いわてグルージャ盛岡スタジアム問題とは、Jリーグクラブ「いわてグルージャ盛岡」が抱える、ホームスタジアムの施設基準にまつわる問題である。クラブのJ2昇格、そしてJFL降格という道のりの裏で、常にクラブとサポーターの頭を悩ませてきた根深い課題となっている。
概要
いわてグルージャ盛岡のホームスタジアム「いわぎんスタジアム」は、Jリーグが定める上位カテゴリー(J1・J2)の基準を満たしていない。
Jリーグからは、将来的な基準充足を約束することを条件にライセンスを交付する、いわゆる例外規定という猶予期間をもらい、J2まで昇格した。しかし、その猶予も永遠ではなく、クラブはスタジアムの改修か新設か、具体的な計画を提出する必要に迫られていた。
そんな中、チームは成績不振でJ3へ、そしてJFLへと降格。スタジアム問題は一旦仕切り直しとなったが、Jリーグ復帰を目指す上で避けては通れない壁として、今もなお存在している。
スタジアムの現状とライセンス問題
具体的に何が足りないのか? 主な問題点は以下の通り。
- 収容人数: 約5,000人。J2基準の10,000人に遠く及ばない。満員になってもJ2基準の半分に留まる。
- 屋根: 観客席を覆う屋根の割合が基準を満たしておらず、雨天時の観戦環境は厳しいものがある。
- 照明設備: 2021年に設置され、ナイター開催は可能になった。これは大きな一歩だったが、他の施設基準という大きな課題が残っていた。
これらの基準を満たせないため、クラブは「5年以内に基準を満たすスタジアムの整備計画を提出する」という条件付きで、J2ライセンスを交付してもらっていた。元社長の秋田豊氏も改修に向けて署名活動を行うなど奔走したが、莫大な費用が障壁となり、実現には至らなかった。
2019年の署名運動と議論の深化
スタジアム整備に向けた動きとして、2019年にはクラブと岩手県サッカー協会が主体となり、大規模な署名運動が実施された。この運動では、目標の10万筆を大きく上回る141,347筆もの署名が国内外から集まり、集められた署名は要望書として岩手県と盛岡市に提出された。クラブは当時、この声を力に照明設備の設置を皮切りにJ2ライセンス基準を満たし、昇格を果たしながら猶予期間内に本格的なスタジアム整備を進めるというロードマップを描いていた。
この署名運動などを通してスタジアム整備への関心が高まる中、議論は単なる施設改修に留まらなくなった。当初はいわぎんスタジアムの改修が軸であったが、費用増の見通しなどから新設も視野に入れた再検討が始まり、単にライセンス基準を満たすだけでなく、スポーツに限らず多様な機能を持つ「スタジアムパーク」のような、地域全体のハブとなる新しいスタジアムの形を模索すべきだという意見も見られるようになった。
J2昇格からJFL降格まで
- 2021年 (J3): 最終節、奇跡の逆転劇でJ2昇格を果たし、岩手のサッカーファンを熱狂させた。
- 2022年 (J2): しかし、J2の壁は厚く、1年でJ3へ降格することとなった。
- 2023年・2024年 (J3): チームは立て直しに苦しみ、ついに2024年シーズン、J3最下位が確定。JFLへの降格が決まってしまった。
この降格により、J1・J2ライセンスの前提が一旦なくなり、スタジアム整備計画の提出期限も白紙に。しかし、これは問題の先延ばしに過ぎない。
まとめと今後
スタジアム問題が直接の降降格原因ではない。だが、より良いスタジアム環境があれば、観客動員やクラブ収入の安定につながり、チーム強化の礎となった可能性は否定できない。
JFLからの再出発となった今、クラブはチームの立て直しを最優先課題としている。運営会社のいわてアスリートクラブは、JFLで戦うシーズンはまず「J3復帰を最優先にする」としており、スタジアムに関する議論はJリーグ復帰後に再開する方針を示した。これに伴い、これまで改修計画などを検討してきた協議委員会は廃止されている。
「岩手県にJリーグクラブを」という夢を未来へ繋ぐため、まずはピッチで結果を出し、再びスタジアム問題という大きな挑戦に向き合うことになる。
関連リンク
- いわてグルージャ盛岡スタジアム「問題」に関する整理と新たな展開に向けた試論|足本幸男
- 【クラブ】スタジアム整備署名運動へのご協力の御礼とご報告 | いわてグルージャ盛岡 オフィシャルサイト
- いわてグルージャ盛岡の本拠地改修計画、J復帰後に議論再開へ | 岩手日報ONLINE
関連項目
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