おから工事とは、主に中華人民共和国において、汚職や手抜きによって建設された質の低い建築物やインフラを指す俗称である。
概要
おから工事は、中国語では「豆腐渣工程」(dòufuzhā gōngchéng、ドウフージャー・ゴンチョン)と表記される。「豆腐渣」は日本語の「おから」を意味し、おからのようにもろく崩れやすいことから、手抜き工事や欠陥建築を比喩的に表現する言葉として定着している。
この問題は、建築物だけでなく、橋、ダム、道路、空港といった大規模な公共インフラにまで及ぶ。その背景には、急速な経済発展を優先するあまり安全性を軽視する風潮や、地方政府と建設業者の癒着といった構造的な汚職問題が存在すると指摘されている。国内のみならず、中国企業が国外で請負ったプロジェクトにおいても同様の問題が報告されており、国際的な問題ともなっている。
語源と経緯
この言葉が中国全土で広く知られるようになったのは、1998年に発生した長江大水害がきっかけである。
この年、長江流域で歴史的な大洪水が発生し、各地の堤防が次々と決壊、甚大な被害をもたらした。当時の首相であった朱鎔基が、洪水で決壊した江西省九江市の堤防を視察した際、そのあまりにも脆弱な構造に激怒。「これは豆腐渣工程(おから工事)ではないか!」と厳しく非難した。
この朱鎔基の発言がテレビなどで大々的に報道されたことにより、「豆腐渣工程」という言葉は単なる俗語から社会問題の象徴へと昇華し、手抜き工事の代名詞として中国国民の間に広く浸透したのである。
国内の代表的な事例
- 長江大水害における堤防の決壊 (1998年)
- 重慶市綦江県「虹橋」崩落事故 (1999年)
- 四川大地震における校舎の集中的な倒壊 (2008年)
- 上海市「蓮花河畔景苑」マンション倒壊事故 (2009年)
- 河南省「痩身鉄筋」事件 (2021年)
- 大連湾海底トンネル浸水事故 (2023年)
国外の代表的な事例
背景にある構造的な問題
- 構造的な汚職と地方政府の利権: 地方政府が土地使用権の売却益を重要な財源としており、デベロッパーとの癒着が生まれやすい。役人の出世競争も絡み、品質よりもGDP向上のための「目に見える成果」が優先される。
- 「速度」を最優先する発展モデル: 計画された工期内に完成させることが至上命題となり、品質確保に必要な工程が省略されがちである。
- 複雑な下請け構造と責任の曖昧化: 大手から末端の業者へ仕事が丸投げされる過程で中間搾取が発生。末端の予算が極端に少なくなり、手抜き工事の温床となる。問題発生時の責任の所在も曖昧になる。
- 監督・監理システムの形骸化: 第三者による監理制度は存在するものの、発注者側からの圧力や賄賂によって形骸化し、有効に機能しないケースが少なくない。
中国政府の対策
- 法制度の強化: 「建設工事品質管理条例」などを制定し、各事業者の品質責任を法的に明確化した。
- 責任追及の徹底(終身責任制): 建物の設計や建設に関わった責任者が、その建物が存在する限り品質責任を生涯にわたって負う制度。退職後も責任が追及される。
- 監督・管理体制の強化: 各レベルの政府による監督を強化し、独立した第三者機関による工事監理を義務付けている。
- 汚職・腐敗の撲滅: 贈収賄に対する罰則を大幅に強化し、習近平政権下で強力な反腐敗キャンペーンを展開している。
これらの対策にもかかわらず、前述の構造的な問題が根深いため、おから工事の撲滅には至っていないのが現状である。
関連動画
関連リンク
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globeandmail.com: Why China's buildings crumbled
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