャパンマリンユナイテッド)横浜事業所磯子工場で行われた。
「いずも」「かが」共にF-35Bを運用可能にするための改修を2回に分けて実施する予定になっており、改修が完了した後は艦種記号がDDHからCVM(Cruiser Voler Multipurpose)に変更される。
空母化
「いずも」型の空母化については、以前からミリオタの間でも冗談交じりに噂されていた。というのも
と、対潜ヘリ運用を主任務とするDDHには過剰とも思える航空機運用能力に加え、
- 日本の空母保有は海自にとって長年の悲願であったことそしてミリオタにとってのロマンであったこと
- いずもの空母化改修に関して度々メディアから報道されていた
- 米軍及び米政府が世代交代や近年の国際緊張といった諸事情によって、同盟国日本が強力な防衛力を保持することを認めるようになった
- アメリカにてSTOVL機F35Bの開発が終了、各国で導入が開始され日本では空自への導入が検討されていた(F35Bはカタパルトやアングルドデッキ、アスレティングワイヤを必要としない)。
といった周辺事情があったからであった。
いくら形が似ているといっても空母ではありません。ヘリコプター搭載護衛艦(DDH)です。いいですね、カタパルトもアングルドデッキもありませんし、そもそも日本は艦載機に転用できる固定翼機も有していません。(F35Bを導入する前の話)
例えば現代では海外の軍隊においても全通甲板を持つ艦艇すべてを空母と分類しているわけではない。空母と分類されていない全通甲板採用の艦艇を見てみると、アメリカ、スペイン、オーストラリアでは「強襲揚陸艦」、フランス、エジプトでは「指揮・戦力投射艦」、ロシアでは「重航空巡洋艦」、韓国では「ヘリコプター揚陸艦」と呼称している。もっともそれらのいくつかは立派な固定翼機運用能を有するので実質的に空母ではあるのだが
護衛艦隊の主軸となる4個護衛隊群の旗艦が何れも指揮通信中核システム、CEC(僚艦共同交戦能力)中核能力、高い対潜、哨戒能力や汎用性を有する、それでいて空母よりもマンパワーの負担が少ない大型艦となることは、下手に航空母艦を揃えることより有効であると捉えることもできるのだ
2016年になると、防衛省は「航空運用能力向上に係る調査研究」に関する公募を実施、2017年から2018年にかけて、F-35B、RQ-21、MQ-8Cの3機種を運用することを想定した調査が実施された。
2018年12月18日、平成31年度以降に係る防衛大綱と中期防衛力整備計画が発表され、中期防衛力整備計画にていずもをF35B運用可能な艦へと改修することを明記、[1]搭載機のF-35Bも42機調達する方針が盛り込まれた。
いずもとかがの改修は5年に一度行われる定期検査を利用して行われており、いずも、かが共に1回目の改修は既に実施済みで、いずもは2027年度、かがは2028年度に2回目の改修を終えて軽空母化を完了する予定になっている。[2]
F-35Bによる着艦テストも、「いずも」は2021年に、「かが」は2024年に実施されている。
性能
| いずも型 | ひゅうが型 (比較) | |
|---|---|---|
| サイズ | 全長248m 幅38m | 全長197m 幅33m |
| 基準排水量 | 19500t | 13950t |
| 運用機能 | 哨戒ヘリ x7 救難・輸送ヘリ x2 |
哨戒ヘリ x3 救難・輸送ヘリ x1 |
| 離発着スペース | 5機分 | 4機分 |
| 最大積載 | 14機 | 11機 |
| 兵装 | 高性能20mm機関砲(CIWS) x2 対艦ミサイル防御装置(SeaRAM) x2 魚雷防御装置(MOD+FAJ) 一式 |
高性能20mm機関砲(CIWS) x2 垂直発射装置(VLS) 一式 水上発射管 |
| 輸送機能 | 3.5tトラック 約50台分 | 小型車両 |
| (他艦への)補給機能 | あり | なし |
| 医療機能 | 手術室 ICU 病室35床 |
手術室 ICU 病室8床 |
最も特筆すべきはその指揮通信能力であり、自衛艦隊全体はおろか、陸上自衛隊部隊用司令部区画さえ備え、ひゅうが型護衛艦以上に陸海空統合運用の中核となることを、当初より念頭に置かれ、設計がなされている。このことは近年の護衛艦が単体性能ではなく、艦隊行動と陸空自衛隊との共同運用こそ要である今、非常に優れた設計である。
一方、固有の武装については「ひゅうが」型がESSMやアスロックを搭載したMk.41VLSと3連装短魚雷発射管を備えているのに対し、「いずも」型は最低限の個艦対空防御手段としてCIWSとSeaRAMを各2基、敵魚雷への対抗手段として自走式デコイや投射型ジャマーを組み込んだOLQ-1魚雷防御装置のみ備えている。これは「敵の潜水艦に対しては自艦は戦わない」ということを意味しており、このような兵装配置になったのは(アメリカやNATOの空母艦隊に潜水艦が随伴するように)「いずも」型が含まれる部隊にも「そうりゅう」型や「たいげい」型が護衛潜水艦として随伴する体制が確立したからではないかと類推できる。[3]
センサー系も、レーダーおよびソーナーは遠距離探知、聴知を主眼としたものとなっており、直接的な対空・対潜戦闘指揮機能は有していない(こういったこともあり建造費的には前型である「ひゅうが」より低く抑えられている)。
改修によって飛行甲板の後部(4番と5番のヘリスポット)は耐熱性が強化されている。また、着艦時の誘導システムとして「JPALS(Joint Precision Approach and Landing System)」の設置が予定されており、これによってシー・ステート5でも航空機の着艦が可能となる。
艦名の由来について
いずも
「いずも」は、日露戦争前後に六六艦隊計画により配備された出雲型装甲巡洋艦一番艦「出雲」の名前を継いだ形となっている。「出雲」は知名度は低いものの、日本海海戦後も長きにわたって運用され、1945年7月の呉大空襲で戦没するまでおよそ半世紀近く現役であった艦である。
装甲巡洋艦としての活躍は言うまでもなく、練習艦として多くの海軍士官を鍛え上げた、縁の下の力持ちとでも言うべき殊勲艦であり、今後、さらなる多面的な用途の活躍が期待されるDDHに、おおむね相応しい名前である。
「ひゅうが」「いせ」との艦名の関連性については明らかにされていないが、令制国(律令制度)による旧国名であるほかに、日本神話を題材に「日向」(高千穂)、「伊勢」(伊勢神宮)、「出雲」(出雲大社)から取られているのではないかという意見もあるが、あくまで噂レベルであるので注意されたし。
※ちなみに本ニコニコ大百科「ひゅうが型護衛艦」の掲示板において「いずも」の艦名を事前に想定した人がいる。GJであるとしか言いようがない。
また、進水の半月前、海上自衛隊のプレスリリースPDF作成時のミスにより、事前に艦名が「いずも」であることが周知されてしまった逸話も存在する。
なお、これはPDFのミスとは関係ないが、命名候補の中には「ながと」も存在したと言われている。この名前については、あたご型護衛艦建造当時も検討されたが、諸般の事情から何れも否決された。「特定周辺諸外国」の反応も無論、どう出るかしれたものではなかったが、同時に嘗てカルタにまで呼ばれた連合艦隊旗艦の名前を冠するというのは、海上自衛隊部内でも相当に悩んだ模様である。
かが
海上自衛隊最大クラスの護衛艦であるため、ネット掲示板などにおいては「いずも」にならって旧国名からとると予想され「かが」以外に神話要素にも含む地名の「やましろ」「やくも」「いわて」などが候補に挙がっていた。
海上自衛隊のプレスリリースでは隊内から募集し、様々な検討の上で防衛大臣が決定したと表記されている。ちなみに進水式の前日、千葉市市長熊谷氏が「今年だからこその名称」とツィッターで発言[4]しており、北陸新幹線の開業による北陸地方の知名度のアップも一因ではないかと予想される。
海上自衛隊のプレスリリースでは明記されていないが大日本帝国海軍にも先代の軍艦が存在している。
日本海軍の「加賀」は八八艦隊計画の3番目の戦艦、加賀型戦艦のネームシップとして「土佐」と共に建造された。が、軍縮条約による建造中止、関東大震災による巡洋戦艦「天城」の被災を経て戦艦改造航空母艦「加賀」として竣工した。空母「加賀」は日中戦争での実戦をへて太平洋戦争に参加、日本海軍の空母機動部隊の中核としての空母「赤城」と共に緒戦で八面六臂の活躍をみせ、日本軍の勢力拡大に多大な貢献を果たした。
詳しくは加賀(空母)の記事を参照。
その他
- ゲーム「艦隊これくしょん」では、「かが」の進水式を記念して、家具コインを消費することでジュークボックスで再生できる曲「加賀岬」を、次々回のメンテナンスまでコイン消費なしで再生できるようにすることをTwitter上にて発表している。また加賀のイラストを描いたしばふ氏による緊急記念イラストが掲載された。[5]
- アニメ「蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-」の公式Twitterは、「かが」の進水式に見に来ていたことを発表している。[6]
関連動画
関連項目
関連リンク
- 【ニュース】
脚注
- *新大綱・中期防が決定、総額27兆4700億円 F35追加購入105機
2018.12.18 - *防衛予算概算要求、いずも型護衛艦の軽空母化改修に18億円 「いずも」と「かが」の工事完成はいつ?
2024.8.30 - *「『いずも』型」柿谷哲也 J Ships(ジェイシップス)2023年12月号
- *熊谷俊人(千葉市長) 16:49 - 2015年8月25日

- *「艦これ」開発/運営 17:11 - 2015年8月27日

- *蒼き鋼のアルペジオ ‐アルス・ノヴァ‐ 16:13 - 2015年8月27日

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