お通しとは、お酒を提供する飲食店で初めに出てくる小料理である。
お通しは関東圏で使われる言葉であり、関西圏では「突き出し」と呼ばれている。
現代では双方共に同じ意味合いで用いられている。
概要
日本において、お酒を提供する飲食店で初めに出てくる小料理である。
多くの居酒屋では最初に提供されるか一緒に注文したお酒と共に供され、注文した料理ができあがるまでの繋ぎ、お凌ぎとして最初のお酒と共に食す。
お通しとして提供される小料理は、小皿や小鉢等におつまみに適した量で提供される。
その献立はお酒の肴・おつまみになるように濃い目の味付けに仕立てられたものから季節や走りの一品、果ては蟹が丸ごと出てきたりお刺身が出されるなど、そのお店により多種多様である。
懐石料理の先付、フレンチのアミューズに似た意味に思われるが、お通しはもう一つの役割がある。
お値段
お通しは原則全員に提供する料理であり、お通し自体にも値段が付けられている。
定食屋やラーメン屋などお店によってはお酒を注文した人のみ出される事もあるが、居酒屋では区別が困難なためアルコールを飲まない人にも出される。
その価格はお店によって様々であるが、100円といった安心価格から3,000円といった思い切った値付けをする店もあるが概ね300円から500円の価格帯(もちろん消費税別である)である。
もちろんその価格に見合うようなお通しであればいいのだが、
業務用ポテサラ・サラスパ・ひじき煮、冷凍の枝豆や、ちぎっただけの生キャベツ、もやし、ポテトチップス、柿の種、ポップコーン等々……
明らかに原価がかかっていない手抜き料理を出されるケースも多い。
また、お通しの中身が事前に分からないゆえにお通しと注文した料理が被る事もあり、
フライドポテトを注文したがお通しでもフライドポテトが出てきた
という悲劇も起こっている。
逆に言えば、そうした残念なものではなく手の込んだ一品を出してくれるお店は期待が持てる。
季節の素材を活かした一品から、あら炊きや鮪のすき身など材料を余さず用いた工夫の肴、意外なところで冷製スープなど、お店のコンセプトやこだわりを詰めこんだ看板料理としてお通しを出してくる。
人気店はそうした「美味しいお通し」に期待して通うお客も多いのである。
とは言え、もずくや納豆、塩辛など人によっては好きなものではない料理を半強制的に出される事も多く、上記のフライドポテトの例では
・フライドポテト単品 1皿 … 680円
・お通し 440円 × 5人 … 2,200円
で実際に出された量は両方同じという悲劇もあり「こんなお通しなんてカットしたい!」と思う人が出てくるのも仕方が無い。
チャージ
お通しは席料(テーブルチャージ)を兼ねているとされている。
しかしながら居酒屋でお通しに席料としての料金を付加するようになったのは昭和の中頃から戦後にかけてであり、それ以前の居酒屋な角打ちで出されるお通しは純粋に無料であった。
明治38年創業、関東大震災後に再建し戦災を免れ現在も営業を続け、日本最古の居酒屋と評されている神田小川町の居酒屋「みますや」では、定番の卯の花から季節のお浸しにきぬかつぎなど多彩なお通しが出されるが無料である。みますや以外にも戦前からの歴史を持つお店ではお通しを無料とする所が多い。
料理としてのお通しにテーブルチャージの役割を持つようになったのは当時の流行に影響を受けている。
関東大震災以降に隆盛を極めた「カフェー」と呼ばれる営業形態があり、発祥地の銀座から当時の東京市内各地に広まっていた。
カフェーは、現在の喫茶店としてのカフェとは違い若い女給によるサービスを売りにした、現代で言うコンセプトカフェやキャバクラに近い営業形態であった。カフェーの料金体系はフランスの居酒屋を意味するキャバレー(≠戦後のキャバレー)をモデルとしていたためチップやテーブルチャージも設定されていた。
当初は純粋な席料としてテーブルチャージを請求していたが、多くの客から「何もしないのに金を取るとは何事か!」と不評を買ったためアルコールと共にスナック程度のチャーム(お通し)を出して宥めていた。
太平洋戦争に突入するまでカフェー業態は大きく成長していたが、戦中の統制と空襲、戦後のGHQによる統治や財閥解体により多くが廃業に追い込まれた。
その後、戦後の復興期にカフェー営業のノウハウを持つ実業家が多くの飲食業態に従事するようになり、バー等の洋風形態ではテーブルチャージ+チャームに、テーブルチャージが馴染まない居酒屋形態ではお通しそのものにテーブルチャージとしての料金を持たせるようになった。
で、結局断れるの?
結論から言えば お店による である。
大手居酒屋チェーン「和民」を運営するワタミ、「はなの舞」を運営するチムニーでは全店でカットが可能である。その他のチェーンでもコースメニューは総額体系としたりアルコールを頼まない人にはお通しを請求しない対応をする所もある。
センシティブではあるが同時に店側も誠実な対応を求められる問題であるため、
まずお店に聞く事が確実である。である。
なお東京都内の飲食店では、高級店や立ち飲みフレンチ・イタリアン等のカジュアル形態を問わず、お通し・アミューズに加えてサービス料として総額の10%~15%を付加するお店が意外と多い事に注意しなければならない。もちろんこの場合お通しは拒否できてもサービス料は拒否できない。
関連動画
関連リンク
関連項目
- 1
- 0pt