かわいそうなぞうとは、作家の土家由岐雄氏が執筆した作品である。
概要
大東亜戦争中、東京市(当時)の上野動物園で起きた実話を基にした創作童話。ノンフィクションではないため、ところどころ史実と異なる設定がある。1970年8月に出版された「おはなしノンフィクション絵本」に収録されている事からよく勘違いされるが、創作である。作者自身も「史実とは異なる」旨の発言をしており、厳密にはフィクションと言える。
戦時下において、理不尽に殺される象に焦点を当てており、子供に戦争の残酷さを伝える作品として長く読まれている。小学2年生向けの教科書に採用された事もある。諸氏も幼い頃に読み聞かせを受けたのではないだろうか?
あらすじ
時代は大東亜戦争真っ只中の1943年。日本への空襲が激しくなってくる中、上野動物園では猛獣や動物の殺処分が行われていた。爆撃で檻が破壊され、猛獣が街中に逃げ出す最悪の事態を避けるため、軍部からの命令でやむなく殺処分をしていたのである。こうしてライオンやトラ、豹、クマ、大蛇などの動物が殺され、残されたのは象のジョン(♂)、トンキー(♀)、花子(♀。ワンリーとも)だけだった。
賢い象は、毒入りの食べ物を見抜いて吐き出してしまう。飼育員が毒を注入しようとしても皮膚が厚くて針が刺さらない。銃殺では周辺住民に不安を与えるという事で、飼育員は仕方なく餌と水を抜いて餓死するのを待った。餌が貰えない象は、必死に芸を行って餌を貰おうとするが、それは届かぬ願いだった。まず17日後にジョンが死に、翌日に花子が、30日後にトンキーが死亡していった。
死んでしまった象の亡骸の傍らで泣き崩れる飼育員。その上空を米軍機が乱舞する。その敵機に向かって飼育員は「戦争はやめろ!」と声高に叫ぶのだった。
史実と異なる点
- 作中では何故か軍部が殺処分の命令を下した事になっているが、実際に下したのは東京市である。むしろ陸軍は動物が逃げ出した時の対応マニュアルを製作していた。
- 1943年時点ではまだ日本は1942年4月のドゥーリットル空襲以外では空襲を受けていない。本土空襲の本格化は1944年9月ころから。ただ殺処分命令が下されたのは作中通り1943年。
- 「皮膚が厚くて針が刺さらない」とあるが、陸軍獣医学校から来た市川少佐ら十数名がトンキーから採血しており、本当に刺さらなかったのかは疑問が残る。
ニコニコ動画では
ニコニコではネタのタグとして使用されており、童話とは全く関係ない動画に付けられる傾向にある。そういう意味ではまさに「かわいそう」と言えるだろう。
関連項目
- 1
- 0pt